蛙の日記

散歩して 風呂に入って 酒を飲む

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千束 丸八

2008-06-19 12:12:07 | 居酒屋
吉村平吉さんを偲んで、その二。

「下町のラーメン屋などはうす穢い店のほうが旨いといわれるが、和洋中華
の「丸八」の店もお世辞にも綺麗とはいえなかった。ところが安くて旨い。
シウマイや、餃子は手作りだし、ラーメンその他も昔風の懐かしい味つけ。
…(略)…某日、文芸評論家の山本容朗氏をお連れしたところ、あの味にう
るさい山本さんがすっかり気に入られて、その後もちょくちょく顔を出され
るようになった。
ここの常連呑んべえのメンバーが凄い。タクシーの運ちゃん、葬儀屋さん、
パチンコ屋の店長、カバン問屋の専務、柔道の師範、などなどの面々。それ
こそ地元の選りすぐりの酒客、論客ぞろいなのである。
毎度このメンバーが顔を合わせると、いやもう大変な騒ぎ、大変な賑やかさ
である。時局問題、政治問題から世相全般に及ぶかなり高度な話題が声高に
議論されたりする。これがなかなか鋭く、辛辣なのである。
昔の落語の床屋政談の風景そのままで、江戸以来の下町の人たちの噂高さは
いまだに健在といった賑やかさなのである。
ご主人は自警消防団の副団長を務めるいわゆる地元の名士なのだが、自ら調
理したりオートバイで出前配達もする温厚な人物で、常連の連日のような喧
々ゴウゴウの論議を静かに笑って聴いているだけ。」
(『浅草のみだおれ』吉原のタマリ場、から抜粋)



吉村平吉さん、その略歴は……。
大正9年、赤坂一ツ木の書画骨董商の長男として生まれる。早稲
田大学専門部政経科卒。エノケン一座の文芸部員となるが、召集
され戦地へ。帰国後、有島一郎、堺駿二(堺正章のお父さんです)
らと浅草で軽演劇の劇団を立ち上げるが、あえなく失敗。上野、
新橋をショバとするポン引きとなる。昭和33年、買春禁止法発布と
ともにポン引き引退、フーゾクライターとなる。

吉行淳之介、色川武大、野坂昭如らがフーゾク小説を書くさいに指
南役をつとめたことから、浅草あたりではヘイさんのことを「先生」
と呼ぶ人も多い。

ちなみに吉行淳之介、『コールガール』の一節。
「彼は、一流の大学を卒業して、ポン引きとなった。ポン引きになる
ために、大学卒業の資格が必要なわけではなく、彼が自分の趣味でポ
ン引きになったのだ。私よりはいくぶん年長で、眼鏡をかけ、痩せて
温和な風貌である。が、胸や腕には、鬱蒼と毛が生え茂っていて、逞
しいエネルギーを感じさせる。
浅草の一流のポン引きのところへ、彼は弟子入りした。街頭に立った
当初は、呼びかける声が出なくて苦労した。
「よう旦那、いい子がいますぜ」
という呼びかけ声が出ない。」
この小説に登場する「彼」こと「角さん」という元ポン引きが、ヘイ
さんのこと。

「俺が三日ここへこなかったら、すまないが、うちへきてみてくれな
いか」と、丸八のご主人はヘイさんからいわれていたそうです。さて
三日顔を出さないものだから、きょうあたり見にいってみるかと思っ
ていたところ、千束のマンションの部屋で亡くなっているのをマンシ
ョンの管理人さんが見つけた、という連絡が入ったのだそうです。享
年八十四歳。

さてこの丸八さんですが、各界の著名人がお忍びで訪れる、いわば隠れ
家的な存在として有名で、壁にはヘイさんが紹介したという山本容朗
さんの色紙のほか、その隣の隣には鳩山邦夫さんの「友愛」の色紙が。
鳩山ファミリーとは、邦夫さん由紀夫さんのお父さんの代からのおつき
あいであるとか。

