ちょっと変わった司法書士の毎日

ちょっと変わった司法書士・小牧美江と申します。

中学校新教科書・その2(社会 公民的分野)

2011-06-29 09:44:07 | 法教育としての消費者教育
来年度から新学習指導要領に基づく新教科書が使用される中学校の社会科公民的分野と技術・家庭科家庭分野の各社の教科書の「契約」に関する記述がどうなったのか。昨日の技術・家庭科家庭分野の続きで、社会科公民的分野の教科書を読んでの雑感です。雑感だというのは・・・読んだといっても、家庭科と違って会社数が多く、本来なら全体をきちんと読んだうえでどうなのかという分析が必要なのですが、残念ながらそれだけの時間がなく、「契約」がどこでどのように取り上げられているのかという部分のみ閲覧してきたからです。

下記の5社のものだけ、とりあえず閲覧しました。
東京書籍
http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/chu24/subject/komin.htm
日本文教出版
http://www.nichibun-g.co.jp/c-shakai/kou/index.html
帝国書院
http://www.teikokushoin.co.jp/textbook/junior/index09.html
清水書院
http://www.shimizushoin.co.jp/kanri/files/toppdf/pdf/toppdf/1.pdf
教育出版
http://www.kyoiku-shuppan.co.jp/view.rbz?cd=2080

新学習指導要領では、(1)大単元「私たちと現代社会」中単元「現代社会をとらえる見方や考え方」の中で、対立と合意、効率と公正、きまりの意義などについて学習することになっているのですが、その際に、個人の尊厳と両性の本質的平等とともに、「契約の重要性やそれを守ることの意義及び個人の責任などに気付かせる」という部分、(2)大単元「私たちと経済」中単元「市場の働きと経済」の中で「身近な消費生活」を学習する部分が、「契約」に関する学習にあたります。

ところが、実際の教科書では、上記(1)(2)の一方、または双方に「契約」という言葉が出てきていますが、どちらに重点を置いているのか、どのように扱うのかという方針が各社バラバラで、かつ、どれも「契約」の意義や原則、考え方を理解させるような詳しい記述がなく、単なる用語としてしか取り上げられていないのではないか(そういう意図ではなくても、生徒にはそう見えるのではないか)というように感じました。

例えば、【1】「きまりをつくる目的と方法」の説明の中に、「約束、規則、ルール、契約、法律、条約」と並列的な記述はあるものの、「契約」の説明が不十分で他の「きまり」との区別も不十分と思われるもの、【2】「消費者契約法では、契約という言葉を重視しています」という記述しかないもの、【3】「契約は、対等な個人間での自由な意思にもとづいて行われるもの」という記述があり、でも契約をした「責任はすべて消費者にあるのか」という問題提起をして考えさせる工夫をしているものの、契約そのものの説明がないもの、【4】こんなときに勝手に契約が解除できるのかという事例を、お客さん、お店双方の立場にたって考えさせるなどの工夫をしているものの、契約そのものの説明が不十分と思われるもの、などがありました。

これらの教科書で「法教育としての消費者教育」をという立場にたって授業をすすめるには、よほど工夫をした指導書ないし解説書がなければ、教える側の教師のみなさんにとっても、指導は難しいのではないかと思いました。

そんな中、日本文教出版のものは、上記(1)の中単元中で「契約の意義と個人の責任」という独立した単元(2頁)をつくり、契約の意義と責任について詳しく記述があり、無効な契約にも言及しています。また、日本国憲法の自由権(経済的自由)の記述の中で、契約自由の原則の修正についての言及があったり、上記(2)の消費生活のところでも、悪質商法、消費者契約法に触れるなど、3か所で「契約」についての記述があり、かつ、「私たちに身近な司法」のところでは、法テラスの設置も含めた司法制度改革に関する簡単な記述があり、面白い構成ではないかなと思いました。しかし、これも実務家から見て面白くても、やはり、何が論点か、どう関連させて指導するか、という部分のモデルがなければ、指導はやはり難しいのではないかとも思いました。

