Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

個人請負は今後、主流なワークスタイルの一つになる

2010-03-14 10:32:27 | 経済一般
昨日のセミナーでも質問があったが、最近、業務の個人請負契約化が一部で進んでいる。

以前から金融業などでは、高度な専門性を持つ人間などを契約社員や嘱託といった非正規雇用で処遇
していた(正社員の賃金制度には収まりきらないため)。
IT系のベンチャーなどでは能力のある人ほどそういった個人請負方式で働いている傾向があって、
複数社の名刺を使っている人もいる。

佐々木俊尚氏橘玲氏も著書の中で、こういったプロジェクトごとの請負契約が今後は主流になることを
指摘している。僕も同感。否応なしにそういう働き方が主流になると思われる。

理由は2つ。
ITのおかげで労働時間量や勤務場所やノウハウといった縛りが薄れ、もっと流動的な働き方が可能となったから。
こうなると個人を丸抱えして職場に縛り付けるより、専門性をべたべた切り貼りした方が良いとこ取り出来て
効率的だ。もちろん、“出来る人”にとってもその方がメリットは大きい。
一芸に特化した個人というのは従来の日本型ホワイトカラーの中ではどちらかというとアウトサイダー
だったけれど、中期的には終身雇用のゼネラリストの方が規制業種などのレアケースになるのではないか。

もう一点は、グローバリゼーション下で賃金の引き下げ圧力はさらに強まるから。
派遣規制という追い風もあって、個人の請負化は一層進むはずだ。

もちろん人生丸投げの日本型雇用も惰性でしばらくは残るだろうけども、それに見合った実入りが貰える人は
どんどん減っていくだろうから、緩やかに人の移動は発生するはず。

たとえば、ビジネス環境が激動中の出版業界などは、格好のモデルケースになるだろう。
従来から、大手版元は高給取りで下請けのフリー編集者は貧乏と相場は決まっていたが、中には独力で
大手並みに稼ぐツワモノもいた。
そういう人は複数の版元の仕事を掛け持ちしつつ、単行本の請負もこなす。まさにスキルを切り売って
商売しているわけだ。

「大変ですねえ、フリーライターは」と上から目線で眺めている大手の若手編集者はまだまだ多いと思うが、
(出版不況の結果として)自分たちの年功序列的賃金制度が既に崩壊していることに気づけば、遅かれ早かれ
切り貼り市場に打って出てくるに違いない。
(もちろん完全実力の世界なので誰でも成功するわけではないが)

こういった業務の個人請負化はアメリカでは10年以上前から指摘されていたことだが、日本でも避けられない。
というわけで、給付付き税額控除等で社会保障機能を企業から切り離しつつ、思い切った規制緩和を実施する方が
合理的だと思われる。

最悪なのは、「けしからん!業務請負を規制しろ!」なんてどこかのバカが言いだして、
仕事自体が国外に流出してしまうこと。

後に残るのはずるずる沈下していく正社員組織と、仕事の無い失業者だけという夢の無い社会になってしまう。

「正社員で終身雇用が基本なんですぅ~」とかみずほちゃんは言うだろうけど、請負化どころか
整理解雇までやっちゃってる党が言っても説得力は皆無だ。

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52 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
最悪パターンが一番起こりそう (uranux)
2010-03-14 11:26:18
国会議員、しかも与党の中に「バカ」が多そうです。仕事とそれに付随する富を海外に輸出しそうで怖いです。
Unknown (通りすがり)
2010-03-14 11:27:13
IT系ではずっと個人請負は盛んでしたよ。
個人請負で派遣すれば、派遣会社は保険料払わなくて済みますし、給与ではなく業務請負料金なので残業代も払う必要ないという素晴らしい制度です。
口約束 (ksy)
2010-03-14 12:23:05
僕らの業界(音楽制作)は昔から、個人請け負いが多いですが、契約書を作るような感じではなく、ほんとに単純な信頼関係のみで仕事が成立するんです。
仕事を終えるまでギャラが分からなかったりするので怖い面もあるんですけどね。それでも給料制で働くよりは良い面を享受出来てると思いますよ。
仕事が少ない時は、あぁ・・アメリカみたいにユニオンがしっかりしてたらなぁ・・・とか思う事もありますがw

