碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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映画と現実がリンクした、松方弘樹主演『北陸代理戦争』

2017年05月03日 | 本・新聞・雑誌・活字



俳優の松方弘樹さんが亡くなったのは、今年の1月21日。気がつけば、3ヶ月以上がたちます。伊藤彰彦『映画の奈落~北陸代理戦争事件』(国書刊行会)を読み返すには、いい時期かもしれません。

1977年2月、深作欣二監督作品『北陸代理戦争』が公開されました。松方弘樹さんが実在の組長をモデルにした主人公を演じた、東映実録やくざ映画です。

実はその公開から2ヶ月後、映画の中で殺人事件が起きるのと同じ喫茶店で、なんと本当に組長が射殺されるという事件が起きました。いわゆる「三国事件」です。

なぜ、映画と現実がリンクするような事態が発生したのか。フィクションであるはずの映画は、進行中のやくざの抗争に、どのような影響を与えたのか。著者は丹念な取材と作品分析によって真相に迫っていきます。

本書から見えてくるのは、巨大な山口組に挑もうとした北陸の組長・川内弘の生き方であり、新たなやくざ映画の地平を切り開こうとした脚本家・高田宏治の執念です。

その時々のスキャンダルや事件をライブ感覚でつかみ、映画に取り込んできた東映。この『映画の奈落~北陸代理戦争事件』は、その東映を舞台とする”影の映画史”でもあります。

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