住民自治の探検へ~川崎市議会を語る会

「自治する力」を高め、地域をつくる

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

議会は自治体経営へ参加可能か~栗山町議会の先端的事例を巡って

2015-08-05 21:49:01 | 議会改革
掲載する記事が少ないため、以下のブログに適時、掲載します。

散歩から探検へ~政治を動かすもの

最近は地方自治関連で、以下の記事を掲載しました。

総合計画は、その自治体の胆だ。それを議会で議論し、修正案を作成し、可決したことは、自治体経営への積極的参加というよりは、経営者そのものとしての活動だ。

議会は自治体経営へ参加可能か~栗山町議会の先端的事例を巡って
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

記事の掲載は以下のブログになります

2015-08-01 10:43:11 | 地方
掲載する記事が少ないため、以下のブログに適時、掲載します。

散歩から探検へ~政治を動かすもの

最近は地方自治関連で、以下の記事を掲載しました。

150731『省時間ビジネスとしての地方議員事業~職業としての「口利き」』

150730『“議会改革ゴッコ”が終わる時~住民の見方は変わらない』

150729『議会報告会の現状とあり方~地方議員と住民の姿勢が試される』


コメント
この記事をはてなブックマークに追加

川崎市簡易宿泊所の内実~議会での新設反対の請願審査を通して

2015-05-24 21:00:57 | 川崎市議会
報道によれば、川崎市川崎区の簡易宿泊所火災の犠牲者は9名とのこと。宿泊客は高齢ひとり暮らしの生活保護者が多い…というよりはたまり場であった…。

3年前、市役所の裏側、堀之内本町あたりに、この手の宿泊所の建築計画があり、周辺住民から反対の請願が出された。「ホテル&リゾート 2012年09月15日発売号目次」に、「【宿泊施設】○福主美商事、川崎市堀之内町に23室の簡易宿泊所・ダイキン宮本町を新設」とある。建設を見越して川崎市議会は請願を健福委で審議の末、「趣旨採択」したのだろうか。

本稿は、当時のメルマガに掲載したもので、請願審議の中に、簡易宿泊所の内実を読み取ることができる。以下、本文。

探検!地方自治体へ ~川崎市政を中心に~ 第191号 2012/9/23
★『請願「民間の迷惑施設建設に反対」審議の分析・評価』★
  ~石田和子議員(共産党)の複合的アプローチ

 はじめに
 1.全体概要
 2.複合的アプローチと単発的アプローチ
  2-1 現実と法との裂け目~宿泊施設は「生活の拠点」か?
  2-2 法解釈と運用の固定化~宿泊料の上乗せ
  2-3 関連施策を含めた複合的議論~自立支援をキー概念に
  2-4 法律に書いていないことの取扱~4名の議員の指摘から
  2-5 住環境維持とまちづくりは同じか
 3.残された課題
  3-1 行政のチャレンジに答えられない議会~条例の検討
  3―2 住民対住民 まちづくり・住環境・迷惑施設
  3-3 自立支援のあり方~方法と官のリソース
 おわりに

1.全体概要
題材 請願第42号
「川崎区堀之内町に建設予定の簡易宿泊所に反対する」
要旨1.
 簡易宿泊所ではなく、第二種社会福祉事業宿泊所へ運営を見直す
要旨2.
 本施設は届出制でなく、地域住民の納得のうえ、許可制にする
 注…現状の法律
   簡易宿泊所
   ・基本的に衛生状態を満足すればOKの「許可制」
   第二種社会福祉事業宿泊所
   ・地域住民との協定を締結したうえでの「届出制」
審議結果=全会一致・趣旨採択
 *コメント
  要旨1は事業者、要旨2は国の意思決定によるのではないか。
  これを趣旨採択するなら、議会として今後の行動が必須。

2.審議から見出せること~複合的アプローチと単発的アプローチ
 請願の主題である「住環境の維持」の質問を始め、法的問題、施設の内容・
運営、事業者説明会、行政の立場、生活保護者の状況、自立支援の施策等、多岐にわたる質問があった。
 審議概要は「第2回定例会 健福委員長報告資料」(P3-7)を参照。

 審議の中で、石田和子議員(共産党・高津区)は、法解釈、事業者施設の実態、行政の関連施策を複合的に捉えた質疑を展開、行政に具体的な課題を認知させた。すなわち、他の議員の質問は、単発な項目の羅列であり、要望で収束させるだけであったのと比較し、一段と光るものがあった。

石田議員の質疑は複合的アプローチ、以下3点の「特徴」を有する。
(1)質問項目を有機的に関連させ、問題点を抽出する(複合的アプローチ)
(2)自ら関連資料を探査し、本請願と結びつける(2-3参照)
(3)見過ごしがちな記載から、問題点を見出す(2-1参照)

