めくるめく本の虫

読んだ本を独断偏見で紹介しています。

第41話『ときどき旅に出るカフェ』 近藤史恵

2017-10-13 | 小説
主人公の瑛子は30代後半の独身会社員。
ある日、自宅の近くに小さいけれど
居心地の良さそうなカフェを見つけます。

店内には珍しい世界各国のメニューが並んでいます。
そしてカウンター内に居たのは…
瑛子の昔の同僚・円(まどか)でした。
偶然円と再会した瑛子は、いつしかそのカフェの
常連客となり、頻繁に足を運ぶようになります。

カフェの休業日に各地を旅する円は
行く先々で珍しい料理を見つけてきては
お店のメニューに加えていきます。
イチゴのスープに、卵黄入りの月餅、
デザート以外にも南インド風の卵カレーなど
珍しい料理が次々に登場してきて興味を惹かれます。
(同じ著者が描く、フランス料理店の三舟シェフが登場する
シリーズに近い雰囲気を、この作品からは感じます)

ただテーマはカフェやスィーツだけど、読み進めると
その内容は決して甘くはありません。
とは言え、後味が悪いわけでは決してなく
強いて言えば『あまいメニューが出て来るかと思ったけれど
期せずして濃厚なエスプレッソが美味しかった』みたいな
感じでしょうか。
(ニュアンスが上手く伝わるといのですが)

ただそのビターさが、返って現実味があって
物語りに良いスパイスを加えている気もします。
また1人でお店を経営する、円の心意気が感じられ
共感が持てる内容でもあります。

個人的には「ツップフクーヘン」と呼ばれている
ロシア風のチーズケーキが気になりました。
これは濃厚なチーズにココアが加えられているらしく
チーズケーキとチョコレートケーキが、同時に
楽しめるような代物だとか。
いつかどこかで見かけたら、物語りを思い出しながら
食してみたいと思います。


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第40話『世界の美しい色の町、愛らしい家』 澤井聖一

2017-10-04 | 旅行記・写真系
「これはまた…すごい家だな」と、色々な意味で
驚かされたり、感心したり、時には感動的ですらある
そんな世界の個性あふれるカラフルな家々が
紹介されている写真集です。

お国柄が家の装飾や色彩に影響を与えている…と思う反面
イタリアとブラジルの様に、かなり離れている土地の建物が
似たような色彩である事に驚かされたりもします。
(歴史的な背景があるのでしょうか?世界は摩訶不思議です)

折しも「家」をテーマにしたグループ展に参加する事が
決まった時だったので、描く対象物として参考になればと
眺めていましたが、日本ではまずあり得ない様な
建造物の数々に、いい意味で固定観念を裏切られ
『家』とは何ぞや、と改めて向き合える機会にもなりました。

しかし色々難しい事を考えず、ただ眺めているだけで
美しくセンスが良い家や街並みを、純粋に楽しめる
一冊でもあります。

(余談ですが、この本を観た時の感覚「どこかで感じたような」と
思っていたら、第35話で紹介した階段の写真集の著者と
同じ方でした。(感想を書いている段階で気付きました)
無意識に同じ著者の本を手にして、同じような衝撃を受けるとは。
それだけ強く惹かれるモノがあったのかもしれません)

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第39話『ぐるぐる博物館』 三浦しをん

2017-10-02 | エッセイ
第38話に続いて、三浦しをんさんの作品の紹介です。
前回は小説でしたが、今回はエッセイ。
それも一見堅苦しく見える博物館がテーマですが…
著者の手にかかると「博物館ってこんなに面白い場所なのか!?」
と思える、目からうろこの内容が盛りだくさんです。

本書では著者が数年かけて渡り歩いた全国各地、
津々浦々の様々なテーマの博物館が紹介されています。
例えば、王道とも言える東京・上野の国立科学博物館はもとより、
石に魅入られた奇石博物館、石炭業の歴史がわかる石炭産業博物館、
めがねに特化したメガネ博物館、意外(?)と学術的で
シンプルな造りの風俗博物館、そして自然災害の恐ろしさを
伝え続けている雲仙岳災害博物館、更には肩ひじ張らずに
純粋にその世界を楽しめそうな石ノ森萬画館…等々。

