カナ文字文庫 (漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

オジイサン の ランプ

2016-10-08 | ニイミ ナンキチ
 オジイサン の ランプ

 ニイミ ナンキチ

 カクレンボ で、 クラ の スミ に もぐりこんだ トウイチ くん が ランプ を もって でて きた。
 それ は めずらしい カタチ の ランプ で あった。 80 センチ ぐらい の ふとい タケ の ツツ が ダイ に なって いて、 その ウエ に ちょっぴり ヒ の ともる ブブン が くっついて いる、 そして ホヤ は、 ほそい ガラス の ツツ で あった。 はじめて みる モノ には ランプ とは おもえない ほど だった。
 そこで ミンナ は、 ムカシ の テッポウ と まちがえて しまった。
「ナン だあ、 テッポウ かあ」 と オニ の ソウハチ くん は いった。
 トウイチ くん の オジイサン も、 しばらく それ が なんだか わからなかった。 メガネゴシ に じっと みて いて から、 はじめて わかった の で ある。
 ランプ で ある こと が わかる と、 トウイチ くん の オジイサン は こう いって コドモ たち を しかりはじめた。
「こらこら、 オマエタチ は ナニ を もちだす か。 まことに コドモ と いう もの は、 だまって あそばせて おけば ナニ を もちだす やら ワケ の わからん、 ユダン も スキ も ない、 ヌスットネコ の よう な もの だ。 こらこら、 それ は ここ へ もって きて、 オマエタチ は ソト へ いって あそんで こい。 ソト に いけば、 デンシンバシラ でも なんでも あそぶ もの は いくらでも ある に」
 こうして しかられる と コドモ は はじめて、 ジブン が よく ない オコナイ を した こと が わかる の で ある。 そこで、 ランプ を もちだした トウイチ くん は もちろん の こと、 なにも もちださなかった キンジョ の コドモ たち も、 ジブン たち ミンナ で わるい こと を した よう な カオ を して、 すごすご と ソト の ミチ へ でて いった。
 ソト には、 ハル の ヒル の カゼ が、 ときおり ミチ の ホコリ を ふきたてて すぎ、 のろのろ と ギュウシャ が とおった アト を、 しろい チョウ が いそがしそう に とおって ゆく こと も あった。 なるほど デンシンバシラ が あっちこっち に たって いる。 しかし コドモ たち は デンシンバシラ なんか で あそび は しなかった。 オトナ が、 こうして あそべ と いった こと を、 いわれた まま に あそぶ と いう の は なんとなく ばかげて いる よう に コドモ には おもえる の で ある。
 そこで コドモ たち は、 ポケット の ナカ の ラムネダマ を かちかち いわせながら、 ヒロバ の ほう へ とんで いった。 そして まもなく ジブン たち の アソビ で、 サッキ の ランプ の こと は わすれて しまった。
 ヒグレ に トウイチ くん は イエ へ かえって きた。 オク の イマ の スミ に、 あの ランプ が おいて あった。 しかし、 ランプ の こと を ナニ か いう と、 また オジイサン に がみがみ いわれる かも しれない ので、 だまって いた。
 ユウゴハン の アト の タイクツ な ジカン が きた。 トウイチ くん は タンス に もたれて、 ヒキダシ の カン を かたん かたん と いわせて いたり、 ミセ に でて ヒゲ を はやした ノウガッコウ の センセイ が 『ダイコン サイバイ の リロン と ジッサイ』 と いう よう な、 むつかしい ナマエ の ホン を バントウ に チュウモン する ところ を、 じっと みて いたり した。
 そういう こと にも あく と、 また オク の イマ に もどって きて、 オジイサン が いない の を みすまして、 ランプ の ソバ へ にじりより、 その ホヤ を はずして みたり、 5 セン ハクドウカ ほど の ネジ を まわして、 ランプ の シン を だしたり ひっこめたり して いた。
 すこし イッショウ ケンメイ に なって いじくって いる と、 また オジイサン に みつかって しまった。 けれど コンド は オジイサン は しからなかった。 ネエヤ に オチャ を いいつけて おいて、 スッポン と キセルヅツ を ぬきながら、 こう いった。
「トウボウ、 この ランプ は な、 オジイサン には とても なつかしい もの だ。 ながい アイダ わすれて おった が、 キョウ トウボウ が クラ の スミ から もちだして きた ので、 また ムカシ の こと を おもいだした よ。 こう オジイサン みたい に トシ を とる と、 ランプ でも なんでも ムカシ の もの に であう の が とても うれしい もん だ」
 トウイチ くん は ぽかん と して オジイサン の カオ を みて いた。 オジイサン は がみがみ と しかりつけた から、 おこって いた の か と おもったら、 ムカシ の ランプ に あう こと が できて よろこんで いた の で ある。
「ひとつ ムカシ の ハナシ を して やる から、 ここ へ きて すわれ」
と オジイサン が いった。
