小父さんの呟きと無駄ばなし等など・・・。
閑話ノート
「ローマ人の物語」を読む。
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新潮社刊、塩野七生著、「ローマ人の物語」第14巻が昨年末出版された。
毎年一冊づつ書き下ろされ、今年末刊行予定の第15巻をもって完結する。
古代ローマ史が好きで、この書籍も初刊から購読している。第1巻は「ローマは一日にして成らず」で、この初版本を購入したのが50歳の年であった。
早いものであれから14年が経ってしまった。毎年一冊づつの発行なので完結編まで生き長らえるかと思ったが、事故死でもない限り最終本も読むことができそうである。

本シリーズ中、いままで記憶に残る巻は、第2巻の「ハンニバル戦記」、第4巻、5巻の「ユリウス・カエサル」、第6巻「パクス・ロマーノ」、第9巻「賢帝の世紀」などである。
「ハンニバル戦記」は、第二次ポエニ戦争“カンネーの戦い”と“ザマの会戦”が圧巻であった。
「ユリウス・カエサル」は“ルビコン以前”と“ルビコン以後”の2巻に分かれ、シリーズ中、最もページ数が多い。ガリア遠征、「賽は投げられた」と云って、ルビコン川を渡るシーン。そしてあの有名な「ブルータス、お前もか」の暗殺された前後のシーン等など、読みどころ満載である。すっかりこの英雄のファンになってしまった。

(著者の塩野七生さんもカエサルのファンとのこと)
第6巻も面白い。オクタウィアヌスが“アクティウムの海戦”でアントニウスとクレオパトラの連合軍を破るシーン。オクタウィアヌスはやがてローマ帝政を敷き、初代皇帝アウグストゥスとなる。
すべての巻にわたって、実に読み易く、そしてまた退屈しない。あたかも読者が古代ローマのその時どきの主人公になったような気分、錯覚をおこす読み物である。

余談であるが第6巻のアウグストゥス帝の時代からは、エドワード・ギボン著の「ローマ帝国衰亡史」を平行して読めば、古代ローマ史がより理解でき歴史そのものが楽しいものになると思う。全巻はとても購入できないので、現在はPHP研究所から中倉玄喜編訳が刊行されている。
ご覧のとおり本書は単行本である。これからあらたに第1巻から揃えたい方は、廉価版の文庫本も発売されている。ただし老人(失礼)は単行本の方が遥かに読み易い。
さて肝心の本書であるが、時代はコンスタンティヌス大帝がペルシア戦役に向う途中、死去する西暦337年から、テオドシウス帝がミラノで病死する395年までの約60年間の物語である。テオドシウス帝の死によりローマは東西に分割(事実上の分裂)される。
物語はキリスト教を公認した大帝コンスタンティヌスの死後、その親族の血なまぐさい粛清の嵐から始まる。生き残った大帝の甥ユリアヌス*は、多神教の価値観に基づく寛容の精神と伝統の復活を目指した**が、その治世は短命(2年)に終わり、キリスト教が遂にローマ帝国の国教の座を占める。
故にタイトルは「キリストの勝利」となっている。
*“背教者”(キリスト教徒から見るとそうなる)と云われる。
**キリスト教徒追放令を発する。
後半の一部には、北方の蛮族フン族の移動がひきおこした連鎖反応で、西ゴート族がローマ領内に侵入。西洋史上有名な“ゲルマン民族の大移動”のくだりが挿入されている。
この激動の時代を塩野七生流の視点で赤裸に綴る一大スペクタルである。

PS:カバー表紙は聖アンブロシウスを描いたモザイク肖像で、死後間もない時期に制作されたといわれる。(ミラノ市サンタンブロージョ教会所蔵)
ミラノ司教アンブロシウス西暦397年没、享年58歳。
尚、筆者はキリスト教信者ではありません。
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E・ギボン「ローマ帝国衰亡記」を注釈込みで読むと、塩野氏の文章もかなり粗があるな、という印象です。
彼女は歴史上の人物や国家に対する愛情故の贔屓が強いように思います。そこは割り引く必要があるでしょうね。
さすが鋭いご指摘、仰るとおりだと思います。
本文にも「一大スペクタル」と書きましたが、塩野七生流、歴史小説として楽しく読むことがこの本の特徴でしょうね。
勿論彼女も歴史上の参考文献を良く精査し、現地視察も徹底的に行い、その上に彼女独特の切り口と思い入れを綴っている“塩野文学”と云えるのではないでしょうか。
五賢帝時代、哲人皇帝マルクス・アウレリウスの「自省録」をまだ読んでいません。良い翻訳の読みやすい推奨できる書物をご存知でしたらご紹介頂ければ有難いのですが。。。
それでは。