Reflections

時のかけらたち

桜桃の味とトスカーナの贋作 ・・・  Abbas Kiarostami

2024-03-30 23:55:44 | movie

やっと、今月分のサブスクで借りたキアロスタミ監督の『桜桃の味』と『トスカーナの贋作』を二日続けて見る時間が取れました。
いつも月の後半になってやっと2作見れる次第。月4作品は見れるのですが、見れなかった分はいつも翌月までは繰り越せるので
たまってしまって流してしまったり・・・そろそろストップしないといけませんが、見たい映画を見てしまってからに・・

 映画.com より



キアロスタミ監督はヴィクトル・エリセ、エルマンノ・オルミ、テオ・アンゲロプロス、タルコフスキーなどと同じように
若いころから注目の映画監督でしたが、映画を見たことがなくて、やっと借りてきたDVDで見ることができました。
「友だちのうちはどこ」に続いて・・・

桜桃の味

 

 

Taste of Cherry (1997) | best part | Abbas Kiarostami

 

 

Trailer for "Taste of Cherry"

 

 

Taste of Cherry - 1997 Trailer

 

桜桃の味
Taste of Cherry
1997年製作/99分/イラン・フランス合作

監督・脚本・製作・編集:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
録音:ジャハンギール・ミルシェカリ、モハマッド・レザ・デルパック
助監督:ハッサン・イェキタ、バフマン・キアロスタミ
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ、アリ・モラディ、ホセイン・ヌーリ


この映画も説明が少なく、また謎解きのように映画は始まります。人材を探しているようなのだけど・・どんな立場の人なの
だろうとミステリアスです。一人一人車に乗せて、仕事の内容を説明しているうちに、なんと自分の自殺幇助をする人を探していた
ことがわかります。乗せた人は兵士だったり、神学生だったり、自然博物館で働く人だったりします。人種もアフガン人だったり
クルド人、トルコ人だったりして、中央アジアと中東がとても近く、交流があることがよくわかります。

乗せた人は心は使わずに手だけ使ってくれればいいと言われても殺人の手助けなどできるような人ではなく逃げ出してしまいます。
最後の自然博物館で働く老人は助けるのだったら正しく助けたいと自分の経験を少しずつ話し出します。



そのパゲリという老人のぼそぼそと話し出す話と車が走る景色が黄金色に変わっていくところなど、映像も素晴らしかったです。
どんな悩みにも解決法は必ずあると、老人も若い頃に自殺を図ろうとしたときのことを語り始めます。首を吊ろうとした桑の木の実が
おいしくて、死をどこかに置いてきてしまったと。太陽と緑の美しさと・・・ 桑の実が命を救ってくれた・・自分が変わり、生きる
限り悩みはあると悟った。見方を変えれば世界は変わると・・

感動的は老人の言葉・・
希望はないのか?
朝起きた時、空を見たことはないのかね?
夜明けの太陽を見たいと思わないかね?
赤と黄に染まった夕焼け空をもう一度見たいと思わないか?

車は黄金色に染まった美しい景色の中を走り抜けて行きます。

さらに続ける老人
月はどうか?
星空を見たくないのか?
夜空にぽっかり浮かんだ満月を見たくない?
目を閉じてしまうのか?
あの世から見に来たいほど、美しい世界なのに
あんたはあの世に行きたいのか?
もう一度泉の水を飲みたくないのかね?
泉の水で顔を洗いたくないのかね?

自然にある四季と果物
どんなに子供を愛する母親も神にはかなわない
それほど神は人を慈しんでいる
すべてをあきらめてしまうのか?
桜桃の味をわすれてしまうのか?

かすかな希望が生まれてきたことが、主人公の眺める青空に伸びて行く飛行機雲や子供たちが走っている風景が
彼の心を投影しているように思えます。

ターナーの絵のように沈む太陽、黒猫が横切り、彼に生きる希望が湧き上がってくるのがわかります。






それでも自殺を決行しようと夜中に穴に向かう主人公。上を見上げれば月を時々隠しながら雲が流れ、
遠くに雷の音や雨の音・・

そして意表を突く全く違うシーンのラストで映画は終わります。けだるいSummer Timeの音楽と共に。

映画は結論を語りませんが、それぞれが思うような結論を描けばいいのです。私はもちろん再生を想いました。

 

アッバス・キアロスタミの映画『桜桃の味』(1997)を哲学的に考える

【桜桃の味】アッバス・キアロスタミ死去・・・そして僕の一番好きな映画

GINZA MAISON HERMÈS Le Studio 『桜桃の味』Taste of Cherry

 

 

トスカーナの贋作


トスカーナの贋作
Copie conforme
2010年製作/106分/フランス・イタリア合作

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ/マスメ・ラヒジ(脚色)
製作:マラン・カルミッツ シャルル・ジリベール アンジェロ・バルバガッロ
撮影:ルカ・ビガッツィ
編集:バフマン・キアロスタミ
出演:ジュリエット・ビノシュ(彼女)
   ウィリアム・シメル(ジェームズ)
   ジャン=クロード・カリエール(広場の男)
   アガット・ナタンソン(広場の女)
   ジャンナ・ジャンケッティ(カフェの主人)
   アドリアン・モア(息子)

 

映画『トスカーナの贋作』予告編

 

ジュリエット・ビノシュのために脚本を書いたというキアロスタミ。
これでカンヌ主演女優賞を取ったというのも納得です。

相手役のウィリアム・シメルはバリトンのオペラ歌手で映画出演は初めてとのことでしたが、なかなか大女優相手に
役どころとしてはぴったりでした。

ビノシュは感情を露わにして女性のいやな面もかなり出していましたが、子供に対する苛立ちとかすごくよくわかります。
ロール・ゲームのように進む映画も面白かったです。たまたま出会った作家とギャラリー経営者が長年連れ添った夫婦の
ように感情をぶつけ合います。フェィクですが、ここのタイトルの贋作とほんものがからんでくるのでしょう・・
ここに男と女のオリジナルがあるように・・・ 