 トウイチ くん は ハナシ が すき だ から、 いわれる まま に オジイサン の マエ へ いって すわった が、 なんだか オセッキョウ を される とき の よう で、 イゴコチ が よく ない ので、 いつも ウチ で ハナシ を きく とき に とる シセイ を とって きく こと に した。 つまり、 ねそべって リョウアシ を ウシロ へ たてて、 ときどき アシ の ウラ を うちあわせる ゲイトウ を した の で ある。
 オジイサン の ハナシ と いう の は ツギ の よう で あった。

 イマ から 50 ネン ぐらい マエ、 ちょうど ニチロ センソウ の ジブン の こと で ある。 ヤナベ シンデン の ムラ に ミノスケ と いう 13 の ショウネン が いた。
 ミノスケ は、 フボ も キョウダイ も なく、 シンセキ の モノ とて ヒトリ も ない、 まったく の ミナシゴ で あった。 そこで ミノスケ は、 ヨソ の イエ の ハシリヅカイ を したり、 オンナ の コ の よう に コモリ を したり、 コメ を ついて あげたり、 その ホカ、 ミノスケ の よう な ショウネン に できる こと なら なんでも して、 ムラ に おいて もらって いた。
 けれども ミノスケ は、 こうして ムラ の ヒトビト の オセワ で いきて ゆく こと は、 ホントウ を いえば いや で あった。 コモリ を したり、 コメ を ついたり して イッショウ を おくる と する なら、 オトコ と うまれた カイ が ない と、 つねづね おもって いた。
 ダンシ は ミ を たてねば ならない。 しかし どうして ミ を たてる か。 ミノスケ は マイニチ、 ゴハン を たべて ゆく の が やっと の こと で あった。 ホン 1 サツ かう オカネ も なかった し、 また たとい オカネ が あって ホン を かった と して も、 よむ ヒマ が なかった。
 ミ を たてる の に よい キッカケ が ない もの か と、 ミノスケ は こころひそか に まって いた。
 すると ある ナツ の ヒ の ヒルサガリ、 ミノスケ は ジンリキシャ の サキヅナ を たのまれた。
 その コロ ヤナベ シンデン には、 いつも 2~3 ニン の ジンリキヒキ が いた。 シオトウジ (カイスイヨク の こと) に ナゴヤ から くる キャク は、 たいてい キシャ で ハンダ まで きて、 ハンダ から チタ ハントウ ニシ カイガン の オオノ や シンマイコ まで ジンリキシャ で ゆられて いった もの で、 ヤナベ シンデン は ちょうど その ミチスジ に あたって いた から で ある。
 ジンリキシャ は ヒト が ひく の だ から あまり はやく は はしらない。 それに、 ヤナベ シンデン と オオノ の アイダ には トウゲ が ヒトツ ある から、 よけい ジカン が かかる。 おまけに その コロ の ジンリキシャ の ワ は、 がらがら と なる おもい カナワ だった の で ある。 そこで、 イソギ の キャク は、 チンギン を バイ だして、 フタリ の ジンリキヒキ に ひいて もらう の で あった。 ミノスケ に サキヅナヒキ を たのんだ の も、 イソギ の ヒショキャク で あった。
 ミノスケ は ジンリキシャ の ナガエ に つながれた ツナ を カタ に かついで、 ナツ の イリヒ の じりじり てりつける ミチ を、 えいや えいや と はしった。 なれない こと とて たいそう くるしかった。 しかし ミノスケ は クルシサ など キ に しなかった。 コウキシン で いっぱい だった。 なぜなら ミノスケ は、 モノゴコロ が ついて から、 ムラ を イッポ も でた こと が なく、 トウゲ の ムコウ に どんな マチ が あり、 どんな ヒトビト が すんで いる か しらなかった から で ある。
 ヒ が くれて あおい ユウヤミ の ナカ を ヒトビト が ほのじろく あちこち する コロ、 ジンリキシャ は オオノ の マチ に はいった。
 ミノスケ は その マチ で イロイロ な もの を はじめて みた。 ノキ を ならべて つづいて いる おおきい ショウテン が、 だいいち、 ミノスケ には めずらしかった。 ミノスケ の ムラ には アキナイヤ とて は 1 ケン しか なかった。 ダガシ、 ワラジ、 イトクリ の ドウグ、 コウヤク、 カイガラ に はいった メグスリ、 その ホカ ムラ で つかう タイテイ の もの を うって いる ちいさな ミセ が 1 ケン きり しか なかった の で ある。
 しかし ミノスケ を いちばん おどろかした の は、 その おおきな ショウテン が、 ヒトツヒトツ ともして いる、 ハナ の よう に あかるい ガラス の ランプ で あった。 ミノスケ の ムラ では ヨル は アカリ なし の イエ が おおかった。 マックラ な イエ の ナカ を、 ヒトビト は メクラ の よう に テ で さぐりながら、 ミズガメ や、 イシウス や ダイコクバシラ を さぐりあてる の で あった。 すこし ゼイタク な イエ では、 オカミサン が ヨメイリ の とき もって きた アンドン を つかう の で あった。 アンドン は カミ を シホウ に はりめぐらした ナカ に、 アブラ の はいった サラ が あって、 その サラ の フチ に のぞいて いる トウシン に、 サクラ の ツボミ ぐらい の ちいさい ホノオ が ともる と、 マワリ の カミ に ミカンイロ の あたたか な ヒカリ が さし、 フキン は すこし あかるく なった の で ある。 しかし どんな アンドン に しろ、 ミノスケ が オオノ の マチ で みた ランプ の アカルサ には とても およばなかった。
