碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

毎日新聞で、「食ドラマ」について解説

2017年06月18日 | メディアでのコメント・論評



「食ドラマ」花盛り
「孤独のグルメ」「宮沢賢治の食卓・・
多様な内容、手の届く幸せの肯定

食べ物を題材にした「食ドラマ」が花盛りだ。4月スタートのドラマでは、このジャンルを確立したとされるテレビ東京系「孤独のグルメ」のシーズン6(金曜深夜0時12分)や、女性の1人酒を描いたBSジャパンの「ワカコ酒」のシーズン3(同午後11時半)が放送中。今月17日にはWOWOWの「宮沢賢治の食卓」(土曜午後10時)がスタートするなど、各局が競い合い、内容が多様化している。その人気の秘密を探った。【犬飼直幸】

「孤独のグルメ」は、松重豊演じる中年の輸入雑貨商の井之頭五郎が、仕事先でふらっと店に入り、好きな物を食べる様子をひたすら映す番組。2012年1月に第1弾が始まるとファンが増え、シリーズ化した。

「ドラマ」といっても、五郎の過去や深い人間関係は、ほとんど出てこない。番組の企画から関わってきた吉見健士プロデューサー(共同テレビ)は「そういったドラマ性は削った。ストーリーを追う必要がなく、視聴者は入りやすい」と語る。

「ある種のドキュメンタリー」というように、五郎が実在する店に入って注文し、思うがまま食べ、つかの間の自由を感じて帰って行くのが定番パターン。その間のセリフは、五郎の頭の中のモノローグ(独白)が大半で、視聴者を飽きさせない松重の食べっぷりと存在感に加え、焼き肉を食べながら「俺はまるで人間火力発電所だ」と優越感に浸るといった名セリフも魅力だ。「1人めしを描きたかった。僕も昼ご飯は1人が気楽。そこで人って会社などから離れて自由になれるんだと、視聴者に感じてもらえているのではないか」

最近の食ドラマブームの先駆けは、09年10月放送の「深夜食堂」(TBS系)と言われる。東京・新宿でマスター(小林薫)が深夜に営む居酒屋を舞台に、「ワケ有り」の客たちの思いが、料理の一品を通じて描かれる人情ドラマで、吉見プロデューサーもリスペクトしている。

食ドラマは「深夜食堂」以降、「孤独のグルメ」のほか、若い女性1人を主人公にしたり、刑事やヤクザ、武士を登場させたり、文豪の食事情をテーマにしたりと、さまざまに枝分かれしてきた。放送は深夜枠が多く、仕事で疲れて帰宅した後、気楽に見られる番組を求める視聴者にぴったりだったといえる。「深夜食堂」「孤独のグルメ」など漫画原作のドラマ化が多いのも特徴で、「食漫画」の繁栄と並行して発展してきた。

「宮沢賢治の食卓」も漫画が原作だが、「孤独のグルメ」とは対照的にドラマ性重視だ。宮沢賢治(鈴木亮平)の知られざる青年時代に焦点を当て、コロッケや焼きリンゴ、鶏南蛮そばなど賢治の好物を通じて、最愛の妹トシ(石橋杏奈)や恋人、教師を務めた農学校の生徒らと「幸(さいわい)」を分かち合う姿を描く。

武田吉孝チーフプロデューサーは「『食』は人間にとって不可欠であるとともに、一番ささやかに幸せを味わえる行為。だからこそいろんな食ドラマが存在してきた。その中で、賢治が提供する料理を媒介としながら、どのように隣人を愛し、悩んだかを伝えたい」と話す。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、「孤独のグルメ」などを例に、最近の食ドラマは主役が1人であることが多いことを指摘。「かつては『1人めし』などにはマイナスイメージが強かったが、未婚や晩婚が増えたりして個の自由を大切にする考えが広まり、共感を呼ぶようになった」と分析する。その上で「出てくるのは、高級店や高級食材ではなく、普通の食堂や食材ばかり。デフレが長引く中で、1人でも手が届く幸せを肯定してくれた」と強調する。
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 ■今年の主な「食ドラマ」

<1月開始>
「ホクサイと飯さえあれば」 TBS系
<3月開始>
「野武士のグルメ」     ネットフリックス
<4月開始>
「孤独のグルメ」シーズン6 テレビ東京系
「ワカコ酒」 シーズン3  BSジャパン
<6月開始>
「幕末グルメ ブシメシ!」 NHK総合
「宮沢賢治の食卓」     WOWOW
「孤食ロボット」      日本テレビ系
<7月開始>
「居酒屋ふじ」       テレビ東京系
「さぼリーマン甘太朗」   テレビ東京系

(毎日新聞夕刊 2017.06.16)
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