many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

悪党的思考

2012-02-24 19:09:18 | 中沢新一
中沢新一 1988年 平凡社
「悪党」ってのは、ふつうの悪者の集団のことぢゃなくて、日本史に登場する悪党的武士、たとえば楠木正成なんかのこと。
実にひさしぶりに読み返してみた。
この本は、「虹の理論」かなんかの後に出て、私は同じ著者のものならと、なかも見ずに面白いだろうと期待して買ったんだが、私には嗜好があわないというか、はっきり言って難しくて、当時読んでそれほど楽しいものでもなかった。
>彼らは流動し、変化する「なめらかな空間」を生活の場とする人々だ、とか、>悪党はボヘミアン的なエートスをもった武士だ とか、そういうキーワードのようなものを含んだフレーズが、直感的にスッと入らないと、スムーズに読み進めない。
数章の短編からなるけど、一冊のテーマは日本の歴史。その後「僕の叔父さん網野善彦」を読んだりしたんで、二十何年前に読んだときよりかは、ちょっとだけ何の話なのか分かりかけた気がする。
おもな登場人物としては、やっぱり悪党的武士をつかって権力を掌握した後醍醐天皇が中心で、あちこちにいちばん名前が出てくる。
でも、権力空間とか、ちょっと抽象的な言葉がとびかうとこが、ふつうの歴史教科書と違うわけで、うっかりしてると、やっぱついてけなくなる。
教科書で何年に何の戦いがあって誰が勝ってとか、おもしろくもない事実を淡々と並べられるより、思想っつーか宗教っつーか、そういうことで歴史を語る、そこがいいんだけどね。魔術をもって権力空間を捕獲しようとした、なあんて言い方というか、考え方が。
でも、(今回読み返すまでスッカリ忘れてたんだけど)私は、最終章の「黄色い狐の王」に出てくるような、ネパールのとある街で「フライング・ストゥパ」のエピソードなんかのほうが、大好きだなあ。
丘の上にある、石とレンガでできた巨大な仏塔が、空に舞い上がる夜がある、って話。見たいねえ。
章立ては以下のとおり。
I 「歴史のボヘミアン理論へ」
II 「真言立川流と文観」
  「春画―ピュシスか、テクネーか」
  「妖怪画と博物学」
  「市場の言葉のアルチザン」
III 「江戸の王権」
  「一八六八年の王権」
  「異教的モノテイスム」
IV 「黄色い狐の王」
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする