歌舞伎蔵(かぶきぐら)

歌舞伎を題材にした小説、歴史的時代背景を主に、観劇記録、読書ノート、随想などを適宜、掲載する。

平戸へ15

2017-07-27 06:12:07 | 女歌舞伎襤褸鑑4

 「おまえさまがたは平戸になげんしに来なさったとか」
 荷を下ろし、ようやくくつろぐと商人がたずねた。
 「阿国という歌舞伎の一座をさがしておるのじゃ」
 「ははあ、阿国ったあ、八幡の阿国のこつか、博多の阿国のこつか」
 「さようにあちこちに阿国がいるのでござるか」
 「何でも都にも阿国がおりゃんせるとか聞き申した」
 「都の阿国が歌舞伎の始祖でござる」
 「何を申すか、八幡の阿国が歌舞伎を興しんすた。一とう古かものですたい」
 その時、夕餉の支度に部屋に入ってきた女衆がくすりと笑って言った。
 「お客人しゅは阿国御前の尻を追っかけて来なすったとか」
 「そのようなものじゃが、今夜はおぬしの尻で餅をつきたいの」
 平太夫はまだ二十歳前の女衆を見て、すっかり元気を取り戻したかのごとく冗談を並べ始めた。女も若いに似合わず気さくな娘で、平太夫の戯言にも嫌な顔もせず調子を合わせていた。

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