2月14日日曜日のさらに続き。
最後の質疑応答が終わりました。
フランスにおけるふたつの映画祭への公式参加は、これですべて終了してしまいました。
廊下に出ると見知った顔があります。シネ・ジュニアで僕たちを車に乗せて運んでくれたルカさんです。
明日以降、フランス語字幕入り『マイマイ新子と千年の魔法』プリントはイマージュ・パル・イマージュから再びシネ・ジュニアに引き継がれ、まだまだ16日まで上映が続きます。ルーカスさんはそのプリントを受け取りに来ていたのでした。久しぶりだね、と、握手。プリントを頼んだよ。
プリントはまた、ルカさんの小さな車で、次の上映場所に向けて運ばれてゆきました。シネ・ジュニア映画祭は20か所の映画館を結んで開催されています。そのうち、17か所で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されるのです。
劇場を出ようとして、「『アリーテ姫』上映、『マイマイ・ミラクル』上映、カタブチスナオ監督の舞台挨拶と質疑応答」と書かれた紙が、イマジュ・パル・イマージュのポスターの上に貼られたままになっているのに気づきました。
イーブさんの袖を引いて、「これ、欲しいんだけど」と日本語でいうと、丁寧にはがしてくれました。言葉は通じなくても、気持ちはいくらでも通じるもんです。
イーブさんの車でパリに向かい、ラギオニのシナリオライターであるアニク・ル=レイさんお勧めのレストランで、アニクさんもまじえて最後の晩餐となりました。これでエスカルゴも食べられたし、牡蠣や冷たい貝も食べられました。要するにメインディッシュなしの前菜二皿注文だったのですが、午後11時を過ぎてそれ以上のものを食べる元気はもはやありません。
そういえば、今日はバレンタインデーなんだったっけ。一個だけ持っていたウイスキー・ボンボンをアニクさんにプレゼントしました。アニクさんは貴伊子みたいに上品な食べ方をされました。
イーブさんには、今日の上映を見に来てくれていたという彼の娘さんたちのために缶バッジを。チャーリーズ・エンジェルズの三人娘にもくれないか、というのでその分も。
「でも、なんだかもうおねむみたいなのね」
「たぶんジェットラグのせいなんでしょうな」
「ぐっすりお休みなさいね」
「そのほうがいい」
何日ぶりかでパリのソルボンヌの隣のホテルへ戻ると、すでに午前1時です。
イーブさんは車のトランクからスーツケースを降ろしてくれ、さらにトランクの奥を探っていろいろと取り出し始めました。ワイン、もう一本少し甘めのお酒、それからこっちはヒコーキ好きのあなたのために飛行機の本。
あ。泣かせようとしてるな、こいつ。
「サンクス・フォー・ユア・カインドネス」
「何いってんです。あなたは美しい映画たちを携えてやって来てくださった。映画にまつわる素敵なお話をいくつもされた。そのおかげで、あんなにたくさんのフランスの子どもたち、大人たちが心になにかを確かに宿すことができた。そうしたことに携われたことを誇りに思っているんです」
マイクを握ったら話さない、携帯電話で話はじめたら終わらない、だけど普段は決して口数の多くない彼が、いつになく穏やかな口調でまっすぐにこちらの目を見て、ゆっくりした英語で、熊さんみたいな声で話しかけてくれる。
何回にも及んだ舞台挨拶や質疑応答を通じて、『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』の置かれた状況を今ではよく知っている彼の言葉だからこそ、胸に沁みます。
ああ、だめだ。本気で泣かせようとしてやがる。
ということで、パリでも熊みたいなおっさんと抱き合う羽目に。
最後の質疑応答が終わりました。
フランスにおけるふたつの映画祭への公式参加は、これですべて終了してしまいました。
廊下に出ると見知った顔があります。シネ・ジュニアで僕たちを車に乗せて運んでくれたルカさんです。
明日以降、フランス語字幕入り『マイマイ新子と千年の魔法』プリントはイマージュ・パル・イマージュから再びシネ・ジュニアに引き継がれ、まだまだ16日まで上映が続きます。ルーカスさんはそのプリントを受け取りに来ていたのでした。久しぶりだね、と、握手。プリントを頼んだよ。
プリントはまた、ルカさんの小さな車で、次の上映場所に向けて運ばれてゆきました。シネ・ジュニア映画祭は20か所の映画館を結んで開催されています。そのうち、17か所で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されるのです。
劇場を出ようとして、「『アリーテ姫』上映、『マイマイ・ミラクル』上映、カタブチスナオ監督の舞台挨拶と質疑応答」と書かれた紙が、イマジュ・パル・イマージュのポスターの上に貼られたままになっているのに気づきました。
イーブさんの袖を引いて、「これ、欲しいんだけど」と日本語でいうと、丁寧にはがしてくれました。言葉は通じなくても、気持ちはいくらでも通じるもんです。
イーブさんの車でパリに向かい、ラギオニのシナリオライターであるアニク・ル=レイさんお勧めのレストランで、アニクさんもまじえて最後の晩餐となりました。これでエスカルゴも食べられたし、牡蠣や冷たい貝も食べられました。要するにメインディッシュなしの前菜二皿注文だったのですが、午後11時を過ぎてそれ以上のものを食べる元気はもはやありません。
そういえば、今日はバレンタインデーなんだったっけ。一個だけ持っていたウイスキー・ボンボンをアニクさんにプレゼントしました。アニクさんは貴伊子みたいに上品な食べ方をされました。
イーブさんには、今日の上映を見に来てくれていたという彼の娘さんたちのために缶バッジを。チャーリーズ・エンジェルズの三人娘にもくれないか、というのでその分も。
「でも、なんだかもうおねむみたいなのね」
「たぶんジェットラグのせいなんでしょうな」
「ぐっすりお休みなさいね」
「そのほうがいい」
何日ぶりかでパリのソルボンヌの隣のホテルへ戻ると、すでに午前1時です。
イーブさんは車のトランクからスーツケースを降ろしてくれ、さらにトランクの奥を探っていろいろと取り出し始めました。ワイン、もう一本少し甘めのお酒、それからこっちはヒコーキ好きのあなたのために飛行機の本。
あ。泣かせようとしてるな、こいつ。
「サンクス・フォー・ユア・カインドネス」
「何いってんです。あなたは美しい映画たちを携えてやって来てくださった。映画にまつわる素敵なお話をいくつもされた。そのおかげで、あんなにたくさんのフランスの子どもたち、大人たちが心になにかを確かに宿すことができた。そうしたことに携われたことを誇りに思っているんです」
マイクを握ったら話さない、携帯電話で話はじめたら終わらない、だけど普段は決して口数の多くない彼が、いつになく穏やかな口調でまっすぐにこちらの目を見て、ゆっくりした英語で、熊さんみたいな声で話しかけてくれる。
何回にも及んだ舞台挨拶や質疑応答を通じて、『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』の置かれた状況を今ではよく知っている彼の言葉だからこそ、胸に沁みます。
ああ、だめだ。本気で泣かせようとしてやがる。
ということで、パリでも熊みたいなおっさんと抱き合う羽目に。