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【日本取材ツアー⑱】阿蘇の地熱と対話する酒造会社女将

2017-04-20 11:26:13 | 日記
9日間に及ぶ日本取材ツアー記も、いよいよ大詰めを迎えた。福岡から北九州を巡り、たどり着いたのは阿蘇山から40キロ、地熱の蒸気に包まれた熊本県小国町である。学生6人がそろった最後の取材であり、最も強い印象を残した人物の一人、山口怜子氏。地熱料理研究家であり、180年以上続く久留米市の酒造会社「山口酒造場」の10代目女将、さらにパッチワークキルト作家として世界各地で個展も開いている。彼女の紹介については、詳しい記事があるのでそれに譲る。

(マガジンハウス・コロカル連載)
http://colocal.jp/topics/think-japan/tsukuru/20140729_34982.html
http://colocal.jp/topics/think-japan/tsukuru/20140805_35229.html

出発前、取材計画を練る会議の中で、1人の学生がネットで山口氏のことを知り、「ぜひ、現地に行って取材をしたい」と申し出た。福岡から小国町、行けない距離ではない。学生の熱意に応えて、メールを送ってみた。4日後、快諾の返事が届いた。そして次の言葉が添えられていた。

「30年近い地熱との付き合いですが、未だに100%理解してる訳ではありません。天候と、地形のつながりは大切だと思っています。最近になって、地熱と仲良しになれた位です。まだまだ知りたい事が山ほどありますが、残りの人生で可能な限り地熱と遊ぶつもりです。特に食べものに関しては、人間のホルモンと地熱エネルギーが、どの様にリンクするか興味深いものがあります」

学生に伝えると、大喜びだった。私も、人間と自然との共生、エネルギー問題と多様な側面から取材が可能だと判断した。撮影担当のほか通訳として九州大学の中国人留を同行させ、3人が別行動で取材をすることで、いったんはスケジュールを組んだ。だが、山口氏とやり取りをする中で、「私共の研究所の山荘もご利用出来ますので(定員15名)、ゆっくりと地熱の食事をしながら説明可能かと思います。せっかくですので、是非ごゆっくりとお過ごし下さい」との誘いを受けた。

ここまで熱心に迎えてくれる以上、人情を無にするわけにはいかない。見ず知らずの中国学生に対し、これほど温かく迎えてくれたことがうれしかった。全員でお邪魔するしかない。私を含め残りのメンバーは北九州での取材を終えたのち、現地で合流することになった。山荘とは、彼女が営む地蔵原ビレッジだ(http://jizobaru.com/)。学生にはちょっとした贅沢になるが、これまで民泊で経費を節約し、コンビニのおにぎりを頬張りながら頑張ったことや、教育の効果を考えれば、十分価値があると考えた。

3月31日、先発隊は北九州から列車で4時間、タクシーで40分の地熱料理研究所に向かった。その時の感想を、学生はこう書いている。

「車を降り、私は目の前の景色に圧倒された。伝統的な日本の家屋が並び、遠くには山並みが小雨の中にたたずみ、あたりは地表から湧き上がる蒸気に包まれている。その霧が立ち込めたような光景は、雨上がりの江南を思い出させる。同行した通訳が『なんてきれいなんだ!』と叫んだ」





山口氏は笑顔で3人の中国人学生を迎えてくれた。頭には三角巾を巻き、エプロンをして、重さ10キロの荷物を車に積んでいた。地熱料理研究所に案内すると、「面白いところでしょ」と話しかけた。彼女たちの緊張は一気にほぐれた。



「いいものはいい。自然に生きればいいんじゃない、自然に」
「地球は私たちにたくさんのエネルギーをくれた。地熱はその一つ。地球がもともと持っているエネルギーを生活の中に使うのは、最も賢いやり方でしょ」

彼女たちが撮影したフィルムの中で、山口氏はこう答えている。国家が決めるエネルギー政策について、個人はの力は小さい。だが、自分にできることで、自分の希望を託すことはできる。学生たちは、地熱で作ったカボチャのスープや白菜、ちまきを口に運び、その独特の甘みを感じながら、山口氏の言葉を一つ一つかみしめるように味わった。

山口氏の話は、場所を地蔵原ビレッジに変え、後続組を加え深夜まで続く。

(続)
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