美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

サンジェルマン伯の不老長生の大法螺(吉岡修一郎)

2009年09月21日 | 瓶詰の古本

   サンジェルマン伯といふのは国籍がどこに属したかも決めにくい、えたいの知れない人物だが、大詐欺師の大法螺吹きとしては隠れもない大人物だつた。自分は年齢二千歳だと豪語して、世界中を煙にまいて歩いた。フレデリック大王もその煙にまかれた一人で、大王はいつも、人々に次のやうな逸話を語つたといふ。或る人がサンジェルマンに
『あなたは二千歳だといふことですが、それではキリストを御覧になつたでせうね。』
と聞くと、伯は
『えゝ、よく話しましたよ。大変やさしい男でした。しかし例の事件があつた時分から逢はなくなりましたよ。』
   まがほで、こんなことを言ふので、その人が、そばの従者に向つて、『あれは本当ですか。』ときくと、従者もさるもので、
『そりゃ本当かどうか私は存じません。私が伯に仕へるやうになつてから、まだたった三百年ですもの。』

(「科学逸話史」 吉岡修一郎)

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