確かに社会保障に関しては辛いですね。年金も期待出来ないし。
はじめまして (92)
2010-03-14 12:55:51
毎度、joe'sLabo拝見しています。 城先生の鋭い指摘には驚きます。
個人請負はますます進んでいくと思います。最大の要因はITの技術革新のおかげで個人から情報発信出来るからです。今までは城先生がおっしゃっている大手企業などの都合の良い情報しか流されていませんでしたが、これからは個人で簡単かつすぐに情報を入手出来るのでこの流れはますます進んでいくでしょう。
>>ビジネス環境が激動中の出版業界などは、格好のモデルケースになるだろう。
Amazonの電子BookのキンドルやAppleのアイパッドの登場で出版業界などは今までの年功序列制度では完全に維持出来ないのは目にみえます。なぜなら、某パソコン雑誌[個人的なことですいません]の小林弘人氏のインタビューにて会社名でなく個人化が進みよっては流動的になって行き小規模でのビジネスが活きてくるとおしゃっていました。
 みずほちゃんや赤旗共産党はますますパゴる[造語でガラパゴス化するの意味です]ことになりハミゴになるでしょう。
Unknown (QEE)
2010-03-14 13:08:32
いいですね。
感覚としては映画製作の現場みたいな感じでしょうか。
縦割りから横割りに移行することで、無用な同調圧力など、多くの人に閉塞感を与えているものがなくなっていけば、暮らしやすい世の中になりそうです。
ネタとは思えません (yuji)
2010-03-14 15:35:03
>最悪なのは、「けしからん!業務請負を規制しろ!」なんてどこかのバカが言いだして、仕事自体が国外に流出してしまうこと。

民主党政権が続くと規制強化実現は早いのでは…
一つの意見の紹介 (赤帽)
2010-03-14 16:00:32
>「正社員で終身雇用が基本なんですぅ~」とかみずほちゃんは言うだろうけど、請負化どころか
>整理解雇までやっちゃってる党が言っても説得力は皆無だ。

城さんに、一冊本を紹介します。

”生き残るSE 世界で通用するビジネスエンジニア
の育て方”

著者 株式会社ヘッドウォータース代表取締役 篠田康介

日本実業出版社

この本は、SEに対して”技術バカに未来は無い”と
言い切りますが、反面、彼は終身雇用についての
意見も述べています。

企業のストラテジとして終身雇用を考えた場合に、
篠田氏の意見は筋が通っていると思います。
篠田氏の物の見方は徹底して組織論なのですが、
今回の城さんの意見を見ると、

組織論自体を否定しているようにも見受けられます
が、どのようにお考えなのでしょうか。
個人請負できるほどのスキルのある人間って (マートン)
2010-03-14 17:10:59
どれだけいるんでしょうかねえ。
スキルもない、かといって親などが生産手段を残してくれ
ているわけでもない、そんな人が大多数じゃないんですか
ねえ。だから、ここで散々日本型サラリーマンを批判しよ
うともずっとそれにしがみついている人が多いわけで。。

そういえば、個人請負の話で思ったのは、路上売春です。
ブログ主はこれについてはどうお考えなんでしょう?

売春婦が自分の身体を経営者を通さずに自由に売買できる
権利をきちんと与えろという立場ですか?そうすれば、
雇用の自由化がもたらされ、過疎地域で買春したい人の
需要を満たすことができ、結果として税収も増えていく
ということですか?
ただ現実問題として (ドン)
2010-03-14 17:43:20
個人請負業の方がサラリーマンよりさまざまな点で不利なのも事実なんですよね。個人事業だと住宅ローンも組めないし、保険料も会社折半のサラリーマンに比べて高くつきますし。

個人事業者の人数は昔より増加傾向になるとは思いますが、人数的には依然サラリーマンが主流という大きな流れがかわるほどではないでしょう
大銀杏 (おみそしる)
2010-03-14 17:46:55
トピずれかもしれませんが・・・
鶴岡八幡宮の大銀杏、再生させるそうですね。
新しい元気な木を適当に見繕って新たな御神木にして大事にすればいいのにと思います。大銀杏も地球ができたころからあるわけでもあるまいし。1000年くらい前に誰かが御神木と決めたもの。そんな古いものを無理やり再生してでもすがろうという様子が、今の閉塞した社会を表しているような気がしました。