カナ文字文庫 (漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ニンゲン シッカク 4

2017-03-05 | ダザイ オサム
 ダイサン の シュキ

 1

 タケイチ の ヨゲン の、 ヒトツ は あたり、 ヒトツ は、 はずれました。 ほれられる と いう、 メイヨ で ない ヨゲン の ほう は、 あたりました が、 きっと えらい エカキ に なる と いう、 シュクフク の ヨゲン は、 はずれました。
 ジブン は、 わずか に、 ソアク な ザッシ の、 ムメイ の ヘタ な マンガカ に なる こと が できた だけ でした。
 カマクラ の ジケン の ため に、 コウトウ ガッコウ から は ツイホウ せられ、 ジブン は、 ヒラメ の イエ の 2 カイ の、 3 ジョウ の ヘヤ で ネオキ して、 コキョウ から は ツキヅキ、 きわめて ショウガク の カネ が、 それ も チョクセツ に ジブン-アテ では なく、 ヒラメ の ところ に ひそか に おくられて きて いる ヨウス でした が、 (しかも、 それ は コキョウ の アニ たち が、 チチ に かくして おくって くれて いる と いう ケイシキ に なって いた よう でした) それっきり、 アト は コキョウ との ツナガリ を ぜんぜん、 たちきられて しまい、 そうして、 ヒラメ は いつも フキゲン、 ジブン が アイソワライ を して も、 わらわず、 ニンゲン と いう もの は こんな にも カンタン に、 それこそ テノヒラ を かえす が ごとく に ヘンカ できる もの か と、 あさましく、 いや、 むしろ コッケイ に おもわれる くらい の、 ひどい カワリヨウ で、
「でちゃ いけません よ。 とにかく、 でない で ください よ」
 それ ばかり ジブン に いって いる の でした。
 ヒラメ は、 ジブン に ジサツ の オソレ あり と、 にらんで いる らしく、 つまり、 オンナ の アト を おって また ウミ へ とびこんだり する キケン が ある と みてとって いる らしく、 ジブン の ガイシュツ を かたく きんじて いる の でした。 けれども、 サケ も のめない し、 タバコ も すえない し、 ただ、 アサ から バン まで 2 カイ の 3 ジョウ の コタツ に もぐって、 フルザッシ なんか よんで アホウ ドウゼン の クラシ を して いる ジブン には、 ジサツ の キリョク さえ うしなわれて いました。
 ヒラメ の イエ は、 オオクボ の イセン の チカク に あり、 ショガ コットウショウ、 セイリュウエン、 だ など と カンバン の モジ だけ は ソウトウ に きばって いて も、 ヒトムネ 2 コ の、 その 1 コ で、 ミセ の マグチ も せまく、 テンナイ は ホコリダラケ で、 イイカゲン な ガラクタ ばかり ならべ、 (もっとも、 ヒラメ は その ミセ の ガラクタ に たよって ショウバイ して いる わけ では なく、 こっち の いわゆる ダンナ の ヒゾウ の もの を、 あっち の いわゆる ダンナ に その ショユウケン を ゆずる バアイ など に カツヤク して、 オカネ を もうけて いる らしい の です) ミセ に すわって いる こと は ほとんど なく、 たいてい アサ から、 むずかしそう な カオ を して そそくさ と でかけ、 ルス は 17~18 の コゾウ ヒトリ、 これ が ジブン の ミハリバン と いう わけ で、 ヒマ さえ あれば キンジョ の コドモ たち と ソト で キャッチ ボール など して いて も、 2 カイ の イソウロウ を まるで バカ か キチガイ くらい に おもって いる らしく、 オトナ の セッキョウ-くさい こと まで ジブン に いいきかせ、 ジブン は、 ヒト と イイアラソイ の できない タチ な ので、 つかれた よう な、 また、 カンシン した よう な カオ を して それ に ミミ を かたむけ、 フクジュウ して いる の でした。 この コゾウ は シブタ の カクシゴ で、 それでも ヘン な ジジョウ が あって、 シブタ は いわゆる オヤコ の ナノリ を せず、 また シブタ が ずっと ドクシン なの も、 なにやら その ヘン に リユウ が あって の こと らしく、 ジブン も イゼン、 ジブン の イエ の モノタチ から それ に ついて の ウワサ を、 ちょっと きいた よう な キ も する の です が、 ジブン は、 どうも タニン の ミノウエ には、 あまり キョウミ を もてない ほう な ので、 ふかい こと は なにも しりません。 しかし、 その コゾウ の メツキ にも、 ミョウ に サカナ の メ を レンソウ させる ところ が ありました から、 あるいは、 ホントウ に ヒラメ の カクシゴ、 ……でも、 それならば、 フタリ は じつに さびしい オヤコ でした。 ヨル おそく、 2 カイ の ジブン には ナイショ で、 フタリ で オソバ など を とりよせて ムゴン で たべて いる こと が ありました。
 ヒラメ の イエ では ショクジ は いつも その コゾウ が つくり、 2 カイ の ヤッカイモノ の ショクジ だけ は ベツ に オゼン に のせて コゾウ が サンド サンド 2 カイ に もちはこんで きて くれて、 ヒラメ と コゾウ は、 カイダン の シタ の じめじめ した 4 ジョウ ハン で なにやら、 かちゃかちゃ サラコバチ の ふれあう オト を させながら、 いそがしげ に ショクジ して いる の でした。
 3 ガツ スエ の ある ユウガタ、 ヒラメ は おもわぬ モウケグチ に でも ありついた の か、 または ナニ か ホカ に サクリャク でも あった の か、 (その フタツ の スイサツ が、 ともに あたって いた と して も、 おそらくは、 さらに また イクツ か の、 ジブン など には とても スイサツ の とどかない こまかい ゲンイン も あった の でしょう が) ジブン を カイカ の めずらしく オチョウシ など ついて いる ショクタク に まねいて、 ヒラメ ならぬ マグロ の サシミ に、 ゴチソウ の アルジ みずから カンプク し、 ショウサン し、 ぼんやり して いる イソウロウ にも すこしく オサケ を すすめ、
「どう する つもり なん です、 いったい、 これから」
 ジブン は それ に こたえず、 タクジョウ の サラ から タタミイワシ を つまみあげ、 その コザカナ たち の ギン の メダマ を ながめて いたら、 ヨイ が ほのぼの はっして きて、 あそびまわって いた コロ が なつかしく、 ホリキ で さえ なつかしく、 つくづく 「ジユウ」 が ほしく なり、 ふっと、 かぼそく なきそう に なりました。
 ジブン が この イエ へ きて から は、 ドウケ を えんずる ハリアイ さえ なく、 ただ もう ヒラメ と コゾウ の ベッシ の ナカ に ミ を よこたえ、 ヒラメ の ほう でも また、 ジブン と うちとけた ナガバナシ を する の を さけて いる ヨウス でした し、 ジブン も その ヒラメ を おいかけて ナニ か を うったえる キ など は おこらず、 ほとんど ジブン は、 マヌケヅラ の イソウロウ に なりきって いた の です。
「キソ ユウヨ と いう の は、 ゼンカ ナンパン とか、 そんな もの には、 ならない モヨウ です。 だから、 まあ、 アナタ の ココロガケ ヒトツ で、 コウセイ が できる わけ です。 アナタ が、 もし、 カイシン して、 アナタ の ほう から、 マジメ に ワタシ に ソウダン を もちかけて くれたら、 ワタシ も かんがえて みます」
 ヒラメ の ハナシカタ には、 いや、 ヨノナカ の ゼンブ の ヒト の ハナシカタ には、 このよう に ややこしく、 どこ か もうろう と して、 ニゲゴシ と でも いった みたい な ビミョウ な フクザツサ が あり、 その ほとんど ムエキ と おもわれる くらい の ゲンジュウ な ケイカイ と、 ムスウ と いって いい くらい の こうるさい カケヒキ と には、 いつも ジブン は トウワク し、 どうでも いい や と いう キブン に なって、 オドウケ で ちゃかしたり、 または ムゴン の シュコウ で いっさい オマカセ と いう、 いわば ハイボク の タイド を とって しまう の でした。
 この とき も ヒラメ が、 ジブン に むかって、 だいたい ツギ の よう に カンタン に ホウコク すれば、 それ で すむ こと だった の を ジブン は コウネン に いたって しり、 ヒラメ の フヒツヨウ な ヨウジン、 いや、 ヨノナカ の ヒトタチ の フカカイ な ミエ、 オテイサイ に、 なんとも インウツ な オモイ を しました。
 ヒラメ は、 その とき、 ただ こう いえば よかった の でした。
「カンリツ でも シリツ でも、 とにかく 4 ガツ から、 どこ か の ガッコウ へ はいりなさい。 アナタ の セイカツヒ は、 ガッコウ へ はいる と、 クニ から、 もっと ジュウブン に おくって くる こと に なって いる の です」
 ずっと アト に なって わかった の です が、 ジジツ は、 そのよう に なって いた の でした。 そうして、 ジブン も その イイツケ に したがった でしょう。 それなのに、 ヒラメ の いやに ヨウジン-ぶかく もって まわった イイカタ の ため に、 ミョウ に こじれ、 ジブン の いきて ゆく ホウコウ も まるで かわって しまった の です。
「マジメ に ワタシ に ソウダン を もちかけて くれる キモチ が なければ、 シヨウ が ない です が」
「どんな ソウダン?」
 ジブン には、 ホントウ に なにも ケントウ が つかなかった の です。
「それ は、 アナタ の ムネ に ある こと でしょう?」
「たとえば?」
「たとえば って、 アナタ ジシン、 これから どう する キ なん です」
「はたらいた ほう が、 いい ん です か?」
「いや、 アナタ の キモチ は、 いったい どう なん です」
「だって、 ガッコウ へ はいる と いったって、 ……」
「そりゃ、 オカネ が いります。 しかし、 モンダイ は、 オカネ で ない。 アナタ の キモチ です」
 オカネ は、 クニ から くる こと に なって いる ん だ から、 と なぜ ヒトコト、 いわなかった の でしょう。 その ヒトコト に よって、 ジブン の キモチ も、 きまった はず な のに、 ジブン には、 ただ ゴリ ムチュウ でした。
「どう です か? ナニ か、 ショウライ の キボウ、 と でも いった もの が、 ある ん です か? いったい、 どうも、 ヒト を ヒトリ セワ して いる と いう の は、 どれだけ むずかしい もの だ か、 セワ されて いる ヒト には、 わかりますまい」
「すみません」
「そりゃ、 じつに、 シンパイ な もの です。 ワタシ も、 いったん アナタ の セワ を ひきうけた イジョウ、 アナタ にも、 ナマハンカ な キモチ で いて もらいたく ない の です。 リッパ に コウセイ の ミチ を たどる、 と いう カクゴ の ホド を みせて もらいたい の です。 たとえば、 アナタ の ショウライ の ホウシン、 それ に ついて アナタ の ほう から ワタシ に、 マジメ に ソウダン を もちかけて きた なら、 ワタシ も その ソウダン には おうずる つもり で います。 それ は、 どうせ こんな、 ビンボウ な ヒラメ の エンジョ なの です から、 イゼン の よう な ゼイタク を のぞんだら、 アテ が はずれます。 しかし、 アナタ の キモチ が しっかり して いて、 ショウライ の ホウシン を はっきり うちたて、 そうして ワタシ に ソウダン を して くれたら、 ワタシ は、 たとい わずか ずつ でも、 アナタ の コウセイ の ため に、 おてつだい しよう と さえ おもって いる ん です。 わかります か? ワタシ の キモチ が。 いったい、 アナタ は、 これから、 どう する つもり で いる の です」
「ここ の 2 カイ に、 おいて もらえなかったら、 はたらいて、 ……」
「ホンキ で、 そんな こと を いって いる の です か? イマ の この ヨノナカ に、 たとい テイコク ダイガッコウ を でたって、 ……」
「いいえ、 サラリーマン に なる ん では ない ん です」
「それじゃ、 ナン です」
「ガカ です」
 おもいきって、 それ を いいました。
「へええ?」
 ジブン は、 その とき の、 クビ を ちぢめて わらった ヒラメ の カオ の、 いかにも ずるそう な カゲ を わすれる こと が できません。 ケイベツ の カゲ にも にて、 それ とも ちがい、 ヨノナカ を ウミ に たとえる と、 その ウミ の チヒロ の フカサ の カショ に、 そんな キミョウ な カゲ が たゆとうて いそう で、 ナニ か、 オトナ の セイカツ の オクソコ を ちらと のぞかせた よう な ワライ でした。
 そんな こと では ハナシ にも なにも ならぬ、 ちっとも キモチ が しっかり して いない、 かんがえなさい、 コンヤ ヒトバン マジメ に かんがえて みなさい、 と いわれ、 ジブン は おわれる よう に 2 カイ に あがって、 ねて も、 べつに なんの カンガエ も うかびません でした。 そうして、 アケガタ に なり、 ヒラメ の イエ から にげました。
 ユウガタ、 マチガイ なく かえります。 サキ の ユウジン の モト へ、 ショウライ の ホウシン に ついて ソウダン に いって くる の です から、 ゴシンパイ なく。 ホントウ に。
 と、 ヨウセン に エンピツ で おおきく かき、 それから、 アサクサ の ホリキ マサオ の ジュウショ セイメイ を きして、 こっそり、 ヒラメ の イエ を でました。
 ヒラメ に セッキョウ せられた の が、 くやしくて にげた わけ では ありません でした。 まさしく ジブン は、 ヒラメ の いう とおり、 キモチ の しっかり して いない オトコ で、 ショウライ の ホウシン も なにも ジブン には まるで ケントウ が つかず、 このうえ、 ヒラメ の イエ の ヤッカイ に なって いる の は、 ヒラメ にも キノドク です し、 その うち に、 もし まんいち、 ジブン にも ハップン の キモチ が おこり、 ココロザシ を たてた ところ で、 その コウセイ シキン を あの ビンボウ な ヒラメ から ツキヅキ エンジョ せられる の か と おもう と、 とても こころぐるしくて、 いたたまらない キモチ に なった から でした。
 しかし、 ジブン は、 いわゆる 「ショウライ の ホウシン」 を、 ホリキ ごとき に、 ソウダン に ゆこう など と ホンキ に おもって、 ヒラメ の イエ を でた の では なかった の でした。 それ は、 ただ、 わずか でも、 ツカノマ でも、 ヒラメ に アンシン させて おきたくて、 (その アイダ に ジブン が、 すこし でも トオク へ にげのびて いたい と いう タンテイ ショウセツテキ な サクリャク から、 そんな オキテガミ を かいた、 と いう より は、 いや、 そんな キモチ も かすか に あった に ちがいない の です が、 それ より も、 やはり ジブン は、 いきなり ヒラメ に ショック を あたえ、 カレ を コンラン トウワク させて しまう の が、 おそろしかった ばかり に、 と でも いった ほう が、 いくらか セイカク かも しれません。 どうせ、 ばれる に きまって いる のに、 その とおり に いう の が、 おそろしくて、 かならず なにかしら カザリ を つける の が、 ジブン の かなしい セイヘキ の ヒトツ で、 それ は セケン の ヒト が 「ウソツキ」 と よんで いやしめて いる セイカク に にて いながら、 しかし、 ジブン は ジブン に リエキ を もたらそう と して その カザリツケ を おこなった こと は ほとんど なく、 ただ フンイキ の きょうざめた イッペン が、 チッソク する くらい に おそろしくて、 アト で ジブン に フリエキ に なる と いう こと が わかって いて も、 レイ の ジブン の 「ヒッシ の ホウシ」 それ は たとい ゆがめられ ビジャク で、 ばからしい もの で あろう と、 その ホウシ の キモチ から、 つい イチゴン の カザリツケ を して しまう と いう バアイ が おおかった よう な キ も する の です が、 しかし、 この シュウセイ も また、 セケン の いわゆる 「ショウジキモノ」 たち から、 おおいに じょうぜられる ところ と なりました) その とき、 ふっと、 キオク の ソコ から うかんで きた まま に ホリキ の ジュウショ と セイメイ を、 ヨウセン の ハシ に したためた まで の こと だった の です。
