志賀泰次句集

花冠同人志賀泰次のブログ句集

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

序/高橋信之

2008-11-26 19:26:29 | Weblog
  序

 志賀泰次さんの俳句は、身近なところを詠んでいるので、それを纏めて、北海道の風土性豊かな句集となった。季節の動物を詠めば、

  山羊の仔の膝折りすわる草の青
  仔馬蹴るうしろの海は初夏の青
  閉牧の肥えし牛馬に草匂う
  雪明かり牛まっくろに立ち止る

があり、鮭、鰊、蟹の句は、

  一瞬の光芒みせて鮭のぼる
  海のいろそのまま売らる初鰊
  雪霏々と蟹荷揚げするロシヤ船

があり、北海道をありありと見せてくれる。
 山には、白樺、ポプラの木々、畑地には、じゃが薯やアスパラが豊かに育つ。

  枯木立白樺だけが真っ直ぐに
  光りあうポプラの梢空高し
  風匂うじゃが薯の花の只中に
  アスパラの尖りの満ちて土かおる

 泰次さんの住んでおられる網走は、流氷がよく知られている。暮らしの中で流氷を捉え、生活の中から生まれた俳句は、本物なのである。

  せめぎ合う流氷隆起海のいろ
  流氷の来るも暮らしの中のこと
  一湾を流氷埋めて春浅し

 雪を詠んでも、北海道の風土性豊かな佳句があり、その一つに

  雪降って降っては山が遠ざかる

の句を挙げる。 
 泰次さんは、七十歳になってから俳句を始められたので、句歴は短いが、短期間で成長された。

  この先の牛舎に用ありえのこ草
  流氷へ窓の曇りをひろく拭く
  星の夜は星のいろして雪明かり

 これらは、ごく最近の句で、拘りのない、いい境地にある。大病をなさって、療養の身だが、それにめげずに俳句に精進なさっておられる。

  病窓に見るわが街よ美しき秋

 いかなる境遇にあっても、美しいものへ心を向け、美しい言葉を書き記すことに専念する。いい生活である。
 本句集が多くの人々の目に留まって、読んで頂ければと願っている。

  平成20年冬
                   高 橋 信 之
コメント (6)
この記事をはてなブックマークに追加

目次

2008-11-26 19:25:40 | Weblog
目次
 序‥‥‥高橋信之
第1部(2003年6月~2007年3月 200句)
第2部(2007年4月~2008年12月 ○○○句)
 跋‥‥‥高橋正子
 あとがき
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

2003年~2006年

2008-11-26 19:24:27 | Weblog

●2003年(9句)

孫と吹く夢膨らんでシャボン玉
草の上にシャツ無雑作な五月晴れ
朝露の乾くを待たず蕎麦を刈る
鰯雲の空の広さへ熱気球
湧き水を掬う手元に赤蜻蛉
佇めば赤とんぼうのわが視野に
冬の風棲むは岬かいつも吹く
風花の透明な空をほしいまま
雪原の果てまで浮かばし日が落ちぬ


●2004年(37句)

縁起よき茶柱を残し初仕事
寒の海歪みて四角の陽が昇る
制服にスラックスの娘ら寒に入る
膨らみて膨らみて散る浪の華
尖るもの皆真ん丸く雪積もり
外窓を大きくあけて鬼やらふ
流氷や絞る鴉声も虚ろなり
娘発ちて夕餉の灯り朧めく
竿足して空へ空へと初幟り
水芭蕉水ひたひたと寄せつけず

草青む土手しんがりの子が駆け抜け
果てるまで耕地黒ぐろ五月来る
天心の月も酔い来る花明り
裏口に籠濡れ水菜の土ながら
挿しおけば竿を頼りに瓜の苗
サイクリング親子に一つ夏の空
青紫蘇の今朝の分だけ採り来り
紫陽花の鞠まだあおき通学路
野の芒触れ合うこともなく茂り
学校の時鐘尾を曳き九月入る

奥入瀬やこの道ずっと蝉時雨
梶の葉の一と葉に平和を願いけり
仕舞おうとすれば鳴り出す瑠璃風鈴
明るさを満たして昇る盆の月
吹く硝子秋光丸く透かしけり
瑠璃玉にひろがる空や鰯雲 
風のまま色うらかれて藤ばかま
夕やけの海へと流れ鰯雲
台風過研がれて星は山の端に
黄落のそこだけが明るく月満ちて

鮭の皮こんがり焼いて茶漬け食う
枯蔓を曳けばひろがる茜空 
白み来る朝陽を待って鶴舞えり
亜浪碑にきょうの深雪の落日かな
観葉の葉裏さびしく聖樹輝る
搾乳の牛みな肥えて息白し
窓叩く雪水平に向かい来て


●2005年67句)

寒風や囲いの薯に芽の隠(こも)る
冠雪の朱の実揺らして小鳥散る
からまつの赤銅濃くして冬の陽に
雪ならむ外さわさわと風の音
底隠(こも)る鉄のひびきの凍む橋を
カンツオ―ネ幾つか聞いて冬銀河
裸木の虚心の影の平らかに
流氷の海浩々と宵の月
雪道を赤き靴の子まんなかに
流氷に果てなきごとく空澄めり

雪明かり牛まっくろに立ち止る
浮雲を大きく映し卒業す
春北風(ならい)翔ばぬ鴎は一列に
凍滝にかすかな水音風とおる
名水に両手潜らせ春陽汲む
春風のいちまいを脱ぐ身の軽さ
雪残る村牛舎より動き出す
仔の山羊に角生う兆し風ひかる
ものの芽のぞくぞくと立ち風青し
アスパラの尖りの満ちて土かおる

境目は棒切れひとつ種を蒔く
風光るクルスに空の深くあり
朝凪の満ちくるものの静けさに
水音をはなして澄めり岩清水
泉清ら石の重さの忘らるる
子が追いて夏蝶に風生まれけり
人のいぬ駅の風鈴海へ鳴る
字小字みな連れそって夕焼ける
涼風をわかちて花のいろどりぬ
青すすき風は岬から柔かし

刈りしあと緑あらたに雨あがる
水底に砂子の躍動泉湧く
万緑を一両鈍行軋みゆく
落ち蝉や我生かされて影を曳く
北の地の黄昏ながし蕎麦の花
秋の磯片爪の蟹はみ出でて
水澄みてもう一つの空雲流る
台風過褪せしひまわり陽を集め
水澄めり孕みし魚が朔る
待つという静けさがあり望の月

鳥ばかり舞い乱れいる海の秋
新藁の哺乳の子牛乳まみれ
秋光を投網ひろげて引き絞る
晩秋の牛半眼に昏れなずむ
えのころの丈の不揃い風通る
牧閉ざす牛の咆哮太く曳き
廃線の線路真っ直ぐに冬が来る
草の絮軽きものより風に乗り
大根の泥滲みてくる夕刊紙
枯木立白樺だけが真っ直ぐに

入れ替える牛舎の藁の冬ぬくし
雲天の零せし雪の野をつつむ
水桶の重さは知らず薄氷
風花の光りに重さなかりけり
冬ざれや棒なる案山子燃やさるる
石塔に新雪まるく明けにけり
極月の鮭は武骨に乾きけり
牡蠣を剥く生業の顔活きいきと
冬ざれの濃く単線に入りてより
雪霏々と蟹荷揚げするロシヤ船

冬の川狭きになりてより迅し
影を踏む音の軋めり冬銀河
一羽翔ぶあとに続きて沼涸れる
朝寒や牛の乳房のほのあかく
寒風に翔びゆくもののみな素足
ふるさとは遠くにありぬ冬落暉
年の瀬の大きな夕日孕み牛


●2006年(76句)

豆腐切る刃先の透けり寒の入
一灯を過ぎれば行方雪明り
雪捨ての己が影を越え嵩の影
空うみに海そらに溶け冬がすみ
雪降って降っては山が遠ざかる
切花の桶せりせりと薄氷
寒林の奥に伐る音こだまして
さりさりと氷押しつつ川落つる
境なき雪野の一樹目じるしに
澪にきて軽くなる水春近し

凍滝のそこから緩む風の道
また一つキュ-ポラの火消えて冬茜
ポプラ揺する二月の風の一途なる
風わたるとき流氷の軋みけり
春の水堰いくつ越え来りしや
夕刊のすとんと落ちて二月ゆく 
春浅き木の芽の尖りいとけなく
子らの声空押し上げて卒業す
春禽の音階たかく青空に
干網の間合きらきら海明ける

残雪の山間(あい)ぎっしり闇つまる
春灯のひとつは我が家山くだる
卒業子みな己が空を見上げゆく
厩だし仔馬蹴り上ぐ朝の陽に
春の海汽笛ほうほうと捕鯨船
尻押され動かぬ牛や斑雪
海のいろそのまま売らる初鰊
動くものなき山林に木の芽吹く
独り居の日向に楽し囀りに
鳥引きし沼の窪める静けさに