2-1 現実と法との裂け目~宿泊施設は「生活の拠点」か?
 旅館業法によって規定される簡易宿泊所が、第二種社会福祉事業宿泊所に
限りなく近い運営を行うと、その間に何らかの矛盾が生じる。それが「生活
の拠点」に表現されていることを鋭く見抜いた処がポイントだ。生活保護者
を主対象とした運営は単に宿泊ではなく、宿泊所の生活拠点化を事業者が意
識していると感じさせる。

◆石田和子 資料2:法第2条、宿泊施設の意味
 ・旅館業法は生活本拠を置くことを宿泊営業に該当させているか?
*行政回答
 ・「生活の拠点を有さないこと」は旅館業に該当するか否かの判断基準。

◆石田和子 資料3:市内の生活保護者数と簡易宿所の利用状況
 ・当該事業者の既存4施設の定員及びその中の生活保護者数は。
*行政担当
 ・4施設の定員272、そのうち、生活保護者数257。

◆石田和子 住民提供・説明会議事録:副管理人の旅館業法上の意義と役割
 ・副管理人は入居者と契約。定住が前提ではないか(特徴(3)に該当)。
*行政回答
 ・管理人の設置は必須。副管理人は事業者独自、行政は関知しない。
 ・法の原則は宿泊者を拒否できない、定住してはいけないとは言えない。

◆石田和子 上記議論のまとめ
 ・事業者施設4カ所の入居者95%は生活保護者、本施設も同様な運営。
 ・入居者は副管理人と契約必要、事業者は本拠とする人を想定している。
 
 石田議員は、実質的に第二種社会福祉事業宿泊所の運営を行っていると判断でき、行政は住民説明会を地域住民との協定に近づけるように指導はできないか、との方向を目指したと考えられる。一方、行政側は苦しげであるが、「定住」とは認めず、両者を分ける一線は維持した。それにしても「現実と法との裂け目」を具体的に明らかにし、事業者及び行政側に強いインパクトを与えたはずである。

2-2 法解釈と運用の固定化~宿泊料の上乗せ
 法律がそのときの状況、特殊な事情によって「運用」され、法解釈として「固定化」する。あたかも最初からの規則であるように「ルーティン化」し、「追随」される。ここでは更に、それを前提としたビジネスモデルによる事業展開が民間で図られる。

◆石田和子 資料3:簡易宿所と第二種社会福祉事業宿泊所との違い
 ・生活保護者の住居費は1人世帯5万3,700円、簡易宿所6万9,800円の理由。
*行政担当
 ・委員の疑問は納得。簡易宿所は1泊2,000円程度で設定。
 ・生活保護法上の運用、国も認め、横浜市、台東区でも同じ取扱い。

◆石田和子
 ・その当時の社会状況の中で、特殊事情として運用を認められてきた。
  しかし、通常より1万6,000円高い額を前提としたビジネスは、おかしい。
*行政担当
 ・非常によく判る。住宅費の特別基準の認定を再検討する。
 ・5万3,700円以内のアパート生活が可能な状況か、調査する。

◆石田和子 アパートに住んで自立する方向性を、行政は考えていくべき。
 簡易宿所の宿泊料金が高いことは「資料3」に出ているが、不思議に他の議員は聞かなかった石田議員の前に質疑した、竹田宣廣議員(みんな・宮前区)、木庭理香子議員(民主・麻生区)、松原成文議員(自民・中原区)は何も問題意識はなかったのか?松原議員は「宿泊費とは家賃か?」との質問の後、支払い方法の質問に逸れている。

 石田質問に対して行政側回答は「同感!」である。固定化した決定のなかで、おかしいとは感じても直すキッカケを掴めなかったと推定する。横浜市、台東区にも同じに感じた仲間がいたかも知れないが、ネットワークを組むことなど夢のまた夢であろう。「宿泊費」と「アパート」の具体的言質を得て、石田議員は次のステップへ進む。

2-3 関連施策を含めた複合的議論~自立支援をキー概念に
◆石田和子 ホームレス対応との整合
 ・シェルターの整備の考え方、就労自立支援センター等との関係は?
*行政担当
 ・自立支援施設は4カ所。ホームレスの窓口、シェルター的な対応。
 ・居住する施設ではなく、拠点として自立へ向け支援、形態は様々。