 それに ランプ は、 その コロ と して は まだ めずらしい ガラス で できて いた。 すすけたり、 やぶれたり しやすい カミ で できて いる アンドン より、 これ だけ でも ミノスケ には いい もの の よう に おもわれた。
 この ランプ の ため に、 オオノ の マチ ゼンタイ が リュウグウジョウ か ナニ か の よう に あかるく かんじられた。 もう ミノスケ は ジブン の ムラ へ かえりたく ない と さえ おもった。 ニンゲン は ダレ でも あかるい ところ から くらい ところ に かえる の を このまない の で ある。
 ミノスケ は ダチン の 15 セン を もらう と、 ジンリキシャ とも わかれて しまって、 オサケ に でも よった よう に、 ナミ の オト の たえまない この ウミベ の マチ を、 めずらしい ショウテン を のぞき、 うつくしく あかるい ランプ に みとれて、 さまよって いた。
 ゴフクヤ では、 バントウ さん が、 ツバキ の ハナ を おおきく そめだした タンモノ を、 ランプ の ヒカリ の シタ に ひろげて キャク に みせて いた。 コクヤ では、 コゾウ さん が ランプ の シタ で アズキ の わるい の を ヒトツブ ずつ ひろいだして いた。 また ある イエ では オンナ の コ が、 ランプ の ヒカリ の シタ に しろく ひかる カイガラ を ちらして オハジキ を して いた。 また ある ミセ では こまかい タマ に イト を とおして ジュズ を つくって いた。 ランプ の あおやか な ヒカリ の モト では、 ヒトビト の こうした セイカツ も、 モノガタリ か ゲントウ の セカイ での よう に うつくしく なつかしく みえた。
 ミノスケ は イマ まで ナンド も、 「ブンメイ カイカ で ヨノナカ が ひらけた」 と いう こと を きいて いた が、 イマ はじめて ブンメイ カイカ と いう こと が わかった よう な キ が した。
 あるいて いる うち に、 ミノスケ は、 サマザマ な ランプ を たくさん つるして ある ミセ の マエ に きた。 これ は ランプ を うって いる ミセ に ちがいない。
 ミノスケ は しばらく その ミセ の マエ で 15 セン を にぎりしめながら ためらって いた が、 やがて ケッシン して つかつか と はいって いった。
「ああいう もの を うっとくれ や」
と ミノスケ は ランプ を ゆびさして いった。 まだ ランプ と いう コトバ を しらなかった の で ある。
 ミセ の ヒト は、 ミノスケ が ゆびさした おおきい ツリ-ランプ を はずして きた が、 それ は 15 セン では かえなかった。
「まけとくれ や」
と ミノスケ は いった。
「そう は まからん」
と ミセ の ヒト は こたえた。
「オロシネ で うっとくれ や」
 ミノスケ は ムラ の ザッカヤ へ、 つくった ワラジ を かって もらい に よく いった ので、 モノ には オロシネ と コウリネ が あって、 オロシネ は やすい と いう こと を しって いた。 たとえば、 ムラ の ザッカヤ は、 ミノスケ の つくった ヒョウタンガタ の ワラジ を オロシネ の 1 セン 5 リン で かいとって、 ジンリキヒキ たち に コウリネ の 2 セン 5 リン で うって いた の で ある。
 ランプ-ヤ の シュジン は、 み も しらぬ どこ か の コゾウ が そんな こと を いった ので、 びっくり して まじまじ と ミノスケ の カオ を みた。 そして いった。
「オロシネ で うれ って、 そりゃ アイテ が ランプ を うる イエ なら オロシネ で うって あげて も いい が、 ヒトリヒトリ の オキャク に オロシネ で うる わけ には いかん な」
「ランプ-ヤ なら オロシネ で うって くれる だ のい?」
「ああ」
「そんなら、 オレ、 ランプ-ヤ だ。 オロシネ で うって くれ」
 ミセ の ヒト は ランプ を もった まま わらいだした。
「オメエ が ランプ-ヤ? はっはっはっはっ」
「ホントウ だよ、 オッツァン。 オレ、 ホントウ に これから ランプ-ヤ に なる ん だ。 な、 だから たのむ に、 キョウ は ヒトツ だ けんど オロシネ で うって くれ や。 コンド くる ときゃ、 たくさん、 イッペン に かう で」
 ミセ の ヒト は はじめ わらって いた が、 ミノスケ の シンケン な ヨウス に うごかされて、 いろいろ ミノスケ の ミノウエ を きいた うえ、
「よし、 そんなら オロシネ で こいつ を うって やろう。 ホント は オロシネ でも この ランプ は 15 セン じゃ うれない けど、 オメエ の ネッシン なの に カンシン した。 まけて やろう。 そのかわり しっかり ショウバイ を やれ よ。 ウチ の ランプ を どんどん もってって うって くれ」