そして芸術についてももちろん贋作・オリジナルの問題が語られ、奥が深い映画のようです。ほんものとは何か?と問いかけて
きます。「単純さは簡単ではない」というセリフも・・

この映画の結末も他のキアロミスタの映画のように想像にまかされます。As you likeのようです。考えさせられるものが
あちこちにちりばめられています。

ビノシュは「存在の絶えられない軽さ」以来好きな女優の1人ですが、ビデオについていたメイキングでのインタビューが
おもしろかったです。メイキングもイタリアのスタッフがキアロスタミと映画を作り上げていく様子がわかり面白かった。
映画を作るのは本当に大変だと思いました。今回の映像スタッフも素晴らしかったです。

ビノシュへのなぜ演じるのかという質問に対して、「魂の探究者として、演技を通して経験することに、生きる喜びを
感じるから」と話していました。確かメリル・ストリープも同じようなことを応えていたことを思い出します。

この映画の主人公とピノシュも違うところがあってなかなか理解に苦しんだところもあったとか・・ 例えば噴水の彫刻が
男性に後ろから寄りかかるところで、自分は前に出ていたいし寄りかかりたくないようなことを話していました。あの彫刻は
監督がわざわざ噴水と一緒に作ってセットしたとのことで、男性的な考えが出ていたのかな?

DVDを借りるとメイキングのことが時々見れて興味深いです。

ABBAS KIAROSTAMI INTERVIEW
「トスカーナの贋作」:ふとしたことから夫婦を演じる男女の虚実の交錯を、イタリアの小さな街を舞台にスリリングに描くヒューマンドラマ


追悼アッバス・キアロスタミ~偉大なイラン人映画作家が〈差異と反復の遊び〉から生産した〈新しいもの〉の行方を再考する

アッバス・キアロスタミ監督 ジグザグ道三部作 

 

日本で撮った遺作となった作品も見てみたくなりました。


March 26-28    2024

 

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Perfect Days , Koji Yakusho

2024-02-29 23:59:31 | movie

2月25日

 

12月18日のメモ

ベンダース監督もみんなスタッフもそうですけど、「この平山さんみたいな生き方、いいな、うらやましいな」って言うんですね。

 彼独特のゆったりした時間の流れと、自分の好きな仕事を一生懸命やって、お風呂に入ったり、ちょっとお酒を飲んだりして。
自分でその瞬間、瞬間をこう、満足して、最後は好きな本を読んで眠りにつく。とてもその満足することを知っている男で。

 だから本当に自分に与えられたものに満足できるっていうことは、どれだけ豊かな人生かっていうのが、みんながうらやましい
と思うとこなんじゃないでしょうかね。(トークセッションで)

昨年、役所広司さんのインタビューを見てから、ずっと見たかった映画「パーフェクト・デイズ」。
その時のメモを残していました。こういう生き方を見ていると私の友人と何か似ていると思ったからでした。今は仕事は
していなく、世の中との関係をすべて断ち切って、お酒は飲まなくなって物欲も全くないのですが、毎日好きな本を読み、
音楽を聴いたりして一人閉じこもって暮らしていますが、何か満ち足りていて。「幸福なラザロ」にも似ていると思いました。
「彼は何も欲しがらない」というところが。

やっとこの映画を見に行くことができました。雨が降る寒い午後。家の近くの小さな映画館で。

毎日同じことが繰り返えされる暮らしだけど、同じ日はないとゆっくりと話が滑り出します。

外国人が撮るとこんなにも東京が美しいのかと思いました。
東京の美しさ、スカイツリーの写真のカットがとても美しかった。

安藤忠雄が設計したトイレもあるのかななんて思いながら、東京のトイレ事情のすばらしさにもびっくり。

隈研吾、安藤忠雄らが生み出す、アート作品のような渋谷区の公共トイレ

主人公の淡々と繰り返される日々の中にもささやかな人々との接触があり、取り囲む人たちも少しずつ見えてきます。
彼が一番密に身近にあるのが自然です。

エンドロールのあと?にだったか浮かび上がる文字 こもれび

こもれびの揺らぎの下で毎日お弁当を食べながら、フィルムカメラに収めて行く・・・
小さな盆栽のように植物を育てる喜び。

木、自然、失われゆくもの

ヴェンダースの淡々とした語り口と私たちの世代がよく聞いた曲が流れて・・・

命の根源、夢、そしてはかなくつながって行く人々
人との関係の不思議さをふと思う映画でした。

最後のNew Lifeという曲が良かった。早朝の車の中を流れるカセットテープも。

生きることの悲しみとよろこびと
最後の役所広司の泣き笑いがこの映画のすべてかも。

ヴィム・ベンダースも小津のファンであるというのが感じられる映画でした。
でもこの映画は役所広司なしには成り立たないと思いました。

 

データ

解説
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、役所広司を主演に迎え、
東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は
常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり
人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかの
ように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同した
ベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか
田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を
豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞。また、第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた。

2023年製作/124分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年12月22日

スタッフ
監督・脚本 ビム・ベンダース 
脚本 高崎卓馬
製作 柳井康治
エグゼクティブプロデューサー 役所広司
撮影 フランツ・ラスティグ
美術 桑島十和子

キャスト
平山正木  役所広司

タカシ   柄本時生
アヤ   アオイヤマダ
ニコ   中野有紗
ケイコ   麻生祐未
ママ    石川さゆり
ホームレス 田中 泯
友山    三浦友和 
                映画.com より

 

 

ISETANの建物もどこかレトロ・・小学校の頃から変わらない・・
映画でも失われたレトロなもの・・ カセット・テープや、フィルムカメラ、ほうきでの掃除・・
等出ていました。

 

映画館の前からバスで帰宅。どこにも寄らない・・

家の近くでいい香りと思ったら、沈丁花の香りが・・

雨に濡れてきれいだった。

 

Feb.25  2024  Shinjuku

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The Whale

2024-02-03 10:31:38 | movie

 

イタリア映画続きの前に久々で見た英語の映画です。
アカデミー賞主演男優賞を取ったのにそれほど話題にならなかったような・・・ イタリア語の先生にこの映画よさそうよと
言われて昨年借りて見た映画です。

とても感動的な映画で最後近くのこの美しいセリフがこの映画のすべてです。

Charlie says this after asking a question, the question was do you ever believe people are incapable of not caring?
It’s an interesting question, which he poses because other people in his life see the world as a desolate, cold place,
and believe people generally to be bad at their center, selfish and uncaring.

