●身に覚えのない動画サイトの利用料など、架空の未納料金を請求される特殊詐欺が増えているイメージ写真
先日の続きである。
私が不思議に思うのは、Aさんが有料の動画サイトとの契約をしていなければ(つまり会員でなければ)、今回のショートメールそのものは「架空請求」の詐欺であり、従って未納料金を払うことはないのだと思う点だ。彼女はなぜ送金したのだろうか。また、今回のショートメールは最近よくある「架空請求がらみ」の特殊詐欺メールのたぐいだと判断し、一番の有効な対策は、完全に無視することだということを知らなかったのだろうか。
Aさんが詐欺に引っかかってしまった理由はいくつか考えられるという。
①恐怖心や焦り: 詐欺師は、未納料金や法的措置などの言葉を使って、被害者に恐怖心や焦りを感じさせる。これにより、冷静な判断ができなくなり、指示に従ってしまうことがある。
②信頼感の演出: 詐欺師は「NTTファイナンスのミカミ」と名乗り、信頼できる企業の名前を使って被害者を安心させる。これにより、被害者は本物だと思い込んでしまうことがある。
③返金の誘惑: 「95%が返金される」という言葉は非常に魅力的だ。被害者は、少しの支払いで大きなリターンが得られると信じてしまうことがある。
④技術的な知識不足: 特に高齢者の場合、インターネットやスマホの利用に不慣れで、詐欺の手口に対する知識が不足していることが多い。
⑤社会的なプレッシャー: 他人に迷惑をかけたくない、問題を早く解決したいという気持ちから、指示に従ってしまうことがある。
これらの要因が組み合わさることで、Aさんは詐欺に引っかかってしまったのかもしれないというのだ。詐欺の手口は年々巧妙化しているため、常に警戒心を持ち、疑わしい連絡があった場合はすぐに専門機関に相談することが重要である。
有料の動画サイトもピンからキリまであるが、高いところでは月額3700円だ。それがおよそ50万円も振り込んだというから、ざっくり何年分の計算になるか計算してみた。まず、50万円を3700円で割ると約135ヶ月分になる。これを年に換算すると約11年3ヶ月分の料金に相当することになる。そもそも、これだけの期間分を一度に請求されること自体、非常に不自然であり、詐欺の可能性が高いことが普通だとわかると思うのだが、別の要因が働いていたとしか考えられない。
また、動画サイトの利用料金は一般的にクレジットカードでの自動引き落としが多く、未納になる可能性はきわめて低い。以下の理由から、未納料金が発生することはほとんどない。
①自動引き落とし: クレジットカードやデビットカードを登録している場合、毎月自動的に料金が引き落とされるため、未納になることはほとんどない。
②通知システム: 多くの動画サイトは、支払いが失敗した場合やカードの有効期限が切れた場合に、ユーザーに通知を送るシステムを持っている。
③複数の支払い方法: クレジットカード以外にも、PayPalやプリペイドカード、銀行振込など、様々な支払い方法が用意されているため、支払いが滞ることは少ない。
詐欺師は、こうした一般的な支払い方法を知らない高齢者やインターネットに不慣れな人々をターゲットにすることが多いという。彼らは、未納料金や法的措置の脅しを使って被害者を焦らせ、冷静な判断を失わせることを狙っているというのだ。
加えてNTTファイナンスが動画サイトの未納料金の請求手続きを行うことはない。NTTファイナンスは、主にNTTグループの通信料金の請求・収納業務を担当しており、動画サイトの料金請求はその範囲外だという事実をわれわれ一般市民はほとんど知らない。詐欺師はこうした我々の「弱点」「急所」「アキレス腱」を巧みについてくるのだ。
詐欺師は、被害者を信じ込ませるために具体的な動画サイトの名前を出すことがある。例えば、以下のような言い方をすることが考えられる。
①具体的なサイト名の提示: 「○○動画サイトの未納料金が発生しています」と、実在する有名な動画サイトの名前を挙げることで信憑性を高める。
②利用履歴の捏造: 「あなたが以前に登録した○○動画サイトの利用料金が未納です」と、過去に利用したことがあるかのように話を進める。
③法的措置の脅し: 「このまま未納料金を支払わないと、法的措置を取らざるを得ません」と、法的な問題に発展する可能性を示唆して焦らせる。
これらの手口は、被害者に恐怖心や焦りを感じさせ、冷静な判断を失わせることを目的としています。詐欺師は非常に巧妙で、信頼できる企業やサービスの名前を使って被害者を安心させようとする。
最後に改めて、心当たりのない請求や連絡があった場合は、完全に無視するのが最善の対策だということを知っておくべきだろう。詐欺師は、被害者が反応することでさらに情報を引き出そうとするため、無視することで被害を防ぐことができる。また、ショートメールの着信拒否も有効な対策である。以下の方法で対策を強化できる。
①ショートメールの着信拒否: スマートフォンの設定で、特定の番号や不明な番号からのメッセージをブロックすることができる。
②迷惑メールフィルターの設定: メールアプリやキャリアのサービスを利用して、迷惑メールを自動的にフィルタリングする設定を行うことができる。
③公式サイトでの確認: 心当たりのない請求があった場合は、公式サイトやサポート窓口に直接確認することが重要である。公式の連絡先を利用することで、詐欺に引っかかるリスクを減らせる。
④情報共有: 家族や友人と情報を共有し、詐欺の手口について注意喚起を行うことも大切。
これらの対策を講じることで、詐欺被害を未然に防ぐことができる。