◆石田和子 複合的に捉えて議論の整理
 ・特殊な事情を当て込んだ事業がビジネスモデルになるのは問題。
 ・旅館業法が生活保護・自立支援室とリンクせずとの考え方は問題。
 ・ホームレスの自立に向けた事業と別ではなく、局内の連携が必要。
 ・ホームレスの収容人員も半減、定住に対する手だては更に必要。
*健康福祉局長
 ・生活保護者の経済・消費行動を対象に行う経済活動は当然である。
 ・不当に利益を得る、利用者に不利益を与えることがあれば問題。
 ・許容せずの場合、公正に配慮し、制度的に規制をかける必要。
 ・具体的には、住宅費の問題は、ぜひ検討していく必要がある。

 関連する施策である「自立支援計画」を事前に読み、就労自立支援センター機能を明らかにしたうえで、ホームレスの収容人員も半減と指摘、先の「アパート」を含めて、局内の縦割り行政を突き、「定住」問題へのアプローチを具体的に迫る。
 その結果、局長は住宅費の問題について検討を言明した。

◆石田和子 資料3:社会福祉法の住民との協定締結
 ・第二種社会福祉事業宿泊所と同等な内容のとき、
  地域住民と協定締結は可能か。
*行政担当
 ・簡易宿所は不特定多数が宿泊、規約を設けることは難をしい。

 施策間のリンクまで幅を広げた後、これまでは簡易宿所の「虚構性」を具体的に明らかにし、ここで本丸に辿り着いた感がある。複合的であると共に間接的アプローチだ。しかし、「定住」問題と同様に、「協定締結」問題も一線を画されてしまった。行政の立場としては当然であろう。
 一方、本請願に関わる状況に関し、全体として矛盾を孕むことを具体的に明らかにした意味は大きいと言える。
 以下は単発的アプローチの中から議員の盲点と感じられる質問を例示する。

2-4 法律に書いていないことの取扱~4名の議員の指摘から
 旅館業法第3条の営業許可に関し、施設周囲100m区域内にある学校、認可保育園等に対し、「清純な施設環境が害されないか」意見を聞く規定がある。ここでは認可外保育園があるが該当しないと行政側は説明する。これに対して質問・意見が集中する。

◆松原成文 資料2:法第3条第3項 意見を聞く施設
 ・認可の保育所であれば、それは申請を認めないということか。
*行政担当
 ・先の説明と同様、清純な環境を害するのか意見を伺う。
◆木庭理香子 同上
 ・認可外、認可、幼稚園、線引きで子どもをくくってよいか。
*行政担当
 ・保育所は認可が法律上の要件、意見を聞く必要がある。
◆竹田宣廣 同上
 ・法から飛び越える部分だが、認可外保育園に意見を聞けるか。
*行政担当
 ・意見を聞く施設ではないが、配慮するように事業者を指導。
◆石田和子 同上
 ・保育園の子どもにとって認可、認可外は関係なく、全く同じ。

 おそらく法の規定は「代表」を指定したのであろう。そうでなければ、近隣の、子どものいる全家庭に意見を聞く必要があるはずだ。議員が認可と認可外に拘るのは、法律文言への道徳的アプローチに思える。しかし、ここでの問題は法解釈ではないか。

 認可保育園に「意見を聞く」規定では、認可外保育園については何も規定されておらず、聞くか、聞かないかは任意であろう。また、現状の川崎市において、認可、認可外を同等に扱うのは議員諸氏の議論にあるように、特に不思議ではない。従って、市として条例、規則、要綱、要領、いずれかに認可外から意見を聞くと規定して、法律違反であろうか。竹田議員「法から飛び越える部分」との発言が、この点に関する問題意識の無さを示している。他の議員も、職員も全く同じに見える。法律に書いていないことを、法律の趣旨を勘案しながら判断することは、私たち自身がなすべきことではないだろうか。

2-5 「住環境維持」と「まちづくり」は同じか
 請願は現在の住環境を維持することを主張している。すなわち、迷惑施設への反対であり、運用の変更である。「まちづくり」そのものは請願の要旨に含まれていない。「まちづくり」を考えるならば、この種のいわゆる迷惑施設をどうするのか、ある範囲内で考える必要が出てくるからだ。

すべての地域が「まちづくり」を理由にして反対すれば、行き場のなくなる施設が出てくるのは必然だ。

◆木庭理香子 請願書:住環境(安心・安全)の維持
 ・市はどちらの立場に立って物を考えているのか。
 ・現行法の中での対応が不可能ならば、今後はどうするのか。
*健康福祉局長
 ・基本的に法令の定めに従って、行政処理を行う。
 ・事業者と住民の対立に対し、法的に公正な立場に立つ。
 ・事業者と住民が話し合い、納得するのが一番望ましい。
 ・まちづくりに法、条例があり、それに従った処理を行う。
 ・将来的に目指すことには、新たな立法措置が必要だ。

