はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

寒肥

2012-02-23 21:53:29 | はがき随筆


 庭に記念樹や果樹、花を植えている。植物は手入れをすると必ず応えてくれる。
 寒肥の今、根の周りを掘りながら、今年も咲いてね、実をつけてねとつぶやきながら施肥する。わけても、このバラに施肥する度にふつふつと熱いものを感じる。
 9年前、クリスマスの夜、会合で遅く帰宅した夫が、玄関で迎えた私に、ビロードのような深い真紅のバラを「はい」と、はじらいながらくれた。その時の様子が脳裏に残っている。バラは数日玄関に飾った後、挿し木した。運良く根付き毎年美しい花が咲く。咲かせ続けたい。
  出水市 年神貞子 2012/2/20 毎日新聞鹿児島版掲載
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随友のK先生

2012-02-23 21:47:45 | はがき随筆
 随友のK先生は85歳の高齢であるが、現役の開業医で時々往診にも出かけられる。数年前に奥様を亡くされてから、いわゆる独居老人の生活である。
 先生は短歌、俳句などの文芸にも造詣が深く、創作活動を楽しんでおられる。先日、はがき随筆に作品が掲載されたが、体調が悪く仕事を休んで寝込んでいたとのこと。「一人で寝ていると、さまざまなことを考え滅入ってしまう」と書かれていた。気になったので電話してみたらもう元気で診療しておられた。自ら生涯現役を誓っておられる通り健康に留意され、1日も長く頑張っていただきたい。
  志布志市 一木法明 2012/2/19 毎日新聞鹿児島版掲載
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老いの終わりに

2012-02-23 21:41:53 | はがき随筆
 86歳。妻が亡くなってもうすぐ3年。老いて一人になり、まだ現役の開業医。しかし後期を過ぎて、もはや早末期。この1年の間に体調を崩し一病も二病もあるが、まだ何とか仕事を続けている。
 もう引退をしてもいいのだが10年前生涯現役を自分に誓ったので、命の限り頑張りたい。
 酒を断ち節制に留意して今、健康保持をしている次第。老いを一人で生きるということだけでも大変なことだが、開業医という天む職はなかなかである。
 今はただ、来年の桜を見られるようにひたすら祈っている。
  志布志市 小村豊一郎 2012/2/18 毎日新聞鹿児島版掲載
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鬼が来た!

2012-02-23 21:30:57 | はがき随筆


 2月3日、アニメに夢中の4歳の孫が「鬼が出た」と血相を変え、顔面蒼白で固まった。続いて6歳児も……死角の大人には見えない。そこえ「僕だから」のメール。恵方巻きをもらいに来た長男が、黒タイツで顔を覆い青鬼面をつけ、すさまじい格好で荒々しく戸を叩き出没しては暴れまくった。孫3人は恐怖におののき泣きわめく。とっさに豆を与えた。「鬼は外」。死に物狂いで投げつけた。「太っていたから、絶対悪い子を食べてるよね」。大人の話を尻目に異常におとなしい。楽しいはずの節分が終わった。来年は赤鬼さんが来てくれるかな?
  指宿市 池元民子 2012/2/17 毎日新聞鹿児島版掲載
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闘病記その2

2012-02-23 21:23:45 | はがき随筆
 泌尿器科系の体の老廃物を検査している。尿、便の回数と体温。食事は全部食べると10、半分なら5。夫の食事は10だった。病人食が合っているのか。看護師が、私と娘に面接室に行くようにと伝えた。
 主治医から夫の病気の将来を告知された。「余命……です」。あからさまな告知。言葉が出なかった。告知の言葉が痛ましく耳に通じた。頭の中は真っ白。腸が煮えくり返りそう、主治医を殴りたいほどの心境。体中の血が騒ぐ。逆流もする。
 夫は病室にいる。何も知らないだろう。哀れなる人生観……。人の一生は美しく悲しい。
  姶良市 堀美代子 2012/2/16 毎日新聞鹿児島版掲載
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