Do you ever get the feeling people are incapable of not caring ?  People are amazing

 

The Whale | Official Trailer HD | A24

 

ザ・ホエール(原題 The Whale ) - 映画予告編

 

2022年製作/英語/117分/PG12/アメリカ/字幕翻訳:松浦美奈
原題:The Whale
原作:サム・D・ハンター
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演者:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン


 

ハーマン・メルヴィル『白鯨』もタイトルのように一つのキーです。アメリカ人は白鯨が好きですね。学生時代、亀井俊介先生の
白鯨の解説を聞いて、このハチャメチャな小説を読みたかったのですが、挑戦することはできませんでした。メルヴィルの短編は
好きでよく読みましたが。昔、「ソフィーの選択」を見てジャック・ロンドンの「荒野の呼び声」からの引用やシューマンの
「子供の情景」から”異国にて”を聞いて、ジャック・ロンドンの小説もアメリカ人の心なのかなと思ったことがありました。

まさに鯨のように大きくなった病の床にある主人公が最後に散々なことをしてきてしまった家族、娘に対して伝えたかったことを
伝えて天に昇っていく話です。失意の中で最後にみつけた希望です。生きていてよかったと思った幸せな最後でした。
人生で何か一つでもなしえたら、それは素晴らしいことで、昔曽野綾子さんのエッセイで人を許すことだって生きる意味があると
確執のあった父の最後を看取ったことを確か書かれていたかとかすかな記憶があります。

感動して泣いてしまうほどの映画ですが、それは悲しいからではありません。

 

Do you ever get the feeling people are incapable of not caring ?  People are amazing

考えたことはないか?
人は誰であれ、誰かを気にせずにはいられない。
人生は素晴らしい。

 

 

 

「TheWhale/ザ・ホェール」 切ないほど人間愛に満ちた悲しくて美しい映画

映画「ザ・ホェール」より メルヴィルの「白鯨」とのコラボが素晴らしい

 

 

コメント (2)
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3つの鍵 ・・・ Tre Piani

2024-02-02 23:07:36 | movie

ラザロに続いて見たのは「3つの鍵」。TSUTAYA DISCAS ではなかなか見たい映画がないのですが、Aさん推薦の
3つの鍵は比較的新しい映画なのですが、あってすぐ借りることができました。

ラザロに出ていたアルバ・ロルヴァケル、トマーゾ・ラーニョ、ダンテのアレッサンドロ・スペルドゥーティが
出ていました。だんだん今の俳優さんたちがわかってきました。

マルゲリータ・ブイは、ごく初期のイタリア映画祭で見た「もうひとつの世界」という魅力的な映画に出ていました。
あれから20年以上たって、岩波ホールで「はじまりの街」で再び出会った女優さんで、存在感がある素敵な人です。

 

映画『3つの鍵』予告編

 

2021年製作/119分/R15+/イタリア・フランス合作
原題:Tre piani

スタッフ

監督・脚本・製作 
ナンニ・モレッティ     
脚本  フェデリカ・ポントレモーリ ヴァリア・サンテッラ
原作  エシュコル・ネヴォ
撮影監督  ミケーレ・ダッタナージオ
美術  パオラ・ビザーリ
衣装  ヴァレンティーナ・タヴィアーニ
録音  アレッサンドロ・ザノン
編集  クレリオ・ベネヴェント
音楽  フランコ・ピエルサンティ
製作  ドメニコ・プロカッチ

キャスト

 

 

映画『3つの鍵』<2階に住むモニカ編>

 

まるでオムニバス映画のような同じところに住んでいても接点の少ない家族のそれぞれが抱える問題を長い年月を追ったもので、
いかにも現代の抱える問題、親子、夫婦、老い、性的虐待、孤独などを取り上げています。

 

 

“この映画は、家庭の壁の外に存在する外の世界へ、心を開くように誘っている”
──ナンニ・モレッティ

重苦しい映画だったけど、最後に問題を抱えていた息子が一人で何とか生きて行く道をみつけ、それを遠くから見守る
母も裁判官の夫に先立たれ、今までの生活をたたんで新しい世界へと旅立っていく、少し希望が見えるのが救いでした。
家庭が崩壊してゆっくり再生していく様子を描いた映画でした。

一番かわいそうだったのが、単身赴任の続く夫を持つアルバ・ロルヴァケルの演じるモニカ。不吉なカラスが現れて
心が病んでしまいそうな不安に陥っているが、姿を最後に消してしまう。これも新しい旅立ちと理解していいのだろうかと
思ってしまいます。

 

1階の夫婦は夫が犯してしまった罪により、家庭が崩壊したが、年月が経ち別居しながらも娘を囲んで家族の形態は保てている。
ここにもかすかな希望があります。

厳しい現実の中だけれど、なにかそこで突き落とさない愛がこの映画にはありました。

イタリア映画の幅の広さに、こういう映画もあるのだと感心してしまった私です。巨匠と呼ばれるナンニ・モレッティも知らなかった。
昔のイタリア映画しか知らなかったので、これから少しずつ見て行こうかと思っています。

本作の原作者である作家のエシュコル・ネヴォはこう語る。「この映画では、登場人物たちがお互いに傷つけ合い、癒やし合い、恨みを抱き
許し合うことができる。そしてわたしたちの幸福は、常に、他者の幸福と結びついていることを思い出させてくれる。そして私たちが生きて
いるこの痛ましい時代に照らし合わせると、それは忘れてはならない重要なことなのだ」。

