碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 髙橋 透 『文系人間のための「AI」論』ほか

2017年05月16日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

AIはいかに人間を超えるのか
髙橋 透 『文系人間のための「AI」論』

小学館新書 864円

根っからの文系人間のせいか、「文系のための」といったタイトルに弱い。髙橋透『文系人間のための「AI」論』のテーマはまさにAI(人工知能)だが、数学的解説も技術的説明も出てこないのが特色だ。 

そもそも著者の専門は西洋哲学である。ニーチェやデリダの研究者がなぜAIなのか。ロボットやAIなどのテクノロジーが人間の感情や思考を模倣しはじめた時代。「人間とは何か?」を考える貴重な手掛かりがそこにあると言うのだ。

これまで「人間に近づいてきた」AIだが、いまや「人間を超える」ことの不安も出てきた。どこまでコントロールできるかという暴走のリスクだ。これからのAIは自動的に自分自身のプログラムを改良するようになる。「あるレベルでは人間の想定を裏切り、人間の引いた線引きの枠を内側から打ち壊して、AIは勝手に一人歩きをはじめる」可能性が高い。

さらに著者は怖いことを言う。人間はやがてAIと融合、つまり「人間のサイボーグ化」が進むと。漫画『サイボーグ009』や『攻殻機動隊』の世界だ。それは「ポスト・ヒューマン」と呼ばれ、人間そのものの変容でもある。今後テクノロジー開発をどこまで許すのか。いや、止められるのかが大きな課題だ。

現在、日本をはじめ世界各地で行われているAI開発の最前線については、将棋の羽生善治とNHKスペシャル取材班による報告『人工知能の核心』(NHK出版新書)が参考になる。


ジョン・ル・カレ:著、加賀山卓朗:訳 
『地下道の鳩~ジョン・ル・カレ回想録』

早川書房 2700円

著者は『寒い国から帰ってきたスパイ』などで知られるスパイ小説の巨匠。英国の諜報機関での体験から作家としての交友までが小説同様、静かな臨場感に満ちた文章で明かされる。パレスチナのアラファト議長やロシアのサハロフ博士との会談もスリリングだ。


浜村淳・戸田学 
『浜村淳の浜村映画史~名優・名画・名監督』

青土社 2376円

ラジオのパーソナリティであり、映画評論家でもある浜村淳。また落語、演芸、映画に関する博覧強記の作家・戸田学。2人が映画について徹底的に語り合った。エノケン、チャップリンから黒澤明まで、映画を本編以上に面白く語ってしまう“浜村節”が炸裂する。


(週刊新潮 2017.05.18号)
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