◆松原成文 請願書:住環境(安心・安全)の維持
 ・事業者と住民のトラブルを回避する新条例の方向性は?
*健康福祉局長
 ・紛争状態に関して関係法令は多く有り、野放しではない。
 ・一方的規制は良くない、事業者の活動を許容するのは当然。
 ・まちの状況に応じて的確な制度化は常に念頭に置く。

 具体的な問題を指摘せず、どちらの立場か、と迫るのは「2-4」とじく、極めて直線的なアプローチである。この方法の欠点は、立場を外されると何も言えずに、議論の行方がなくなることだ。討論の広場である議会としては好ましくない。上記の両議員に対する局長の答弁をみると、抽象的かつ常識的に、ほとんど同じことを言っている。結局は何も言質を与えていないのだ。

3.残された課題
 大きく眼についた今後の課題を三点、以下に述べる。
 1)議会による「条例」の提案・制定
 2)住環境維持と迷惑施設の設置
 3)自立支援のあり方~方法と官のリソース

3-1 行政のチャレンジに答えられない議会~条例の検討
 木庭議員「市はどちらの立場に立って物を考えているのか」との問いに、局長は「将来的に目指すことについては、新たな立法措置が必要になる」と答えた。これは議会に対する行政のチャレンジだ!「立法措置は議会の役目、必要と思うなら自分たちで作れ」と言っている(「2-5」参照)。しかし、何を言われているのか、木庭議員は理解できていないようだ。次の句は「…全く納得はできない…」である。

 松原議員「事業者と住民のトラブルを回避する新たな条例」、坂本茂議員(自民、川崎区)「関係した条例を見直すことも行政の重要な仕事」との発言に示されるように、議員が行政職員に対して「新たな条例」あるいは「条例の見直し」を要求する倒錯した意見が、委員会審議の場において、疑問なく出され、それに局長が常識的に答えると「非常に前向きなご意見」と持ち上げるのが、現実の川崎市議会の姿なのだ。

3―2 住民対住民 まちづくり・住環境・迷惑施設
 地域住民の住環境維持と事業者との対立は、実は「住民対住民」の図式になる。簡易宿所を利用する人が住民と考えれば、の話になるが。ともあれ、住民が利用者に不信感を持つ限りは「住民対利用者」の関係になる。「定住」の問題が再燃するかもしれないのだ。

 更に、まちづくりを考えると、迷惑施設の近隣にいて迷惑を被る住民と遠くにいて利益を享受する住民の対立が想定される。この「住民対住民」の最初のケースが東京都のゴミ戦争である。これはゴミの処理が集中する江東区民とゴミ処理施設の建設に反対する杉並区民との紛争であった。これこそが住民自治の論点になるのだが、ゴミ戦争は未だ後遺症を残しているようだ。

3-3 自立支援のあり方~方法と官のリソース
 石田議員が提起したように、アパートに住んで自立する方向性を行政が考えたとしても、実際にアパートを貸すことには、障害があるように思える。簡易宿所に対して地域住民が警戒心を持ったが、アパートについても事情は変わらないことは、十分予測できるからだ。

 そうなると、官が必要な施設を準備することが順序として考えられる。そこでの問題はリソースである。配分する金が少なければ、自立の支援は地域に投げ返されるかもしれない。そこまで想定すると、自立支援のあり方も変わってくる可能性があるだろう。

おわりに
 本稿は『市民による議会活動の分析・評価』の試論である。ここでの狙いは「議会審議の質的向上」と「市民生活へのインパクト」にある。その点、この趣旨採択が次の議会活動へどのように結びつくかが問題である。行政からのチャレンジを正面から受け止め、市民との対話を進めながら条例制定等へ進んでいく姿を示して欲しいものだ。

      


コメント
この記事をはてなブックマークに追加

助産所の活用、市議会への請願が新事業に~委員会での優れた討論事例

2015-04-29 08:43:30 | 川崎市議会
助産所の活用、市議会への請願が新事業に~委員会での優れた討論事例

『市民による川崎市議会白書2011年度版』から委員会での出色の討論を紹介する。白書の中心「川崎市政の論点・争点・課題」の13ケースの中の一つだ。テーマ毎に、委員会での議案審議、事務事業報告、請願・陳情審査及び本会議での会派質問、議員質問から関連する内容をピックアップし、系統的に理解する。
今回は、「議事録」から以下を参照文献とする。
 健福委員会 H22/05/21 請願審査 「100号 地元で安心安全なお産を求める」
       H22/10/29 事業報告 「産科医療機関に対するアンケート結果」

「問題の所在」と筆者「コメント」との間に、以下の議論を展開する。
『基本的なデータ~現状認識と新たな課題~「位置づけ」から問い直す!~嘱託医がやめて2ヵ月機能せず~議員と局長とのギリギリの議論~議員の発想、局長の発想~ベクトル合わせ~医療機関の現状認識~周産期医療ネットワーク施策―基本計画への遡及~新たな事業として設置~医療全体の問題』

