歌舞伎蔵(かぶきぐら)

歌舞伎を題材にした小説、歴史的時代背景を主に、観劇記録、読書ノート、随想などを適宜、掲載する。

平戸へ5

2017-07-17 13:19:30 | 女歌舞伎襤褸鑑4

 おれは来しなに世話になった茶店に立ち寄り、泊まらせてもらいたいと言った。さいわいにも老夫婦はおれのことをおぼえていてくれ、難なく泊まることができた。すでに四月も終わろうとしていたが、未だに夜は寒く食い物とてない野泊まりはつらかったであろう。南関の手前の道端では、今夜の野泊まりをする旅人の一行が三々五々、焚火をたいて暖をとり、干し飯を火にあぶって食べていた。
 「ちょっと銭を出しゃ、百姓家の納屋くらいにゃ泊まれるけんど、そげん銭もおしかば野泊まりしよっちょ」
 旅の途中で思いもかけず親子連れや女連れの旅人に会うのに驚いた。野泊まりの一行には商人らしき姿はなく、さようなか弱きものどもばかりが目につくのだ。もしや野盗にでも襲われればひとたまりもないであろう。
 「近頃は切支丹などかくまいよってから、家財没収こつ、まんだ軽かお仕置ばい。島流し火炙りもめずらしゅうなかと。転んだ上に家屋敷うばわれ、かんじんのごと流れて行くたい。おっとろしか世になり申した」

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