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「言葉狩り考」③--乙武洋匡氏の見解を中国の学生と共有したい

2016-10-18 13:21:44 | 日記
選挙事務所でのだるまの目入れについては、前々回のブログでも触れた。これについては2012年12月11日、乙武洋匡氏がツイッターで公表したコメントが重要な視点を提供してくれている。



彼はこう書いている。

「これを視覚障害ではなく、身体障害にあてはめると、えらいことになる。『手を焼く』『手に負えない』『足を運ぶ』『足並みをそろえる』――手や足を使った慣用句は、枚挙にいとまがない。手足のない僕が、これらの言葉を「差別だ」と騒ぎたてたなら、こうした表現も使えないということになる」

「障害だけではない。美肌を良しとする風潮を、アトピー患者の方が『偏見を助長する』と主張する。モデル=高身長という概念は『差別だ』と低身長の人が訴える。現時点でそんな話を聞いたことはないが、これだって『だるまに目を入れる』のと大差はないように思う。正直、言いだしたら、キリがない」

ここまでは一般的な意見である。大切なのは彼独自の視点だ。

「だが、ここで忘れてはならない視点がある。彼らはなぜ、『それしきのことで』差別や偏見だと感じてしまうようになったのか。それらへの是正を強く社会に求めていくようになったのか。そのことを考えるには、おそらくは彼らと対極の位置にいるだろう僕の思考や心境について説明する必要がある」

「僕はよく障害をネタにしたジョークをつぶやく。笑ってくださる方もいれば、凍りつく方もいれば、『そんなこと笑いのネタにするものではない』とご立腹なさる方もいる。でも、僕自身はみずからの障害についてただの特徴だと思っているから、『それにいちいち目くじらを立てられても…』と困惑する」

「僕は自分の障害を“負”だととらえていないから、こうした冗談が言える。だが、僕がそう思えるのは――僕にとって障害はただの特徴で、負ではないと思えるのは、生い立ちが大きく影響している」

「『五体不満足』をお読みの方はご存じのとおり、僕はいじめを受けたこともなければ、障害によって大きな制限を受けたこともない。健常者とともに楽しく過ごし、成長してきた。それには様々な理由があるだろうが、結果として僕は障害を“負”と感じることなく、むしろそれを笑い飛ばすようになった」

「だが、そういう障害者ばかりではない。幼少期にいじめに遭い、親にも受け入れられず、しんどい環境のなかで育ってきた方に、『障害なんて、乙武のように笑い飛ばせ』と言っても無理があるし、僕らが『それしきのこと』と感じることにも敏感に反応してしまう。『やめてくれ』と思ってしまう」

「『いやだ』という人に、『そんなの気にしすぎだ』と言うのはかんたん。でも、彼らがなぜ『いやだ』と感じてしまうのか、そこに気持ちを寄り添わせる視点は忘れずにいたい。そして、幼少期に『障害がある』という理由でつらい思いをする人々が少しでも減るように、僕自身、尽力していきたい」

余計な説明を要しない明快な言葉だ。プライベートではいろいろ騒がしい人物だが、乙武氏のこの言葉はそのまま中国の学生に伝えたいと思う。それだけの価値がある。率直に主張し合う中国人社会の気質にも合っているように思える。どんな感想が出てくるか興味がある。

かつて同性愛者が好奇の目で見られ、偏見にさらされ、彼ら、彼女ら自身も日陰者のように息をひそめていた時代がある。だが、本人たちが堂々と名乗りを上げ、自分たちの存在を、権利を主張し始めたことで、社会がそれを受け入れていった。もちろん100%ではないが、テレビを見ればその存在感はもはや偏見や差別を乗り越えたに等しい。この間、産みの苦しみ、辛さはあっただろうが、逃げなかった勇気によって、問題の所在に光を当てることができた。

「面倒なことになる」と責任を回避するだけの発想では、世の中の差別も偏見もなくならない。むしろ問題が潜在化し、ジメジメとした日陰で醜悪な根を生やし続けるに違いない。言葉は、人が様々な思いを込め、多様な用い方をすることによって意味を変えていく。ある意味は淘汰され、新たなイメージが加わっていく。生かすも殺すもそれを使う人間の気持ち一つである。使わないという選択は、問題の核心からの逃避に過ぎず、最終的な解決方法でないことは明らかだ。(続)
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