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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



ちょっと過ぎた話になってしまいましたが、劇的な演説でしたね。
同性愛、銃規制、社会福祉など国を二分する議論を真正面から取り上げ、大きな哲学と理念を格調高く提示しました。
これは、あのクリントン以上にリベラル色を全面に出したものであり、ある意味で米国の分裂を象徴・促進するものといえます。
ただ、この議論を大統領就任式という舞台で出すのは、勇気と覚悟があってこそであり、それ自体は保守派の知識人も感服しているようです。保守派の代表的論客であるDavid Brooksは「過去半世紀において最も優れた演説」と言っています。
2期目に入る大統領は歴史に残るレガシーに心が向くと言われますが、この就任演説も、歴史的意義を強く意識したものなのでしょう。
ただ、演説とはちょっと離れてしまいますが、米国は、上記の国内問題や歳出削減などに直面して、自分のことで手一杯という感じですね。アルジェリア(マリ内戦)や日米関係を見ても、どうもリソースを割く余裕がない印象を受けます。
例によって次は2月に予定される一般教書演説が注目されます。

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GoogleがスマートTVでのyoutubeを通じた配信に力を入れるという報道(1月19日付日経新聞)。
これは結構興味がありますね。
最近私もスマートTVを利用するようになりました。ネットにつないだら、youtubeは画像のきれいさに驚きましたね。40インチでも全然問題ありません。
映画の購入もできるようになっており、ラインアップが充実すれば、ユーザーの視聴スタイルにかなり大きなインパクトがあるように思います。
たとえば、前の記事で書いていた英米のTVドラマ。英米で流行っているもので見たいと思うものは結構あるのですが、日本ではなかなか見られなかったりします。これは、DVDレンタルにせよ放送局にせよ、日本のサプライヤーを通したものでないとなかなか手に入らないということがあると思うのですね。
仮にgoogleのネット配信がスマートTV上で国境に関係なく一斉配信すればそういう問題はなくなるでしょうし、日本向けの配信にする必要があるとしても、従来型の供給と比べればずっと簡単に迅速にできる気はしますね。
そういう方向に進んでいくのでしょうか。自分自身の趣味に沿った希望的観測ですが(笑)。

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最近読んだ本。

■ セバスチャン・マラビー 『ヘッジファンド』
開示情報が少ないため神秘的で謎につつまれたイメージのあるヘッジファンド。その歴史を膨大な取材と資料に基づいて解説。
セバスチャン・マラビーは自分がワシントンDCにいたときにワシントン・ポスト紙にコラムを書いており、エコノミスト誌の元東京特派員ということもあって、なじみ深いジャーナリストだった。ストーリーテリングが秀逸で、この本も無味乾燥・散発的になりそうな主題を、AWジョーンズ、ビッグスリー(スタインハルト、ソロス、ロバートソン)、ジュニアスリー(PTジョーンズ、コフナー、ベーコン)、ドラッケンミラー、メリウェザー、イェール(スウェンセン、ステイヤー)、数学とコンピュータサイエンス(シモンズ、ショー)、グリフィンといったキーパーソンの活躍を摘出することで流れるような物語に仕立て、インフレ、為替ペッグ、資産バブルという時代の流れに応じて発展するヘッジファンドのイノベーションをエキサイティングに語る。
ヘッジファンドのビッグ・ダディ(生みの親)と言われたAWジョーンズが元外交官で社会学者だったというのは面白い。ヘッジファンドが米国内においても排他的な特権階級として社会から白眼視されていたのは少し意外だったが、その設立の主な理由が規制をかいくぐることであったことからすれば自然なことではある。著者は、レバレッジの過剰の問題はヘッジファンド特有のものではない、ヘッジファンドの破綻は大手金融機関と異なり政府予算負担をもたらさない(too big to failの逆)ことを指摘して悪玉論に警鐘を鳴らし、あえて規制をしないことの意義を説く。異なる投資スタイル(アービトラージ、トレンドサーフィン)がITバブルへの対応に差を生み、それが市場の合理的価格形成に異なる影響を及ぼしたとの指摘は興味深い。著者は、この点をとっても、ヘッジファンドが経済を攪乱して利益を得る集団であるとのイメージは一面的で誤っていると指摘する。
以前紹介したプライベート・エクイティ・ファンドの歴史を描くデビッド・キャリー他『ブラックストーン』と併せて読むと米国の金融史の概観に役立つ。