 ジブン は ヒラメ の イエ を でて、 シンジュク まで あるき、 カイチュウ の ホン を うり、 そうして、 やっぱり トホウ に くれて しまいました。 ジブン は、 ミナ に アイソ が いい カワリ に、 「ユウジョウ」 と いう もの を、 イチド も ジッカン した こと が なく、 ホリキ の よう な アソビ トモダチ は ベツ と して、 イッサイ の ツキアイ は、 ただ クツウ を おぼえる ばかり で、 その クツウ を もみほぐそう と して ケンメイ に オドウケ を えんじて、 かえって、 へとへと に なり、 わずか に しりあって いる ヒト の カオ を、 それ に にた カオ を さえ、 オウライ など で みかけて も、 ぎょっと して、 イッシュン、 メマイ する ほど の フカイ な センリツ に おそわれる アリサマ で、 ヒト に すかれる こと は しって いて も、 ヒト を あいする ノウリョク に おいて は かけて いる ところ が ある よう でした。 (もっとも、 ジブン は、 ヨノナカ の ニンゲン に だって、 はたして、 「アイ」 の ノウリョク が ある の か どう か、 たいへん ギモン に おもって います) そのよう な ジブン に、 いわゆる 「シンユウ」 など できる はず は なく、 そのうえ ジブン には、 「ヴィジット」 の ノウリョク さえ なかった の です。 タニン の イエ の モン は、 ジブン に とって、 あの シンキョク の ジゴク の モン イジョウ に うすきみわるく、 その モン の オク には、 おそろしい リュウ みたい な なまぐさい キジュウ が うごめいて いる ケハイ を、 コチョウ で なし に、 ジッカン せられて いた の です。
 ダレ とも、 ツキアイ が ない。 どこ へも、 たずねて ゆけない。
 ホリキ。
 それこそ、 ジョウダン から コマ が でた カタチ でした。 あの オキテガミ に、 かいた とおり に、 ジブン は アサクサ の ホリキ を たずねて ゆく こと に した の です。 ジブン は これまで、 ジブン の ほう から ホリキ の イエ を たずねて いった こと は、 イチド も なく、 たいてい デンポウ で ホリキ を ジブン の ほう に よびよせて いた の です が、 イマ は その デンポウリョウ さえ こころぼそく、 それに おちぶれた ミ の ヒガミ から、 デンポウ を うった だけ では、 ホリキ は、 きて くれぬ かも しれぬ と かんがえて、 ナニ より も ジブン に ニガテ の 「ホウモン」 を ケツイ し、 タメイキ を ついて シデン に のり、 ジブン に とって、 この ヨノナカ で たった ヒトツ の タノミ の ツナ は、 あの ホリキ なの か、 と おもいしったら、 ナニ か セスジ の さむく なる よう な すさまじい ケハイ に おそわれました。
 ホリキ は、 ザイタク でした。 きたない ロジ の オク の、 ニカイヤ で、 ホリキ は 2 カイ の たった ヒトヘヤ の 6 ジョウ を つかい、 シタ では、 ホリキ の ロウフボ と、 それから わかい ショクニン と 3 ニン、 ゲタ の ハナオ を ぬったり たたいたり して セイゾウ して いる の でした。
 ホリキ は、 その ヒ、 カレ の トカイジン と して の あたらしい イチメン を ジブン に みせて くれました。 それ は、 ぞくに いう チャッカリショウ でした。 イナカモノ の ジブン が、 がくぜん と メ を みはった くらい の、 つめたく、 ずるい エゴイズム でした。 ジブン の よう に、 ただ、 トメド なく ながれる タチ の オトコ では なかった の です。
「オマエ には、 まったく あきれた。 オヤジサン から、 オユルシ が でた かね。 まだ かい」
 にげて きた、 とは、 いえません でした。
 ジブン は、 レイ に よって、 ごまかしました。 いまに、 すぐ、 ホリキ に きづかれる に ちがいない のに、 ごまかしました。
「それ は、 どうにか なる さ」
「おい、 ワライゴト じゃ ない ぜ。 チュウコク する けど、 バカ も この ヘン で やめる ん だな。 オレ は、 キョウ は、 ヨウジ が ある ん だ がね。 コノゴロ、 バカ に いそがしい ん だ」
「ヨウジ って、 どんな?」
「おい、 おい、 ザブトン の イト を きらない で くれ よ」
 ジブン は ハナシ を しながら、 ジブン の しいて いる ザブトン の トジイト と いう の か、 ククリヒモ と いう の か、 あの フサ の よう な ヨスミ の イト の ヒトツ を ムイシキ に ユビサキ で もてあそび、 ぐいと ひっぱったり など して いた の でした。 ホリキ は、 ホリキ の イエ の シナモノ なら、 ザブトン の イト 1 ポン でも おしい らしく、 はじる イロ も なく、 それこそ、 メ に カド を たてて、 ジブン を とがめる の でした。 かんがえて みる と、 ホリキ は、 これまで ジブン との ツキアイ に おいて なにひとつ うしなって は いなかった の です。
 ホリキ の ロウボ が、 オシルコ を フタツ オボン に のせて もって きました。
「あ、 これ は」
 と ホリキ は、 しんから の コウコウ ムスコ の よう に、 ロウボ に むかって キョウシュク し、 コトバヅカイ も フシゼン な くらい に テイネイ に、
「すみません、 オシルコ です か。 ゴウギ だなあ。 こんな シンパイ は、 いらなかった ん です よ。 ヨウジ で、 すぐ ガイシュツ しなけりゃ いけない ん です から。 いいえ、 でも、 せっかく の ゴジマン の オシルコ を、 もったいない。 いただきます。 オマエ も ひとつ、 どう だい。 オフクロ が、 わざわざ つくって くれた ん だ。 ああ、 こいつ あ、 うめえ や。 ゴウギ だなあ」
 と、 まんざら シバイ でも ない みたい に、 ひどく よろこび、 おいしそう に たべる の です。 ジブン も それ を すすりました が、 オユ の ニオイ が して、 そうして、 オモチ を たべたら、 それ は オモチ で なく、 ジブン には わからない もの でした。 けっして、 その マズシサ を ケイベツ した の では ありません。 (ジブン は、 その とき それ を、 まずい とは おもいません でした し、 また、 ロウボ の ココロヅクシ も ミ に しみました。 ジブン には、 マズシサ への キョウフカン は あって も、 ケイベツカン は、 ない つもり で います) あの オシルコ と、 それから、 その オシルコ を よろこぶ ホリキ に よって、 ジブン は、 トカイジン の つましい ホンショウ、 また、 ウチ と ソト を ちゃんと クベツ して いとなんで いる トウキョウ の ヒト の カテイ の ジッタイ を みせつけられ、 ウチ も ソト も カワリ なく、 ただ のべつまくなし に ニンゲン の セイカツ から にげまわって ばかり いる ウスバカ の ジブン ヒトリ だけ カンゼン に とりのこされ、 ホリキ に さえ みすてられた よう な ケハイ に、 ロウバイ し、 オシルコ の はげた ヌリバシ を あつかいながら、 たまらなく わびしい オモイ を した と いう こと を、 しるして おきたい だけ なの です。
「わるい けど、 オレ は、 キョウ は ヨウジ が ある んで ね」
 ホリキ は たって、 ウワギ を きながら そう いい、
「シッケイ する ぜ、 わるい けど」
 その とき、 ホリキ に オンナ の ホウモンシャ が あり、 ジブン の ミノウエ も キュウテン しました。
 ホリキ は、 にわか に カッキ-づいて、
「や、 すみません。 イマ ね、 アナタ の ほう へ おうかがい しよう と おもって いた の です がね、 この ヒト が とつぜん やって きて、 いや、 かまわない ん です。 さあ、 どうぞ」
 よほど、 あわてて いる らしく、 ジブン が ジブン の しいて いる ザブトン を はずして ウラガエシ に して さしだした の を ひったくって、 また ウラガエシ に して、 その オンナ の ヒト に すすめました。 ヘヤ には、 ホリキ の ザブトン の ホカ には、 キャク ザブトン が たった 1 マイ しか なかった の です。
 オンナ の ヒト は やせて、 セ の たかい ヒト でした。 その ザブトン は ソバ に のけて、 イリグチ チカク の カタスミ に すわりました。
 ジブン は、 ぼんやり フタリ の カイワ を きいて いました。 オンナ は ザッシシャ の ヒト の よう で、 ホリキ に カット だ か、 なんだか を かねて たのんで いた らしく、 それ を ウケトリ に きた みたい な グアイ でした。
「いそぎます ので」
