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再出発の英文法:「冠詞」および「可算名詞と不可算名詞」

2008年05月27日 12時49分43秒 | 英文法の話題


[1]冠詞ってそもそも何?
今回のテーマは「冠詞」および「可算名詞と不可算名詞」です。急がば廻れ(More haste, less speed.)まずは、私達が通勤に使っている小田急線で見かけた例文を題材に冠詞と名詞についての随想を書いてみます。少し抽象的ですが、後の説明の土台になる部分ですからお付き合いをお願いします。

Please notify station staff or crew members when you see any abandoned belongings or suspicious objects either on a train car or at the station.

(列車の車内または駅構内で持ち主のわからない荷物や不審な物を見かけられましたら駅員または列車の乗務員にお知らせください。)

問題は文末の"either on a train car or at the station"。ここで、"at the station" を "at a station"と書いてはいけないのかということ。一体、"the station" と "a station"とはどう違うのでしょうか。

"the station" と言えば、乗客個々によって思い浮かべる具体的な駅名は違うにしても、ご自分がよく利用している駅のイメージが広がると思います。そこでは、具体的な駅名は乗客によって異なるから"the station"は不特定多数の駅を表現しているには違いないのですが、乗客各自は具体的な「あの駅」「この駅」を「駅」のイメージの中心にすえている。つまり、"the station" は、only one of them=only one of the stations!

それに対して "a station"はどうか。"a station"と言えばそれは本当に「不特定多数の駅」(one of many=one of many stations)になってしまいます。ですから、"a station" も文法的には間違いではないのですが、これは生身の乗客にとってはちょっと異様な感覚になる。

ここには利用者にとっての「列車車輌」と「駅」の違いがあり、その違いが冠詞選択のキーポイントになっているのです。つまり、「車輌」はあくまでも不特定多数だから"a train car"になり、「駅」の方は(大部分の個々の乗客にとっては)完全には不特定多数ではないから"a station"ではなく"the station" になる。以下、この「随想」を整理敷衍します。



[2]可算名詞と不可算名詞の区別と冠詞
名詞とはなんでしょうか。名詞とは簡単に言えば<ものの名前>です。で、難しく言えば、それは<人間の思考の対象>。重要なことは、ものの名前の区切り方は日本語とか英語とかドイツ語とかの個々の言語によって違ってくるらしいことです。例えば、

日本語ではカツオとマグロは別の「もの」や「対象」として区別されるが大部分の英語の母語話者はそれらは普通 tuna で一括りにして理解する(もちろん、bonitoという単語はありますけどね)。逆に、日本語の母語話者にとっては生後1年未満の羊も3年目の羊も同じ羊だけれど、英語の母語話者にとっては lamb とram と sheep は全くの別物です。要は、世界の森羅万象から「ものごと」を区切る単位は(=名詞は)言葉が変わればそれにともない変わってくる。

そして、<英語を再出発>する上で大切なことは、英語の母語話者の感覚では、名詞が世間から切り取ってくる「もの」や「対象」は大きく二つのグループに分かれているらしいことです。それが、可算名詞と不可算名詞の区別。文字通り、「1個、2個、3個・・・」と数えられる「もの」や「対象」とそのようには数えられないものがある、と。

前者の可算名詞には、普通名詞・集合名詞が含まれ、後者の不可算名詞には物質名詞・抽象名詞・固有名詞が属している。これらの内容についてはお手元の英文法の参考書で是非確認してください。

・可算名詞: 普通名詞・集合名詞
・不可算名詞:物質名詞・抽象名詞・固有名詞



ポイントは、可算名詞が1個の場合には(単数の場合には)必ず、冠詞(the/a/an)や冠詞相当語句(my/your/his/her/any・・)の冠詞類が名詞の前につくこと。英米人にとっては、単数の可算名詞に冠詞類がつかないのを見たり聞いたりすることは「一種異常な体験」なのです。

単数の可算名詞には冠詞または冠詞相当語句が必ず付く!