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アルジェリアの人質事件。
これだけの国、数の人命が一度に失われるのはかなりの衝撃でしたね。

事件の原因としてこのHPでも触れたマリでのクーデターが指摘されます。マリのクーデターは、トゥアレグ族制圧強化を主張する軍がこれに同調しない大統領ATT(アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ)に対して起こしたものですが、結果としてイスラム原理主義とアルカイダの勢力拡大を生みました。フランスがこれらの勢力への攻撃を決定したことにテロリストが反発したというものです。

もっとも、アルジェリアでは、91年の世俗主義を掲げる軍のクーデター以来、イスラム原理主義者によるテロが頻発していました。
私は90年代末に多少アルジェリアに関わる縁があったのですが、当時私のいた組織で、アルジェリアで勤務することは、数ある危険地の中でも最もリスクが高くハードと言われていました。おおざっぱに言えば、駐在したとしても、現地にいるのは1年のうち半年が限度、あとの半年はパリで外勤できると聞きました。

こういう根深い背景に加え、リビアのカッザーフィ(カダフィ)政権の崩壊が挙げられます。
これにより武器が流出しテロリストを含む反政府勢力に渡ったということが大きいのでしょう。
ワシントンポストなどでは、今回のグループが本当にアルカイダと結びつきがあるかも疑問視する記事を見ます。
フランスのメディアは、フランスのマリでのクーデター介入が理由であったことを明確に否定しているようです。

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マリは、前記記事や「マリ紀行」でも書いたとおり、思い入れがある国なのですが、アルジェリアも昔から関心がある国でした。

古代には、フェニキア人が活動し、ローマの有力な属州となり、キリスト教の世界化の対象となった地域です。
当時世界的に発展していたマニ教を信仰していたアウグスティヌスは、この地域の出身ですが、カルタゴに留学していたとき、キリスト教に回心しました。そして教父神学を大成して、キリスト教史を通じて最も影響力のある神学者となったわけです(彼の業績の一つに教会とサクラメントの教理があり、その理論が現代行政法の官職制の理論につながっていることは以前「法から見た歴史、宗教」で書きました)。

その後、イスラム化、フランスの植民地化、独立戦争に至りますが、アルジェリア独立戦争は、ドゴールの復活と第五共和政の成立(大統領権限の強化とコアビタシオン)をさせたという意味でも重要ですね。
映画『アルジェの戦い』(ジロ・ポンテコルヴォ1966)も有名です。
アルジェリア独立の理論的支柱となったフランツ・ファノンは、ネグリチュードを批判し、ポストコロニアル理論を展開した代表者として知られます。
ジダンなどフランスの優れたサッカー選手の多くがアルジェリア移民であるのはご存じのとおり。

音楽では、「ライ」というアラビア語の現代ポップ音楽が世界的に有名です。
私は学生時代結構好きで、シェブ・ハレド、シェブ・ハスニ、シェブ・マーミー、Cheb Sahraoui、Cheba Zahouaniaといったアーチストをよく聴いていました。
想像できると思いますが、こういう音楽もイスラム原理主義の攻撃対象になります。シェブ・ハスニは94年に暗殺されました。
キング・オブ・ライと言われるスーパースター、シェブ・ハレドは2010年南アのワールドカップに登場し、代表曲「Didi」を歌いました。アフリカ初のワールドカップにふさわしい躍動感あるパフォーマンス。



