読んだ文庫をつらつらと…

備忘録として、6(5+1)段階評価で

樹上のゆりかご

2011年06月30日 | ★★★★☆☆(お勧め)
荻原規子(中公文庫)

巻き込まれるようにしてかかわることになった生徒会執行部の活動。合唱祭、演劇コンクールに体育祭、そして、あの事件……。何ものからも守られ、それゆえに不安定な場所――学校に巣くう「名前のない顔のないもの」とは?「ゆりかご」の中の高校生たちの戸惑いと成長を夏の日差しとともに切り取った、みずみずしくミステリアスな物語。

ヒルクライマー

2011年06月23日 | ★★★★☆☆(お勧め)
高千穂遙(小学館文庫)

妻も娘も顧みず、四十歳で出会ったヒルクライムに全てを賭ける男。マラソンを捨て目標を失い、大学も中退した青年。そして二人を取り巻く坂馬鹿たち。彼らは坂の頂点を目指しひたすら登り続ける。「なぜ坂に登るのか?」それはロード乗りが必ず一度は直面する問いだ。なぜ重力の法則に逆らい、息も止まるほどの苦しさに耐えなければならないのか。長い坂を登りつめた果てに、待つものは何なのか。 自転車で山に登る面白さに取り憑かれた作家が、自らの体験を元に描き尽くした日本初の本格ヒルクライム小説。坂に魅せられた者たちの、魂と肉体の再生の物語だ。

プラ・バロック

2011年06月20日 | ★★★☆☆☆(満足)
結城充考(光文社文庫)
第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作

雨の降りしきる港湾地区。埋め立て地に置かれた冷凍コンテナから、十四人の男女の凍死体が発見された! 睡眠薬を飲んだ上での集団自殺と判明するが、それは始まりに過ぎなかった――。機捜所属の女性刑事クロハは、想像を絶する悪意が巣喰う、事件の深部へと迫っていく。斬新な着想と圧倒的な構成力! 全選考委員の絶賛を浴びた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

図書館危機 図書館戦争シリーズ③

2011年06月17日 | ★★☆☆☆☆(消化不良)
有川浩(角川文庫)
第39回星雲賞日本長編作品部門受賞作

思いもよらぬ形で憧れの“王子様”の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展。加えて、地方の美術展で最優秀作品となった“自由”をテーマにした絵画が検閲・没収の危機に。郁の所属する特殊部隊も警護作戦に参加することになったが!? 表現の自由をめぐる攻防がますますヒートアップ、ついでも恋も……!?危機また危機のシリーズ第3弾!

猫鳴り

2011年06月07日 | ★★★☆☆☆(満足)
沼田まほかる(双葉文庫)

ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた……。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。

悼む人

2011年06月01日 | ★★★★☆☆(お勧め)
天童荒太(文春文庫)
第140回直木賞受賞作

(上)
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と憎しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。
(下)
「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか? どんなことで感謝されたことがあったでしょうか?」。静人の問いかけは彼を巡る人々を変えていく。家族との確執、死別の葛藤、自らを縛りつける“亡霊”との対決、思いがけぬ愛。そして死の枕辺で、新たな命が……。静かな感動が心に満ちるラスト! 解説・重松 清ほか