1.問題の所在
要約 「請願100号」の地元でのお産とは、助産所の活用であり、そのためには、医療機関と行政の継続的支援が必要だ。しかし、産科医療従事者の不足は深刻、一方で、医療費も増加傾向にある。審査では、具体的な住民の疑問から出発した質疑が展開され、認識が深まり、施策の方向も行政と一致して趣旨採択、最終的には23年度の新事業として実施された。請願・陳情が住民提案であることを示す貴重な例である。

「地域の『助産所』を最大限に活用、そのために嘱託医療機関の確保と円滑な連携」を市で主導する。これが請願の趣旨である。助産師は医療行為をできない。従って、助産所は、正常分娩が見込まれる妊婦を対象とする。一方、不足の事態が起きた場合は、嘱託医師の仕事になる。

川崎市は周産期も含めた救急体制において、救急車の待機時間がワーストワンを前年まで3年間続けた。医療従事者も不足する一方、高齢化社会が進むと共に医療費も嵩んでいく。医療全体の中で、所産所・助産師の位置づけは?ここから問題は始まる。

2.基本的なデータ
基本的なデータが健康福祉局から説明される。先ず、川崎市のゼロ歳児は約1万4千人。
 図表5-6-1 分娩取扱数(平成21年度)
  施 設  10,540人  
  病 院   6,777人 64%
  診療所   3,226人 31%
  助産所     537人  5%

 図表5-6-2 分娩取扱施設数
  施 設  30
  病 院  11
  診療所   9
  助産所  10

周産期救急体制については、3月に聖マリアンナ医科大学病院において、総合周産期母子医療センターが開院され、大きく改善されている。
 ハイリスクの集中治療室として、
 MFICU  6床
  NICU 12床
   GCU 24床
 が設置された。
市内では他に、NICUを市立川崎病院6床、日本医大武蔵小杉病院3床、それぞれ設置して21床、先ずの整備ができ、順当に稼働している。

3.現状認識と新たな課題
救急体制が整備された段階での正常分娩を対象とする助産所をどう位置づけるのか、請願審査での第一の問題となる。ここで、行政側は、助産所と医療機関との嘱託契約と連携を課題として両者が入るマッチング会議を行っており、これは政令指定市として川崎市と仙台市だけが行っている支援と説明する。一方、議員の認識はどうだろうか。

吉岡俊祐議員(公明党)『今後の問題は、ぜひ早期にめどをつけて頂きたい…』
斉藤隆司議員(共産党)『ぜひとも早く進めてほしいということを要望…』
石田康博議員(自民党)『環境整備をぜひ積極的に進めて頂きたい…と要望…』
他に志村勝議員(公明党)も含めて、救急体制及び医療全般に質問を波及させながら本テーマへは、様子見だけの反応であった。

4.「位置づけ」から問い直す!
しかし、基本に戻って問い直す議員も。
玉井信重議員(民主党)『…生む場所が少ないという…どうやってふやしていくのか…最も決定的な問題…。今、有床の病院、診療所が建設できない状況の中で…助産所の整備に力を入れていかなければならない…。助産所の位置づけをどうするのか。』
健康福祉局長『…連携のあり方、資源を有効に活用する方法も継続して検討…』
玉井議員『局長、具体的な話をしたい…助産所が非常に大きな課題を抱えている状態…局長の話は弱い…助産所を位置づけて増やす気持がないとだめなのでは…』
そこから請願の契機となった具体的な話に移す。

5.嘱託医がやめて2ヵ月機能せず
多摩区の稲田病院は嘱託医が辞め、2ヵ月間機能せず、ようやく東京都立川市で引き受けてくれる医療機関を見つけたことを指摘した後、
玉井議員『…部長は一般の正常分娩でも、いつ医療的なケアが必要になるか、わからないとおっしゃった。それだと立川市は不安だと、皆さんが感じる…なぜ切実に受けとめないのか、すぐ隣に多摩病院もある…なぜ連携がとれないか…。支援とはコーディネート機能だ。』

6.議員と局長とのギリギリの議論
局長『何を優先するか、パイの限りある中で助産所の嘱託医をやってくれということができかねる環境が片側にある。僕は、先ほどから何回も言っている。』局長クラスが“僕”と自らを呼ぶことは珍しい。普通は“私ども”、一人称を使う場合でも“私”である。図らずも口から出たこの言葉の中に、出来る限りのことはしているとの、局長の理解を求める本音が出ているようだ。
玉井議員『そこなんだよ、局長。今おっしゃったのは、現状そのものを肯定されている。新しいものとして助産所の位置づけをして、その支援体制を構築したらどうか。』
局長『度重なる質問の中の趣旨はよくわかっている。…行政も支援をしていきたい…マッチング会議等を開く…何故、嘱託医を受入られないのか、調査もやる…』

