じいばあカフェ

信州の高原の町富士見町:経験豊富なじいちゃん・ばあちゃんのお話を
聞き書きした記録です
ほぼ一ヶ月に一回の更新です

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うさぎ

2009-05-04 21:27:31 | Weblog
(ウサギをさばく)
「ウサギをさばくことかい。俺は専門職だもの、冬の副業でやってたさよ。そういうもんを扱う商店があってさ。そこで、ウサギやら鶏やらそういう小動物のさ、肉をここらで集めてさ、それを売ってたさよ。俺はそこの番頭がしらさ。諏訪の方じゃあんまりやらなんだが、主には高遠の公園あたりに行って、集めてきたんだがな。俺は、俗に言う小動物取り扱いなんとかという鑑札をとってやってただ。シカとかイノシシなんかは鑑札がまた別だったから、大きいのはやらなんだな。さばくのはウサギが一番多かったが、タヌキやキツネもたまにはあったぞ。ウサギは、家で飼ってたやつさ。ここらじゃ1軒の家で3匹も4匹も飼ってただ。暮れなんかになれば、日を決めてさ。いくいつかに持ってきてくださいと触れてあいってな。そんときゃおめえ、何匹なんて勘定できるもんじゃねぇ。何人もで来て、みんなでどんどんさばいたちゅうこんだ。」

(ウサギの食べ方)
 「そりゃ、当時のここらでは栄養はそういうところからとったちゅうこんだ。ウサギが唯一の祝日のご馳走だったからなぁ。汁にしたのが多かったかな。ウサギはさっぱりしてて馬肉なんかよりそりゃあうまかったよ。暮れには、今じゃぁ鮭を買うなり、なんか魚を買ったりするじゃん。その頃は、ウサギがそういうもんの代わりだったちゅうこんだ。正月によく作ったのは、ウサギの肉と野菜を入れて作った薄味の煮物みたいなものだ。醤油で味付けしたんだけんど、カンラン、今で言うタマナだ、それを入れたやつが一番うまかったな。カンランがなけりゃネギでもいいがな。」

(生きてく道)
「鶏もやったけんど、ウサギの方が簡単だったよ。ウサギは肉が柔らかいちゅうか、なんちゅうか。こっちへひっぱりゃこっちへくるし、あっちへひっぱりゃあっちへ行くし、やりやすかったな。今でもできるかって? もうやめてっから何十年もたつで、もうできねぇな。こういうことしてると、『大将は生き物の命ばかりとって』なんて言われるからな。それでいやんなってさ。それからやらなくなったさ。それでもさ、何だかあって、牛だったかさばいたこともあったぞ。なんてったってここらじゃ、そういうことできんのは俺しかいねぇからな。なんだかんだ言われてもな、自分の生きてく道だったってこんさ。」
 そう話してくれた、すでに90歳を超えているTさんだったが、最後にぽつりとこぼした、「昔の衆は今の衆より、なんだか広い気持ちをもってたような気がするな。」 という一言がとても印象に残った。
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