読んだ文庫をつらつらと…

備忘録として、6(5+1)段階評価で

テンペスト 第一巻 春雷

2010年11月28日 | ★★★★☆☆(お勧め)
池上永一(角川文庫)

19世紀の琉球王朝。嵐吹く晩に生まれた真鶴は、厳しい父の命に従い、男として生まれ変わることを決心する。名を孫寧温と改め、13歳の若さで難関の科試を突破。憧れの首里城に上がった寧温は、評定所筆者として次次と王府の財政改革に着手する。しかし、王室に仕える男と女たちの激しい嫉妬と非難が寧温の前に立ちはだかる……。
伏魔殿と化した王宮を懸命に生き抜く波瀾万丈の人生が、春の雷のごとく、いま幕を開けた!

百瀬、こっちを向いて。

2010年11月24日 | ★★★☆☆☆(満足)
中田永一(祥伝社文庫)

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは――。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。

スクールアタック・シンドローム

2010年11月22日 | ★★★★☆☆(お勧め)
舞城王太郎(新潮文庫)

崇史は、俺が十五ん時の子供だ。今は別々に暮らしている。奴がノートに殺害計画を記していると聞いた俺は、崇史に会いに中学校を訪れた。恐るべき学校襲撃事件から始まった暴力の伝染――。ついにその波は、ここまでおし寄せてきたのだ(表題作)。混沌が支配する世界に捧げられた、書下ろし問題作「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」を併録した〈ダーク&ポップ〉な作品集!

散りしかたみに

2010年11月18日 | ★★★☆☆☆(満足)
近藤史恵(角川文庫)

歌舞伎座での公演中、毎日決まった部分で桜の花びらが散る。誰が、何のために、どうやってこの花びらを散らせているのか?女形の瀬川小菊は、探偵の今泉文吾とともに、この小さな謎の調査に乗り出すことになった。一枚の花びらが告発する許されざる恋。そして次第に、歌舞伎界で二十年以上にわたって隠されてきた哀しい真実が明らかにされていく――。
歌舞伎座を舞台に繰り広げられる、妖艶な魅力をたたえた本格ミステリ。

タイム・リープ あしたはきのう

2010年11月15日 | ★★★★★☆(最高!)
高畑京一郎(電撃文庫)

(上・下)
鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。“あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい……”
若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。“タイム・リープ――今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない……”
タイムリープ。意識だけの時間移動現象。正常な時から“剥がれて”しまった翔香の『意識時間』。その謎に和彦は迫る。だが、浮かび上がった事実は、翔香を震撼させた。“そ、んな……嘘よ……”
第1回電撃ゲーム小説大賞で〈金賞〉を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。最後のピースが嵌る時、運命の秒針が動き出す――。

国境事変

2010年11月13日 | ★★★☆☆☆(満足)
誉田哲也(中公文庫)

新宿で在日朝鮮人が殺害された。“G4”の存在を隠匿しようとする公安は独自捜査を開始するが、捜査一課の東警部補は不審な人脈を探り始める。刑事と公安、決して交わるはずのない男達は激しくぶつかりながらも、国家と人命の危機を察し、銃声轟く国境の島・対馬へと向かう――警察官の矜持と信念を描く、渾身の長篇小説。

ジウⅢ 新世界秩序

2010年11月09日 | ★★★☆☆☆(満足)
誉田哲也(中公文庫)

新宿東口で街頭演説中の総理大臣を標的としたテロが発生。大混乱の中、伊崎基子らSAT隊員が総理の身柄を確保し、警察上層部は安堵する。だがそれは、さらなる悪夢の始まりに過ぎなかった。〈新世界秩序〉を唱えるミヤジと象徴の如く佇むジウ。彼らの狙いは何なのか?そして美咲と基子は――!? シリーズ完結篇。

ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊

2010年11月08日 | ★★☆☆☆☆(消化不良)
誉田哲也(中公文庫)

連続児童誘拐事件の黒幕・ジウを威信にかけて追う警視庁。実行犯の取り調べを続ける東警部補と門倉巡査は、〈新世界秩序〉という巨大な闇の存在に気づき、更なる事件の予兆に戦慄する。一方、特進を果たした伊崎巡査部長は特殊急襲部隊を離れ、所轄に異動したが、そこにも不気味な影が迫っていた!

ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係

2010年11月06日 | ★★★☆☆☆(満足)
誉田哲也(中公文庫)

都内の住宅地で人質篭城事件が発生した。所轄署や機動隊とともに警視庁捜査一課特殊犯捜査係が出動し、門倉美咲巡査は差し入れ役として犯人のもとへ向かうが――!? 篭城事件と未解決の児童誘拐事件を結ぶ少年、その背後で蠢動する巨大な事件とは?ハイスピード、未會有のスケールで描く新・警察小説。

誘拐の誤差

2010年11月03日 | ★★★★★☆(最高!)
戸梶圭太(双葉文庫)

「礼乎(レオ・10歳)が学校から帰ってこないんです」――母親からの届けを受け、警察が捜査を開始。何の手がかりもつかめないまま時間だけが過ぎ、礼乎は死体となって発見される。その直後、身代金を要求する連絡が入る。いったいどうなっているのか。捜査は暗礁に乗り上げるが、その原因は警察内部にあったのだ。ゾッとする怖さを秘めた異色の警察小説。

かたみ歌

2010年11月02日 | ★★★★☆☆(お勧め)
朱川湊人(新潮文庫)

不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。