ヒスバナアラカルト

香西善行の雑記ドコロ
諸々の感想には具体的内容も含んでいますので、お気をつけくださいね。

東京デスロック「WALTZ MACBETH」

2008-05-11 10:58:02 | 演劇関連
「目の前に俳優が居ること」を掲げたunlockシリーズから「現前する身体による戯曲の現前化」を掲げたREBIRTHシリーズへの移行作品。約四百年前のシェークスピヤの戯曲を約百年前に翻訳した坪内逍遥の作品を構成しての上演。

舞台は白い平面のみ。縁に装飾が施されている。それを取り囲むように四面に客席。二階席もあり。ロープはないがプロレスのリングのような印象。アフタートークで多田氏曰く「グローブ座のようなイメージ」とのこと。

始まり、佇むマクベスの元へ、一脚のイスを持ち寄り男女が入場してくる。空気を震わす言葉はないがほとばしるコミュニケーション。人数マイナス壱のイスを巡り生き馬の目を抜くかごとくの争い。
イス獲りゲームがなぜこんなに楽しいのかと観ながら、イス=玉座である覇権争いの様を愚かな行為と見下している自分の心理をつと見つめていた時に聞こえてきた初めてのセリフ
「きれいはきたない、きたないはきれい。」
息が止まった。
坪内逍遥訳のセリフは完璧に聞き取れたわけではないが、詩的な言葉の連なりのような、たとえ意味はわからなくともイメージの広がりを受ける。物語の表層を追う芝居と違い、デスロックような状況や状態を探り楽しむ演劇にはピッタリ。これは狙い通りだろうか。
「演劇LOVE」からのファンの私でも、楽しみや驚きはもはや期待通り。今公演、これに輪を掛け舌を巻いたのは羽場睦子さんの起用だろうか。二十代、三十代の俳優が踊り、狂う。疲れる。踊り、狂う。疲れ、果てる。前公演まではそんな極限の様を楽しんでいたが、羽場さんが同じ舞台の上に居ると観え方がガラリと変わる。
衰退。とでも言うのだろうか。決してネガティブな印象ではないのだけれど、ハシャギまくっている若者たちの周りを沿う円熟した羽場さんの姿は、いずれ来る老いを強烈なまでに訴えかけてくる。ギラギラの欲から濁りが消える瞬間っていうのはいつなんだろう。
終わり、いつの間にか始まりと同じ風景が出来上がっている。歴史は繰り返すのだろう、そして少しだけうんざりするんだ。

今年、いや、ちょっと早いか……。「楽しい演劇」上半期ベストかもしれない。


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1 コメント

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Unknown (ryotaro)
2008-05-25 21:01:09
こんにちは。トラバさせていただきました。
色々アレンジしたマクベスがあるようですねw

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