極論すれば、彼等にとって「apple」や「train car」はまだ「林檎」や「列車の車輌」という意味はなく、「an apple」や「the train car」の形になって初めて、思考の中で「林檎」や「列車の車輌」という意味が像を結ぶ。

友人の英語のネーティブスピーカーは、このことを The indefinite article of "a" is an integral part of "a train car."(不定冠詞の"a" は"a train car"の不可欠の部分である)と言いました。私に言わせれば、名詞に冠詞が付くのではなく(語の配列から言っても、つまり、英米人の思考の順序から言っても)、冠詞に名詞が付くのだと思っています。よって、名詞を覚える場合には冠詞もつけて暗唱してみられれば英語特有のリズムや語感が一層よく身につくかもしれません。お試しください。


かなり抽象的な話しになったので敷衍しておきます。a/anとtheの意味の違いは何だったでしょうか。

a/an:one of many
the :only one of them


例えば、果物屋さんで、かごいっぱいに積まれているリンゴを指差し、「リンゴを一個くださいな」と言う場合には、どのリンゴでも良いのですから、”I’ll take an apple.”になる。つまり、an apple=one of many apples

そして、その後、貴方がその「リンゴ」を丸かじりしているのを見た貴方のgirl friend/boy friendが、「リンゴ美味しそうだね」と言う時の「リンゴ」は世界に唯一の「その」リンゴな訳ですから、”The apple looks good.”になるのです。つまり、the apple=the only one apple in the world



[3]冠詞の使い分け
TOEICやTOEFLでもしばしば出題される冠詞の使い分けを切り口にして「どんな時にa/anではなくtheが使われるか vice versa」というポイントを確認しておきましょう。

◆基本ルール0:
文字通り世界で唯一の、宇宙で唯一の“only one of them”にはtheが冠される。逆に言えば、世界で唯一、宇宙で唯一のもので他に仲間のいない(one of THEMではない!)固有名詞には普通theはつかないのです。


the sun, the earth, the statue of liberty, the president
(太陽, 地球, 自由の女神, 社長/大統領)
cf. Mars, Mercury, President Bush
(火星, 水星, ブッシュ大統領)

◆基本ルール1:
話者の間で初出の名詞にはa/an, その後、「その同じ名詞」が話者間で特定された場面ではtheが冠される。


Could you show me a mouse, please?
(コンピューターのマウスを見せていただけますか)
It is good, isn’t it?
(いいですね、気に入りました!)
I will take the mouse.
(このマウスをいただきます)

◆基本ルール2:
その名詞が初出であっても話者の間で「あの・・・」(=only one of them)と特定される名詞にはtheがつく。会話文がメインのTOEICではむしろこの方が普通! 


I have been to the bank.
(銀行の支店に行ってきたところです)
どの銀行なのかは、会話の当事者の間では既知だから”the bank”

◆基本ルール3:
形容詞句等で名詞が限定修飾され「世界に唯一のone of them」の意味になっている名詞には初出でもtheが冠される。例えば、特殊な形容詞(句)/前置詞句/関係節による限定がある場合はそうです。具体的には、only, last, same, および、first, second, third等の序数詞や形容詞の最上級、of+名詞、ある種の関係節。


the only person(唯一の人物)
Morioka is the capital of Iwate prefecture.
(盛岡は岩手県の県庁所在地です)
This is the annual report that our team made last month.
(これが我々のチームが先月作った(会社の)年次報告書です)

cf. I met a service representative who was good at information technology.
(インフォメーションテクノロジーに詳しいある保守点検担当者と会いました。)

主語の「私」が会ったことのある/知っている保守点検担当者は他にも何人かいる場合にはtheではなくa/anがつく。この場合には、”service representative”が関係詞に限定されていても、only one of themにはならないのです。これは、TOEIC/TOEFLの頻出とは言えませんがコンスタントに出題される論点ですよ。



[4]冠詞の使い分けの例外
以下、冠詞の使い分けの例外について説明したいと思います。まずは「原則」の確認。冠詞の使い方の「基本ルール」の確認です。

▲基本ルール0:
世界で唯一の“only one of them”にはtheが冠される
世界で唯一のものでも他に仲間のいない固有名詞(それはone of THEMではない)には普通theはつかない