若草の野にありいよよ牛らしく
月光をとらえて辛夷高く咲く
花冷えや薄漁の網藻を落す
散るときを秘めて桜の今日を満つ
葉桜のいろ濃き陰に蕊降りぬ
牛の瞳に佇つ我ありて夏の牧
ゆるやかに牛の反芻夕焼ける
トンネルを出で新緑の膨れくる
ハマナスの海平らかや陽が昇る
はまなすに沖風和ぎぬ慰霊の日

まっさらな波が生れて青岬
子らの網風の高さに蜻蛉追う
風匂うじゃが薯の花の只中に
風鈴にそれぞれの音暮れなずむ
鈴ならし新涼の風海に向く
蛍火の子の掌に点るとき明かし
売られゆく牛の耳標や牧に秋
灯しても消してもひとり鉄風鈴
麦稈の匂えるかなた藍き海
赤とんぼ触れ合う音のなかりけり

とんぼうに穂の揺れ重心どこにある
秋草に濡るるも有縁と思いけり
御手洗の水に溢れし鰯雲
豊漁の舳先に立てば航さやか
一瞬の光芒みせて鮭のぼる
野辺送る風に白けく秋の草
ずっしりと南瓜に引力生れけり
ひとときの万朶の露の輝ける
触れるもの風のほかなく花芒
宵寒の予報に雪初む朝かも

どの軒も大根干しあり路地の風
今はただ落つるに徹す秋の滝
冬近し深耕の土くろぐろと
笹の葉を選びて漬けり鮭の寿し
日高路は駿馬ばかりの牧さやか
初雪はひんやり水の匂いして
初氷陽に煌めいて陽に消える
外つ国に吾子よ勤労感謝の日
年の瀬の予定はみだすキリトリ線
ななかまどの赤が引き寄す冬の空

冬鳥のパン屑にきて朝楽し
樹に冬芽枝から枝へ目白来し
鳶の輪の其処のみ冬空押しあげる
暮早き月ほのぼのと牛曳かる
ひたひたと草々に沁む秋気かな
息白し動くもの一つなく明ける
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

2007年~2008年

2008-11-26 19:23:53 | Weblog

●2007年(71句)

初凪や蒼きを重ね潮ざかい
三方に海ある暮らし春いまだ
春立ちぬ仔牛の顔の乳まみれ
澄む水に春めく動き貝が噴く
風にきらきら流氷の海うごく
海鳥のこえ澄む日なり風光る
磨る墨の黒滑らかに初硯
昇る陽に霧氷の樹々の煌めける
風花の小さき六角晶らかに
障子の陽すこし強めて月替る

開け放ち零下の外へ鬼やらう
青空を蹴上ぐ子馬の脚細し
流氷の行方は風に乗るままに
触れる手に潮吹き貝が動き出し
流氷の去りし海面や藍深し
春泥に幼なき思い踏んでみる
もの芽出づ土ほっこりと四方に割れ
せりせりと湖氷の解けて流れだす
水芭蕉の芽に春水の触れており
畑返す一樹境いに土のいろ

風に春近づくものに子らの声
道の上にさらなる道が陽炎える
オホーツクや浜たんぽぽの這って咲く
海の風土筆の風となるところ
連翹の光り湧き立ち通学路
散り際は風に任せむ紫木蓮
さくら咲く並木の向う藍の海
枝垂るるに真下を流る花筏
海霧はれて原生の野は花園に
黒牛の眸の澄めり五月闇

五月逝く知覧の空は晴れ居しと
一天のあお深くあり夏雲雀
捩れ花芯は真っ直ぐ立つかたち
渓流の音みがかれて岩魚棲む
まっさおな夏空に鳴らしランドセル
瀬の音の水を離れし涼しさよ
手花火の匂い纏いて家に入る
一斉に翔ちて影濃き夏野かな
夕焼けの鍵音軽き我が家に
炎天の反核署名は太き字に

薯の花白きうねりの昏れにけり
紫陽花の地に近きより水いろに
とんぼうの影飛び交って日は西に
遠くより昏れはじめおり蕎麦の花
片陰の我が影つれて出る陽射し
病窓の枠より出でず秋の雲
秋の日の傾ぎて影折る石階に
牧柵に翅を透かさせ赤とんぼ
向日葵の鋤かれ青空動きだす
台風に大樹の確と構えおり

野のいろの離るる高さ女郎花
光りあうポプラの梢空高し
新涼の海に藍濃く潮ざかい
昃けば色濃き十字架秋空に
引取らる牛に草の香牧閉す
晒し水平らにあふれ十三夜
命継ぐ遡上の鮭は澄む水に
露霜のきらめくときの陽に出逢う
黄落のきらめく風にショパン聴く
穫り終えて秋耕の土黒々と