と いって、 ランプ を ミノスケ に わたした。
 ミノスケ は ランプ の アツカイカタ を ひととおり おしえて もらい、 ついでに チョウチン-ガワリ に その ランプ を ともして、 ムラ へ むかった。
 ヤブ や マツバヤシ の うちつづく くらい トウゲミチ でも、 ミノスケ は もう こわく は なかった。 ハナ の よう に あかるい ランプ を さげて いた から で ある。
 ミノスケ の ムネ の ナカ にも、 もう ヒトツ の ランプ が ともって いた。 ブンメイ カイカ に おくれた ジブン の くらい ムラ に、 この すばらしい ブンメイ の リキ を うりこんで、 ムラビト たち の セイカツ を あかるく して やろう と いう キボウ の ランプ が――

 ミノスケ の あたらしい ショウバイ は、 ハジメ の うち まるで はやらなかった。 ヒャクショウ たち は なんでも あたらしい もの を シンヨウ しない から で ある。
 そこで ミノスケ は いろいろ かんがえた アゲク、 ムラ で 1 ケン きり の アキナイヤ へ その ランプ を もって いって、 タダ で かして あげる から しばらく これ を つかって ください と たのんだ。
 ザッカヤ の バアサン は、 しぶしぶ ショウチ して、 ミセ の テンジョウ に クギ を うって ランプ を つるし、 その バン から ともした。
 イツカ ほど たって、 ミノスケ が ワラジ を かって もらい に いく と、 ザッカヤ の バアサン は にこにこ しながら、 こりゃ たいへん ベンリ で あかるうて、 ヨル でも オキャク が よう きて くれる し、 ツリセン を まちがえる こと も ない ので、 キ に いった から かいましょう、 と いった。 そのうえ、 ランプ の よい こと が はじめて わかった ムラビト から、 もう ミッツ も チュウモン の あった こと を ミノスケ に きかして くれた。 ミノスケ は とびたつ よう に よろこんだ。
 そこで ザッカヤ の バアサン から ランプ の ダイ と ワラジ の ダイ を うけとる と、 すぐ その アシ で、 はしる よう に して オオノ へ いった。 そして ランプ-ヤ の シュジン に ワケ を はなして、 たりない ところ は かして もらい、 ミッツ の ランプ を かって きて、 チュウモン した ヒト に うった。
 これから ミノスケ の ショウバイ は はやって きた。
 ハジメ は チュウモン を うけた だけ オオノ へ かい に いって いた が、 すこし カネ が たまる と、 チュウモン は なくて も たくさん かいこんで きた。
 そして イマ は もう、 ヨソ の イエ の ハシリヅカイ や コモリ を する こと は やめて、 ただ ランプ を うる ショウバイ だけ に うちこんだ。 モノホシダイ の よう な ワク の ついた クルマ を したてて、 それ に ランプ や ホヤ など を いっぱい つるし、 ガラス の ふれあう すずしい オト を させながら、 ミノスケ は ジブン の ムラ や フキン の ムラムラ へ うり に いった。
 ミノスケ は オカネ も もうかった が、 それ とは ベツ に、 この ショウバイ が たのしかった。 イマ まで くらかった イエ に、 だんだん ミノスケ の うった ランプ が ともって ゆく の で ある。 くらい イエ に、 ミノスケ は ブンメイ カイカ の あかるい ヒ を ヒトツヒトツ ともして ゆく よう な キ が した。
 ミノスケ は もう セイネン に なって いた。 それまで は ジブン の イエ とて は なく、 クチョウ さん の ところ の ノキ の かたむいた ナヤ に すませて もらって いた の だ が、 コガネ が たまった ので、 ジブン の イエ も つくった。 すると セワ して くれる ヒト が あった ので オヨメサン も もらった。
 ある とき、 ヨソ の ムラ で ランプ の センデン を して おって、 「ランプ の シタ なら タタミ の ウエ に シンブン を おいて よむ こと が できる のい」 と クチョウ さん に イゼン きいて いた こと を いう と、 オキャクサン の ヒトリ が 「ホント かん?」 と ききかえした ので、 ウソ の きらい な ミノスケ は、 ジブン で ためして みる キ に なり、 クチョウ さん の ところ から フルシンブン を もらって きて、 ランプ の シタ に ひろげた。
 やはり クチョウ さん の いわれた こと は ホントウ で あった。 シンブン の こまかい ジ が ランプ の ヒカリ で ヒトツヒトツ はっきり みえた。 「ワシ は ウソ を いって ショウバイ を した こと には ならない」 と ミノスケ は ヒトリゴト を いった。 しかし ミノスケ は、 ジ が ランプ の ヒカリ で はっきり みえて も なんにも ならなかった。 ジ を よむ こと が できなかった から で ある。
「ランプ で モノ は よく みえる よう に なった が、 ジ が よめない じゃ、 まだ ホントウ の ブンメイ カイカ じゃ ねえ」
 そう いって ミノスケ は、 それから マイバン クチョウ さん の ところ へ ジ を おしえて もらい に いった。