「できて います。 もう とっく に できて います。 これ です、 どうぞ」
 デンポウ が きました。
 ホリキ が、 それ を よみ、 ジョウキゲン の その カオ が みるみる ケンアク に なり、
「ちぇっ! オマエ、 こりゃ、 どうした ん だい」
 ヒラメ から の デンポウ でした。
「とにかく、 すぐに かえって くれ。 オレ が、 オマエ を おくりとどける と いい ん だろう が、 オレ には イマ、 そんな ヒマ は、 ねえ や。 イエデ して いながら、 その、 ノンキ そう な ツラ ったら」
「オタク は、 どちら なの です か?」
「オオクボ です」
 ふいと こたえて しまいました。
「そんなら、 シャ の チカク です から」
 オンナ は、 コウシュウ の ウマレ で 28 サイ でした。 イツツ に なる ジョジ と、 コウエンジ の アパート に すんで いました。 オット と シベツ して、 3 ネン に なる と いって いました。
「アナタ は、 ずいぶん クロウ して そだって きた みたい な ヒト ね。 よく キ が きく わ。 かわいそう に」
 はじめて、 オトコメカケ みたい な セイカツ を しました。 シヅコ (と いう の が、 その オンナ キシャ の ナマエ でした) が シンジュク の ザッシシャ に ツトメ に でた アト は、 ジブン と それから シゲコ と いう イツツ の ジョジ と フタリ、 おとなしく オルスバン と いう こと に なりました。 それまで は、 ハハ の ルス には、 シゲコ は アパート の カンリニン の ヘヤ で あそんで いた よう でした が、 「キ の きく」 オジサン が アソビアイテ と して あらわれた ので、 おおいに ゴキゲン が いい ヨウス でした。
 1 シュウカン ほど、 ぼんやり、 ジブン は そこ に いました。 アパート の マド の すぐ チカク の デンセン に、 ヤッコダコ が ヒトツ ひっからまって いて、 ハル の ホコリカゼ に ふかれ、 やぶられ、 それでも なかなか、 しつっこく デンセン に からみついて はなれず、 なにやら うなずいたり なんか して いる ので、 ジブン は それ を みる たび ごと に クショウ し、 セキメン し、 ユメ に さえ みて、 うなされました。
「オカネ が、 ほしい な」
「……いくら ぐらい?」
「タクサン。 ……カネ の キレメ が、 エン の キレメ、 って、 ホントウ の こと だよ」
「ばからしい。 そんな、 ふるくさい、 ……」
「そう? しかし、 キミ には、 わからない ん だ。 コノママ では、 ボク は、 にげる こと に なる かも しれない」
「いったい、 どっち が ビンボウ なの よ。 そうして、 どっち が にげる のよ。 ヘン ねえ」
「ジブン で かせいで、 その オカネ で、 オサケ、 いや、 タバコ を かいたい。 エ だって ボク は、 ホリキ なんか より、 ずっと ジョウズ な つもり なん だ」
 このよう な とき、 ジブン の ノウリ に おのずから うかびあがって くる もの は、 あの チュウガク ジダイ に かいた タケイチ の いわゆる 「オバケ」 の、 スウマイ の ジガゾウ でした。 うしなわれた ケッサク。 それ は、 たびたび の ヒッコシ の アイダ に、 うしなわれて しまって いた の です が、 あれ だけ は、 たしか に すぐれて いる エ だった よう な キ が する の です。 ソノゴ、 さまざま かいて みて も、 その オモイデ の ナカ の イッピン には、 とおく とおく およばず、 ジブン は いつも、 ムネ が カラッポ に なる よう な、 だるい ソウシツカン に なやまされつづけて きた の でした。
 のみのこした 1 パイ の アブサン。
 ジブン は、 その エイエン に つぐないがたい よう な ソウシツカン を、 こっそり そう ケイヨウ して いました。 エ の ハナシ が でる と、 ジブン の ガンゼン に、 その のみのこした 1 パイ の アブサン が ちらついて きて、 ああ、 あの エ を この ヒト に みせて やりたい、 そうして、 ジブン の ガサイ を しんじさせたい、 と いう ショウソウ に もだえる の でした。
「ふふ、 どう だ か。 アナタ は、 マジメ な カオ を して ジョウダン を いう から かわいい」
 ジョウダン では ない の だ、 ホントウ なん だ、 ああ、 あの エ を みせて やりたい、 と クウテン の ハンモン を して、 ふいと キ を かえ、 あきらめて、
「マンガ さ。 すくなくとも、 マンガ なら、 ホリキ より は、 うまい つもり だ」
 その、 ゴマカシ の ドウケ の コトバ の ほう が、 かえって マジメ に しんぜられました。
「そう ね。 ワタシ も、 じつは カンシン して いた の。 シゲコ に いつも かいて やって いる マンガ、 つい ワタシ まで ふきだして しまう。 やって みたら、 どう? ワタシ の シャ の ヘンシュウチョウ に、 たのんで みて あげて も いい わ」
 その シャ では、 コドモ アイテ の あまり ナマエ を しられて いない ゲッカン の ザッシ を ハッコウ して いた の でした。
 ……アナタ を みる と、 タイテイ の オンナ の ヒト は、 ナニ か して あげたくて、 たまらなく なる。 ……いつも、 おどおど して いて、 それでいて、 コッケイカ なん だ もの。 ……ときたま、 ヒトリ で、 ひどく しずんで いる けれども、 その サマ が、 いっそう オンナ の ヒト の ココロ を、 かゆがらせる。
 シヅコ に、 その ホカ サマザマ の こと を いわれて、 おだてられて も、 それ が すなわち オトコメカケ の けがらわしい トクシツ なの だ、 と おもえば、 それこそ いよいよ 「しずむ」 ばかり で、 いっこう に ゲンキ が でず、 オンナ より は カネ、 とにかく シヅコ から のがれて ジカツ したい と ひそか に ねんじ、 クフウ して いる ものの、 かえって だんだん シヅコ に たよらなければ ならぬ ハメ に なって、 イエデ の アトシマツ やら なにやら、 ほとんど ゼンブ、 この オトコマサリ の コウシュウ オンナ の セワ を うけ、 いっそう ジブン は、 シヅコ に たいし、 いわゆる 「おどおど」 しなければ ならぬ ケッカ に なった の でした。
 シヅコ の トリハカライ で、 ヒラメ、 ホリキ、 それに シヅコ、 3 ニン の カイダン が セイリツ して、 ジブン は、 コキョウ から まったく ゼツエン せられ、 そうして シヅコ と 「テンカ はれて」 ドウセイ と いう こと に なり、 これ また、 シヅコ の ホンソウ の おかげ で ジブン の マンガ も あんがい オカネ に なって、 ジブン は その オカネ で、 オサケ も、 タバコ も かいました が、 ジブン の ココロボソサ、 ウットウシサ は、 いよいよ つのる ばかり なの でした。 それこそ 「しずみ」 に 「しずみ」 きって、 シヅコ の ザッシ の マイツキ の レンサイ マンガ 「キンタ さん と オタ さん の ボウケン」 を かいて いる と、 ふいと コキョウ の イエ が おもいだされ、 あまり の ワビシサ に、 ペン が うごかなく なり、 うつむいて ナミダ を こぼした こと も ありました。
 そういう とき の ジブン に とって、 かすか な スクイ は、 シゲコ でした。 シゲコ は、 その コロ に なって ジブン の こと を、 なにも こだわらず に 「オトウチャン」 と よんで いました。
「オトウチャン。 オイノリ を する と、 カミサマ が、 なんでも くださる って、 ホントウ?」
 ジブン こそ、 その オイノリ を したい と おもいました。
 ああ、 ワレ に つめたき イシ を あたえたまえ。 ワレ に、 「ニンゲン」 の ホンシツ を しらしめたまえ。 ヒト が ヒト を おしのけて も、 ツミ ならず や。 ワレ に、 イカリ の マスク を あたえたまえ。
「うん、 そう。 シゲ ちゃん には なんでも くださる だろう けれども、 オトウチャン には、 ダメ かも しれない」
 ジブン は カミ に さえ、 おびえて いました。 カミ の アイ は しんぜられず、 カミ の バツ だけ を しんじて いる の でした。 シンコウ。 それ は、 ただ カミ の ムチ を うける ため に、 うなだれて シンパン の ダイ に むかう こと の よう な キ が して いる の でした。 ジゴク は しんぜられて も、 テンゴク の ソンザイ は、 どうしても しんぜられなかった の です。
「どうして、 ダメ なの?」
