歌舞伎蔵(かぶきぐら)

歌舞伎を題材にした小説、歴史的時代背景を主に、観劇記録、読書ノート、随想などを適宜、掲載する。

平戸へ1

2017-07-13 09:37:03 | 女歌舞伎襤褸鑑4

 長崎に行くなら船で有明の海をわたった方がはるかに早いとは言われたが、熊本に立ち寄る約束もあり、さほど急ぐ旅でもないと薩摩街道をもどることにした。別れぎわには、もはや二度と会うこともないであろう長介の子ども、四郎丸を抱きお福と手を握って別れた。おれは甚兵衛どのに信用されたのか、されぬのか最後までわからずじまいだった。
 熊本の町はずれの白川の河原に十日ぶりにやってきた。相も変わらぬ人出で賑わっており、物売りや見世物の呼び声は十日前にもましてにぎやかだった。しかるに平太夫の姿はなかった。おれはまだ店を出していた茶店の親爺に尋ねた。
 「はて、あん男はおまさんの来た次ん日にゃ、店をたたんだばい」
 なんと二、三日後にはもどるというおれの約束など信じておらなかったのか、それともさような気はなかったのか、平太夫はおれが宇土に立つとともにこの町を去ったというのだ。さようなれば熊本などにもどる必要はなかったのだ。おれは一刻も早く長崎に旅立とうと思ったが、この日は熊本の町の旅籠に泊まることにした。
 旅籠では博多の町からやってきた旅の商人と相部屋になった。もしや阿国歌舞伎のことを存じておるのではないかと尋ねてみた。

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