 ネッシン だった ので 1 ネン も する と、 ミノスケ は ジンジョウカ を ソツギョウ した ムラビト の ダレ にも まけない くらい よめる よう に なった。
 そして ミノスケ は ショモツ を よむ こと を おぼえた。

 ミノスケ は もう、 オトコザカリ の オトナ で あった。 イエ には コドモ が フタリ あった。 「ジブン も これ で どうやら ヒトリダチ が できた わけ だ。 まだ ミ を たてる と いう ところ まで は いって いない けれども」 と、 ときどき おもって みて、 その つど ココロ に マンゾク を おぼえる の で あった。
 さて ある ヒ、 ミノスケ が ランプ の シン を シイレ に オオノ の マチ へ やって くる と、 5~6 ニン の ニンプ が ミチ の ハタ に アナ を ほり、 ふとい ながい ハシラ を たてて いる の を みた。 その ハシラ の ウエ の ほう には ウデ の よう な キ が 2 ホン ついて いて、 その ウデギ には しろい セトモノ の ダルマ さん の よう な もの が イクツ か のって いた。 こんな キミョウ な もの を ミチ の ワキ に たてて ナニ に する の だろう、 と おもいながら すこし サキ に ゆく と、 また ミチバタ に おなじ よう な たかい ハシラ が たって いて、 それ には スズメ が ウデギ に とまって ないて いた。
 この キミョウ な たかい ハシラ は 50 メートル ぐらい アイダ を おいて は、 ミチ の ワキ に たって いた。
 ミノスケ は ついに、 ヒナタ で ウドン を ほして いる ヒト に きいて みた。 すると、 ウドンヤ は 「デンキ と やら いう もん が コンド ひける だ げな。 そいで もう、 ランプ は いらん よう に なる だ げな」 と こたえた。
 ミノスケ には よく のみこめなかった。 デンキ の こと など まるで しらなかった から だ。 ランプ の カワリ に なる もの らしい の だ が、 そう と すれば、 デンキ と いう もの は アカリ に チガイ あるまい。 アカリ なら、 イエ の ナカ に ともせば いい わけ で、 なにも あんな トテツ も ない ハシラ を ミチ の クロ に ナンボン も おったてる こと は ない じゃ ない か と、 ミノスケ は おもった の で ある。
 それから ヒトツキ ほど たって、 ミノスケ が また オオノ へ いく と、 このあいだ たてられた ミチ の ハタ の ふとい ハシラ には、 くろい ツナ の よう な もの が スウホン わたされて あった。 くろい ツナ は、 ハシラ の ウデギ に のって いる ダルマ さん の アタマ を ヒトマキ して ツギ の ハシラ へ わたされ、 そこ で また ダルマ さん の アタマ を ヒトマキ して ツギ の ハシラ に わたされ、 こうして どこまでも つづいて いた。
 チュウイ して よく みる と、 トコロドコロ の ハシラ から くろい ツナ が 2 ホン ずつ ダルマ さん の アタマ の ところ で わかれて、 イエ の ノキバ に つながれて いる の で あった。
「へへえ、 デンキ と やら いう もん は アカリ が ともる もん か と おもったら、 これ は まるで ツナ じゃ ねえ か。 スズメ や ツバメ の ええ ヤスミバ と いう もん よ」
と ミノスケ が ヒトリ で あざわらいながら、 シリアイ の アマザケヤ に はいって ゆく と、 いつも ドマ の マンナカ の ハンダイ の ウエ に つるして あった おおきな ランプ が、 ヨコ の カベ の アタリ に とりかたづけられて、 アト には その ランプ を ずっと ちいさく した よう な、 セキユイレ の ついて いない、 ヘン な カッコウ の ランプ が、 ジョウブ そう な ツナ で テンジョウ から ぶらさげられて あった。
「ナン だ やい、 ヘン な もの を つるした じゃ ねえ か。 あの ランプ は どこ か わるく でも なった か やい」
と ミノスケ は きいた。 すると アマザケヤ が、
「ありゃ、 コンド ひけた デンキ と いう もん だ。 カジ の シンパイ が のうて、 あかるうて、 マッチ は いらぬ し、 なかなか ベンリ な もん だ」
と こたえた。
「へっ、 へんてこれん な もの を ぶらさげた もん よ。 これ じゃ アマザケヤ の ミセ も なんだか マ が ぬけて しまった。 キャク も へる だろう よ」
 アマザケヤ は、 アイテ が ランプ-ウリ で ある こと に キ が ついた ので、 デントウ の ベンリ な こと は もう いわなかった。
「なあ、 アマザケヤ の トッツァン。 みな よ、 あの テンジョウ の とこ を。 ナガネン の ランプ の スス で あそこ だけ マックロ に なっとる に。 ランプ は もう あそこ に いついて しまった ん だ。 イマ に なって デンキ たら いう ベンリ な もん が できた から とて、 あそこ から はずされて、 あんな カベ の スミッコ に ひっかけられる の は、 ランプ が かわいそう よ」
 こんな ふう に ミノスケ は ランプ の カタ を もって、 デントウ の よい こと は みとめなかった。