▲基本ルール1:
初出の名詞にはa/an, 二回目以降は「その同じ名詞」にはtheが冠される

▲基本ルール2:
初出であっても話者の間でonly one of themと特定される名詞にはtheがつく

▲基本ルール3:
only, last, same, および、first, second, third等の序数詞や形容詞の最上級、of+名詞、関係節等の修飾語等で限定され「世界で唯一のone of them」になった名詞には初出でもtheが冠される



◆例外1:
固有名詞でも物質名詞でも「one of many」「only one of them」と意識される場合には、a/an や the が冠される。実は、theの付く固有名詞もこのコロラリー(派生ルール)なのです。


Please give me a water.(すみません、(コップ/グラス)一杯の水をください)
A Ms. Aiko Suzuki is waiting for you.(鈴木藍子さんという方が、お待ちです)
She is a Miyuki Nakajima in talk.(彼女の話し方は中島みゆきさんみたいだ)

Mr. Obarin has a most beautiful daughter. (オバリンさんには奇麗な娘さんがいる)
Ms. Ohio made up her mind to tackle the task a fourth time.
(オハイオさんは四度その課題に取り組もうと決心した)
The University of Tokyo(東京大学)
The Pacific Ocean(太平洋)


◆例外2:
a/an も the も「~というものはどれも」という意味をあらわす。これを、「冠詞の総称用法」と言います(尚、名詞の複数形にもこの総称用法があります)。注意すべきことは、総称用法の「a/an+名詞」は主語にしか使われないこと。この論点は、ここ3年間で少なくとも2度TOEICで出題されました。頻出ではないですが高得点を狙っている方は要注意かもです。


A mobile-phone is a useful device.(携帯電話は便利です)
Save the endangered species.(絶滅危惧種を救え)
cf. Save an endangered species.は「a/an+名詞」が目的語になっているので間違いです。

総称用法ではないですが、「a/an+名詞」は「~につき」(=per)の意味を表します。
We have sixteen meetings a week.(1週間につき16の会議がある!)


整理します。

▲例外1:
固有名詞でも物質名詞でも「one of many」「only one of them」と意識される場合には、a/an や the が冠される。


Please give me a beer.(すみません、ビールを(グラス)一杯ください)
A Ms. Totdjo called you this morning.(Totdjoさんという方から午前中電話がありました)
The Atlantic Ocean(大西洋)

▲例外2:
名詞の複数形と同様、a/anにもtheにも「~というものはどれも」という総称用法がある。ただし、総称用法の「a/an+名詞」は主格(要するに、主語や補語)にしか使われない(つまり、目的語には使われない)。


A mobile-phone is a useful device.(携帯電話は便利です)
Save the orangutan.([絶滅が危惧される]オランウータンを救え)
Save orangutans.([そのエリアに住んでいる]オランウータンを救え)
Save a orangutan.(×)←英語として不自然!



[5]theの特殊用法
◆the +形容詞, the +分詞
「~の人々」「~の人」を表す。

the rich, the learned, the Japanese(裕福な人々, 博学な人々, 日本人)
the absent, the deceased(欠席者, その亡くなった人)

◆catch(seize, hit) +人物+by the +身体の一部
「身体の一部をつかむ(殴る)」の意味を表す。TOEICの頻出表現。

The police officer caught the burglar by the arm.
(その強盗は警官に腕をつかまれた)

◆「by the +~」で単位を表す
Our company buy copying paper by the cardboard box.
(私の会社ではコピー用紙を段ボール単位で購入しています)
Mr. Nipponia drinks beer by the gallon.
(ニッポニア氏はガロン単位でビールを飲む/もの凄くビールを飲む!)
cf. 「彼はドラム缶で牛乳を飲む」=「もの凄く大量の牛乳を飲む」というニュアンスです。







<確認演習>
この記事で説明したことを例題で確認しましょう。

▼例題1:
The number of crimes committed by foreigners in Japan, especially by Chinese < > steadily increasing in recent years.

