長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

浅田次郎著【蒼穹の昴】

2010-10-12 14:37:12 | 本と雑誌

西太后

清朝を破滅へと導いた葉赫那拉(イエホナラ)の女、しかしその眞の姿は歴史の闇へと沈んだ。
《ひとけのない熱河離宮の一室で、夫に毒杯を勧める太后の姿が思い泛かんだ。静まり返った養心殿で、放蕩者の息子の唇に丸薬を押しこむ太后の顔を、春児はありありと思い泛かべた。太后の涙を掌に受けながら、春児は声もなく顎を振った。
「私は鬼なのよ。夫を殺し、子供を殺した鬼なのよ。鬼になって、何とか四十年この国を持たせたんだけどね」 
悲しみが太后の力のみなもとであったことを、春児は知った。》
清朝末期を描いた歴史超大作:浅田次郎著【蒼穹の昴】
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「汝は遠からず都に上り、紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに仕えることとなろう。やがて、木火土金水の凶々しく合する兵乱のさなか、破軍の星々のせめぎたつ干戈興亡のうちに、中華の財物のことごとくをその手中にからめ取るであろう」
李春雲(春児)は其の言葉を信じ、宮廷へと臨むのであった。
しかしそれは、占い師の老婆白太太が思わず吐いた、春雲を勇気づけるための嘘であった。
「それでも、わしは信じたいのじゃよ。この世の中には本当に、日月星辰を動かすことのできる人間がいることを。自らの運命を自らの手で拓き、あらゆる艱難に打ち克ち、風雪によく耐え、天意なくして幸福を掴みとる者のいることをな」…

ジュゼッペ・カスチリョーネ(中国名:郎世寧)とジョヴァンニ・バティスタ・ティエポロの往復書簡を柱に、著者はこの物語を構築していったとする。

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