 ところで まもなく バン に なって、 ダレ も マッチ 1 ポン すらなかった のに、 とつぜん アマザケヤ の ミセ が マヒル の よう に あかるく なった ので、 ミノスケ は びっくり した。 あまり あかるい ので、 ミノスケ は おもわず ウシロ を ふりむいて みた ほど だった。
「ミノ さん、 これ が デンキ だよ」
 ミノスケ は ハ を くいしばって、 ながい アイダ デントウ を みつめて いた。 カタキ でも にらんで いる よう な カオツキ で あった。 あまり みつめて いて メノタマ が いたく なった ほど だった。
「ミノ さん、 そう いっちゃ ナン だ が、 とても ランプ で タチウチ は できない よ。 ちょっと ソト へ クビ を だして マチドオリ を みて ごらん よ」
 ミノスケ は むっつり と イリグチ の ショウジ を あけて、 トオリ を ながめた。 どこ の イエ どこ の ミセ にも、 アマザケヤ の と おなじ よう に あかるい デントウ が ともって いた。 ヒカリ は イエ の ナカ に あまって、 ミチ の ウエ に まで こぼれでて いた。 ランプ を みなれて いた ミノスケ には まぶしすぎる ほど の アカリ だった。 ミノスケ は、 クヤシサ に カタ で イキ を しながら、 これ も ながい アイダ ながめて いた。
 ランプ の、 てごわい カタキ が でて きた わい、 と おもった。 イゼン には ブンメイ カイカ と いう こと を よく いって いた ミノスケ だった けれど、 デントウ が ランプ より いちだん すすんだ ブンメイ カイカ の リキ で ある と いう こと は わからなかった。 リコウ な ヒト でも、 ジブン が ショク を うしなう か どう か と いう よう な とき には、 モノゴト の ハンダン が ただしく つかなく なる こと が ある もの だ。
 その ヒ から ミノスケ は、 デントウ が ジブン の ムラ にも ひかれる よう に なる こと を、 こころひそか に おそれて いた。 デントウ が ともる よう に なれば、 ムラビト たち は ミンナ ランプ を、 あの アマザケヤ の した よう に カベ の スミ に つるす か、 クラ の 2 カイ に でも しまいこんで しまう だろう。 ランプ-ヤ の ショウバイ は いらなく なる だろう。
 だが、 ランプ で さえ ムラ へ はいって くる には かなり メンドウ だった から、 デントウ と なって は ムラビト たち は こわがって、 なかなか よせつける こと では あるまい、 と ミノスケ は、 イッポウ では アンシン も して いた。
 しかし まもなく、 「コンド の ソンカイ で、 ムラ に デントウ を ひく か どう か を きめる だ げな」 と いう ウワサ を きいた とき には、 ミノスケ は ノウテン に イチゲキ を くらった よう な キ が した。 キョウテキ いよいよ ござんなれ、 と おもった。
 そこで ミノスケ は だまって は いられなかった。 ムラ の ヒトビト の アイダ に、 デントウ ハンタイ の イケン を まくしたてた。
「デンキ と いう もの は、 ながい セン で ヤマ の オク から ひっぱって くる もん だで のい、 その セン をば ヨナカ に キツネ や タヌキ が つたって きて、 この キンペン の タハタ を あらす こと は ウケアイ だね」
 こういう ばかばかしい こと を ミノスケ は、 ジブン の なれた ショウバイ を まもる ため に いう の で あった。 それ を いう とき ナニ か うしろめたい キ が した けれども。
 ソンカイ が すんで、 いよいよ ヤナベ シンデン の ムラ にも デントウ を ひく こと に きまった と きかされた とき にも、 ミノスケ は ノウテン に イチゲキ を くらった よう な キ が した。 こう たびたび イチゲキ を くらって は たまらない、 アタマ が どうか なって しまう、 と おもった。
 その とおり で あった。 アタマ が どうか なって しまった。 ソンカイ の アト で ミッカ-カン、 ミノスケ は ヒルマ も フトン を ひっかぶって ねて いた。 その アイダ に アタマ の チョウシ が くるって しまった の だ。
 ミノスケ は ダレ か を うらみたくて たまらなかった。 そこで ソンカイ で ギチョウ の ヤク を した クチョウ さん を うらむ こと に した。 そして クチョウ さん を うらまねば ならぬ ワケ を いろいろ かんがえた。 ヘイゼイ は アタマ の よい ヒト でも、 ショウバイ を うしなう か どう か と いう よう な セトギワ では、 ただしい ハンダン を うしなう もの で ある。 とんでもない ウラミ を いだく よう に なる もの で ある。

 ナノハナバタ の、 あたたかい ツキヨ で あった。 どこ か の ムラ で ハルマツリ の シタク に うつ タイコ が とほとほ と きこえて きた。
 ミノスケ は ミチ を とおって ゆかなかった。 ミゾ の ナカ を イタチ の よう に ミ を かがめて はしったり、 ヤブ の ナカ を ステイヌ の よう に かきわけたり して いった。 タニン に みられたく ない とき、 ヒト は こう する もの だ。