東洋経済の3つの家族の選択の過ちが生む家庭の不和と再生より紹介させていただきました。

 

イタリアの巨匠ナンニ・モレッティ、最新作「3つの鍵」----同じ建物に暮らす3つの家族の物語

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幸福なラザロ ・・・ Lazzaro Felice

2024-02-01 23:59:07 | movie

イタリア映画が続いた昨年末。印象に強く残った、まったく違うタイプの作品二つの中からまずラザロを。

「幸福なラザロ」は借りてきたビデオの予告にあり、とても見たくなって借りたものです。
「その人は疑わない、怒らない、欲しがらない」このナレーションと美しいイタリアの村・・
オルミ監督を思い出させるドキュメンタリーのような映像に即借りました。

実際は寓話で終わり方などどう考えていいか、ちょっと戸惑ってしまう、もともとよみがえって
いるのですが、解釈に思いがさまよってしまいました。

 

映画『幸福なラザロ』予告篇(4.19公開)

 

 

 

■スタッフ
監督: アリーチェ・ロルヴァケル
脚本: アリーチェ・ロルバケル
撮影: エレーヌ・ルバール
美術: エミータ・フリガート
衣装: ロレダーナ・ブシェーミ
編集: ネリー・ケティエ
音楽: ピエロ・クリチッティ

■出演
Lazzaro: アドリアーノ・タルディオロ
Antonia bambina: アニェーゼ・グラツィアーニ
Antonia: アルバ・ロルヴァケル
Tancredi bambino: ルカ・チコヴァーニ
Tancredi adulto: トマーゾ・ラーニョ
Ultimo: セルジ・ロペス
Marchesa Alfonsina De Luna: ニコレッタ・ブラスキ
■製作
2018年/127分/イタリア

 

監督のアリーチェ・ロルヴァケルは若い女性ですが、このような複雑な迷路のようなストーリーと、
一般の人から選んだラザロ役を得て、素晴らしい映像を作り上げてすごいと思います。このタイプの映画は
私の昔から好きなイタリア映画のタイプです。 一緒に借りた「3つの鍵」はまた現代の都会で暮らす
人たちの問題を取り上げてまた別の切り口の映画でした。

ラザロと言えば新約聖書のエピソードが思い出されるように、よみがえりの話です。20年経って目を覚ましたラザロが
見た世界の変化。農奴の見た目には搾取されている生活から、現代のイタリア北部?での都会の底辺での同じように
時代に搾取された人々の貧困な暮らし。汚れて行く地球・・・ ラザロが聖人のように奇跡のように村人との再会で
都会の中に小さな自然を見出して、希望をもって団結して暮らしていく人々。唯一の友人のために銀行に乗り込み
殺されてしまう無垢な青年、ラザロ。

現代と、そして幸せとは何だろうと考えさせられる映画でした。イタリアとの結びつきの深い狼が何を表しているのか
そして要所に現れてラザロの魂を運んでいるのか・・・ 

いろいろレビューを見ていると、タルコフスキーのノスタルジアと比較している人がいました。タルコフスキーを感じ
させる映画でした。またタンクレディという名前ですぐ山猫のアラン・ドロンが演じた役を思い出した人も私の年代では
多いかなと思いました。

教会で拒絶されて、音楽が彼らについてきたシーンも美しかったです。
ラザロの魂はあの美しい山に帰って行ったのだろうかなどと考えている私です。

この映画はラザロ役のアドリアーノ・タルディオロを抜きでは考えられませんが、アルバ・ロルヴァケルという素晴らしい
女優さんにひかれました。なんと監督のお姉さんでした。

この次に見た映画「3つの鍵」でも一つのエピソードの主役です。タンクレディ役のトマーゾ・ラーニョも出ていました。
最近のイタリア映画はほとんど見ていなかったので、いろいろ発見があります。

 

幸福なラザロ(アリーチェ・ロルヴァケル2018)で使われた曲
 ベッリーニ:『清らかな女神よ』 食卓の上のオルゴール
 バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻第8番前奏曲とフーガ BWV853変ホ短調 タンクレディの携帯オーディオ  
 ヴェルディ:『乾杯の歌』 ケーキ屋のBGM  
 Karol Mossakowski:『Organo per Lazzaro』(映画オリジナル) 教会から聞こえるオルガン  
 バッハ:『われを憐れみたまえ、おお主なる神よ』(Erbarm dich mein, o Herre Gott) BWV 721 ラストシーン

音楽も素晴らしく、イタリア映画でもよくつかわれるバッハですよね。Casta Diva のメロディーもよかったです。
やっぱり、ラザロは天から使わされたのかしらと思ってしまいます。

参考)
映画の引用における転移と忘却
幸福なラザロ 映画レヴュー



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La vita è bella ・・・ Life Is Beautiful

2024-01-26 23:59:07 | movie

昨年末からイタリア映画が続いていてイタリア誕生を描いた「グレイテスト・キング」、「ダンテ」や「幸福なラザロ」
「3つの鍵」など見て、イタリア映画の層の厚さを感じ、早くメモを書かなくてはと思っていたのですが、なかなか
時間が取れずにまた直近からスタートです。

お正月に見ようと思って借りていたイタリア語の友人のおすすめです。

ライフ・イズ・ビューティフル

 

 

イタリアの俳優ロベルト・ベニーニが監督・脚本・主演を務め、強制収容所に送られたユダヤ人の父親が幼い息子を
守るため意外な行動に出る姿を描いた感動作。1937年、トスカーナ地方の小さな町へやって来たユダヤ系イタリア人の
陽気な男性グイドは、美しい小学校教師ドーラと運命的な出会いを果たす。いつも陽気で機転のきくグイドにドーラも
心を奪われ、やがて2人は結婚。息子ジョズエも生まれ家族は幸せな日々を送るが、彼らが暮らす町にもユダヤ人迫害の
魔の手が迫り、3人は強制収容所に連行されてしまう。グイドは幼いジョズエに悲惨な現実を悟られないよう、ひたすら
陽気に振る舞いながら嘘をつき続けるが……。第71回アカデミー賞で主演男優賞、外国語映画賞、作曲賞、第51回カンヌ
国際映画祭でグランプリを受賞した。