(A) has
(B) are
(C) has been
(D) have been


訳:近年、外国人による犯罪、特に、支那人による犯罪は着実に増加しています。
正解:(C)
説明:the number of Aは「Aの個数」という意味で、ある特定の数値を意味しています。「たくさんの」の意味で複数扱いになる「a number of + 名詞複数形」と混同しないようにしましょう。尚、2007年版の『警察白書』によると、2006年の外国人犯罪総検挙数は約4万件で、過去10年間で1.3倍増加。そのうち支那人による犯罪は35.3%、侵入犯は62.5%を占めています。


▼例題2:
Mr. Moai is one of the few who < > the real facts of the human rights abuse in Tibet.
(A) are knowing
(B) is knowing
(C) knows
(D) know


訳:モアイさんは、チベットにおける人権侵害の真相を知っている数少ない方の一人です。
正解:(D)
解説:「one of the +複数名詞」を関係代名詞が受ける場合、その先行詞は「複数名詞」になります。よって、例題のwho の先行詞は the few。the few は「少数(の人)」の意味ですが複数扱い。尚、know は状態動詞ですので、原則、進行形になることはありません。すなわち、(A)(B)は問題文に目を通すまでもなく「選択肢」を確認しただけで不適切と判断できます。


▼例題3:
Three-fifths of the book < > of color illustrations because it is written for childish people who insist that the Constitution of Japan be null and void.

(A) consist
(B) consists
(C) are consisting
(D) is consisting


訳:日本国憲法は無効だなどと言い張るお子様のような読者向けに書かれているので、その本の5分の3はカラーのイラストになっています。
正解:(B)
説明:「全体の中の部分を指す語 + of + 名詞」 は名詞 に動詞を一致させます。例題では「three-fifths+ of +the book」のthe bookの単複が問題ということ、もちろん、the bookは単数形ですから空所には、三人称単数現在形の述語動詞が入ります。

尚、consist + of「~から成る」は状態動詞ですので、進行形になることはありません。つまり、(C)(D)は問題文に目を通すまでもなく「選択肢」を確認しただけで不適切と判断できるのです。また、insist that the Constitution of Japan be null and voidの「be」は「要求」「命令」「提案」「推奨」を表す動詞(insist)とともに仮定法現在が使われています。「日本国憲法は無効だ」という妄想を「憲法無効論」(このブログの英訳は"Nullification Doctrine on the Constitution of Japan")と言うそうです。


▼例題4:
Having received anonymous information on the suspect's whereabouts, the police < > her who is a staff member of Greenpeace Japan and who had stolen into a branch office of Seino Transportation in Aomori and stolen whale meat.

(A) were able to catch
(B) has caught
(C) was able to catch
(D) are caught by


訳:西濃運輸の青森の営業所に忍び込み鯨の肉を盗んだグリーンピースジャパンのスタッフである容疑者について、その所在に関する匿名の情報を得たことにより警察は彼女を逮捕することができました。
正解:(A)
説明:the police は綴りは単数形ながら、しかし、複数扱いされる集合名詞です。実は、staffも集合名詞。よって、「1人の警察官」や「1人のカルト的環境利テロリスト集団グリーンピースの職員」という場合には、police officer (policeman, policewoman), a staff memberと表します。「モーニング娘」が、そのメンバーさえ入れ替えながら「単数形」として、しかも、複数の個性豊かな(?)メンバーを含んでいる経緯とこの集合名詞は似ていると思います。尚、 anonymous は「匿名の」, suspect は「容疑者」, whereabouts は「居所」。


▼例題5:
It was obvious to everyone that three years < > too short to finish amending the constitution.
(A) has been
(B) was
(C) were
(D) have been


訳:憲法を改正するには3年間はあまりにも短いということは誰の目にも明らかだった。
正解:(B)
説明:three years が単数扱いか複数扱いかを見極める問題。例題のように、距離・時間・金額などを「一まとまりの単位」として考える場合、be動詞が述語動詞の場合は形式的に複数形の名詞も単数扱いになります。ただし、be動詞以外の have, take, get, bring, help, leave とかは正式には普通に複数扱い。でも、英語のネーティブスピーカーでもここは曖昧なのですよ😹

 

***

 

 

尚、もう少し「理詰めで納得」したい、鴨。

という方には、これ(⬇)をお薦めします。

 

・石田秀雄『わかりやすい英語冠詞講義』(大修館書店・2002年3月)

 

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1 コメント

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目からウロコ (あるぱか)
2009-10-04 23:13:02
英検1級を控え、このページを一読しました。
非常にわかりやすく、ためになりました。
AとTHEは常に気をつけていないといけない
ですね。

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