歌舞伎蔵(かぶきぐら)

歌舞伎を題材にした小説、歴史的時代背景を主に、観劇記録、読書ノート、随想などを適宜、掲載する。

平戸へ4

2017-07-16 08:41:06 | 女歌舞伎襤褸鑑4

 甚兵衛どのの話しでは、城内の御殿の一室に長介一行はとどめられ、毎日のごとく宴席がもうけられ、舞や踊りに明け暮れていたそうだ。ちょうど名古屋の城普請を終えて熊本にもどったばかりであり、大仕事を為しおえたという安堵の気持ちが城内にはありありと見えたということだ。どうやら清正公は名古屋での又一郎どのの歌舞伎をご覧になり、熊本に呼び寄せたらしい。熊本にやってきた長介一行の傾城はみな熊本やその周辺の出のものばかりであったところを見ると、又一郎どのも熊本を本拠とする傾城歌舞伎を目論んでおられたのかもしれぬ。それとも長介たちに一度、故郷を見せてやろうとお思いになっただけなのだろうか。ともかくも長介は手をつくして両親を探し当て、十年ぶりに対面したわけだ。されど長介は宇土には来ようとはせなんだそうだ。
 おれは翌日、朝早く熊本の旅籠を立ち長崎に向かった。田原坂をすぎ、険しい山路を駈けるように上り下りして南関に着いた時には、すでに日は暮れていた。さほど急ぐ理由はなかったが、一刻でも早く長崎に着き、阿国の一行をつかまえれば何かがわかるのではないかという予感があった。けれど南関の関所はすでに閉ざされており、また無理に今夜のうちに肥後を出る必要もなかった。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 平戸へ3 | トップ | 平戸へ5 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。