最近はPitbullとコラボしていて驚きました。カッコイイですね。



情勢の不安定さもあって、まだ行く機会には恵まれていません。
学生時代にアフリカ旅行を計画したときは、エジプトからまずスーダンに南下し、チャド、ニジェール、マリ、モーリタニアを通過してセネガルに抜けるという迂回したルートを考えたものでした。もっともこのルートは、トゥアレグ族がいるアルジェリア南部という最も危険な地域に接近するリスクを負うことになります。トゥアレグ族は大変好戦的で、旅行者にとっては砂漠の海賊(砂賊)のような人たちです。アフリカを旅行したときアルジェリアの砂漠で身ぐるみをはがされたという旅行者に会ったこともあります。
今の状況を見ると暗鬱な気持ちになりますが、いつかは行ってみたいものです。

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最近読んだ本。

■ ウィリアム・ハーディー・マクニール 『疫病と世界史』
マクニールの『世界史』が売れているらしい。ヘーゲル、シュペングラー、トインビーを受け継ぐ世界文明史の王道であり、面白いし、豊富な参考文献を含め、教科書としても優れた一冊。しかし、西欧・非西欧を軸に置く整理(中心周縁モデル)は、今となってはフクヤマやハンティントンもいるし、今読んで何か目を開かされるような発見があるわけではない。
むしろ、今読んでも刺激があるのは、この本のように、切り口を絞った精緻な社会史ではないかと思う。
疫病史は近年発展しているグローバルヒストリーの中でも主要な分野の一つであり、マクニールはグローバル・ヒストリーの生みの親の一人とも言われ、本書はジンサー、クロスビーの主著とともに疫病史の古典とされている。ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』にも大きな影響を及ぼしている(この本のタイトルはクロスビーの『Germs, Seeds, and Animals(病原菌・種子・動物)』が元ネタ)。
もともと文明史は人文学のアプローチ(テキスト解釈)に依拠してふわふわした物語に終わりがちのように思う。これに対し近年のグローバルヒストリーは、疫病、環境、人口、生活水準、賃金、物価、人・モノ・情報の移動(交易、市場)など統計を中心とする社会科学のアプローチを利用できるところを主題とする。その内容は経済史に近い。ノーベル経済学賞をとった経済史家であるダグラス・ノースもグローバル・ヒストリー研究者の一人と言われる。(水島司『グローバル・ヒストリー入門』、クロスリー『グローバル・ヒストリーとは何か』は近年の研究を包括的に整理しており便利。)
この本も、病原菌が具体的で細かく取り上げられ、自然科学と密接に関係していることもあり、現代につながっていることを強く実感できる(HIVを追加すればそのまま現代版として改訂できる)。人の密集・移動(人口、都市、農耕、家畜)、戦争(スペインのアステカ征服)、統治、宗教との関わりの記述には歴史学ならではの醍醐味を感じる。
世界文明史についていえば、自分が最も知的刺激を受けた本は岡田英弘『世界史の誕生』。様々な評価があるが、面白さでいえばダントツ。最も美しい文明史といえばなんと言ってもフェルナン・ブローデルの『地中海』だろう。

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ハンマーヘッドシャークの大群@与那国島

新年明けましておめでとうございます。

ちょっと驚いた、というかあきれたのですが、去年は7本しか記事を書いていなかったのですね。
新年の挨拶を書こうと思ったら、あれ、前に書いたのはそんなに前ではなかったような気がするぞ、と思ったので、気づきました。
記事を沢山書くことにあまりこだわりはないのですが、それにしてもこれは情けない。とりあえず今年の目標は去年の記事数を上回ること。今決めました(笑)。

昨年末は、引越、パラオ、与那国島でダイビング、さらに沖縄本島で挨拶回り、その後ぐっちーさんと一緒に岩手県に行くなど、あわただしく過ごしました。

 
待ちに待ったハンマーヘッドシャーク。必死に食らいつく。

 
再び訪れた海底遺跡。

昨年は、ほとんど研修で一年が終わりました。これまで述べてきたように、そのうち10ヶ月くらいは沖縄にいました。
それも全て終了し、今年から本格的な活動が始まります。
これまで色々な形で関わってきた世界、職場ではあるので、まったく真っさらな状態からのスタートというわけでもないのですが、新しい世界への挑戦、自分の理想に近づく第一歩ではあります。そのことを思うと胸が躍ります。

