東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ボス《放浪者(行商人)》を「バベルの塔」展で観る。

2017年05月15日 | ボイマンス美術館展

ボイマンス美術館所蔵
ブリューゲル「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-
2017年4月18日~7月2日
東京都美術館

 

   ボス油彩画真筆2点が並んで展示される。
   順路に従い、まず《放浪者(行商人)》から観る。


《放浪者(行商人)》
1500年頃
71×70cm

 

   図版からは地味で平面的な作品を想像していたが、とんでもない。画面の表情が富んでいて、びっくりするほど魅力的な作品である。

 

   貧しい身なりをした男。

   放蕩息子、旅人など色々と解釈されてきたようだが、本展では、放浪者または行商人とされている。

   この男と同じような男は、プラド美術館所蔵の三連祭壇画《干し草車》の外翼(折り畳める左右両翼の外側部分)にも描かれている。



「誘惑に惑いつつ、人生の選択に迷うこの時代の男を象徴」。

 

   会場内の詳細部分解説パネルを参考に、何が描かれているか見ていく。

 

1)貧しい身なり

   右足はブーツ、左足はつっかけのような靴。揃ってこそいないものの、特にボロいわけでもなさそうだ。

   服装は、片脚の裾がほころび、もう片脚も穴があき膝小僧が露出。被り物も穴があいているのか、白髪が飛び出ている。こちらはボロである。

 

2)持ち物

   背負い籠を体にくくつけている(どのように体にくくりつけているのか、よく分からない)。
   籠には、猫の毛皮と木の杓が結びつけられている。これらは男が商う商品との説明である。
   手にする帽子には、キリが糸で留められているので、男は靴の修繕もやっている、との説明である。

   籠の中には何が入っているのか。男は何を商っているのか。猫の毛皮が商品って、何に使われるのか。ある本には、「一種の護符、また欲望、好色の、あるいは行商の象徴ともされる」とある。商品そのものというより象徴と考えるほうが確かによいかも。

 

3)あばら屋

   屋根の棹先には水差し。鳩小屋。白鳥の看板。これらは家が娼館であることを示す。家の入口では男が女にいちゃつき、家の裏手では男が小用を足している。家の窓からは呼び込みだろうか女の顔がのぞいている。

   放浪者(行商人)の表情はどう解釈すべきか。単なる通りすがりなのか。娼館の誘惑と戦っている最中なのか。娼館を立ち寄った後なのか。去りがたく思っているのか、浪費を後悔しているのか、ちょっとしたトラブルを苛立たしく思い出しているのか。

 

4)フクロウ

   画面上部、男の頭のほぼ真上あたり、木に止まるフクロウ。悪徳の象徴であると同時に知恵の象徴であるフクロウ。本作には、道徳的な意味が込められているのだろう。

   男はどこを歩いているのか。描かれる牛、犬、豚、鶏にも意味があるのか。

   後景には、特段これという特徴のあるものは描かれていないようだ(細い柱が立っているのは気になるけど)。

   本作には、ボス作品の代名詞「ボス・モンスター」は登場しない。

 

5)円形の縁

   鏡を連想させる円形の縁。鑑賞者は、鏡に写った自分の姿を見るように、この男の姿を見ることを求められているのか。

   私も、この男のような表情をして、この絵の前から立ち去ったのであろうか。

 


   この絵は、もとは三連祭壇画の外翼に描かれていた。


   しかしながら、19世紀に、何者かの手により、祭壇画は解体される。
   左翼と右翼については、ノコギリで、板の表と裏とを綺麗に切り離される。
   切り離された外側の2枚の絵は、接着材でつなぎ合わされ、一部を切り詰められて、独立した1枚の絵に仕立てられる。それが本作である。
   そして別々に売却される。


   現在、左翼上部《愚者の船》はルーヴル美術館に、左翼下部《快楽と大食の寓意》は米・ニューヘブンのエール大学附属美術館に、右翼《守銭奴の死》はワシントン・ナショナル・ギャラリーに、つなぎ合わされた外翼《放浪者(行商人)》はボイマンス美術館にと、分蔵されている。


   なお、中央パネルは現存しておらず、何が表されていたのかも分かっていないという。
(「カナの婚礼」が描かれていて、ボイマンス美術館が所蔵する《カナの婚礼》がボスの追随者による中央パネルの模写作品という説もある。)

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2 コメント

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はじめまして (takebow)
2017-05-17 17:24:37
初めてお邪魔します。takebow(たけぼう)といいます。美術展や博物館好きで、よく分かりもしないのに見に行ってます。
素晴らしいブログなので今後も拝見させて頂きたいと思います。よろしくお見知りおきを。
takebow 様 (K)
2017-05-18 22:02:02
コメントありがとうございます。

単なる美術展鑑賞好きの拙い鑑賞記録ですが、宜しければこれからもお越しくださると嬉しいです。
貴ブログも拝見させて頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

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