1997年製作/117分/G/イタリア
原題:La vita e bella

  • グイド ロベルト・ベニーニ

  • ドーラ ニコレッタ・ブラスキ

  • ジョズエ ジョルジオ・カンタリーニ

  • ジュスティーノ・デュラーノ

  • セルジオ・ブストリック

  • マリサ・パレデス

  • 医師 ホルスト・ブッフホルツ

  • ピエトロ・デ・シルバ

映画.com より

Life Is Beautiful | Official Trailer (HD) - Roberto Benigni, Nicoletta Braschi | MIRAMAX

 

人間が人間に対して犯す罪を改めて感じます。人が人に対して絶対にしてはいけないこと。今世界で起きていること、そして何十年も前に
起きたおぞましい出来事・・・

最初はコメディタッチも楽しく、イタリア語も聞きやすく見ていましたが、中盤から笑っている場面でも泣きそうになり
ラストでは泣きました。ファンタジーですが、現実がしっかりと組み込まれています。希望を失わせない、生き延びてほしいが
ために父親が貫いた嘘。人生という素晴らしいプレゼントをもらった子供。昔この映画のタイトル「ライフ・イズ・ビューティフル」
を見た時にイタリア語のタイトルだとよかったのだけどなんだかありふれているように思ってしまったのは大きな誤解でした。

主演で監督のベニーニはこれはLove Storyであると語っていました。なんという大きな愛でしょう。

子育て時代に見れなかった映画。その中には素晴らしいものがたくさんあることを知ったこの頃です。

 

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最近見た映画リスト ・・・list of movies I have seen in about a year

2024-01-05 23:59:58 | movie

 Goebel From the heart

 

昨年末のブログで、今まで見た映画の中でまだ記録がないものを書いておこうと思ったのですが、
結局時間がありませんでした。できるだけ早く書かなくてはとリストにしてこれから少しずつ書いて行こうかと
思いました。

TSUTAYA DISCASで月4本のサブスクですが、こなすのは大変。最初はコロナで映画が見れず、見逃したケネス・ブラナーの
「シェイクスピアの庭」を借りたのが始まりで、すぐやめようかと思ったのですが、次々見たい映画が現れてなかなか
やめられないのが現状です。仕事や子育て、看病などで映画を見れない時代も長かったので古い映画も今頃見ています。
レンタルに加えて、時々TVから録画しておいたものたまっていて・・・ 借りたビデオの予告編や、映画館で予告で見た
映画、昔見たかった映画、友だちのおすすめ映画など見たいものがどんどん広がって来てはいますが、見る時間もなかなか
作れない状態です。

どんな映画を見て行ったかと見てみると、俳優・監督ではケイト・ブランシェット、コリン・ファース、ダニエル・ディ
ルイス、イザベル・アジャーニ、是枝、黒澤、キアロスタミ、音楽関連でグールド、アンデルシェフスキ、マリア・カラス。
マリア・カラスはドキュメンタリの「私はマリア・カラス」を見てから続けて2本見ました。今頃知った彼女の人生にひき
こまれました。イタリア映画祭に始まり、イタリア映画もよく見た昨年でした。昔からイタリア映画は好きでしたが
さすが映画の国、その層の厚さに驚きます。

2022年 11月 キャロル、ヴァイオレット・エバー・ガーデン、ハンナ・アーレント*、山猫*
    12月 英国王のスピーチ*、アート・オブ・グールド*、Carmen、Coda*
2023年   1月 サクリファイス*、ブルー・ジャスミン、Bobという名の猫
      2月   マジック・イン・ムーンライト、レイルウェイ、ベイビー・ブローカー、シングルマン
       バベットの晩餐会*、アンデルシェフスキのディアベッリ変奏曲*
      3月  未来よこんにちは*、間奏曲はパリで*、ショーシャンクの空に*、バグダッド・カフェ*
      4月  蜜蜂と遠雷*、生きる*、今を生きる、丘の上の本屋さん*、シェルタリング・スカイ
      5月  私はマリア・カラス*、ミセス・ハリスパリへ行く、あなたのもとに走る*(イタリア映画祭)、マリア
        カラスの真実、帰れない山*、夢*
      6月  ミラノ・スカラ座魅惑の神殿、永遠のマリア・カラス、レ・ミゼラブル
      7月  ファントム・スレッド*、マイ・レフト・フット
      8月  カミーユ・クローデル、アデル、突然炎のごとく、みつばちの大地*
      9月  TAR, There will be blood 、ザ・グレイテスト・キング*
    10月  グレート・ビューティ/追憶のローマ*、グリーン・ブック
    11月  Cold War, The Whale
    12月  幸福なラザロ、3つの鍵、ダンテ*、友だちの家はどこ*

      * はすでにアップ済みです。

今一番見たいのは役所広司のPerfect daysです。

イタリア文化の紹介をしてくれるイタリア文化会館。映画や劇、音楽を提供してくれる
貴重な場所です。

 

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Where Is the Friend's House?  Abbas Kiarostami

2023-12-30 23:53:25 | movie

 

Where Is The Friend's House? Trailer | Khane-ye doust kodjast? | Abbas Kiarostami

 

友だちのうちはどこ?
1987年 イラン 85分
スタッフ
監督:アッバス・キアロスタミ
製作:アリ・レザ・ザリン
脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール

キャスト
ババク・アハマッドプール
アハマッド・アハマッドプール
ゴダバクシュ・デファイエ
イラン・オタリ

素晴らしいイタリア映画を「ラザロ」と「3つの鍵」を見終わってすぐ何かいい映画を見たくなって、半年以上前に
録画していたキアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」を「ダンテ」を見に行く前日の20日に家で見ました。

注目していた監督で「桜桃の味」を見に行きたいと思ったことがありましたが、そのままでした。
イランの映画監督のキアロスタミは小津の大ファンでした。そのことがうかがえるようななんでもない1日を
淡々と描いているのですが、少年のひたむきな思いが伝わって、ただ友人の家を探すだけなのにスリリングでもあり
飽きさせません。どんな大人たちがいたのか、繰り返して見たりして、ただあの男の子が抱きしめてあげたいくらい
かわいかったです。イランの社会が男子だけしか教育していないことが当たり前のように描かれていて、男の子でも
家の手伝いをしたり、働いていて勉強する時間もあまりありません。大人の言うことには絶対に従わなければいけない
イスラムの戒律の世界。そんな中でも少年を助ける扉職人だった老人の言葉にはひかれるところがありました。
今は長持ちする鉄のドアの時代に変わってきていると木のドアを作る老人は話す「一生ってそんなに長いものかな?」
時代は変わり人はなぜ町に行ってしまうかと時代の変化を嘆き、最後に少年のノートに押し花をはさむように渡す老人。
少年の気持ちに唯一寄り添う大人でした。何回も見たくなる不思議な映画でした。

 






私が若いころ大好きだったエルマンノ・オルミ、ヴィクトル・エリセ監督と同じタイプの監督だと思いました。自然で
ドキュメンタリーのような映画で、でも限りなく美しくピュア。

たまたまオルミ監督の映画に翌日見た「ダンテ」の主演男優が出ていたので、その映画の所を見ていたら
映画上映の頃のオルミ監督のメッセージをみつけました。「緑はよみがえる」は岩波ホールに見に行きました。
その時もこのメッセージを見ていたのですが、今この時代にますますそれを強く感じます。

そしてオルミ監督のメッセージ

オルミ監督は「真の平和は武器で勝ち取ることも守ることもできません」と警鐘を鳴らし、
「ひとりひとりが平和を希求することで平和な国はつくられる」と訴えている
。 映画は、第1次大戦下のイタリアで

オルミ監督の父親が経験した事実を基に製作され、戦地で命を落とした若者たちの痛みと悲しみを描いた。


エルマンノ・オルミ監督「緑はよみがえる」日本公開メッセージ

 

今日のニュースでもロシアのミサイル攻撃を報じていた。最近はTVはほとんど見ていないけれどパレスチナの民間人を巻き込む
戦争が激化して世界中そんなに武器を作りたいのと思ってしまいます。日本の政界もキックバックとか自分たちのことばかりで
オルミ監督のメッセージが再び心に響きます。

 

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Dante

2023-12-28 23:59:21 | movie

12月20日

茶の湯は混同しておりました。

13日と20日にあり、13日は続き薄で終わってから結構ギリギリな時間で六本木ストライプハウスのレース展に
行きました。膝が痛く正座ができなかったのでお点前は無理かと思ったらい、意外に大丈夫でお稽古することが
できました。

20日にはひざが治っているかと思ったら、まだ正座は痛かったので先生に前もって、見学だけでも大丈夫でしょうか
とお聞きして、見学するため早い時間に伺いました。筒茶碗のお点前で流し点というお茶を簡単に楽しむお点前でした。
しかしたっぷり時間がかかってしまい、飛んで家に帰り、夕飯を30分で作って、イタリア文化会館に映画「ダンテ」を
見に行きましたが、上映開始1分前くらいについて、席を取っていてくれたイタリア語の友達が手を振って教えてくれて
席に着いたらすぐ電気が消えました。

あらすじ

1350年、ジョヴァンニ・ボッカッチオはラヴェンナへと向かう。その目的はダンテ・アリギエーリの娘
ベアトリーチェに、彼の死と亡命に対する償いとして10枚のフィオリーノ金貨を渡すことであった。
旅路を通じて、ボッカッチオは人間ダンテの物語を再構成する。

監督:プーピ・アヴァーティ
脚本:プーピ・アヴァーティ、ジョヴァンニ・ボッカッチオ
出演:セルジョ・カステッリット、アレッサンドロ・スペルドゥーティ、カルロッタ・ガンバ
上映時間:94分
2022年 イタリア

上映前に、アントニオ・タイヤーニ副首相兼外務・国際協力大臣と、アヴァーティ監督からのビデオメッセージがありました。

とても印象に残った言葉はタイヤーニ副首相の文化こそ最大の外交であるという意味のことばでした。
国と国の関係はどうであれ、人と人を繋げるのが文化だと思います。

 

これは、ラヴェンナへ向かうボッカッチオの旅路を通じて、ダンテの人生を語る映画です。同い年、9歳の少女と恋に落ち、
彼女がダンテの愛の告白に応じる決心をするまでの9年間、彼女を追い続けた少年の人生。そこから、今なお私たちを感動
させるダンテの詩が生まれたのです。(アヴァーティ監督のビデオメッセージより抜粋)

ダンテ - 予告編|Dante - Trailer|第36回東京国際映画祭 36th Tokyo International Film Festival

 

 

 

 

ダンテのことは全く知らず、朗読劇「ダンテの声」を見てから興味を持ちました。
それでこのイタリア文化会館の催しはとてもいい機会でした。

ドキュメンタリーのようなこの映画でダンテの時代と背景を知ることができてとてもよかったです。
13世紀のイタリアはペストが流行していた時代で、フィレンツェの政争に巻き込まれて、フィレンツェを
追放され二度と戻ることはありませんでした。ボッカチオが同時代人でダンテを評価し、支持し広めた人
とは知りませんでした。単なる詩人と思っていたので戦争や政治にかかわっていた行動の人とは思っても
いませんでした。ダンテは「すべての星の本当の名前」を知っていたという修道女になった娘の言葉が
不思議な光を放っています。娘は最後まで父とラヴェンナで暮らし傍で見ていた人です。映画は一部ホラー
っぽい場面もありましたが、あの時代を描くことには大体成功していたように思えました。

