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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



一週間ほど前に沖縄に到着しました。
想像はしていましたが、11月末というのに寒くありません。気温がそれほど高いわけではないですが、湿度が高いためか結構汗ばみます。東京を出てきたときはもうダウンジャケットでもいいなというぐらい寒かったのに。12月まで基本的にこんな感じだそうです。
とりあえず生活の立ち上げに苦心してます。引越しは過去7回(うち3回は米国内)経験しましたが、何度やっても大変なものです。ネットをWIMAXにしたり、本も相当な量とはいえだいぶ整理が進んでいるし、置き場所も確保できているから、落ち着くスピードは上がっていると思うのですが(本の自炊が進んでいればもっと楽になるかもしれません)、それでも、うっかり者の性分は直らず、さんざん気をつけたのに引き払う部屋に忘れ物をしたり、引越しの家財に入れるべきでなかったもの(手荷物でもって来るべきだったもの)を入れてしまったり、那覇に行く前に立ち寄った実家に忘れ物をしたり、自業自得ですが、苦労がたえません。
とはいえ、落ち着いてしまえば住めば都。ここに滞在する10ヶ月くらいの間、やりたいこと山のようにあります。楽しみです。
こんな近況報告で終わっても、別にかまわないのですが、せっかくなので、最近の話題について所感を書いてみます。

●クリントン国務長官のミャンマー訪問
これは結構すごいニュースですね。
このHPでも何度か書いてきましたが、ミャンマーというのは米国(というか米議会)にとって受け入れ難い存在、鬼門中の鬼門でした。ミャンマーに対して柔軟な政策を志向する日本にとっては、日米関係のトゲになるおそれを秘める極めてセンシティブなイシューでした。そんな米国が、国務長官という超ハイレベルの派遣を決定したということは、関係改善に向けたこれ以上ないシグナル、ドラスティックな政策変更といえます。制裁が解除されれば経済発展の大きなチャンスにもなり得ます(それでもASEANの内陸国は基本的に厳しい条件下にありますが)。

●ブータン国王の訪日
ブータンには、私が10年近く前に米国に留学していたとき、ブータン人が同じプログラムにいて仲良くしており、その頃からGNHの話やら男女の交際の仕方やらの話を聞いて、なじみがありました。
同じ時期にブータンの王女が在学していて、二人とも学部生だったのですが、このブータン人の友人に紹介してもらって学食でご飯を食べたことがあります。二人ともかわいかったなーと訪日中のブータン王妃を見て思い出しました。

●TPP
貿易マフィアの世界に身をおいたことのない私に精緻な議論をする能力はないのですが、基本的に思うのは、どうも世間の騒ぎ方はズレているように見える、ということですね。
自由貿易の推進(と近年では投資・知財等の制度の標準化)自体が日本(そして世界)にとって死活的に重要な課題であることに誰も異論はないはずです。そのためのツールとしてWTOもFTA/EPAがあり、日本としても試行錯誤を重ねてこれらに取り組んできたわけで、TPPもその流れにある一つのアプローチに過ぎません。今に始まった問題ではない。にもかかわらず、TPPだけをことさらに国論を二分する問題として扱う議論の白熱(?)には、何だか異様な印象というか違和感をおぼえるのです。そういうこともあり、あまりややこしいことは言いたくないのですが、とりあえずこの記事が参考になると思います。

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最近読んだ本。

■ 増田俊也 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
史上最強の柔道家、木村政彦。15年間無敗、13年連続日本一、ピークを過ぎた時期にブラジルに渡り、バーリトゥード最強の男エリオ・グレイシーに圧勝した男。その生涯を描いたノンフィクション。
混沌の時代の中で、極限まで武を磨き、暴れ、愛し、裏切られ、もがきながら、命を燃やした。膨大な事実が物語る圧倒的な生き様に心が震える。講道館と力道山のために歴史から葬られたこの日本人を知らない人がいたら、ぜひ読んで欲しい。きっと打ちのめされる。


