BLOG STATION
東京発世界行

written by Ken
 



孫引きとは、A の著作(原典)を B が引用したものを、さらに C が引用することをいう。

■孫引きされる村上春樹
先月、書いた「僕」はネイティヴという記事の一部が、Tritsch-Tratsch:僕と俺と私とあなたと自分という記事に引用されていた。
引用は自由に行っていただいて構わないのだが、気になったのは、僕が引用した村上春樹の著作(正確には CD-ROM)の一節について、触れられている点である。
この記事を書いた人は、「村上春樹を「ノルウェイの森」を途中で放り出したくらいしか読んだことがないのだから知る由もないのだけど^^;;」と述べており、原典である『夢のサーフシティー』はおろか、村上春樹の著作を読んだことがないと、告白している。
何やってんだ、この人?

■これはひどい
さらに、孫引きは続く。
われ思ふゆえに・・・:書いてあることを、書いてある通りに。(前編)という日記の中で引用されている、村上春樹のあるエッセイが、以下の二つの記事に孫引きされている。
見たこと聞いたこと:ちょっと考えてみました
Tritsch-Tratsch:エンドロール
いずれも原典を読んでいないという点で共通しており、しかも、後者は前述の、僕の記事経由で孫引きを行ったのと同一人物である。
僕は、村上春樹が映画のエンド・クレジット(「エンドロール」ではない)について述べたエッセイを読んだ記憶があった。そこで、われ思ふゆえに・・・の著者、小町さんにメールで、出典について尋ねたところ、快く教えていただくことができた。
村上春樹著『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』(新潮文庫)所収のエッセイ、「二本立ての映画っていいですよね」および、巻末の「後日付記」である。
以前、図書館で借りて読んだ本を、僕は書店で買い求め、再読した。
最初に引用した時点で、出典を明記していれば良かったのかもしれないが、小町さんはきちんと原典を読んだ上で、的確な感想を述べておられると思う。これに対し、孫引きを行ったお二人は、引用箇所のみに反応しており、ありえないような誤読をしているのであった。
「二本立ての映画っていいですよね」は、そもそも、映画鑑賞時のマナーについて語ったエッセイではない。しかし、僕がここで、どこがどう違うのかを指摘したりすると、さらなる孫引きを誘発する恐れがあるため、書かないことにしよう。原典は、わずか数ページのエッセイなので、興味のある方は、書店へ行き、手に取って読まれることをお勧めする。
「村上春樹さんて、そんなこと言う人だったの?!とちょっと意外。」(Tritsch-Tratsch:エンドロール
こういうセリフは、村上春樹を読んでからにしていただきたいものである。

■孫引きがなぜいけないか
一般に、学術論文を書く際には、間接引用(孫引き)は良くないとされている。(参考リンク:社会調査工房 - 社会調査の方法 - 7-1-3 引用 -文中における形式-
しかし、以下の理由により、学術論文ばかりでなく、個人サイト、ブログにおいても、孫引きは良くないと僕は考える。

A の著した原典を読まないまま、C が原典について論評した場合、次のような問題が発生する。
▼C は、B による引用箇所しか読んでいないため、A の著作全体がどのような主旨で書かれたものなのか、あるいは前後の文脈がどのようなものであるか、知らないまま、論評することになる。
▼C は、B というフィルターを通してのみ、A を理解しようとする。このため、誤読や的外れな論評を行ってしまうことがある。
▼C は原典に当たる手間を惜しんでいるだけである。これは単なる怠慢以外のなにものでもない。
▼さらに、C を読んだ D が A の著作について、論評する場合がある。そうなると、これは最早、デマに近いものとなる。

このような理由で、孫引きは極力、避けるべきなのである。孫引きを行った者は、それを行ったが故に、批判されても仕方ないのだと思う。
原典が、古文書など入手困難なものである場合は、孫引きが認められるケースもあるが、そういうのは、あくまでも例外である。
また、原典が外国語で書かれたものである場合は、翻訳者を明記するべきだ。野崎孝訳と村上春樹訳の『ライ麦畑』は、別物なのだから。

