広島大学と自然科学研究機構基礎生物学研究所は、160年来の謎であった、陸上植物の世代交代を制御する因子を発見した。
生物には染色体のセットを1組持っている時期(単相)と2組持っている時期(複相)がある。人間の体は複相にあたります。単相に相当するのは卵や精子といった単細胞で、いずれも単独では生活できない。
ドイツのホフマイスターは160年以上前に、陸上植物は形も特徴も異なる多細胞の体を交互に作ることを発見し、それを世代交代と名付けた。
その後、陸上植物は単相と複相のそれぞれ形態の異なる配偶体と胞子体を作り、それを交互に繰り返す世代交代として知られるようになった。
それぞれの形作りのプログラムは厳密に制御されており、切換えに働くスイッチが存在すると考えられてきた。
今回、広島大学大学院理学研究科の榊原恵子特任助教、出口博則教授らは、オーストラリア・モナシュ大学のJohn Bowman教授、基礎生物学研究所の長谷部光泰教授らとの共同研究により、コケ植物ヒメツリガネゴケを使って単相から複相への切換えにスイッチとして働く遺伝子を発見したもの。
この遺伝子を欠失させると、複相の時期に間違って単相の体を作ってしまう。
現在、地球上で最も繁栄している陸上植物は花を咲かせる被子植物だが、その体の大半は複相なので、このスイッチがうまく働くことは植物に取ってとても大切なこと。