きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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ぼくのおばあちゃんがミイラになったわけ     田添明美

2014年11月20日 14時57分05秒 | 「いたずら」田添明美





 みいらになったおばあさんは
 毎晩 歯をみがきながら
 明日は あの星になろうと思い
 あさっては あの星になろうと思う

 きれい
 さっぱり手入れする必要のなくなったおばあさんに
 孫もひ孫も笑いかける
   おばあちゃん
   きのうより今日の方がきれいだよ

 みいらになったおばあさんは
 にっこり笑い返し
   明日もっときれいになろうと思う

 きっと
 あの星に手が届くまで

 永く永く つゞく

 あの星に手が届くまで






                    H26.11.20






三輪車     田添明美

2014年11月04日 15時14分26秒 | 「いたずら」田添明美




だからどうという訳でもないけれど
あたしがあれ  ほらなんだっけ
宝クジでもない ガラガラぽとん
と玉の出る   おお 福引で
一等のタンスではない
赤い三輪車を当てた日のこと。

無口な祖父をいつも駅まで 迎えに出掛けた
死に際を見せずに
そっと立ち去った
あの忠犬ハチが
真っ白なむくむくした子犬だった頃

あいつと あたしは
同じ写真の中にいる。

なぜか素足で
白いセーターに朱色のべっちんのズボン
ハンドルに顎をのせ
むふふと恥ずかしそうに
笑っている
側には むくむくしたハチがいる

あの時は びっくりしたよね
三輪車を当てたんだものね
うれしくて
    うれしくて
わくわくしたんだろうね

あの後
あたし
若い従業員の
タッちゃんに掴まって
タッちゃんのバイクに乗って
タッちゃんと
川に子犬を捨てに行った事がある。
捨てに行くなんて知らなかった
風が頬に痛い冬の日だった

タッちゃんは
怖がらせようとスピードを出して
あたしは 怖かったけれど
澄ましていた

タッちゃんは
川へ着くと 紙袋を取り出して
「こうやって
     子犬を捨てるのさ」
とあたしを脅した。
あたしは
ぎゅっと
タッちゃんを睨んだ。

帰り道
「この道の名前知ってるかい?」
とタッちゃんは言った
首を振ると
タッちゃんは
  「バカだね」
と笑って口笛を吹いた。

タッちゃん ごめんね
ごめんね。
あの時 泣いていたのは、
あなただった

あたしは 小さい子供だった
ずっと
  「バカだね」
という言葉だけ心の奥に残っていた。

タッちゃん 動物大好きだったんだね
あたし 今でも動物 さわれない

大阪へ引っ越す時
幼稚園に 迎えに来たのも
タッちゃんだった
タッちゃんは
意地悪だったけれど
あたしに 優しかったんだね。

    タッちゃん
    思い出をありがとう
    タッちゃん
    あの時は
    ごめんなさい




                    

                     H5.11.30