唐辛子吊るす向うの水平線
さわさわと風が風押す今朝の冬
落紅葉氷りし中にきらめける
落葉踏む足に伝わる固き実よ
奥の間も陽差しに満ちて冬ぬくし
雪掃かれ矩形正しく石畳
終い湯の闇を深めて虎落笛
裸木の瘤りゅうりゅうと風をきる
十二月八日の記憶の萎えかなし
鬼柚子の触れてたのしき冬至湯に

葱きざむ妻すこやかに暮の音


●2008年(50句)

柏手の揃いて清し初御空
ものの影濃くするものに冬木の芽
気嵐やロシア船から蟹揚がる
川涸れのあらわる石のみな丸し
流氷へ窓の曇りをひろく拭く
夜寒し折鶴の影濃く尖る
わが骨(こつ)も清らを信ず雪の葬
茹で卵きれいにむけて受験の日
せめぎ合う流氷隆起海のいろ
流氷の来るも暮らしの中のこと

 四号病棟新生児室
みどり子のこぶしのゆるみ春動く
 九号病棟
玻璃ひと重己に遠く春の星
一湾を流氷埋めて春浅し
海明けへ舳揃えて舫いたる
尿を汲む影に黙謝の春の闇
対山の斑の畑の移ろいに
浚渫船底よりさらう春の河
翔ぶかたち暫し残して鳥雲に
山羊の仔の膝折りすわる草の青 
 退院三句
春風に触る懐かしき潮の香よ

足もとの土の匂いて下萌ゆる
海からも山からも吹く風ひかる
天も地もさくらさくらの色の中
幾百の海鳥岬に五月来る
一面の花たんぽぽや牛放つ
仔馬蹴るうしろの海は初夏の青
しゃぼん玉歪みのとれて風にのる
最北の平野に動き田の植わる
ぶらんこを空まで漕げよ夏の陽に
郭公の鳴けば豆蒔く頃合と

アカシアの花の高さを風白く
とんぼうの水辺の色に生まれけり
発つ朝の秋燕窓辺に落ち着かず
高階に蜻蛉止まるを知らざりし
病窓に見るわが街よ美しき秋
控え目に灯してふたり後の月
遡る魚影(うおかげ)を追う十三夜
小春日のわが影を踏む外泊日
閉牧の肥えし牛馬に草匂う
ひと時を舞う雪虫と陽の中に

黄落の走り根確かと地をつかむ
この先の牛舎に用ありえのこ草
秋の山母の結びは大きかり
白樺の色葉散る散る通学路
一村をたなびく煙り草紅葉
鰈干さる骨透く軒の秋夕日
水澄めり光も影も底に置き
初雪の音なき風とわが息と
星の夜は星のいろして雪明かり
門灯を消す静けさに今朝の雪
コメント (16)
この記事をはてなブックマークに追加

跋/高橋正子

2008-11-26 19:22:27 | Weblog
   風土性ゆたかに
                   高橋正子


春灯のひとつは我が家山くだる

山をくだりながら、麓に灯るあの春の灯の一つは我が家の灯であると思う。春灯のなつかしさや切なさなどを感じさせてくれる抒情のある句。

サィクリング親子一つの夏空に

広い夏の空。その夏空の下を、親と子とサイクリングを楽しんで、絵本に描かれたような世界がさわやか。

初雪はひんやり水の匂いして

初雪の降り方は寒い地方では、溶けることもなく降るのだろうが、地に触れる前に、はかなくも水となってしまった。「ひんやり」は、心地よいほどの感触。

雪明かり牛まっくろに立ち止る

雪明りに見える牛が、ただ牛とわかるというのではなく、まっくろな牛として、牛の色まで見えている。薄明かりに黒を見た作者の目が鋭い。風土性のゆたかな句。

雪ならむ外さわさわと風の音

風がさわさわと吹いて来る。この風こそは、雪を運んでくる風だ。雪国に住む作者は、体でそのことを知っている。どの程度の雪かもわかるのだろう。「さわさわ」という風音も、「雪ならむ」の推測も、感覚が澄んでいればこそ捉えられるものだ。

とがるもの皆真ん丸く雪積もり

雪が積もると、すべて丸くやわらかなものになる。とがるものさえも丸く包む雪のやさしさがよく表現されている。

瀬の音の水を離れし涼しさよ

「瀬の音」は、流れる水より聞こえるのであるが、流れる水とは別に「瀬の音」として捉えられている。ころころと転がるような瀬音の涼しさが、「水を離れる」ことにより、いっそう涼しげに聞こえる。