7.議員の発想、局長の発想
局長は、おそらく、ここまで問い詰められるとは考えていなかったのだろう。救急体制の施策をした。本件についても行政側も課題を認識して、マッチング会議を開催して検討をしている。従って、請願に対応する施策の内容は聞かれても、そこまでの経緯は踏み込まれない。全体として、その前に発言した吉岡議員、斉藤議員、石田康議員、志村議員の4名の内容程度に要望されるのが道筋だと読んだに違いない。

一方、玉井議員の発想の原点には、具体的経験による住民の市政への疑問がある。それをベースに議員として、広い立場で見直して位置づける考え方である。従って、原点にある疑問を乗り越えるのが議員の仕事との自負を感じさせる。施策が考えられたとしても、行政が置き忘れがちになる原点に拘る理由がそこにあるはずだ。

そう考えて行政側の最初の説明を読み直してみると、サラッときれいに書きすぎており、そんなことではないだろうと、ひっかかるところがある。例えば、玉井議員が指摘した嘱託医の交代問題である。平成21年に嘱託医師及び嘱託医療機関の変更が生じた助産所2施設について、『適正に手続が行われ、現在に至る』と述べている。

更に、川崎市の地形の特性から、市外に嘱託医師等を持つ助産所もあることを述べ、『他都市では、同一市内でも相当離れた場所に嘱託医師を持つ助産所もある…助産所助産師との連絡、連携を密にする制度の趣旨から、必ずしも行政区域にこだわらない』と述べ、現行での課題から外している。先の稲田病院の例と対比すると行政の発想と議員の発想の違いが良く判る。

8.ベクトル合わせ
お互いの立場の違いを改めて認識したことは、後の施策の議論にも影響するだろう。しかし、施策に対する方向はあっている。
玉井議員『局長、できるだけ折り合うような話でおさめたい。』
これで、つばぜり合いを収束の方向へ導く。すなわち、救急体制確立の施策が方向性として正しかったこと、また、本請願の趣旨に合った方向で行政側も今後の施策を考えていることをお互い確認した。

9.医療機関の現状認識
ここで話は「報告 産科医療機関に対するアンケート結果」に飛ぶ。行政側がこの問題に対する施策の最終案をまとめる際に、医療機関の考え方を確かめたものである。

図表5-6-3 対産科医療機関アンケート結果
1)助産所での分娩 『医師の常駐する施設での分娩が多数』
2)嘱託医療機関受託の意向 『受託を希望しないが多数』
3)受託を断る理由 『医師のマンパワー不足』
4)嘱託医療機関に必要なこと 『マンパワー確保』
5)助産所に必要なこと 『質の向上と安全管理』
6)市に求める支援体制 『診療報酬上の評価、人材育成』

市内で分娩を取扱っている病院11、診療所8、合計19医療機関のうち17箇所から回答を得ている。実際、議員だけでなく、住民も医療機関がどのような考え方で日頃の仕事に当っているのか、良く判らず、おそらく、不安に思っている人も多くいるのではないか。その意味では、議会だけに情報を閉じ込めておくのではなく、積極的に開示しても良いように思える。

しかし、ここまで議論を進める議員が現れてこないのが残念である。聖マリアンナ医科大学の巨塔とその中にある高額な設備、一方の我が家に近い助産所を共にイメージしたとき、住民に知らせる情報も議会として真剣に考える必要がある。

1)の回答は不測の事態に備えることを考えれば、当然の考え方であろう。それでも、2)において、希望しない12機関に対して、5機関が受託している。その受託せずの理由は3)マンパワーそのものである。これも先の局長発言に対応する医療機関側の状況の表れであろう。その裏返しが、4)の回答になる。

一方、2)の受託する医療機関として、助産所と市に求めることが6)である。質の向上と安全管理は常に求められる。具体的施策が何かを示せればもっと良い。これが施策として反映させるべきことになる。

10.周産期医療ネットワーク施策
この調査も参考にして「周産期医療ネットワーク」を推進する施策が示される。

図表5-6-4 周産期医療ネットワーク施策
 「施策1」 高次医療機関でのNICU等新設・増床及び運営を支援
 「施策2」 嘱託医療機関が行う助産所の安全管理指導を支援
 「施策3」 院内保育所の運営補助により女性医師等働きやすい職場環境
       づくりを支援