「オヤ の イイツケ に、 そむいた から」
「そう? オトウチャン は とても いい ヒト だ って、 ミンナ いう けど な」
 それ は、 だまして いる から だ、 この アパート の ヒトタチ ミナ に、 ジブン が コウイ を しめされて いる の は、 ジブン も しって いる、 しかし、 ジブン は、 どれほど ミナ を キョウフ して いる か、 キョウフ すれば する ほど すかれ、 そうして、 こちら は すかれる と すかれる ほど キョウフ し、 ミナ から はなれて ゆかねば ならぬ、 この フコウ な ビョウヘキ を、 シゲコ に セツメイ して きかせる の は、 シナン の こと でした。
「シゲ ちゃん は、 いったい、 カミサマ に ナニ を おねだり したい の?」
 ジブン は、 なにげなさそう に ワトウ を てんじました。
「シゲコ は ね、 シゲコ の ホントウ の オトウチャン が ほしい の」
 ぎょっと して、 くらくら メマイ しました。 テキ。 ジブン が シゲコ の テキ なの か、 シゲコ が ジブン の テキ なの か、 とにかく、 ここ にも ジブン を おびやかす おそろしい オトナ が いた の だ、 タニン、 フカカイ な タニン、 ヒミツ-だらけ の タニン、 シゲコ の カオ が、 にわか に そのよう に みえて きました。
 シゲコ だけ は、 と おもって いた のに、 やはり、 この モノ も、 あの 「フイ に アブ を たたきころす ウシ の シッポ」 を もって いた の でした。 ジブン は、 それ イライ、 シゲコ に さえ おどおど しなければ ならなく なりました。
「シキマ! いる かい?」
 ホリキ が、 また ジブン の ところ へ たずねて くる よう に なって いた の です。 あの イエデ の ヒ に、 あれほど ジブン を さびしく させた オトコ な のに、 それでも ジブン は キョヒ できず、 かすか に わらって むかえる の でした。
「オマエ の マンガ は、 なかなか ニンキ が でて いる そう じゃ ない か。 アマチュア には、 こわい もの しらず の クソドキョウ が ある から かなわねえ。 しかし、 ユダン するな よ。 デッサン が、 ちっとも なって や しない ん だ から」
 オシショウ みたい な タイド を さえ しめす の です。 ジブン の あの 「オバケ」 の エ を、 コイツ に みせたら、 どんな カオ を する だろう、 と レイ の クウテン の ミモダエ を しながら、
「それ を いって くれるな。 ぎゃっ と いう ヒメイ が でる」
 ホリキ は、 いよいよ トクイ そう に、
「ヨワタリ の サイノウ だけ では、 いつかは、 ボロ が でる から な」
 ヨワタリ の サイノウ。 ……ジブン には、 ホントウ に クショウ の ホカ は ありません でした。 ジブン に、 ヨワタリ の サイノウ! しかし、 ジブン の よう に ニンゲン を おそれ、 さけ、 ごまかして いる の は、 レイ の ゾクゲン の 「さわらぬ カミ に タタリ なし」 とか いう レイリ コウカツ の ショセイクン を ジュンポウ して いる の と、 おなじ カタチ だ、 と いう こと に なる の でしょう か。 ああ、 ニンゲン は、 おたがい なにも アイテ を わからない、 まるっきり まちがって みて いながら、 ムニ の シンユウ の つもり で いて、 イッショウ、 それ に きづかず、 アイテ が しねば、 ないて チョウジ なんか を よんで いる の では ない でしょう か。
 ホリキ は、 なにせ、 (それ は シヅコ に おして たのまれて しぶしぶ ひきうけた に ちがいない の です が) ジブン の イエデ の アトシマツ に たちあった ヒト な ので、 まるで もう、 ジブン の コウセイ の ダイオンジン か、 ゲッカ ヒョウジン の よう に ふるまい、 もっともらしい カオ を して ジブン に オセッキョウ-めいた こと を いったり、 また、 シンヤ、 よっぱらって ホウモン して とまったり、 また、 5 エン (きまって 5 エン でした) かりて いったり する の でした。
「しかし、 オマエ の、 オンナ ドウラク も この ヘン で よす ん だね。 これ イジョウ は、 セケン が、 ゆるさない から な」
 セケン とは、 いったい、 なんの こと でしょう。 ニンゲン の フクスウ でしょう か。 どこ に、 その セケン と いう もの の ジッタイ が ある の でしょう。 けれども、 なにしろ、 つよく、 きびしく、 こわい もの、 と ばかり おもって これまで いきて きた の です が、 しかし、 ホリキ に そう いわれて、 ふと、
「セケン と いう の は、 キミ じゃ ない か」
 と いう コトバ が、 シタ の サキ まで でかかって、 ホリキ を おこらせる の が いや で、 ひっこめました。
(それ は セケン が、 ゆるさない)
(セケン じゃ ない。 アナタ が、 ゆるさない の でしょう?)
(そんな こと を する と、 セケン から ひどい メ に あう ぞ)
(セケン じゃ ない。 アナタ でしょう?)
(いまに セケン から ほうむられる)
(セケン じゃ ない。 ほうむる の は、 アナタ でしょう?)
 ナンジ は、 ナンジ コジン の オソロシサ、 カイキ、 アクラツ、 フルダヌキ-セイ、 ヨウバ-セイ を しれ! など と、 サマザマ の コトバ が キョウチュウ に キョライ した の です が、 ジブン は、 ただ カオ の アセ を ハンケチ で ふいて、
「ヒヤアセ、 ヒヤアセ」
 と いって わらった だけ でした。
 けれども、 その とき イライ、 ジブン は、 (セケン とは コジン じゃ ない か) と いう、 シソウ-めいた もの を もつ よう に なった の です。
 そうして、 セケン と いう もの は、 コジン では なかろう か と おもいはじめて から、 ジブン は、 イマ まで より は たしょう、 ジブン の イシ で うごく こと が できる よう に なりました。 シヅコ の コトバ を かりて いえば、 ジブン は すこし ワガママ に なり、 おどおど しなく なりました。 また、 ホリキ の コトバ を かりて いえば、 へんに ケチ に なりました。 また、 シゲコ の コトバ を かりて いえば、 あまり シゲコ を かわいがらなく なりました。
 ムクチ で、 わらわず、 マイニチ マイニチ、 シゲコ の オモリ を しながら、 「キンタ さん と オタ さん の ボウケン」 やら、 また ノンキ な トウサン の れきぜん たる アリュウ の 「ノンキ オショウ」 やら、 また、 「セッカチ ピン ちゃん」 と いう ジブン ながら ワケ の わからぬ ヤケクソ の ダイ の レンサイ マンガ やら を、 カクシャ の ゴチュウモン (ぽつり ぽつり、 シヅコ の シャ の ホカ から も チュウモン が くる よう に なって いました が、 すべて それ は、 シヅコ の シャ より も、 もっと ゲヒン な いわば サンリュウ シュッパンシャ から の チュウモン ばかり でした) に おうじ、 じつに じつに インウツ な キモチ で、 のろのろ と、 (ジブン の エ の ウンピツ は、 ヒジョウ に おそい ほう でした) イマ は ただ、 サカダイ が ほしい ばかり に かいて、 そうして、 シヅコ が シャ から かえる と それ と コウタイ に ぷいと ソト へ でて、 コウエンジ の エキ チカク の ヤタイ や スタンド バー で やすくて つよい サケ を のみ、 すこし ヨウキ に なって アパート へ かえり、
「みれば みる ほど、 ヘン な カオ を して いる ねえ、 オマエ は。 ノンキ オショウ の カオ は、 じつは、 オマエ の ネガオ から ヒント を えた の だ」
「アナタ の ネガオ だって、 ずいぶん おふけ に なりまして よ。 シジュウ オトコ みたい」
「オマエ の せい だ。 すいとられた ん だ。 ミズ の ナガレ と、 ヒト の ミ はあ さ。 ナニ を くよくよ カワバタ ヤナギイ さ」
「さわがない で、 はやく おやすみなさい よ。 それとも、 ゴハン を あがります か?」
 おちついて いて、 まるで アイテ に しません。
「サケ なら のむ がね。 ミズ の ナガレ と、 ヒト の ミ はあ さ。 ヒト の ナガレ と、 いや、 ミズ の ナガレエ と、 ミズ の ミ はあ さ」
 うたいながら、 シヅコ に イフク を ぬがせられ、 シヅコ の ムネ に ジブン の ヒタイ を おしつけて ねむって しまう、 それ が ジブン の ニチジョウ でした。