まずは新しい活動に全力を投入したいという気持ちです。少なくとも一年は、24時間365日仕事に没頭するぐらいの気持ちで臨みたいですね。
もっとも、仕事に集中する中で、書きたいことは自然についてくるような気もします。
ここ数年はインプットというか傍観者的に情報に接することが多く、それもあってなかなか筆が進まなかったのですが、これからは再び能動的な立場になり、刺激も多くなるでしょうから、かえって書く頻度も増すように思います。たぶんですが(笑)。
書きたいことのイメージはあるので、あとは経験を積みながら、色んな人と話をして、考えを深めてみたいというところです。マイペース、好きなときに好きなだけ書くというスタンスに変わりはないのですが、もう少しアウトプットを意識してみたいと思っています。

そんなわけで、簡単な近況報告になりました。
新年の抱負も、毎年述べている自然体のスタンスに変わりはないのですが、とにかく今年は萌える!じゃなくて、燃える!ぐらいシンプルにとどめます。
私を直接知っている方で、ご無沙汰している方は、ぜひお気軽に声をかけていただければと思います。
仕事の話でもそうでない話でも、飲みでもゴルフでも大歓迎です。

ということで、本年もよろしくお願いいたします。

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最近読んだ本。

■ ダニエル・ヤーギン 『探求-エネルギーの世紀』
『石油の世紀』で有名なヤーギンの最新著作。
湾岸戦争後の新しい世界、エネルギー安全保障、天然ガス(LNG、シェールガス革命)、電気(インサルの送電網、ニューディール)、原子力、気候変動、再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオ、地熱、水力、VC、オバマ政権、中国)、省エネ(スマートグリッド)、自動車(蒸気、エタノール、電気)など、石油と歴史に主眼を置いた前著と比べ、テーマは広く最新の問題もカバー。福島原発事故もフォローされている。
歴史的な視点は健在で、大きな流れと見取り図を見渡せる。中央アジアのパイプラインをめぐる駆け引きはピーター・ホップカークの名著『ザ・グレート・ゲーム』を思い返せばイメージがふくらむし、GE(PWR)とウェスチングハウス(BWR)の軽水炉の主導権争いはエジソンとウェスチングハウス(ニコラ・テスラ)の電流戦争の再現とみるのも面白い。

■ 黒木亮 『エネルギー』
サハリン2、アザデガン、中国航空油料事件を軸に国際エネルギービジネスの現場を描く経済小説。
黒木亮は、ジャンルとしては城山三郎や高杉良の流れを組むのだろうが、彼らや真山仁などよりもドライで抑制の効いた筆致に特徴がある。この作品も、小説の体裁をとってはいるがほとんどノンフィクション。経産官僚や外務官僚の動向、ワシントンDCのベルトウェイやイラン内政の描写など内部にいた自分も納得できる生々しさ。人間ドラマやマクロの視点に頼らず、事務的ですらある個別の細かい動きに集中しながら、スケールの大きな物語を骨太に紡ぎ出す手腕は見事。
古くなった記述もあるが、ダニエル・ヤーギン『石油の世紀』、藤和彦『石油を読む』のように、歴史と見取り図を知る上で今でも参考になると思う。
『巨大投資銀行』など同じ著者の他の作品も密接に関連しているので併せて読むと面白さが深まる。

■ ウォルター・アイザックソン 『スティーブ・ジョブズ』
ペーパーバックで安くなっていたので読んだ。
真新しい話はないがよく整理されていて、バウハウス的な機能美を目指すジョブズの姿勢がマッキントッシュからiクラウドのデザインにつながっていることなど、ジョブズの仕事を有機的な連関でとらえることができる。パーソナル・コンピュータからクラウド、オープン対クローズドのテック史をあらためて見渡す上でも有益。
それにしても初代マッキントッシュ、発売されたときのブームをおぼえているけど、こんなに不完全な製品だったんだなあ・・・。

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