 クチョウ さん の イエ には ながい アイダ ヤッカイ に なって いた ので、 よく その ヨウス は わかって いた。 ヒ を つける に いちばん ツゴウ の よい の は ワラヤネ の ウシゴヤ で ある こと は、 もう イエ を でる とき から かんがえて いた。
 オモヤ は もう ひっそり ねしずまって いた。 ウシゴヤ も しずか だった。 しずか だ と いって、 ウシ は ねむって いる か めざめて いる か わかった もん じゃ ない。 ウシ は おきて いて も ねて いて も しずか な もの だ から。 もっとも ウシ が メ を さまして いたって、 ヒ を つける には いっこう さしつかえない わけ だ けれども。
 ミノスケ は マッチ の カワリ に、 マッチ が まだ なかった ジブン つかわれて いた ヒウチ の ドウグ を もって きた。 イエ を でる とき、 カマド の アタリ で マッチ を さがした が、 どうした ワケ か なかなか みつからない ので、 テ に あたった の を サイワイ、 ヒウチ の ドウグ を もって きた の だった。
 ミノスケ は ヒウチ で ヒ を きりはじめた。 ヒバナ は とんだ が、 ホクチ が しめって いる の か、 ちっとも もえあがらない の で あった。 ミノスケ は ヒウチ と いう もの は、 あまり ベンリ な もの では ない と おもった。 ヒ が でない くせ に かちかち と おおきな オト ばかり して、 これ では ねて いる ヒト が メ を さまして しまう の で ある。
「ちぇっ」 と ミノスケ は シタウチ して いった。 「マッチ を もって くりゃ よかった。 こげな ヒウチ みてえ な ふるくせえ もなあ、 いざ と いう とき まにあわねえ だなあ」
 そう いって しまって ミノスケ は、 ふと ジブン の コトバ を ききとがめた。
「ふるくせえ もなあ、 いざ と いう とき まにあわねえ、 ……ふるくせえ もなあ まにあわねえ……」
 ちょうど ツキ が でて ソラ が あかるく なる よう に、 ミノスケ の アタマ が この コトバ を キッカケ に して あかるく はれて きた。
 ミノスケ は、 イマ に なって、 ジブン の まちがって いた こと が はっきり と わかった。 ――ランプ は もはや ふるい ドウグ に なった の で ある。 デントウ と いう あたらしい いっそう ベンリ な ドウグ の ヨノナカ に なった の で ある。 それだけ ヨノナカ が ひらけた の で ある。 ブンメイ カイカ が すすんだ の で ある。 ミノスケ も また ニッポン の オクニ の ニンゲン なら、 ニッポン が これだけ すすんだ こと を よろこんで いい はず なの だ。 ふるい ジブン の ショウバイ が うしなわれる から とて、 ヨノナカ の すすむ の に ジャマ しよう と したり、 なんの ウラミ も ない ヒト を うらんで ヒ を つけよう と した の は、 オトコ と して なんと いう みぐるしい ザマ で あった こと か。 ヨノナカ が すすんで、 ふるい ショウバイ が いらなく なれば、 おとこらしく、 すっぱり その ショウバイ は すてて、 ヨノナカ の ため に なる あたらしい ショウバイ に かわろう じゃ ない か。 ――
 ミノスケ は すぐ イエ へ とってかえした。
 そして それから どうした か。
 ねて いる オカミサン を おこして、 イマ イエ に ある スベテ の ランプ に セキユ を つがせた。
 オカミサン は、 こんな ヨフケ に ナニ を する つもり か ミノスケ に きいた が、 ミノスケ は ジブン が これから しよう と して いる こと を きかせれば、 オカミサン が とめる に きまって いる ので、 だまって いた。
 ランプ は ダイショウ サマザマ の が ミナ で 50 ぐらい あった。 それ に みな セキユ を ついだ。 そして いつも アキナイ に でる とき と おなじ よう に、 クルマ に それら の ランプ を つるして、 ソト に でた。 コンド は マッチ を わすれず に もって。
 ミチ が ニシ の トウゲ に さしかかる アタリ に、 ハンダイケ と いう おおきな イケ が ある。 ハル の こと で いっぱい たたえた ミズ が、 ツキ の シタ で ギンバン の よう に けぶりひかって いた。 イケ の キシ には ハンノキ や ヤナギ が、 ミズ の ナカ を のぞく よう な カッコウ で たって いた。
 ミノスケ は ヒトケ の ない ここ を えらんで きた。
 さて ミノスケ は どう する と いう の だろう。
 ミノスケ は ランプ に ヒ を ともした。 ヒトツ ともして は、 それ を イケ の フチ の キ の エダ に つるした。 ちいさい の も おおきい の も、 とりまぜて、 キ に いっぱい つるした。 1 ポン の キ で つるしきれない と、 その トナリ の キ に つるした。 こうして とうとう ミンナ の ランプ を 3 ボン の キ に つるした。
 カゼ の ない ヨル で、 ランプ は ヒトツヒトツ が しずか に まじろがず、 もえ、 アタリ は ヒル の よう に あかるく なった。 アカリ を したって よって きた サカナ が、 ミズ の ナカ に きらり きらり と ナイフ の よう に ひかった。