  して その あくる ヒ も おなじ こと を くりかえして、
  キノウ に かわらぬ シキタリ に したがえば よい。
  すなわち あらっぽい おおきな ヨロコビ を よけて さえ いれば、
  しぜん また おおきな カナシミ も やって こない の だ。
  ユクテ を ふさぐ ジャマ な イシ を
  ヒキガエル は まわって とおる。

 ウエダ ビン ヤク の ギー シャルル クロー とか いう ヒト の、 こんな シク を みつけた とき、 ジブン は ヒトリ で カオ を もえる くらい に あかく しました。
 ヒキガエル。
(それ が、 ジブン だ。 セケン が ゆるす も、 ゆるさぬ も ない。 ほうむる も、 ほうむらぬ も ない。 ジブン は、 イヌ より も ネコ より も レットウ な ドウブツ なの だ。 ヒキガエル。 のそのそ うごいて いる だけ だ)
 ジブン の インシュ は、 しだいに リョウ が ふえて きました。 コウエンジ エキ フキン だけ で なく、 シンジュク、 ギンザ の ほう に まで でかけて のみ、 ガイハク する こと さえ あり、 ただ もう 「シキタリ」 に したがわぬ よう、 バー で ブライカン の フリ を したり、 カタッパシ から キス したり、 つまり、 また、 あの ジョウシ イゼン の、 いや、 あの コロ より さらに すさんで ヤヒ な サケノミ に なり、 カネ に きゅうして、 シヅコ の イルイ を もちだす ほど に なりました。
 ここ へ きて、 あの やぶれた ヤッコダコ に クショウ して から 1 ネン イジョウ たって、 ハザクラ の コロ、 ジブン は、 またも シヅコ の オビ やら ジュバン やら を こっそり もちだして シチヤ に ゆき、 オカネ を つくって ギンザ で のみ、 フタバン つづけて ガイハク して、 ミッカ-メ の バン、 さすが に グアイ わるい オモイ で、 ムイシキ に アシオト を しのばせて、 アパート の シヅコ の ヘヤ の マエ まで くる と、 ナカ から、 シヅコ と シゲコ の カイワ が きこえます。
「なぜ、 オサケ を のむ の?」
「オトウチャン は ね、 オサケ を すき で のんで いる の では、 ない ん です よ。 あんまり いい ヒト だ から、 だから、 ……」
「いい ヒト は、 オサケ を のむ の?」
「そう でも ない けど、 ……」
「オトウチャン は、 きっと、 びっくり する わね」
「おきらい かも しれない。 ほら、 ほら、 ハコ から とびだした」
「セッカチ ピン ちゃん みたい ね」
「そう ねえ」
 シヅコ の、 しんから コウフク そう な ひくい ワライゴエ が きこえました。
 ジブン が、 ドア を ほそく あけて ナカ を のぞいて みます と、 シロウサギ の コ でした。 ぴょんぴょん ヘヤジュウ を、 はねまわり、 オヤコ は それ を おって いました。
(コウフク なん だ、 この ヒトタチ は。 ジブン と いう バカモノ が、 この フタリ の アイダ に はいって、 いまに フタリ を めちゃくちゃ に する の だ。 つつましい コウフク。 いい オヤコ。 コウフク を、 ああ、 もし カミサマ が、 ジブン の よう な モノ の イノリ でも きいて くれる なら、 イチド だけ、 ショウガイ に イチド だけ で いい、 いのる)
 ジブン は、 そこ に うずくまって ガッショウ したい キモチ でした。 そっと、 ドア を しめ、 ジブン は、 また ギンザ に ゆき、 それっきり、 その アパート には かえりません でした。
 そうして、 キョウバシ の すぐ チカク の スタンド バー の 2 カイ に ジブン は、 またも オトコメカケ の カタチ で、 ねそべる こと に なりました。
 セケン。 どうやら ジブン にも、 それ が ぼんやり わかりかけて きた よう な キ が して いました。 コジン と コジン の アラソイ で、 しかも、 その バ の アラソイ で、 しかも、 その バ で かてば いい の だ、 ニンゲン は けっして ニンゲン に フクジュウ しない、 ドレイ で さえ ドレイ-らしい ヒクツ な シッペガエシ を する もの だ、 だから、 ニンゲン には その バ の イッポン ショウブ に たよる ほか、 いきのびる クフウ が つかぬ の だ、 タイギ メイブン らしい もの を となえて いながら、 ドリョク の モクヒョウ は かならず コジン、 コジン を のりこえて また コジン、 セケン の ナンカイ は、 コジン の ナンカイ、 オーシャン は セケン で なくて、 コジン なの だ、 と ヨノナカ と いう タイカイ の ゲンエイ に おびえる こと から、 たしょう カイホウ せられて、 イゼン ほど、 あれこれ と サイゲン の ない ココロヅカイ する こと なく、 いわば さしあたって の ヒツヨウ に おうじて、 いくぶん ずうずうしく ふるまう こと を おぼえて きた の です。
 コウエンジ の アパート を すて、 キョウバシ の スタンド バー の マダム に、
「わかれて きた」
 それ だけ いって、 それ で ジュウブン、 つまり イッポン ショウブ は きまって、 その ヨル から、 ジブン は ランボウ にも そこ の 2 カイ に とまりこむ こと に なった の です が、 しかし、 おそろしい はず の 「セケン」 は、 ジブン に なんの キガイ も くわえません でした し、 また ジブン も 「セケン」 に たいして なんの ベンメイ も しません でした。 マダム が、 その キ だったら、 それ で スベテ が いい の でした。
