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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



例によって時機を逸した話になりますが(苦笑)、先月、イスラエルのアリエル・シャロン元首相が亡くなりましたね。
シャロンは、第2次、第3次、第4次の中東戦争において伝説的な活躍をみせ、稀代の名指揮官と讃えられた軍人でした。

ご存じの方も多いと思いますが、イスラエルの政治家は、そのほとんどが軍人出身です。
現首相のネタニヤフは特殊部隊出身。ブラック・セプテンバーによるテルアビブでのハイジャック事件(1972年)を、これまた後に首相となったエフード・バラクの指揮の下、制圧しています。また、ネタニヤフの弟もまた特殊部隊に所属しており、エンテベ空港での人質救出事件(1976年)を指揮し、名誉の戦死を遂げた英雄です。
エフード・バラクは、ブラック・セプテンバーによるミュンヘン・オリンピック事件への報復作戦に従事し、自ら女装して奇襲を成功させたことでも有名です。この報復作戦はアカデミー賞映画『ミュンヘン』の題材となったのでご存じの方も多いかと思いますが、映画ではこの女装の場面もしっかり描かれます。
メナハム・ベギンは、首相在任時、エジプトとの平和条約(キャンプ・デービッド合意)の締結という歴史的功績を残していますが、イスラエル建国前には最も尖鋭的だった武装組織イルグンを率いたゲリラ戦士でした。その暴力性と強い個性ゆえに、タカ派の少数政党を率い続け、ときには同胞との殺し合いもいとわず、強烈な批判に晒されたレバノンへのガリラヤ平和作戦や攻撃的な発言を数多く行ったこともよく知られています。

これら輝かしい軍功を誇る軍人たちの中でも、シャロンの存在感は抜きんでており、軍神と讃えられた隻眼の将軍モシェ・ダヤン、ノーベル平和賞受賞後に暗殺された首相イツハク・ラビンと並び、戦うイスラエルの象徴といえる人物でした。

旅行記(前編)(後編)を含め、これまでも何度か触れてきましたが、イスラエルは、色々な意味で強烈な国です。
建国以来、文字どおり常在戦場、生存をかけて闘ってきた歴史、英知を尽くして発展した経済と技術。上記のとおり凄まじい経験を経てきたリーダーの知力、精神力、人間力。それを支える優秀にして強い信念をもつ国民。その圧倒的な存在感は世界において追随を許さないものがあります。
村上龍は、『五分後の世界』で、架空の世界で戦闘国家となった日本を魅力的に描きましたが、この戦闘国家のモデルはおそらくイスラエルではないかと思います。目的をもって生きる人間、そういった人間たちの結束は美しいものです。それが自生的・後天的に生まれるものではなく、国家や歴史から与えられることは肯定するのが難しい面がありますが、この国のリーダーや政治外交の状況をみて日本の政治をながめると、その次元の低さ、貧困さに呆れることがあり、複雑な気分になります(同時に、『半島を出よ』を見ると、北朝鮮のイメージも投影されているような印象を受けます。特殊部隊をはじめとする実戦に参加する戦士に限られる話ですが。)。

いずれにしても、イスラエルという国は、接点を感じない人も多いと思いますが、世界全体を眺めるならば、イランと並んで、その一挙一動から目を離すことのできない最重要国の一つと思います。

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話はぜんぜん変わりますが、フィリップ・シーモア・ホフマンの突然の訃報。これは、当日朝一番にNPRで聞いたのですが、驚かされました。
まがまがしい役が多いですが、とにかく鮮烈な印象を残す名優でした。個人的には『ハピネス』(トッド・ソロンズ)の異常な演技が忘れがたいです。『アメリカン・ビューティー』のように現代アメリカの普通の人々の生活の裏にある闇を曝く映画ですが、とにかく、ここまでやっていいの?という程に振り切れた描写が、おぞましくもある一方で、逆に何か晴れやかな気分にもさせる(させないか(笑))不思議な作品です。

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最近読んだ本。

■ 若杉冽 『原発ホワイトアウト』
現役官僚が書いたという原発再稼働をテーマにした疑似ノンフィクション小説。
モデルとなった実在の人物が容易に分かるところは、イメージを得る上で便利。再稼働に向けた強引な手法の描写は迫力があり、告発本と言われるのもうなずける。ただ、事実関係についてはそれほど目新しい点はない。官邸や各省庁の動き、業界の政界やメディアに対するアプローチの描写は、馴染みのない人には興味深く読めるかもしれない。
現役官僚が書いたノンフィクション風小説で思い出すのは榊東行『三本の矢』。役所一年目に読んだ。インサイダーらしく官庁の内部作業の描写がオタク的に詳しく、国会作業の雑用などに追われる下っ端官僚の熱い共感を呼んだ。しかしそれ以外の部分は見所が少ないというか、ツッコミどころも多く、エンタメ性はなんか頑張ってる感じという趣。本書の読後感も(村上龍的な最後の展開を含め)これに近い。

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