碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

書評した本: スージー鈴木 『1984年の歌謡曲』ほか

2017年03月13日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

スージー鈴木 『1984年の歌謡曲』
イースト新書 980円

NHK朝ドラ『あまちゃん』の主人公・アキ(能年玲奈)の母親、天野春子。彼女が家出同然に上京したのは1984年のことだ。

東京で暮しながらアイドルを目指していた春子は、この年ヒットした松田聖子『ピンクのモーツァルト』、中森明菜『飾りじゃないのよ涙は』、そして小泉今日子『スターダスト・メモリー』などをどんな思いで聴いていたのだろう。

スージー鈴木『1984年の歌謡曲』は84年のヒット曲を発売順に聴き直した批評集だ。歌謡曲の歴史的流れというタテ軸と、リアルタイムの音楽状況というヨコ軸を踏まえ、一曲ずつと徹底的に向き合っていく。

薬師丸ひろ子『Woman“Wの悲劇"より』のサビのメロディを「名曲性の根源」と呼び、この年の「音楽シーンにおける金字塔」だとしている。

また『涙のリクエスト』から『ジュリアに傷心(ハートブレイク)』まで4曲を連打したチェッカーズの革新性を高く評価し、「1984年はチェッカーズの年だった」と言い切る。この独断の妙こそが本書の真価だ。融合していく歌謡曲とニューミュージック。少女性から大人性へと軸をずらしていくアイドルたち。それらの転回点が84年だったのだ。

では、現在の音楽業界はどうなっているのか。柴那典『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)で、かつての「ヒットの方程式」が成立しない背景を精緻に分析した上で、過去にはなかった音楽の可能性にまで言及している。キーワードは「歌の持つ力」だ。


池澤夏樹ほか『作家と楽しむ古典』
河出書房新社 1404円

現代作家による新訳が並ぶ池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』。本書では、『古事記』の池澤をはじめ、『日本霊異記』『発心集』の伊藤比呂美、『竹取物語』の森見登美彦などが自身の取り組みを語った。講義形式ならではの質疑応答も古典との距離を縮めている。


内田 樹 『街場の共同体論』
潮新書 890円

ベースは14年に出版された単行本だ。しかし、ほぼ「書き下ろし」と言えるほど手が入った。グローバル化の名のもとに、家庭や学校にも“ビジネスの論理”が蔓延した日本社会。これからの家族、教育、コミュニケーション、そして共同体をどう捉えていくべきか。

(週刊新潮 2017年3月9日号)

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