 ジブン は、 その ミセ の オキャク の よう でも あり、 テイシュ の よう でも あり、 ハシリヅカイ の よう でも あり、 シンセキ の モノ の よう でも あり、 ハタ から みて はなはだ エタイ の しれない ソンザイ だった はず な のに、 「セケン」 は すこしも あやしまず、 そうして その ミセ の ジョウレン たち も、 ジブン を、 ヨウ ちゃん、 ヨウ ちゃん と よんで、 ひどく やさしく あつかい、 そうして オサケ を のませて くれる の でした。
 ジブン は ヨノナカ に たいして、 しだいに ヨウジン しなく なりました。 ヨノナカ と いう ところ は、 そんな に、 おそろしい ところ では ない、 と おもう よう に なりました。 つまり、 これまで の ジブン の キョウフカン は、 ハル の カゼ には ヒャクニチゼキ の バイキン が ナンジュウマン、 セントウ には、 メ の つぶれる バイキン が ナンジュウマン、 トコヤ には トクトウビョウ の バイキン が ナンジュウマン、 ショウセン の ツリカワ には カイセン の ムシ が うようよ、 または、 オサシミ、 ギュウ ブタニク の ナマヤケ には、 サナダムシ の ヨウチュウ やら、 ジストマ やら、 なにやら の タマゴ など が かならず ひそんで いて、 また、 ハダシ で あるく と アシ の ウラ から ガラス の ちいさい ハヘン が はいって、 その ハヘン が タイナイ を かけめぐり メダマ を ついて シツメイ させる こと も ある とか いう いわば 「カガク の メイシン」 に おびやかされて いた よう な もの なの でした。 それ は、 たしか に ナンジュウマン も の バイキン の うかび およぎ うごめいて いる の は、 「カガクテキ」 にも、 セイカク な こと でしょう。 と ドウジ に、 その ソンザイ を カンゼン に モクサツ さえ すれば、 それ は ジブン と ミジン の ツナガリ も なくなって たちまち きえうせる 「カガク の ユウレイ」 に すぎない の だ と いう こと をも、 ジブン は しる よう に なった の です。 オベントウバコ に タベノコシ の ゴハン ミツブ、 1000 マン-ニン が 1 ニチ に ミツブ ずつ たべのこして も すでに それ は、 コメ ナンピョウ を ムダ に すてた こと に なる、 とか、 あるいは、 1 ニチ に ハナガミ 1 マイ の セツヤク を 1000 マン-ニン が おこなう ならば、 どれ だけ の パルプ が うく か、 など と いう 「カガクテキ トウケイ」 に、 ジブン は、 どれだけ おびやかされ、 コバン を ヒトツブ でも たべのこす たび ごと に、 また ハナ を かむ たび ごと に、 やまほど の コメ、 やまほど の パルプ を クウヒ する よう な サッカク に なやみ、 ジブン が イマ ジュウダイ な ツミ を おかして いる みたい な くらい キモチ に なった もの です が、 しかし、 それ こそ 「カガク の ウソ」 「トウケイ の ウソ」 「スウガク の ウソ」 で、 ミツブ の ゴハン は あつめられる もの で なく、 カケザン ワリザン の オウヨウ モンダイ と して も、 まことに ゲンシテキ で テイノウ な テーマ で、 デンキ の ついて ない くらい オベンジョ の、 あの アナ に ヒト は ナンド に イチド カタアシ を ふみはずして ラッカ させる か、 または、 ショウセン デンシャ の デイリグチ と、 プラットホーム の ヘリ との あの スキマ に、 ジョウキャク の ナンニン-チュウ の ナンニン が アシ を おとしこむ か、 そんな プロバビリティ を ケイサン する の と おなじ テイド に ばからしく、 それ は いかにも ありうる こと の よう でも ありながら、 オベンジョ の アナ を またぎそこねて ケガ を した と いう レイ は、 すこしも きかない し、 そんな カセツ を 「カガクテキ ジジツ」 と して おしえこまれ、 それ を まったく ゲンジツ と して うけとり、 キョウフ して いた キノウ まで の ジブン を いとおしく おもい、 わらいたく おもった くらい に、 ジブン は、 ヨノナカ と いう もの の ジッタイ を すこし ずつ しって きた と いう わけ なの でした。
 そう は いって も、 やはり ニンゲン と いう もの が、 まだまだ、 ジブン には おそろしく、 ミセ の オキャク と あう の にも、 オサケ を コップ で 1 パイ ぐいと のんで から で なければ いけません でした。 こわい もの ミタサ。 ジブン は、 マイバン、 それでも オミセ に でて、 コドモ が、 じつは すこし こわがって いる ショウドウブツ など を、 かえって つよく ぎゅっと にぎって しまう みたい に、 ミセ の オキャク に むかって よって つたない ゲイジュツロン を ふきかける よう に さえ なりました。
 マンガカ。 ああ、 しかし、 ジブン は、 おおきな ヨロコビ も、 また、 おおきな カナシミ も ない ムメイ の マンガカ。 いかに おおきな カナシミ が アト で やって きて も いい、 あらっぽい おおきな ヨロコビ が ほしい と ナイシン あせって は いて も、 ジブン の ゲンザイ の ヨロコビ たる や、 オキャク と ムダゴト を いいあい、 オキャク の サケ を のむ こと だけ でした。
 キョウバシ へ きて、 こういう くだらない セイカツ を すでに 1 ネン ちかく つづけ、 ジブン の マンガ も、 コドモ アイテ の ザッシ だけ で なく、 エキウリ の ソアク で ヒワイ な ザッシ など にも のる よう に なり、 ジブン は、 ジョウシ イクタ (ジョウシ、 いきた) と いう、 ふざけきった トクメイ で、 きたない ハダカ の エ など かき、 それ に たいてい ルバイヤット の シク を ソウニュウ しました。