秋の日の傾ぎて影折る石階に

秋の日の傾き具合には詩情がある。石階に立つ作者の影が、石階の通りに折れ曲がっている。「影折る」の発見は、秋の日差しの発見でもある。

葱きざむ妻すこやかに暮の音

葱をきさむのは、日常の生活のことだが、健やかに暮を迎えたありがたさがしみじみと伝わってくる。葱を刻む音にも暮らしさを感じ取った句。

星の夜は星のいろして雪明かり

ロマンティックな句であるが、そこに生活者の掬われるような思いが読める。星が輝く夜は、雪明りも「星のいろ」と同じであると感じる詩心。

幾百の海鳥岬に五月来る

岬に幾百もの海鳥の姿を見ると、まさに五月が来た印象を持った。沖へ開かれる爽やかな心。

門灯を消す静けさに今朝の雪

門灯を消そうと外を見ると雪が積もっている。朝の静けさが雪をもってなお静かになった。

初雪の音なき風とわが息と

風の音もなく、初雪がはらはらと降る。わが身を離れる息も白い。初雪の降る日は寒くさびしい。

鰈干さる骨透く軒の秋夕日

鰈を軒の日当たりのよいところに干して、干し鰈をつくるのだが、乾いてくるに従って、骨が透けるようになる。夕日が差せば、懐かしいような光景となる。

水澄めり光も影も底に置き

澄んだ水底には、ひかりと影が、ちらちらとある。澄む水を端的にあらわしている。

病窓に見るわが街よ美しき秋

病院に暮らして、高階よりわが街を眺めると、秋日に照らされた街が、絵のように美しく思える。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

あとがき

2008-11-26 19:21:59 | Weblog

 私は昭和五年の札幌生れですが、父の転勤で昭和十一年に転住以来、網走の人になりました。従って当地が実質故郷です。昭和二十八年学卒と同時に結婚、旧知の妻の実家の水産加工業を継ぎました。 実業の解らぬ私は、誠実一筋の人だった義父母に人の道から教えられ、強い事業信念は「物の本質を見極める」事を身を持って仕込まれました。この事が俳句の師、高橋信之・正子両先生の「本質を見る」教えに通じるものであった事は、洵に感慨深いものがあります。
 就業後、北海道水試が研究途上にあった白身魚肉の冷凍変性の防止術の実用化指定工場として製品企業化に参画しました。冷凍すりみ化の新技術は北洋漁業を支えるものになり、Surimiの国際化に達しました。残念にも北洋なき日本は今輸入国です。 「ごまかしのない食品作り」の社是は独自に添加物に頼らない技の域に達しました。この事が「暮しの手帖」にも誠実な物作りと紹介され消費支持も得たのでしたが、価格破壊、質より価格重視が世の主流の流通構造には抗し切れず、六〇年間の商いを閉じました。零細企業の磨いた技が今世界にも通用し、聊か世に役立った半生に満足しています。
 さて一転毎日が日曜になった無趣味の七十余歳の私に残された半生の有り方に思い付かせたのが亡き先輩に勧められた事のある俳句でした。囲碁を趣味としていた義父が良き師につく事が大切と聞き、死の直前まで碁石を離さなかった晩年の姿を見て趣味の究極を見た気がしました。幸運にもネット上で斯くして高橋信之・正子両先生に俳句の教えを乞う事に辿り着きました。文芸に程遠い仕事人間だった私には、先ず継続が第一目標でした。こうして良き師と先輩、句友のご指導とご鞭撻を得て今日に至りました。本物の俳句は生活の中にあるとの思いは、今春癌告知を受けて以来より身近なものになりました。詠む事で生きている証しを自分に聞かせる自分への応援詩と思い、前向きに今ある喜びを満喫して居ます。
 この度、日頃のご指導に加え、信之先生がブログ句集を作ってくださり、且つ身に余る序文を戴き、また正子先生には素敵な跋を頂戴いたしました事、水煙から花冠へと俳句を続け得る幸福感に浸っております。 花冠への新発足のテーマを我がものに、より明るく深い現代語の俳句を目指して勉強したいと思います。変らぬご指導をお願いし「あとがき」と致します。(志賀泰次)
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

奥付

2008-11-26 19:21:46 | Weblog

ブログ句集 志賀泰次句集(しがたいじくしゅう)

平成20年12月1日 発行
    著  者         志 賀 泰 次
    発行所         花 冠 発 行 所
                   ネット出版部
    〒223-0062 横浜市港北区日吉本町3丁目40-41
                   電話 050-3641-8827
コメント
この記事をはてなブックマークに追加