はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

柿に亡き家族の記憶

2016-12-07 19:42:35 | 岩国エッセイサロンより
2016年12月 2日 (金)
    岩国市   会 員   横山恵子

 景色に初冬の趣を感じる頃となり、店先には季節の果物が並んでいる。亡父は渋抜きをした「あおし柿」が特に好きだった。
 渋抜きに炭酸ガスやアルコールが使われるようになったのは、いつ頃からだろうか。私たちが子どもの頃、父はたるの中に柿を入れて湯を張り、それを風呂の残り湯の上に一晩置いて渋抜きをしていた。
 ほんのりとぬくもりのある柿は、格別のおいしさだった。父が「果物の中で、これが一番じゃ」と頬張っていた姿を思い出す。
 祖父が雨の中、畑仕事から帰るなり寝込んでしまい、祖母が心配していたら、実は黙ってあおし柿を18個食べていた、という話は、祖父母亡き後も語り草になっている。
 わが家の柿の木は1年置きに実を付けている。今年は数えるくらいしかできなかったのに、はとんどはカラスヘのお歳暮となった。
 葉が散ってしまった木を見ると、「今年も残り少なくなったなあ」と一抹の寂しさを感じる。

      (2016.12.02 中国新聞「広場」掲載)
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