映画の中でベアトリーチェをフランチェスカ・ダ・リミニと混同しそうになりました。
トニ・セルヴィッロによる朗読劇「ダンテの声」を見てから「神曲」を読んでみたくなりましたが、まだ入門書も
読んでいなくて、あの膨大な詩になかなか取り掛かれません。今の時代こそ「ダンテ」を読むべきと思うのですが。

ダンテを演じていたアレッサンドロ・スペルドゥーティは最近「3つの鍵」を見たのですぐ声といい背の高さといい
彼だと思ったのですが、あの立派な付け鼻の特殊メイクにちょっと惑わされました。

スペルドゥーティは以前オルミ監督の反戦映画「緑はよみがえる」で若い中尉役を演じていました。
「3つの鍵」の問題児となかなか個性的な役者でした。

「幸福なラザロ」、「3つの鍵」とたて続けにイタリア映画を見て、その前にはグレート・ビューティ~追憶のローマも
見ていいたので、イタリア映画の層の厚さに驚かされました。

 

Dec. 20  2023  

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グレート・ビューティー /追憶のローマ(La grande bellezza)・・・The Great Beauty

2023-11-29 23:37:01 | movie

10月に借りて見たthe Great Beauty とGreen Book。両方ともいい映画でしたが、Great Beauty なかなか全編見れなかったけれど
一度見ると何回も見たくなりました。Green Bookもいい映画でしたがわかりやすく1回でOK。

その前に見たイザベル・アジャーニの2作、ケイト・ブランシェット、ダニエル・ディ・ルイスの重い映画も
アップしたいところですが、イタリア繋がりで最近、何度も見たGreat Beautyを。トニ・セルヴィッロのダンテ「神曲」
の朗読をイタリア文化会館で聞いたときのあの流れるようなイタリア語に感動して、この名優の映画を見たくなりました。
何しろ映画も何十年も見に行っていなかったのですから状況も全く知りません。

 

最初はなかなかこの映画を続けて見ることができませんでした。とにかく長い。そして退廃的なパーティ・シーンにはちょっと
うんざりしていました。でもこの聖と俗、静と動が交互に現れるこの映画はローマそのものをあらわしているようで中毒になり
そうな映画です。全部通してみるとなんとも心に残る映画で、何回も見ました。音楽も映像もセルヴィッロの声も何もかも
素晴らしいのです。見始めてすぐ、フェリーニを連想させましたが、フェリーニへのオマージュとのことで納得しました。

カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『イル・ディーヴォ-魔王と呼ばれた男-』や、ショーン・ペン主演の
『きっと ここが帰る場所』などで知られ、いま、世界がもっとも注目する監督となったパオロ・ソレンティーノ監督。
最新作の『グレート・ビューティー/追憶のローマ』もまた、彼の卓越した美学と深い感動で描き挙げる巨大な映像モニュメント
となり、イタリア映画では15年ぶりとなるアカデミー賞外国語映画賞に輝いている。

主演を演じたのは、本作での演技でさまざまな映画賞の演技賞に輝いたトニ・セルヴィッロ。老年に差し掛かった作家の心の喪失
そして老いを感じるがゆえの生きることへの渇望を、重厚感をもって演じた。また、カルロ・ヴェルドーネやパメラ・ヴィロレージ
といった人気俳優も数多く出演。イタリアの人気歌手アントネッロ・ヴェンディッティやフランスの女優、ファニー・アルダンら
多くのセレブリティも本人役として顔を見せている。 
                           Openers より

 

本作はある程度の人生経験を経た大人を満足させてくれる。誰が見ても面白いようなわかりやすい映画ではなく“じわじわとくる”作品だ。

冒頭、ローマの古典的な美しさには静寂があり、セレブたちが繰り広げるばか騒ぎには異様なエネルギーがある。この静と動の
シークエンスに本作で何度も繰り返し描かれる死の要素が埋め込まれている。何が始まるのかはわからないが、少なくともこの映画が
高い美意識を持った非凡な作品であることだけは伝わってくる。

本作は主人公のジェップが何を求め、何と葛藤し、何に苦悩しているのかをストレートに見せるようなことはしない。だが失い続ける
痛みや埋没していく虚しさを感覚的にわかる人なら、ジェップの苦悩が理解できる。作品内の洗練された映像とセリフの中から人間の
愚かさと愛しさがじわじわと浮かび上がってくる。このじわじわと浮かび上がってくる何かを掴むには、観客本人がある程度の大人で
あることが必要だろう。だからこそ、大人にはたまらない作品なのだ。
                   MIHOシネマ より

 

2013年製作/141分/PG12/イタリア・フランス合作
原題:La grande bellezza

スタッフ

監督・原案 パオロ・ソレンティーノ
脚本   パオロ・ソレンティーノ
     ウンベルト・コンタレッロ
撮影   ルカ・ビガッツィ
美術   ステファニア・セラ
衣装   ダニエラ・サンティオ
編集   クリスティアーノ・トラバリョーリ
音楽   レーレ・マルキテッリ

キャスト

ジェップ・ガンバルデッラ トニ・セルビッロ
ロマーノ カルロ・ベルドーネ
ラモーナ サブリナ・フェリッリ
マダム・アルダン  ファニー・アルダン

 

『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 8/23(土)Bunkamuraル・シネマ他公開

 

The Great Beauty trailer - in cinemas from 6 September 2013

 

享楽の人生を送るジェップもその生活にはうんざりして、友達もローマを見限りローマから出ていく中、初恋の女性の死や
旧友の娘ラモーナとの愛と別れ、そして人生の最後に再び筆を取ろうと思うところで映画は終わる。とにかく音楽が素晴らしかった。
いろいろなレビュー記事を見ていると最後の長い川からローマを写している画面に端から身を投げる人がいてそれは彼では
ないかとの深読みもありましたが、私は再生だと思いたい。

中にちりばめられた言葉も素敵でした。

旅に出るのは確かに有益だ。
旅は想像力を働かせる。
これ以外のものはすべて失望と疲労を与えるだけだ。
これは生から死への架空の旅の物語。
(L.R.セリーヌ『世界の果てへの旅』)

 

「65歳になった数日後に私が悟った最も重要なこと。それは、自分がやりたくないことをやって時間を無駄には
出来ないということだ。」

65歳を迎えて数日後確固たる事実を発見した。もはや望まぬ行為に費やす時間はないのだ。ローマにやって来た時
私は26歳だったがかなりの速さでほぼそれとは気づかないまま俗世の渦というべきものに飲みまれた。とはいえ
私はただの俗物に甘んじる気はなかった。私は俗物の王になりたかった。そしてなった。パーティに参加するだけでは
物足りず、それをぶち壊す力を得ようとした。

L.R.セリーヌ『世界の果てへの旅』
旅は有益だ。想像力を誘う。

後は幻滅と疲労のみ。
これは架空の旅、それが強みだ。
生から死、人間、獣、街、ものすべて見せかけ

つまり小説、作り話、辞書にもそうある。
しかし目をつぶれば誰でもできる。そこは人生の彼岸。


毎年夏になると9月の目標を立てた。今は違う。今は昔の目標を思い出して過ごしている。消え失せた目標を。
ノスタルジアの何が悪いというのだ。未来を信じられないものの唯一の気晴らし。

人生もローマも真っ逆さまに落ちていくとき、初恋の人を思い出し、愛することの意味を再び見出し、
大切なことを忘れていたことに気づき、また小説を書いてみようと思うジェップ。ローマには大いなる美が集う。

あっけなく病気で亡くなってしまうラモーナとの会話が美しかった。「お互いに大事にしあえてよかった」と。
こういう大人の愛があるのだと映画の展開がとても新鮮だった。

 

"THE GREAT BEAUTY" THEME SONG (2013)

 

The Beauty Of The Great Beauty (La Grande Bellezza)

 

 

Spellbinding music  Great Beauty

In thinking about this film, an inevitable mix of the sacred and the profane, just as Rome famously is – I immediately thought that this flagrant contradiction of the city, its capacity to miraculously combine the sacred and the profane, should be echoed in the music.

Jean A. Gili – Interview with Paolo Sorrentino

 

映画で使われた曲

Arvo Part の曲は他の曲ですが、ヨーヨーマのコンサートでも演奏されました。
現代の有名な作家だったのですね。

I Lie
Composed by David Lang
Performed by Torino Vocalesemble
 
Far l'amore
Written by Franco BracardiBob Sinclar(as Christophe le Friant) and Daniele Pace
Performed by Bob Sinclar and Raffaella Carrà
 
More Than Scarlet
Written by Matt Fitzgerald, Pete Kelly, Tom Schutzinger and Ben Ely
Performed by Decoder Ring
 
Mueve la colita
Written by F. Attanasio, Ricky Nanni, Lorenzo Confetta, S. Attanasio and G. Attanasio
Performed by El Gato DJ
 
My Heart's in the Highlands
Composed by Arvo Pärt
Lyrics by Robert Burns
Performed by Else Torp and Christopher Bowers-Broadbent
 
Que no se acabe el mambo
Written by J. Peña Suazo
Performed by La Banda Gorda
 
The Lamb
Composed by John Tavener and William Blake
Performed by The Choir of the Temple Church
      
Parade
Written by Andreas Berthling, Tomas Hallonsten and Johan Berthling
Performed by Tape feat. Ingmar Lindelof
 
World to Come IV
Composed by David Lang
Performed by Maya Beiser
 
Symphony No. 3, Op. 36 'Of Sorrowful Song': III. Lento - Cantabile Semplice
Composed by Henryk Mikolaj Górecki
Performed by London Sinfonietta and Dawn Upshaw
  
Moody
Written by the Scroggins Sisters
Performed by ESG
 
Take My Breath Away
Written and performed by Gui Boratto
Courtesy of Truelove Music/Kompakt Records
 
The Beatitudes
Composed by Vladimir Martynov
Performed by Kronos Quartet
 
Forever
Written by Maurizio Fabrizio and Antonello Venditti
Performed by Antonello Venditti
 
Pancho
Written by Julius Steffaro and Jack Trombey
 
There Must Be an Angel (Playing with My Heart)
Written by Annie Lennox and David A. Stewart
Vocals by Lorraine Bowen
Remixed by Paolo Scotti
 
Water from the Same Source
Written by Christian Frederickson, Rachel Grimes and Jason Noble
Performed by Rachel's
 
Symphony in C Major: II. Adagio
Composed by Georges Bizet
Performed by Leopold Stokowski and his Symphony Orchestra
   
Dies Irae
Composed by Zbigniew Preisner
Performed by Elzbieta Towarnicka, Dariusz Paradowski, Piotr LykowskiPiotr Kusiewicz, Grzegorz Zychowicz and Jan Szypowski
 
Everything Trying
Written and performed by Damien Jurado
 
Discoteca
Written by Christian Bouyjou, Chloé Fabre and Radha Valli
Performed by Exchpoptrue
 
We No Speak Americano
Written by Renato CarosoneNicola Salerno, Matthew Handley, Duncan MacLennan and Andrew Stanley
Performed by Studio Allstars
 
Ti ruberò
Written by Bruno Lauzi
Performed by Monica Cetti
 
Beata Viscera
Written by Magister Perotinus
Performed by Vox Clamantis
  

Trois Mouvements Perpétuels: I - Assez modéré
Written by Francis Poulenc
Performed by Peter Beijersbergen van Hengouwen

 

↓ ピノキオとの比較が面白かった記事です。
グレート・ビューティ  渋谷文化プロジェクト

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