 ここで「施策2」が入ったことが請願の成果になる。
一方、「施策1」は従来の延長線上に位置づけられる。地域保健医療計画では、NICUの必要数を30床、現状は先に述べているように21床、新たに日本医科大学武蔵小杉病院で3床を増床予定で、合計24床、さらに、神奈川県立こども医療センターの21床の一部を含め、ほぼ必要数を充足できる。

また地域的には中原区で大規模なマンション建設により人口増加が著しく、22年9月1日現在の人口は約23万人、昨年の人口増加数は約4千人、女性人口15─49歳比率は約56%等、各区の中で最も高い数値を示している。この地区における周産期・小児救急医療体制の強化が必要である。

また、「施策3」は、アンケートで産科医師のマンパワーの必要性を指摘する意見に対応する。神奈川県保健医療計画では、25─29歳の産科・婦人科医師に占める女性医師の割合は約3分の2になる。

また、日本医師会の調査では、女性医師が仕事を続ける上で必要と思われる制度や仕組み、支援対策として約65%が託児所、保育園などの整備、拡充を、約62%が病児保育を挙げている。ここから院内保育所の運営支援が第一に必要と考えられる。そこで、現在10の医療機関の院内保育所への運営補助を県と協調して実施している。

11.基本計画への遡及
「施策2」に関する審議の議論に戻る。請願審査において玉井議員が具体論から迫った。これについて石田和子議員(共産)は、『かなり本質に迫る議論があった…』と評価しながら、20年度策定の県保健医療計画に関連した数値について質問する。

『分娩施設1箇所当たりの人口4万7千人に対して、全国平均は?』『持ち合せはないと言うが、請願文書では出ている。提示願いたい。』『分娩施設数の推移も県資料にはあるが、川崎市は数値がでてこない。』と資料を請求し、ここから県保健医療計画との比較に入る。

周産期救急医療について肯定的な評価の後、地域の診療所と助産所の活用について、横浜市が基本計画のなかに盛り込んでいることを指摘、川崎市も次の基本計画に盛り込むことを提案する。鋭意取組との回答を得て、更に、緊急対策も要望する。
玉井、石田議員を中心とした質疑の結果、請願は全会一致で趣旨採択される。

12.新たな事業として設置
周産期医療ネットワーク「施策2」は、上記の趣旨採択を受けた回答とも言える。石田議員は改めて「施策2」を市の基本計画(地域保健医療計画)に入れることを要望する。それと共に、支援対策の具体的中味を聞く。

新たな研修、資材・機材との回答は予算措置が必要であることを意味する。更に玉井議員の質問に対して、具体的な活動に見合った補助金を支出すると説明した。これが23年度予算に設置された。「助産所嘱託医療機関への支援事業」である。請願が、趣旨採択を経て、新事業として成立したのだ!
請願が住民提案であることを示す貴重な例となった。

13. 医療全体の問題
本件は医療全体の中でマンパワー不足の問題として位置づけられる。医師、看護師、介護士などは更に大きな問題であろう。それはまた、施設の問題と関連し、ひいては川崎市の人口増加、地形的構造から派生する問題に波及する。その間の事情と、それへの対応の難しさを、玉井議員は次のよう例から表現する。

『川崎は一つの医療圏だった。北部は実態的には不足していたが、新しい病院をつくれなかった。…何年間の努力の結果、南部と北部に分割、その結果、北部の不足が明らかになった。…実態と計画がそごをきたすことは往々にして起こる。』

更に、局長の許認可、費用負担、要員育成が絡んだなかでの、状況理解と判断の難しさの回答を受けて、
『まさに政治的な課題です。…きちんと向き合うには基礎的なものが必要と痛感する…。何が地域の中で必要なのか…明確なメッセージを出してほしい。課題がどこにあるか…政治の世界では判っているつもり…けれども、実際に、今の状況でどの程度要求をすれば良いか…具体的な数値がつかみ切れない。』

そして、最後に『一つ一つの課題が大きくて、なおかつ総合的に推進しなければならない…このことで解決するという短絡的な話ではない。…すべての状況をどう整えていくのかということだと思います。』と結ぶ。

14.コメント
高度経済成長の時代は上へ伸びていく政策をとれば良かった。一転して縮小の時代は、一律切下げることで逃れた。しかし、何を伸ばし、何を抑えるのか、判断が必要な今の時代は、その選択と程度をすべてにおいて、見比べる必要がある。また、選択、程度それぞれに、お互いの意見が異なるのだ。

それだからこそ「政治・議会」が必要となるのだ。地方自治体議会の改革が必要な理由もそこにある。
子育て・福祉・医療に代表される住民に身近な政策の議論では、単純な増加、一律の削減は通用しないだろう。全体と部分を往復しながら、お互いの認識を深め、効果を勘案しながら、意見の統合へ向けて調整することになるだろう。行政機構は統計的事実と具体的事象を踏まえたデータの整理が必要、それをベースに議論に慣れることが先ずの課題ではないか。