■おまけ
昨今、ウェブ界隈で話題になっている事柄についての「まとめサイト」が、よく読まれるようになった。特に、2ちゃんねるのログは膨大な割に、ノイズ的な情報が多く、消え去るのが早いこともあって、わかりやすく要約された「まとめサイト」は、全体の流れを大雑把に理解するのに役立っている。
しかし、この場合も、「まとめサイト」の編者というフィルターを通して、我々は物事を見ているのだということを忘れてはなるまい。

<今日の教訓>
・引用を行う場合は、出典を明記しましょう。
・出来るだけ、原典を読みましょう。
・やれやれ。


※引用のあり方についての話は、続けて書く予定です。

コメント ( 16 ) | Trackback ( 4 ) このエントリーを含むはてなブックマーク



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コメント
 
 
 
やれやれ^^; (かささぎ)
2005-10-06 02:35:26
Kenさん お疲れ様です^^ 



リンク記事も全て拝読致しました。小町さんの記事とこちらの記事を併せての感想・・・「現代国語大学受験講座で言ってることと一緒やな~^^ 読解は主観を除くことから始まるんだし」 でした。小町さんの御意見,私はもっともだと読みました^^



 目の前で話しているならいざ知らず,書かれた言葉を読むのって,そんなに誤読するものでしょうか? うーむ。 今以上に気をつけなくては^^;

 
 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-06 13:26:02
>かささぎさん

小町さんの日記「書いてあることを、書いてある通りに。」には、本記事で取り上げた孫引き記事より後から書かれた続編があります。

http://www.enpitu.ne.jp/usr10/bin/day?id=103512&pg=20051003

前・後編に共通して書かれているのは、タイトルのとおり、先入観を捨ててちゃんと文章を読まないと誤読してしまう、ということだと思うんですよ。

そう書かれているにも関わらず、その記事から孫引きが発生してしまう、というのは、なんとも皮肉なことではありますよね。
 
 
 
kenさんだって失礼だ (kumi)
2005-10-07 00:30:28
やれやれ・・なんていう言葉を使わないと

記事書けないのかと思います。

相手の方が、さほど失礼なことを書かれてるとも

思わないんで、扱い方が気になりました。



孫引きって、絶対的な禁忌事項なんでしょうか?

誤解が生じるから、できれば避けたほうが良いと

いった程度のものかと思ってました。

もちろん、わたしの方が間違いかもしれないけど。



いきなり大きなサイトに

「何やってんだ、この人」って書かれるのって

私なら凄いショックだろうなと思いました。

 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-07 00:43:27
>kumiさん

「村上春樹 やれやれ」の検索結果。

http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLD,GGLD:2005-15,GGLD:ja&q=%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9%E3%80%80%E3%82%84%E3%82%8C%E3%82%84%E3%82%8C



村上春樹を読んだほうが良いと思います。
 
 
 
Kenさんが失礼な人だなんてのは、前からだよ。 (えっけん)
2005-10-07 08:20:45
それがBLOG STATIONのおもしろいところでしょ。

普段はいい人っぽさをかもし出しているけど、ときどきイヤミな人物に豹変するのは、以前からたびたびあったことです。

Kenさんのはてブなんか見てたら、失礼色でいっぱいですよ。



kumiさんが「Kenさんは失礼な人」と批難をするのなら、僕はkumiさんにもかなり失礼な事を書く人だという認識がありますし、まぁそこは、本人以外の人があまり感情的になる部分でもないかな、と。



>いきなり大きなサイトに

>「何やってんだ、この人」って書かれるのって

>私なら凄いショックだろうなと思いました



これはサイトの大きい・小さい葉問題視しないほうがよろしいかと。

これでは閲覧数の多いサイト主は、好きなことを書いてはいけない、しかし規模が小さければなにを書いても良い、共受け取れます。





 
 
 
Unknown (aozora)
2005-10-07 09:32:49
はじめまして、文中リンクとブクマをありがとうございます。

 

