★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(44)

2015年11月17日 | 短編小説「義腕の男2」
 毛布がかけてあるが、その布は足の形に盛り上がっている。どうやら足はまだ付いているようだ。試しに少し動かしてみる。全く問題ない。意識的に動かすように毛布の形も動いている。
その動きを見たのか、クリス博士はニヤリと笑いながら言った。
「どう?新しい足は。全く違和感ないでしょ」
毛布をめくり足を直接見てみると、病院着の上着から出ている左足の部分は、腿の付け根あたりが白い包帯で巻いているが、痛みもなく動かせばちゃんと動く。
「新しい足?」
「そう、前の足はもう使い物にならなかったから、切って新しいのを付けといたのよ」
「?切って付けた?」
「ああ、まだ、一応古い足はとってあるけど見る?」
少女のクリス博士はそう言い、近くの看護師に目配せをすると、ブロンドの若い看護師は軽く頷きどこかに歩いていった。
「痛みはどう?多分全くないはずだけど」
クリス博士は、包帯の上から俺の左足をさすりながら聞いた。
不思議だった。
博士の言うとおりならば、この足は偽物で、人工物のはずである。俺の自慢の義腕でさえ、皮膚の触感については、ある程度感じられるものの、繊細さにおいては生身には遠く及ばない。
しかし、この足は、包帯で巻かれている上からですら、博士がなでている感触が判別できる。ほとんど本物と変わらない。本当に義足なのだろうか。


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