  ムダ な オイノリ なんか よせ ったら
  ナミダ を さそう もの なんか、 かなぐりすてろ
  まあ イッパイ いこう、 いい こと ばかり おもいだして
  ヨケイ な ココロヅカイ なんか わすれっちまい な

  フアン や キョウフ もて ヒト を おびやかす ヤカラ は
  ミズカラ の つくりし だいそれた ツミ に おびえ
  しにし もの の フクシュウ に そなえん と
  ミズカラ の アタマ に たえず ハカライ を なす

  ヨベ、 サケ みちて わが ハート は ヨロコビ に みち
  ケサ、 さめて ただに こうりょう
  いぶかし、 ヒトヨサ の ナカ
  さまかわりたる この キブン よ

  タタリ なんて おもう こと やめて くれ
  トオク から ひびく タイコ の よう に
  なにがなし そいつ は フアン だ
  ヘ ひった こと まで いちいち ツミ に カンジョウ されたら たすからん わい

  セイギ は ジンセイ の シシン たり とや?
  さらば チ に ぬられたる センジョウ に
  アンサツシャ の キッサキ に
  なんの セイギ か やどれる や?

  いずこ に シドウ ゲンリ あり や?
  いかなる エイチ の ヒカリ あり や?
  うるわしく も おそろしき は ウキヨ なれ
  かよわき ヒト の コ は せおいきれぬ ニ をば おわされ

  どうにも できない ジョウヨク の タネ を うえつけられた ばかり に
  ゼン だ アク だ ツミ だ バツ だ と のろわるる ばかり
  どうにも できない ただ まごつく ばかり
  おさえくだく チカラ も イシ も さずけられぬ ばかり に

  どこ を どう うろつきまわってた ん だい
  なに ヒハン、 ケントウ、 サイニンシキ?
  へっ、 むなしき ユメ を、 あり も しない マボロシ を
  えへっ、 サケ を わすれた んで、 みんな コケ の シアン さ

  どう だ、 この ハテ も ない オオゾラ を ごらん よ
  この ナカ に ぽっちり うかんだ テン じゃい
  この チキュウ が なんで ジテン する の か わかる もん か
  ジテン、 コウテン、 ハンテン も カッテ です わい

  いたる ところ に、 シコウ の チカラ を かんじ
  あらゆる クニ に あらゆる ミンゾク に
  ドウイツ の ニンゲンセイ を ハッケン する
  ワレ は イタンシャ なり とか や

  ミンナ セイキョウ を よみちがえてん のよ
  で なきゃ ジョウシキ も チエ も ない のよ
  イキミ の ヨロコビ を きんじたり、 サケ を やめたり
  いい わ、 ムスタッファ、 ワタシ そんな の、 だいきらい

 けれども、 その コロ、 ジブン に サケ を やめよ、 と すすめる ショジョ が いました。
「いけない わ、 マイニチ、 オヒル から、 よって いらっしゃる」
 バー の ムカイ の、 ちいさい タバコヤ の 17~18 の ムスメ でした。 ヨシ ちゃん と いい、 イロ の しろい、 ヤエバ の ある コ でした。 ジブン が、 タバコ を かい に ゆく たび に、 わらって チュウコク する の でした。
「なぜ、 いけない ん だ。 どうして わるい ん だ。 ある だけ の サケ を のんで、 ヒト の コ よ、 ゾウオ を けせ けせ けせ、 って ね、 ムカシ ペルシャ の ね、 まあ よそう、 かなしみつかれたる ハート に キボウ を もちきたす は、 ただ ビクン を もたらす ギョクハイ なれ、 って ね。 わかる かい」
「わからない」
「この ヤロウ。 キス して やる ぞ」
「して よ」
 ちっとも わるびれず シタクチビル を つきだす の です。
「バカヤロウ。 テイソウ カンネン、 ……」
 しかし、 ヨシ ちゃん の ヒョウジョウ には、 あきらか に ダレ にも けがされて いない ショジョ の ニオイ が して いました。
 トシ が あけて ゲンカン の ヨル、 ジブン は よって タバコ を かい に でて、 その タバコヤ の マエ の マンホール に おちて、 ヨシ ちゃん、 たすけて くれえ、 と さけび、 ヨシ ちゃん に ひきあげられ、 ミギウデ の キズ の テアテ を、 ヨシ ちゃん に して もらい、 その とき ヨシ ちゃん は、 しみじみ、
「のみすぎます わよ」
 と わらわず に いいました。
 ジブン は しぬ の は ヘイキ なん だ けど、 ケガ を して シュッケツ して そうして フグシャ など に なる の は、 マッピラ ゴメン の ほう です ので、 ヨシ ちゃん に ウデ の キズ の テアテ を して もらいながら、 サケ も、 もう イイカゲン に よそう かしら、 と おもった の です。
「やめる。 アシタ から、 イッテキ も のまない」
「ホントウ?」
「きっと、 やめる。 やめたら、 ヨシ ちゃん、 ボク の オヨメ に なって くれる かい?」
 しかし、 オヨメ の ケン は ジョウダン でした。
「もち よ」
 もち とは、 「もちろん」 の リャクゴ でした。 モボ だの、 モガ だの、 その コロ いろんな リャクゴ が はやって いました。
「ようし。 ゲンマン しよう。 きっと やめる」
 そうして あくる ヒ、 ジブン は、 やはり ヒル から のみました。
 ユウガタ、 ふらふら ソト へ でて、 ヨシ ちゃん の ミセ の マエ に たち、
「ヨシ ちゃん、 ごめん ね。 のんじゃった」
「あら、 いや だ。 よった フリ なんか して」
 はっと しました。 ヨイ も さめた キモチ でした。
「いや、 ホントウ なん だ。 ホントウ に のんだ の だよ。 よった フリ なんか してる ん じゃ ない」
「からかわないで よ。 ヒト が わるい」
 てんで うたがおう と しない の です。
「みれば わかりそう な もの だ。 キョウ も、 オヒル から のんだ の だ。 ゆるして ね」
「オシバイ が、 うまい のねえ」
「シバイ じゃあ ない よ、 バカヤロウ。 キス して やる ぞ」
「して よ」
「いや、 ボク には シカク が ない。 オヨメ に もらう の も あきらめなくちゃ ならん。 カオ を みなさい、 あかい だろう? のんだ の だよ」
「それ あ、 ユウヒ が あたって いる から よ。 かつごう たって、 ダメ よ。 キノウ ヤクソク した ん です もの。 のむ はず が ない じゃ ない の。 ゲンマン した ん です もの。 のんだ なんて、 ウソ、 ウソ、 ウソ」
 うすぐらい ミセ の ナカ に すわって ビショウ して いる ヨシ ちゃん の しろい カオ、 ああ、 ヨゴレ を しらぬ ヴァジニティ は とうとい もの だ。 ジブン は イマ まで、 ジブン より も わかい ショジョ と ねた こと が ない、 ケッコン しよう、 どんな おおきな カナシミ が その ため に アト から やって きて も よい、 あらっぽい ほど の おおきな ヨロコビ を、 ショウガイ に イチド で いい、 ショジョセイ の ウツクシサ とは、 それ は バカ な シジン の あまい カンショウ の マボロシ に すぎぬ と おもって いた けれども、 やはり この ヨノナカ に いきて ある もの だ、 ケッコン して ハル に なったら フタリ で ジテンシャ で アオバ の タキ を み に ゆこう、 と、 その バ で ケツイ し、 いわゆる 「イッポン ショウブ」 で、 その ハナ を ぬすむ の に ためらう こと を しません でした。
 そうして ジブン たち は、 やがて ケッコン して、 それ に よって えた ヨロコビ は、 かならずしも おおきく は ありません でした が、 その アト に きた カナシミ は、 セイサン と いって も たりない くらい、 じつに ソウゾウ を ぜっして、 おおきく やって きました。 ジブン に とって、 「ヨノナカ」 は、 やはり そこしれず、 おそろしい ところ でした。 けっして、 そんな イッポン ショウブ など で、 ナニ から ナニ まで きまって しまう よう な、 なまやさしい ところ でも なかった の でした。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ニンゲン シッカク 5 | トップ | ニンゲン シッカク 3 »

コメントを投稿

ダザイ オサム 」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。