世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

砂鉄の産地の安来には、「どじょう」ならぬ土蔵造りの家並みが続いていました

2013-03-03 08:00:00 | 日本の町並み
 将軍に入れるお茶に使う良水が湧出していた事から名付けられた地名が御茶ノ水でした。水は飲み水として貴重ですが、江戸時代から砂鉄をより分けるためにも大切なものでした。今回は、川の水を使って砂鉄をより分ける様を踊りにしたのが「どじょうすくい」の原型と言われていますが、その「どじょうすくい」の安来節で有名な安来を紹介します。

 
 安来市は、知名度が最も低いといわれている島根県の最東端に位置しており、JR山陰線で安来の一つ東側の駅は鳥取県の米子になります。安来の地名は知らなくとも、安来節や「どじょうすくい」は知っているという人も多いと思います。その貢献度のせいか、街中には「どじょうすくい」の像があり、「どじょうすくい」の絵でラッピングされたディーゼルカーが走っています。

 銅像といえば、「どじょうすくい」のコミカルな像とは対照的に、語臣猪麻呂の勇ましい銅像もあります。語臣猪麻呂は風土記の主人公で、ワニザメに襲われ命を落とした娘の仇を4日間かけて討ち取ったと言われています。お隣の因幡の白兎伝説にもワニザメが現れますが、このあたりの山陰海岸にはサメが多かったのでしょうか。

 さて、安来の砂鉄ですが、弥生時代から、中央政権に砂鉄の製品としての鉄器を供給していたようです。安来節の踊りのように、川に流れ出た砂鉄を服務土を、ざるに取って選別をしていたようです。安来節の「どじょう」は、元々は魚の「どじょう」ではなく、砂鉄を含む「土壌」だったとも言われています。江戸時代になると、世界に誇る日本刀が蹈鞴(たたら)製鉄で大量に作られるようになりました。原料として大量に必要となる砂鉄は、鉄穴流し(かんなながし)と呼ばれる手法でより分けられていました。鉄穴流しは、基本的には「どじょうすくい」と同じ原理で、鉱石中の岩石と砂鉄の比重の差を利用し水を使ってより分ける手法です。鉱山近くに引いた水路に鉱石を流し込んで行われたそうです。「どじょうすくい」的な選別法は、江戸時代より前の様子かもしれません。

 
 
 
 
 安来は、鉄の産地というだけではなく、北前舟の寄港地として、山陰道の宿場町として交通の要として発展した町です。その名残は、JR安来駅の西側、山陰道に挟まれたあたりの町並みに広がっています。土蔵造りの下部を板張りにした商家がかなりの数で残っています。平入り、妻入りが混在していますが、平の中央に妻を張り出しT字型の家屋も見られます。これは、平面図の形から撞木造りと呼ばれるそうです。撞木造りの大きな商家と思われる家屋は、白漆喰の上に灰色でアラベスクのような模様が描かれており、なかなか軽快な感じがします。

 土蔵造りの町並みの北側、山陰道を渡った所にレンガ造りのモニュメントが建っています。土蔵造りの町並みを見た目には、レンガ造りは、対照的でまた違った印象です。1986年に解体された山陰合同銀行安来支店の旧庁舎の正面玄関の一部が残されたものです。かつてはレンガ造りの2階建てで、角型ドームを持つ美しい建物だったようです。すべてが残されていれば、もっと強烈な印象だったかもしれません。筆者が訪れたときには、門の上部のみだったものが、現在は正面玄関のすべてが復元されているようです。

 現在の鉄は鉄鉱石を原料として作られますが、建物や乗り物の構造体として使われるだけではなく、鉄の合金の磁石はIT分野にとっても重要です。身近なところでは、コンピュータの大容量メモリとして使われるハードディスクなどは、微小な磁石を利用したメモリですし、脳の内部を診断するMRIは、体の中の分子が持つ小さな磁気を、強力な磁場を加えて検出して、コンピュータで映像化するものです。ただ、強力な磁石を作るには、特定の国に資源が偏在するレアアースが必要なことが困り物ですが。


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