一概に「博物館」と言っても、内容は実に様々な研究対象があり
それらに情熱を傾けた人たちの『伝えたい』と言う想いは
こんなにも熱く、(いい意味で)面白いモノなのか…
という事を痛切に(本当に痛いぐらい強く)知る事が出来ます。

どうしても堅い説明になりがちな、この手のテーマを
こんなにもユニークに楽しく伝えられるその手腕は
著者ならではで、さすがです。
個人的には以前『紙つなげ!』と言うルポタージュを読んだ
日本製紙石巻工場が登場していたのも、その後を知る事が出来て
興味深かったです。

本書はエッセイでしたが、同じ様な感じで博物館を対象にした
イラストルポが描けたら、それはまた楽しいだろうなと思いました。
(その場合は私自身が自分で描くしかなさそうですが…)
三浦しをんさんの着眼点が、非常に魅力的な一冊です。


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第38話『愛なき世界』 三浦しをん

2017-10-02 | 小説
読売新聞・朝刊に2017年9月まで連載されていた
連載小説です。某大学の大学院(研究室)を舞台に、
熱心に植物の研究を行う人々と、そんな彼らに
惹かれる近所の食堂の見習い調理師さんの交流が
描かれています。

大学近くで営業を続けているレストラン円腹亭の
見習い調理師・藤丸君は、素直で明快な好青年。
すばらしく美味しい料理を作る師匠(店主)を尊敬しつつ
熱心に腕を磨く毎日です。

お店に来るお客様は様々ですが、時には大学構内の
研究室に出前を頼まれることがあります。
そんなある日、藤丸君がお昼の配達に行くと
歴史ある研究室の荘厳な扉を開けて顔を出したのは
とても可愛らしい感じの本村さんと言う華奢な女性。

彼女に一目ぼれした藤丸君は、本村さんをもっと知りたい
と願うと共に、彼らの研究対象である「植物」にも
自然と目を向けるようになります。


読んでいて、ある意味「これは意欲作だな」とも思いました。
様々な仕事小説を今までも描いている著者の作品には、
色々な分野の職業がありますが、この物語は仕事以前の
大学院での研究と言う、かなり専門的でマニアックな
あまり世間一般に知られていない世界がテーマです。
読んでいると実際に学術用語であるとか、難しい言い回しも
多々ありましたが、そこは藤丸君の明るいキャラクターと
恋愛の要素を上手に取り入れる事で、読者との間を
わかりやすく繋いでいると思いました。

そして仕事とは違って、何ら利益を生み出すわけでもなく
(いや時には世紀の大発見もあるかもしれませんが)
ただただ純粋に、興味ある一つの事に打ち込む研修者の姿は
読んでいてなんだか『美しいな』とも思えました。
理解は(難しいので)しにくいけれど、美しい世界だなと。

それはある意味、芸術にも近い世界かもしれません。
なのでいつか叶うなら、著者が描いたクリエイター
(芸術家をテーマとした)の世界なども読んでみたいな
と言う気がしました。




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第37話『絵本作家という仕事』 講談社

2017-10-02 | イラスト・デザイン系
若手から大御所まで、人気のある絵本作家さん15名に
様々な角度からインタビューを試みた本です。

興味深いのは、その仕事場風景。
絵本作家さんはその大半が自ら物語りを紡ぎ出して
描く方々だけに、アトリエの風景はまるで
頭の中を少し覗かせて頂いている様な
非常に魅力あふれる空間になっています。
使われている道具や、それらの置き方一つをとっても
「こういうやり方があるのか」と新鮮で参考になります。

また各々の創作に対する思いや哲学
(後進の方に呼びかける言葉やアドバイスなど)も
「なるほど」と思えるものが多く、励みになりました。

絵本を描くと言う事は、並大抵の労力ではないのですが
それでもこの魅力あふれる媒体で、いつかは私も
描けたらいいなと言う強い憧れがあります。
いつか…ではなく、思い立ったらすぐ動き出すべきかも
しれないけれど。
そんな作品を創りだすには、バイタリティーや描かずには
いられないという衝動がある事も各々のインタビューから
垣間見える気がします。

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