「わたしは、ダニエル・ブレイク」 ケン ローチ監督 ◯ ☆☆
事務的な行政のはざまで切り落とされていく人々を監督らしい深い愛で描いたヒューマンドラマです。舞台はイギリス北東部ニューカッスルです。
心臓を患い大工の仕事ができなくなったダニエル(デイブ ジョーンズ)は福祉事務所を訪れます。しかし、そこでの扱いはけんもほろろでパソコンが使えないため何をどうしていいかもわからず途方に暮れます。そんな時、二人の幼い子供を連れたシングルマザーのケイティ(ヘイリー スクワイアーズ)と出会います。ダニエル同様行政職員の冷たい対応に困りはてていました。ダニエルはケイティを励まします。しかし、事態は一行に改善されません。人間の尊厳まで踏みにじる対応にダニエルは怒りの一手を投じるのでした。
その日の食事にも事欠く貧困は決してイギリスだけの問題ではありません。どんな社会であれ子どもや高齢者、病人などの弱者を投げ出さない社会であってほしいものです。かつては「ゆりかごから墓場まで」と言われていたイギリスがどうしてこうなってしまったのでしょうか。
作品は人とのつながりに希望を託しているようにも見えますが、やはり行政の側が人の尊厳を踏みにじらないように人々が監視することが必要なのではないでしょうか。貧困はその人のせいではないのです。
タバコは、町中の場面でちらりと映ったかもしれませんが、無煙ということにしましょう。