「探検!地方自治体へ~川崎市政を中心に~第174号 2011/10/3」から転載
1.問題の所在
2.基本的なデータ
3.現状認識と新たな課題
4.「位置づけ」から問い直す!
5.嘱託医がやめて2ヵ月機能せず
6.議員と局長とのギリギリの議論
7.議員の発想、局長の発想
8.ベクトル合わせ
9.医療機関の現状認識
10.周産期医療ネットワーク施策
11.基本計画への遡及
12.新たな事業として設置
13. 医療全体の問題
14. コメント

      
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

自共伸長、民維衰退、25歳の無所属新人が大健闘!~川崎市議会議員選挙

2015-04-16 22:59:36 | 選挙
投票日の夜は2時まで寝られなかった。川崎市の全7区の開票のなかで、筆者の高津区(定員9、立候補15)と注目していた中原区(定員10、立候補16)の開票が遅れ気味で、特に中原区が決まったのは、1時を過ぎていたのだ。
 『統一地方選挙2015年・川崎市議会開票速報150413』

結果は以下である(下の括弧内は前回2011年の結果)。
議員総数60(定数 10人区1 9人区4 7人区2)のなかで、
 自民19 公明13 民主11 共産11 維新,ネット,川崎各1 無所属3
(自民17 公明13 民主13 共産10 みな6 無所属1)

前回はみんなの党が旋風を起こし、6名が当選。そのうち、今回は維新の党、無所属他に3名ずつが分かれたが、それぞれ当選1名、惨憺たる結果だ。特段の成果はもちろん無く、地域への浸透もそれほどでもないとすれば、支持票が限られるのはやむを得まい。それに投票率も各区共に、前回から5%程度落ち、40%ほどでであった。“みんな”の末路と言わざるを得ない。

自民の19議席は9人区各3で15名、7人区各2で4名、全員当選、それも1-3位の上位当選者が14位だ。公明の13名全員当選と合わせて、完全過半数(自公で正副議長)になる。これで2年半後に福田市長再選を阻止する候補者を立てるのか?あるいは取り込みを図るのか?問われる処だ。

共産党は得票数が全体で伸び、その結果、1名増加である。大勢に影響はないとはいえ、自己マンの世界ではある。民主は衰退が続く。議長経験者が落選し、後は労組依存と個人対応で組織政党のカケラ程度しか、残っていない。

その他の会派は全て1名で無所属3名と合わせても6名だ。
その中で光るのは、無所属の若き新人、重冨達也26歳(中原区定員10名)。

氏は「私に今できることは、議会改革を訴え、より多くの方に共感して頂くことです」と訴えて、堂々第5位で当選!組織の引継、親子の引継がある中で、真正の新人として、今後の選挙のあり方を鮮やかに提示、住民の支持を集めた。

具体的には、氏は川崎市で初めて、議会による市民への「議会報告会」開催を主張した。しかし、今回の自民党の伸長をみると、直ちに、議会報告会開催とはならない。当然、重冨新議員としては、市民への報告会を開催するだろうが、普通に開催したのでは、議会報告会ではなく、議員報告会になってしまう。

個人であっても良い、議会報告会を開催すべきであろう。議員が自らの発言を中心に報告するのは「議員報告会」である。一方、議会の内容を何らかにまとめ、“市政の課題・論点・争点”を明らかにするのが「議会報告会」である。先ず、主要会派の代表質問、委員会審議の主要案件をまとめる必要がある。駅頭などで行っている議員報告とは、全く異なるものになるはずだ。

これは、ある点で行政報告の側面を持つ。しかし、それを議会での議論から導くことは、行政の説明を鵜呑みにするのではなく、施策における問題点を知ることが必要であるからだ。ここに市民にとっての議会、その存在価値があるのだ。

議員は、議会と住民を繋ぐ役割を担う。
一方では、代表性を有し、住民の意思を把握して討論によって議会の意思を動かす。議会の意思は議員によって、住民に知らされ、住民もまた、討論の中から議員へ意思表示を行う。
 『ヘルメスとしての地方議員~票と利益の交換を超えて』

また、議会は決算から始まる。それは、後を向きで前へ歩く、ことに例えることができる。既に終わった仕事を検証することで次年度の予算に対して、何らかの形において、変更を加えることだ。
 『地方議会における決算・予算・実算~後向きで前へ歩く』

上記の視点から、改めて地方議会像及びそれを動かす地方議員像を再構築することが必要ではないだろうか。

      
コメント
この記事をはてなブックマークに追加