急成長するメディカルツーリズム、東南アジアにて  6月14日付・日経新聞記事

2013-06-14 17:56:08 | Weblog
東南アジア、医療ツーリズム急成長 タイに年250万人
日経新聞6月14日付け記事


病院ロビーのクッションはホテル並みの豪華さ
(BGHのバンコク病院)
 東南アジアで治療や療養目的の外国人を対象にした「医療ツーリズム」ビジネスが急速に成長している。なかでもタイとマレーシアの民間病院がけん引役だ。高度な医療と快適な入院サービスが世界から富裕層らを呼び込む。ビジネス感覚あふれる運営手法と規制緩和が生んだ競争が質の向上を促す。医療分野を成長戦略のひとつに掲げる日本は追いつけるのか。
 バンコク病院国際外来棟。市中心部の高級住宅街に近い院内は、中東やアフリカの民族衣装を身にまとった患者でにぎわう。150人に及ぶ通訳が控え、26カ国語に対応。世界から年間20万人以上が訪れる。15階にあるVIP向けの病室の広さは80平方メートル超。国内外の要人がお忍びで訪れる。
 この病院はタイ最大の病院グループ「バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシーズ(BGH)」が運営する。BGHはタイやカンボジアに31の病院を抱える。


 東南アジアは欧米に比べ手術などの費用が安いとされるが、それだけが患者を集める理由ではない。規制の緩さと民間経営の競争原理が先端医療サービスを磨く。
 日本では利益追求に走らないようにと細部まで診療報酬が定められ、病院経営も医療法人に限られる。東南アジアでは病院も株式会社形態が一般的。高い報酬を約束する病院に優秀な医師も最新の設備も吸い寄せられていく。
 東南アジアでは多くの国で日本のような国民皆保険は確立されていない。所得水準の向上で先端医療技術や手厚いサービスを求める富裕層は増えている。タイのBGHやマレーシアのIHHはこうした需要の受け皿となり成長している。

 このため営業活動も活発だ。BGHはアフリカやベトナムに加え、ブータンにも拠点を設立。2011年には日本でも京都武田病院(京都市)など9病院と提携、患者の紹介を受ける。


 マレーシアを中心に世界で32病院を展開するIHHヘルスケアは先端設備を整えた病院内の診療室を医師に分譲。優秀な医師が壁を隔てて競い合う。シンガポールの拠点病院では昨年秋、PET―MRIと呼ばれる最新の診断装置を導入した。体内の腫瘍の状態を調べがんをいち早く発見する。
 同国の民間病院では初の試み。富裕層の支払いと上場で得た巨額の資金で診療水準を高める。高級ホテル出身のシェフが料理に腕を振るう系列病院のスイートルームは1泊約1万4000シンガポールドル(約108万円)だ。
 医療ツーリズムは04年に400億ドル規模だった世界市場が12年には1000億ドルを超えたという試算もある。タイの外国人患者の12年の受け入れ数は253万人と05年の2倍に膨らんだ。マレーシアも前年比15%増の67万人に達した。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は熟練労働者の移動規制を緩和する見込み。加盟国間の医師の移動が可能になり優秀な人材の奪い合いが激しくなる可能性がある。
 こうした動きを見据え、患者を送り出す側だったインドネシアでも華人系財閥が主導して病院建設が進み始めた。インドではフォルティス・ヘルスケア・グループが台頭。インド国内にとどまらずベトナムやシンガポールなどで事業を拡大している。
シンガポール=吉田渉、バンコク=京塚環、東京=香月夏子


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