えっけんさん<私もこちらのblogは都会的上質さを装いながら

時おり見かける東京人にありがちな「厭味たらしさ」を随所に醸し出していると思います。

楽しんでましたが、標的になれば面白くないですわ(笑)



kenさん<「やれやれ」は村上春樹専用の言葉ではありません。

まあここでは絶対必要なのでしょう。



今後ははるか遠くから、blogのご繁栄をお祈りいたします。



 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-07 09:39:39
>えっけんさん

ぜひ、「自己のキャラクターに依存した批評態度」という記事を書いてください。

面白そうです。



ていうか、話がずれてます。
 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-07 09:44:56
>aozoraさん

http://aozora.sub.jp/diary/rnote.php?u=diary/2005/10/20051006_1729.htm

http://aozora.sub.jp/diary/rnote.php?u=diary/2005/10/20051007_0212.htm

言及ならびにリンク、ありがとうございました。
 
 
 
お久しぶりです (ますみ)
2005-10-07 22:41:24
すごくお久しぶりです。

村上春樹は「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」しか

読んだことがないという程度の初心者なんですが…。



今書いているゼミでの論文に、実は孫引きいっぱい?!って思って、

明日から慌てて読み返す日が続きそうです…。あわわ…。

というか…孫引きという言葉を始めて知りました…。

金曜日に中間報告を提出するんですが、それまでに気付けて

よかったです、本当に!



なんか自分の話だけになっちゃいましたが、孫引きというものが

この世に存在するんだ…という驚きから書き込みして

しまいました(汗) なんかズレててすみません;

それでは☆
 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-07 22:52:35
>ますみさん

お久しぶりです。

ブログでは、お初でしたっけ。



原典が入手可能な場合は、極力、読んだほうが良いと思います。

ちゃんと読むことによって、一味違う論文が書けるようになると思いますよ。

中間報告、がんばってくださいね。
 
 
 
お邪魔します (なるもにあ)
2005-10-08 11:20:15
逆引きとは視点が異なるのですが、非常によく似たトラブルかと思いますので、

コメント参加させていただきます。



以前、あるブログコミュニティ(すみません、定義探索中につき暫定的活用です)で、新人ブロガー(これも考え方に是非があるようですが)を相手にトラブルがあり、コミュニティ側のブロガーの数名が自分の意見を記事化しました。

その際は、トラブル時ということもあり、コミュニティ内の密度&(団結)が高かったので、ほとんどの情報は共有化されていたのですが、そこに飛び入りで参加されるブロガーがもとの事情を知らないまま、自分の意見を言うという場面が何度かありました。(その後、そのブロガーは反省をされて元記事まで行かれた結果、自分のコメントを変更されました。)



モラルハザードの問題も大きいのですが、やはりブロガーたるもの、怠慢をせず、他者意見は参考としつつも、遡れる限りはきちんと自分で事実追求すべきだと思います。
 
 
 
こんにちは。 (Ken)
2005-10-08 12:47:26
>なるもにあさん

具体的な事例について、コメントされているようですね。

僕には、何の話なのか不明ですので、単純に「事実を追求すべき」と言ってよいのかどうか、わかりかねます。

 
 
 
ならば… (失礼なkumi)
2005-10-08 18:05:24
わたくしは、本日より

『孫引きチェックソフト・boo』として、

このブログに常駐することに決めました。



このブログと、えっけんブログでのみ作動します。みつけたらブーブー鳴り出します。



( ゜д゜) boo~~~~~~



どっちかが、間違えて孫引きしないかなぁ

( ^∀^)ワクワク
 
 
 
連投失礼します (なるもにあ)
2005-10-08 18:40:31
私のコメント自体がまさに事実追求できない内容で

あるということに、ご指摘を見てはじめて気付きました。

本当に申し訳ありません!!

勉強させていただきました。

ありがとうございました。
 
 
 
失礼なkumiさん (Ken)
2005-10-08 23:03:19
このブログには、えっけんさんが出没していますので、

そういうわけのわからない常駐は不要です。

そんなことより、「まとめサイト脳の恐怖」という記事を書いて、

啓蒙に励んでください。
 
 
 
なるもにあさん (Ken)
2005-10-08 23:12:27
まあ、落ち着いてください。

もう一度、付近の聞き込み捜査を行うとともに、

被害者の夫の、当日の行動を徹底的に調べ上げるべきです。(違
 
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