○ これが飲まずにいられるか! 下町酒場はきょうも賑やかなり
(落款のつもり)














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8 コメント

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中華 (射干)
2008-06-19 16:19:52
食堂みたいな中華屋さんっておいしいところがたまにありますね。
丸八っていうと綿って感じだけど。

京都も食堂みたいのが減ったなぁ。
たまご丼に山椒たっぷりが美味しい店とか。

梅雨に戻ってすごい湿度です。
射干さん (蛙)
2008-06-19 22:39:09
そうなんですよねえ。東京も大衆食堂、定食屋といった店がずいぶん減りました。定食屋で酒を飲むのが好きな私にとっては、残念なことです。
そういえば、ここのところ東京では、さぬきうどんとか、タコ焼き屋とか、関西系のファーストフード店が増えてきているような気もします。
定食と酒 (射干)
2008-06-20 04:09:59
定食屋さんでお酒っていうのは、酢豚にビールって感じ?
たこ焼き、お好み焼きって電車で30分しか変わらない京都なのに、大阪の味が出ない。
粉もん文化はやはり奥が深い(笑)
大阪のおいしいたこ焼きに風月のお好み、かないません。たこ焼きって外側はかりっとしていて、口の中で溶けるんですもの。
射干さん (蛙)
2008-06-20 11:29:43
酢豚にビール、いいですねえ。
あとはサバの塩焼きにショーチューとか。
そういえば高校の修学旅行が京都だったんですが、毎日お好み焼きばかり食べてました。その頃ぼくは、お好み焼きはてっきり京都の食べ物かと思い込んでいまして。
はじめまして! (moo)
2008-06-21 03:05:03
丸八、先日伺ったので検索してたらこちらにたどり着きました。
素敵なブログですね。
即、お気に入りにさせていただきました。
吉村平吉さんと同じマンションだったのかも・・・と先日知りました。もっと早く知っていたらな~。
mooさん (蛙)
2008-06-21 13:01:35
へえ、ヘイさんと同じマンションだったんですか。
でしたら丸八も近所ですね。
あそこは中休みなしの通しで営業しているところがいいです。
あの本お持ちでしょうか ? ? ? (ティコティコ)
2008-06-22 11:23:54
(^コ^)(^ン^)(^ニ^)(^チ^)(^ワ^) …始めまして

mooさんのブログから回ってきました

楽しいブログの発見です!!!

吉村先生とは『丸八』でお会いしたり『中さと』にご

一緒したりで楽しい思い出が浮かんできます、

私も『吉原酔狂くらし』や『浅草のみだおれ』葉持っ

てますが、『実録・エロ事師たち』は持ってません

生前平吉先生にお聞きしたら先生もなくして持ってら

っしゃらないとのこと・・・

(蛙)さんはお持ちでしょうか・・・

ぜひ読んでみたいのですが、手に入るでしょうか?

どうぞこれからもよろしくお願いします…m(__)m
ティコティコさん (蛙)
2008-06-22 11:54:24
じつは、ぼくが吉村平吉なる存在を初めて知ったのが、この『実録・エロ事師たち』を神田の古本屋で見つけたのがきっかけでした。とはいえ、そのときは吉村平吉というよりも、表紙に載っていた、滝田ゆうの描いた、上野の駅前で手をモミモミしているポン引きのイラストに惹かれたのですが。

お尋ねの件、『日本の古本屋』という古書専門の通販サイトがありまして、そこから購入できます。

http://www.kosho.or.jp/servlet/top

ちょっと余談になりますが、『エロ事師』の中に、ポン引きになった馴れ初めのエピソードが出てきます。吉原大門のそばに「赤垣」という飲み屋があって、そこで知り合った馬場敬さんというポン引きに弟子入りを志願するって話なんですが、先日、浅草六区に赤垣って店があったもんですから、これはてっきりあの店がこちらに移転してきたものかと思い、入って話を聞いたところ、残念ながら全然関係ありませんでした。









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