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断想:復活節第2主日の旧約聖書

2017-04-21 08:05:57 | 説教
断想:復活節第2主日の旧約聖書 (2017.4.23)

死と再生の物語  創世記8:6-16、9:8-16

<テキスト>
創世記8:6~16
6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、
7 烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。
8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。
9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。
10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。
11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。
12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。
14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。
15 神はノアに仰せになった。
16 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。

9:8~16
8 神はノアと彼の息子たちに言われた。
9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。
10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。
11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」
12 更に神は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。
13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。
14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、
15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。
16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。」

<以上>

1. 死と再生の物語
復活物語は、単なる古代神話ではなく、荒唐無稽な人間の願望を語っているのでもない。それはまさに人間の根本的な在り方を語る「死と再生」の物語である。人間が人間であるという在り方には「死と再生」という構造が含まれている。人間は常に死につつ、また同時に再生しつつ存在している。つまり、「死と再生」とを繰り返すことによって、人間になっていく。現在、私が人間として、ここに存在しているということは、昨日の私は死に、今日の私として甦っているのである。そこが人間が他の動物と異なる「人間の秘密」である。
ところがまた、ここが不思議なことで、人間はときには「死に損ね」たり、またそれが故に「再生し損ねる」ことがある。というよりも、むしろそのことの方が多い。そうすると成長が止まってしまう。恐ろしいことをいうと、「人間になり損ねる」。人間が子どもから大人へと成長するということは、実はその秘密に属することである。

2. 連続と非連続
私たちはよく「一皮むける」という言い方をするが、「サナギから蝶へ」の脱皮はドラマティックである。同じ脱皮といっても爬虫類の脱皮とは異なり、「サナギから蝶へ」の場合は、形そのものが劇的に変化し、全く別な生き物のようになる。まさにサナギは死に、蝶が生まれると言っても言い過ぎではない。ここに連続と非連続とのドラマがある。「死と再生」の物語において、絶対的に欠かすことができない要素はこの連続と非連続との関係である。連続という面では、生まれて死ぬまで同じ人間であるという意味で分かりやすいが、非連続ということについては説明が難しい。特に、親子のようにほとんど毎日顔を合わせていると、連続面だけが見えてきて、非連続の面は見えにくい。特に、最近の親たちを見ていると、人間は自然にだんだんと成長するものと思っているようである。スムーズに幼稚園に入園し、スムーズに小学校に入学し、スムーズに中学へ進学し、というように人間の成長に最も重要な成長点(変化点)をスムーズにすることに必死になっている。しかし、人間の本当の成長というものは、非連続という面において起こる。

3. 旧約聖書における死と再生の物語
旧約聖書において「死と再生」の物語といえば、それはノアの洪水物語である。本日の旧約聖書ではそこが取り上げられている。
ノアの洪水物語を読み直して、重要な点に気づいた。というよりも、気付かされた。それは人間の歴史というものは、自然的に膨張・増大して発展するもの(連続的発展)ではないということである。人口が自然増加し、人間の力が増大していくと、悪がはびこるという動かし難い事実である。つまり連続的発展においては、同時にそれ自体を破壊する要素も拡大する。ノアの洪水物語はそこから始まる。いな、そこからしか始まらない。この状況を見て、神は「地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた」(6:6)。ここからこの物語は始まる。心を痛められた神の決断は恐ろしい。
「わたしは人間を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう」(7)。創造者による世界の滅亡の宣言である。こういう発想は日本人の世界観や人生観、あるいは宗教観からは出てこない。人間を創造したことを後悔することがあっても、一旦できてしまった世界や人間を完全に「ぬぐい去る」という発想は出てこない。なんとか折り合いを付けて巧くやっていく。そこには創造者と被創造者との間の連続性が前提されている。神が人間になり、また人間が神になるという連続性である。ところが聖書においては神と人間とは絶対につながっていない。どこまでも神は神であり、人間は人間である。
ここで一寸理屈っぽいことを考える。創造者と被造者とが完全に断絶しているのならば、創造者はその作品が失敗であると思えば、完全に破壊して全く新しく作り直せば済むことである。預言者エレミヤは神は陶芸作家のようなもので、自分が造った作品が気に入らなければ、「自分の手で壊し、それを作り直す」(エレミヤ18:4)という。そのプロセスには創造と破壊とが繰り返されるだけで、そこには作り直すという意味の再生のプロセスはない。つまりノアとその家族が入り込む余地はない。しかしノアの物語では破壊されるべき世界にノアとその家族とが登場し、このノアとその家族とに対する神の正義を軸として、同じ世界が再生される。この連続と非連続とを含む再生というプロセスにおいて、創造者である神の被造者に対する「愛」が決定的に語られ、ノアの物語が「死と再生」の約束物語となる。

4. 烏と鳩
ノアの物語において「死と再生」とを告げ知らすものとして烏と鳩とが登場する。今日の聖句として選ばれているのはここからである。ノアが最初に箱船の「外の世界」を調査するために箱舟から放ったのは烏であった。ところが、「烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした」(8:7)。要するに、烏は箱船という安全地帯に身を寄せているだけで、「外の世界」つまり現実をしっかりと見ることができなかった。現実から目をそらして、夢の中で生きる。はっきり言うと、神が破壊した世界、「死の世界」、復活と対比して言うならば、「十字架」をはっきりと見ることができない。要するに烏は現実から切り離された「幻想の世界」、「バーチャルな世界」の中でしか生きることができない。そこには死もなければ、再生もない。十字架もなければ、復活もない。
烏に対して、鳩は箱船から飛び立ち、外の世界を飛び回り、しっかりと偵察し、「止まるところがない」ことを確認して、箱船に戻ってくる。この鳩の役割は、現実をしっかりと見て回ること、この世界の滅亡を確かめること、確かに滅んだということを報告することにある。再生は確実な死の後に来る。ノアはもう一度鳩を放つ。二度目の探索により、鳩は生命の兆しを発見する。世界は今や生命を回復しつつある。これを発見した鳩は、次ぎにこれを世界に告知する者になる。

5. 復活の告知
イエスの復活物語が単に一人の人間イエスの「死と蘇り」の物語であるならば、それは古代神話であり、伝説にすぎず、教会の物語とはならなかったであろう。むしろイエスの復活物語が弟子たち初代教会の信徒たち自身の「死と再生」の物語であるからこそ教会の物語となったのである。
私たちはイエスの十字架と復活を告知するものである。どの様にしたらイエスの十字架と復活を告知することができるのだろうか。難しいと言えばこれほど難しいことはない。しかし、またやさしいと言えばこれほどやさしいことはない。問題は私たち自身がイエスにおいて私自身の「死と復活」を経験しているのか、ということである。私自身が生まれながらの古い私に死に、イエス・キリストにおいて「新しい私」として生まれ変わったのか。パウロは言う。「以前のような生き方をして情欲に迷わされ、滅びに向かっている古い人を脱ぎ捨て、心の底から新たにされて、神にかたどって造られた新しい人を身に着け、真理に基づいた正しく清い生活を送る」(エフェソ4:23,24)。これが実現しているのか、どうか。ここが問題である。
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