よりみち文化財

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天吹 ~薩摩に伝わる笛の音 

2009年05月14日 | Weblog
鹿児島に、「天吹」(てんぷく)という笛が伝えられています。

ちょうど尺八を小さくしたような、26~30センチほどの長さの縦笛で、表に4孔、裏に1孔あって、尺八よりも高い音が鳴ります。

島津忠良の時代には既に薩摩に存在していたということが文献にみえるそうですが、それ以後武士の間で楽曲が口伝されて広まっていたものの、楽器演奏は勉学の妨げになるという理由から、明治30年に禁止時代以降ほとんど演奏されることがなくなってしまったようです。
この天吹という笛の由来、それが鹿児島で初めて作られたものであるのか、他の場所からもたらされたものなのかといったことは全く不明だそうです。
ただ、たとえどこからか伝えられたものであっても、もとの笛をまったく似せたというよりは、薩摩で独自の工夫が加えられたということはありそうです。




長さは一般的に27~30センチ程、鹿児島でコサン竹と呼ばれる、布袋竹の、根のあたりを使って作られます。

写真は、先生の指導を受けながら私が作った天吹です。下のほうに少しひびが入ってしまい、補修してあります。
「自分の天吹は、自分で作ること。」
ということで、自作したものをいまだに愛用しています。
竹林に入ってもちょうどよい竹を探すのはなかなか難しく、写真の天吹は太くがっしりとしたものですが、本来天吹の材としては、下部がちょっと反った感じの、もう少し細めの竹がいいそうです。



古くからの楽器ですから音階はドレミではなく、独特のものです。
ただしチューナー等で近い音を探しながら、平均律(十二平均律)の楽譜をなんとか追いかける、ということは可能です。

この天吹で演奏する曲として、現在、7つの曲が伝承されています。

これは根拠のあることではなくあくまでも私の印象ですが、天吹の伝承曲はもともと歌詞があったもののようにも聞こえることがあります。
当時歌われていた歌をもとに、伴奏をつけるような形で楽曲できあがったのではないかという気もするのです。
それほど、人が高らかな声で歌うような節にも聞こえるところがあるので、楽器の形は似たところがあるものの、尺八とは少し印象が違います。




急に天吹のことを思い出したのは、先日、出張で韓国へ行くことになったからです。
といっても天吹と韓国とは、今のところ直接的なつながりは何もないのですが、
「韓国に、天吹によく似た笛がある。」
と以前聞いたことがあったので、ふと思い出したのです。

新型インフルエンザが世界的に流行している中でしたが、9日に帰国しました。
その天吹に似ているといわれる笛、(「タンソー」、又は「ダンソー」)を、韓国で探してみましたので、これについて次回に書きたいと思います。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
聞いてみたい。 (川村かつ枝)
2011-10-08 15:01:20
先日鹿児島に行った折に天吹が維新館と島津家の資料館に展示されているのを見ました。薩摩琵琶とともに展示されていて、その音色を聴きたいなと思いました。私はケーナを吹いたり作ったりするので作ってみたいなとも・・・歌口はケーナより浅いですよね。一度作ってみようと思います。
コメントありがとうございます (kalash)
2011-10-11 12:52:02
川村かつ枝 様

仰るとおり歌口はケーナほど深くつくらないようです。
鹿児島で天吹を演奏される方は皆さん自作されていますので、特に難しいものではないと思いますが、材料にする竹を探すのと、穴の間隔に一定のルールがありますので、ここが大変かと思います。材料は「コサンダケ」というホテイ竹に近い種類の竹で、根のあたりを使うので、太さや節の間隔がちょうどよいものを探すのにひと苦労した記憶があります。

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