「ワシ の、 ショウバイ の ヤメカタ は これ だ」
と ミノスケ は ヒトリ で いった。 しかし たちさりかねて、 ながい アイダ リョウテ を たれた まま ランプ の スズナリ に なった キ を みつめて いた。
 ランプ、 ランプ、 なつかしい ランプ。 ながの トシツキ なじんで きた ランプ。
「ワシ の、 ショウバイ の ヤメカタ は これ だ」
 それから ミノスケ は イケ の コチラガワ の オウカン に きた。 まだ ランプ は、 ムコウガワ の キシ の ウエ に みな ともって いた。 50 イクツ が みな ともって いた。 そして ミズ の ウエ にも 50 イクツ の、 サカサマ の ランプ が ともって いた。 たちどまって ミノスケ は、 そこ でも ながく みつめて いた。
 ランプ、 ランプ、 なつかしい ランプ。
 やがて ミノスケ は かがんで、 アシモト から イシコロ を ヒトツ ひろった。 そして、 いちばん おおきく ともって いる ランプ に ネライ を さだめて、 ちからいっぱい なげた。 ぱりーん と オト が して、 おおきい ヒ が ヒトツ きえた。
「オマエタチ の ジセイ は すぎた。 ヨノナカ は すすんだ」
と ミノスケ は いった。 そして また ヒトツ イシコロ を ひろった。 2 バンメ に おおきかった ランプ が、 ぱりーん と なって きえた。
「ヨノナカ は すすんだ。 デンキ の ジセイ に なった」
 3 バンメ の ランプ を わった とき、 ミノスケ は なぜか ナミダ が うかんで きて、 もう ランプ に ネライ を さだめる こと が できなかった。
 こうして ミノスケ は イマ まで の ショウバイ を やめた。 それから マチ に でて、 あたらしい ショウバイ を はじめた。 ホンヤ に なった の で ある。

   *      *      *

「ミノスケ さん は イマ でも まだ ホンヤ を して いる。 もっとも イマ じゃ だいぶ としとった ので、 ムスコ が ミセ は やって いる がね」
と トウイチ くん の オジイサン は ハナシ を むすんで、 さめた オチャ を すすった。 ミノスケ さん と いう の は トウイチ くん の オジイサン の こと な ので、 トウイチ くん は まじまじ と オジイサン の カオ を みた。 いつのまにか トウイチ くん は オジイサン の マエ に すわりなおして、 オジイサン の ヒザ に テ を おいたり して いた の で ある。
「そいじゃ、 ノコリ の 47 の ランプ は どうした?」
と トウイチ くん は きいた。
「しらん。 ツギ の ヒ、 タビ の ヒト が みつけて もってった かも しれない」
「そいじゃ、 イエ には もう ヒトツ も ランプ なし に なっちゃった?」
「うん、 ヒトツ も なし。 この ダイ ランプ だけ が のこって いた」
と オジイサン は、 ヒルマ トウイチ くん が もちだした ランプ を みて いった。
「ソン しちゃった ね。 47 も ダレ か に もって かれちゃって」
と トウイチ くん が いった。
「うん ソン しちゃった。 イマ から かんがえる と、 なにも あんな こと を せん でも よかった と ワシ も おもう。 ヤナベ シンデン に デントウ が ひけて から でも、 まだ 50 ぐらい の ランプ は けっこう うれた ん だ から な。 ヤナベ シンデン の ミナミ に ある フカダニ なんと いう ちいさい ムラ じゃ、 まだ イマ でも ランプ を つかって いる し、 ホカ にも、 ずいぶん おそく まで ランプ を つかって いた ムラ は、 あった のさ。 しかし なにしろ ワシ も あの コロ は ゲンキ が よかった んで な。 おもいついたら、 ふかく も かんがえず、 ぱっぱっ と やって しまった ん だ」
「バカ しちゃった ね」
と トウイチ くん は マゴ だ から エンリョ なし に いった。
「うん、 バカ しちゃった。 しかし ね、 トウボウ――」
と オジイサン は、 キセル を ヒザ の ウエ で ぎゅっと にぎりしめて いった。
「ワシ の ヤリカタ は すこし バカ だった が、 ワシ の ショウバイ の ヤメカタ は、 ジブン で いう の も ナン だ が、 なかなか リッパ だった と おもう よ。 ワシ の いいたい の は こう さ、 ニッポン が すすんで、 ジブン の ふるい ショウバイ が オヤク に たたなく なったら、 すっぱり そいつ を すてる の だ。 いつまでも きたなく ふるい ショウバイ に かじりついて いたり、 ジブン の ショウバイ が はやって いた ムカシ の ほう が よかった と いったり、 ヨノナカ の すすんだ こと を うらんだり、 そんな イクジ の ねえ こと は けっして しない と いう こと だ」
 トウイチ くん は だまって、 ながい アイダ オジイサン の、 ちいさい けれど イキ の あらわれた カオ を ながめて いた。 やがて、 いった。
「オジイサン は えらかった ん だねえ」
 そして なつかしむ よう に、 カタワラ の ふるい ランプ を みた。
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