以上、「契約」に関する部分だけのざっと読みの感想ですが、家庭科では、契約(特に売買契約)そのものについて詳しく学び、考え、実際に行動する練習をすることを、社会科では、なぜ契約が重要で守らなければいけないのか、原則を修正する必要はどうしてでてくるのか、その際、どのようにより良い法律をつくっていくのか、といったことを、それぞれ学習するのが教科間の役割分担かな?と感じましたが、特に家庭科と比べて体系化されているようには思えない社会科の方で、家庭科での学習との関連性を生徒に意識させるようにしなければ、とても理解しづらいのではないかな、というようなことを感じました。

なお、初めにもお断りしたとおり、公民的分野の教科書は「契約」に関する部分だけを読んでの意見ですので、全体の流れを詳しく読んだうえで「契約」という私法の部分の法教育がどう扱われているのかを検討する必要がありますし、歴史的分野の教科書の記述(自由権、平等権、社会権の登場のあたり)ともつきあわせて検討することも必要かもしれませんので、とりあえずの感想です。

今回の教科書比較はここまでですが、また後日時間がつくれたら、第二弾のご報告をしてみたいと思います。

中学校新教科書・その1(技術・家庭 家庭分野)

2011-06-28 11:32:04 | 法教育としての消費者教育
今年は、6月17日から14日間、検定に合格して来年度の採択の対象となった教科書の見本が、全国各地で「教科書展示会」という形で一般公開されています。大阪の場合は、大阪府教育センター、府下の郡・市の図書館等、大阪市立の図書館などに「教科書センター」が設置されていて、この他に、府立中之島図書館でも特別展示がされています。

法定展示期間は今週末で終わるのですが、来週以降も展示している会場もあり、土日や夜間に閲覧できる会場もありますので、興味のある方は一度のぞいてみられてはいかがでしょうか。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/center.htm

こまきは現在、「法教育としての消費者教育」の共同研究に参加していますので、来年度から新学習指導要領に基づく新教科書が使用される中学校の社会科公民的分野と技術・家庭科家庭分野の各社の教科書の「契約」に関する記述がどうなったのか読んでみようと、昨夜2時間くらいですが、大阪市立中央図書館で閲覧をしてきました。

まずは、技術・家庭科家庭分野の教科書の「消費生活と環境」の領域に関する部分を読んでの感想です。下記の3社のものを閲覧しました。
東京書籍
http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/chu24/subject/katei.htm
教育図書
http://www.kyoiku-tosho.co.jp/junior-hs/kyokasho/k_002.php
開隆堂
http://www.kairyudo.co.jp/contents/02-chu/katei/h24/index.htm

家庭科の「消費生活と環境」の大単元は、選択と環境を除けば、普段、司法書士が法律教室で講義している内容(契約の意義、成立、当事者の権利義務、トラブルへの対処方法、相談機関、消費者としてどう行動するか)とほぼ一致しているものになっています。司法書士会は、もっと家庭科の先生方と連携しないといけないなと、強く感じました。

「契約」の意義、成立、契約当事者の権利・義務に関する各社の記述は、「技術・家庭 家庭分野」の教科書での記述の方が、「社会 公民的分野」の教科書での記述よりも正確で詳しく、理解しやすいように感じました。消費生活(消費者)とは何か、選択から購入までにどのようなプロセスがあるのか、実際に購入するための「契約」とは何か、どんな責任が伴うのか、契約に失敗したときはどうなるのか、どうすべきかと、大きな流れの中に位置づけられているところが、その理由だと思います。

法教育の観点から見るとどうだろうか、という点では、教育図書は、ずばり、「買い物の法律的な意味」という独立した項目だてをして、契約の意義、成立、当事者の権利義務について言及しています。また、開隆堂は、「事例を通して消費者の権利と責任を具体的に考える」という独立した項目を立て、消費者として行動するとはどういうことかが具体的に見えるように、また、同じように自分たちも意見を文章にしてみる、意見を事業者に出してみる、といったアクションを伴う授業化の工夫もできるような工夫がされています。

各社とも、すごく面白い。但し、これらの教科書は、中学1年から3年まで3年間使用する1冊のものになっていて、技術分野も同じ分量の教科書が1冊あって、これだけの面白い内容を、3年間175時間(1〜2年生で週2時間、3年生で週1時間)の両分野合計配当時間中で、十分に扱えるのだろうかというところが疑問です。

