日本・デンマーク外交関係樹立150周年記念
スケーエン デンマークの芸術家村
2017年2月10日〜5月28日
国立西洋美術館新館展示室
久々に常設展の観覧券による入場である。
日本・デンマーク外交関係樹立150周年記念の展覧会、初日に訪問する。
会場は、新館2階。本館の常設展示室をひととおり通って到着する。
出品リストが見当たらない。鑑賞者は誰もそれらしきものを持っていない。後日、用意されるのだろうか。
スケーエン。
会場内パネルの地図をみると、言葉どおりの半島の最北端の町である。首都コペンハーゲンから最も遠い町であるらしい。
1890年に鉄道が開通し、1907年に港ができる。それまでは人口2千人ほどの漁村だった。
今も漁業は盛んで、さらに国内屈指の夏のリゾート地としての顔が加わった。
鉄道開通の前から、その海辺の景勝に惹かれて、この村には芸術家が集まってきた。芸術家村、スケーエン派の誕生である。
本展では、スケーエン美術館が所蔵するスケーエン派の画家たちの作品59点が紹介される。
通常、新館2階の展示室には、モネやルノワールといった印象派など19世紀後半のフランスの画家の作品が主に展示されている。
今回、フュースリの大型作品《グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ》1点を除いて撤去され、代わりにスケーエン派の油彩画作品が並ぶ。
あと、新館2階の版画素描展示室にも、スケーエン派の素描作品が並ぶ。
撤去された印象派などの作品は、新館1階の展示室に厳選展示され、濃厚な空間を作っている。モネ《睡蓮》がピカソやミロ、そしてグレーズの大型作品と対峙している。
スケーエン派の画家で、印象に残るのは、ミカエル・アンカーとアンナ・アンカー。この二人は夫婦である。そして、妻・アンナは、スケーエン派で唯一の地元出身者である。その兄はホテル経営者となり、スケーエン美術館の創設者の一人となる。
ミカエル・アンカーの作品では、地元の漁民を描いた作品が良い。現にそれで大ブレイクしたらしい。
チラシに画像が掲載されている作品。
《ボートを漕ぎ出す漁師たち》
「荒れる海にボートを押し出す漁師たちの真剣な表情」
その隣りに展示される《救命胴衣のベルトを締める漁師たち》。荒れた海、救助に向かう準備をする漁師たち。
緊迫感。覚悟を決めた表情。漁師たちの英雄的な姿に強く惹かれる。当時実際に漁師たちには海難救助の任務があったという。
アンナ・アンカーは、家族あるいは住民の日常生活を描いた作品が多く展示されている。
そのなかで、信仰生活をテーマにした作品。
《戸外の説教》
こんな雰囲気の作品は、他の画家も、他の国の村を舞台として、制作しているような気がする。
あと、素描版画室に展示のミカエルによる家族の肖像画。
《妻アンナと娘ヘルガのいる自画像》。
ミカエル自身の顔はきちんと描き込まれているが、娘の顔は3分の2程度、妻の顔はほとんど描き込まれていないというアンバランスさ。なお、娘も長じて画家になったらしい。
他の画家に一人だけ触れると、芸術家村の中心的存在でよく知られる画家がP.S.クロヤー。代表作の一つ《ばら》が本展のメインビジュアルを担っている。個人的には、版画素描室展示の《室内で漁網を直すクリストファー》を推す。
スケーエン派は初めて知る名前であるが、楽しく鑑賞する。
このような周年にちなんで、いろいろな国のいろいろな芸術に触れる機会を提供していただけるのは、ありがたい。