社会科公民的分野のレポートは、日をあらためて。

日本消費者教育学会関西支部での報告

2011-06-11 21:02:59 | 法教育としての消費者教育
大阪教育大学と近畿司法書士会連合会、日本司法書士会連合会は、昨年の9月から、「法教育としての消費者教育に関する研究」をスタートしています。(研究期間は、2010年9月〜2013年3月末まで。なお、この研究については、大阪教育大学の大本久美子先生の研究室ホームページに情報コーナーがあり、研究構想図を見ることができます。)

この共同研究の趣旨などは、以前にブログにも書きましたが、現在は、司法書士研究員チームが、先行研究や教材を分析しながら、「法的な疑問・被害を感じたときに動ける力」を養成する消費者教育を「法教育としての消費者教育」として定義づけ、その内容を明らかにしようとがんばっていて、大学の先生方は、家庭科、社会科教員へのアンケート調査をもとに中学校と高等学校の消費者教育の現状を分析中です。

今日は、日本消費者教育学会関西支部の研究・実践発表会で、その中間報告として、司法書士研究員チームは「司法書士会作成の消費者教育教材の分析」というレポートを提出し、こまきが代表報告者として10分間のプレゼンをさせていただきました。

各地の司法書士会は、消費者被害や多重債務問題が深刻化する中で、この状況をなんとかしなければと、全国各地でそれぞれに教材を作り、出張法律教室活動に取組み始めたのですが、作成の経緯も作り手も違う教材に、それでも共通点がある。それが、私たちが考えている「法教育としての消費者教育」ではないか・・・。

大学の先生方も、アンケート調査結果の中間報告のレポートを提出されたのですが、その内容はかなり衝撃的。単純集計結果だけを見ても、社会科教員と家庭科教員の消費者教育に対する意識の違いが見えてきました。

私たちの今回の各報告はまだ中間報告で、これからさらに分析・整理をすすめて、10月の日本消費者教育学会全国大会で本報告をする予定にしています。どうぞお楽しみに。

この共同研究については、ブログでも少しずつ報告をしていきたいと思います。

法教育としての消費者教育についての共同研究

2010-09-21 23:37:55 | 法教育としての消費者教育
「法教育としての消費者教育に関する研究」が、大阪教育大学と近畿司法書士会連合会、日本司法書士会連合会との共同でスタートすることになりました。

わたしたちは、「法的な疑問・被害を感じたときに動ける力」、アクションを起こす力を育てるために、今、求められているのは「法教育としての消費者教育」だと考えています。では、その「法教育としての消費者教育」とはどのような教育なのか。それを、中学校・高等学校の家庭科、社会科(公民科)の中で実施していくために、どのような教材、授業案が考えられるのか。といったことを検討し、2013年3月末までに、具体例としての「契約」の授業案を作成していく予定です。

ご協力をいただくのは、日本消費者教育学会にも所属されている鈴木真由子准教授、大本久美子准教授で、附属天王寺中学校(家庭科)、附属高校天王寺校舎(公民科)の先生方に授業協力をいただくことになっています。こまきを含む近畿各会所属の7名が、司法書士研究員として、本研究に参加します。

この研究の構想については、来月10月9日(土)に東京都市大学横浜キャンパスで開催される、第30回日本消費者教育学会全国大会のポスターセッション(12時〜13時)にて、概要報告を出展させていただく予定です。(同学会全国大会のプログラムは、下記のホームページに掲載されています。)
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~consumer/page151.html

学会員だけでなく一般公開ですので、お時間がありましたら、ぜひ、ご来場、ご意見いただきますよう、お願いいたします。


さて、この研究会については、昨年度から準備会を重ねてきたのですが、本日、附属天王寺中学校(2年生対象)で、家庭科の研究授業があり、参観をさせていただきました。

今日の授業は、「悪質商法」を事例にしたもので、教育実習生のみなさんが実践プランを作成、2パターンの授業を実施してくれました。契約・悪質商法・消費者保護のしくみなどを題材として、新人教師のみなさんが一から実践プランを検討するとしたら、どのような展開になるのか、工夫ができるのか、何が困難なのか、今の中学生の様子はどうなのか、といった基本情報を収集する目的での研究授業でした。・・・課題はいろいろありそうです。

参観終了後、研究会も実施しましたので、今日は半日みっちり研究づけでした。
さて、どのような研究成果ができますでしょうか。