最強の男エリオ・グレイシーを圧倒する木村政彦。最盛期を過ぎた時点でこの強さ。
実はこの映像は第2ラウンド。幻の第1ラウンドの内容は本書で考察される。死闘を交わした者だけが理解できるいたわりと誇り。木村の名誉のため、あえて自らが敗北した映像を提供するグレイシーの美学。胸が熱くなる。

木村以外にも、牛島辰熊、エリオ・グレイシー、力道山、大山倍達、岩釣兼生といった巨人たちが緻密に描かれ、愛憎に満ちたドラマを織り成していく(牛島と三船久蔵の冷たい対立、「倍達」が朝鮮民族を意味することや『空手バカ一代』の韓国版(『大野望』)の存在はこの本で初めて知った)。講道館、武徳会、高専柔道を柱とする柔道、武術の歴史、現代格闘技への継承も詳述される。昭和史の一つの姿を知る上でも興味深い。
(牛島と大山は、山口昌男『「挫折」の昭和史』でも石原完爾の人脈や東条英機暗殺計画の記述の中で登場する。一緒に読むのも面白いだろう。もちろん梶原一騎『男の星座』も。)

■ ピーター・ゲイ 『ワイマール文化』
ナチスの前史、歴史の逸脱と見なされてきたワイマール期を黄金の時代ととらえ直した名著。
「出生のトラウマ」、「理性の共同体」(シュトレーゼマン、ワールブルク、フランクフルト学派)、「秘密のドイツ」(ゲオルゲ、カントロヴィッチ、リルケ、メンデルスゾーンとグロピウス、バウハウス)、「全体性への渇望」(マイネッケの国家理性)、「息子の反逆」(『カリガリ博士』)、「父親の逆襲」(『魔の山』、ベルリン、『三文オペラ』(過去の記事参照))という切り口から、ワイマール時代の思潮を包括的に描き出す。
カール・ショースキー『世紀末ウィーン』過去の記事参照)、ジークフリード・クラカウアー 『カリガリからヒットラーまで』、イリーとブラックボーンらの「ドイツの特殊な道」論争を参考にしながら読むとイメージがふくらむでしょう。クラカウアーは「映画に関する本」で紹介した『映画批評のリテラシー』など参考にしながら読むのも良いと思います。

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私を直接知っている方へのご報告ですが、11月下旬から那覇に行くことになりました。8~10ヵ月ぐらい滞在する予定です。まさか自分の人生で沖縄に住む日が来ようとは思いもよりませんでした。とても楽しみです。沖縄に来られる機会がありましたらご連絡ください。

そんなわけで、せっかく沖縄に行くのならと、上海から帰ってきてすぐにサイパンに行って、ダイビングのライセンスをとりました。
ダイビングといえば思い出すのは映画『グラン・ブルー』(リュック・ベッソン1988)。
主人公ジャックは傷ついて心を閉じてしまった人。でも潜ると誰もついていけない。神秘的で誰も(もしかしたら彼女も)理解できない孤独な天才。ジャン=マルク・バールの、青い炎を静かに燃やすかのような演技が光りました。しかし、そんな主役を食う魅力を見せたのがエンゾを演じたジャン・レノ。丸眼鏡に漲る野性、傲岸、そしてその奥にある優しさ。それまで見たことのないタイプのかっこよさでしたね。
この主人公ジャックのモデルであるダイバー、ジャック・マイヨールによるスキン・ダイビングの記録は何と100メートル。こないだサイパンで自分が潜った深度はスキューバなのに17メートル。同じ人間とは思えませんね(笑)。
でも、ジャック・マイヨールは本当に心を病んだ人で、その最期は自殺だったんですよね。あの映画のジャックのfragileなイメージとダブって、切ないです。

それから、自動二輪の免許もとりました。
ずっと興味はあったのですが、震災後のボランティアで二輪が重宝されたと聞いたのと、沖縄での生活で利用するかもしれないと思ったことが一つのきっかけになりました。
バイク自体に強い思い入れがある方ではないですが、漫画の『バリバリ伝説』は好きでしたね。世界編も良かったですが初期の青春時代が個人的には一番好きでした。

そんなわけで、なぜか、にわかに資格づいています。もっとも、いずれも仕事に生きるものではありません(笑)。そっちの方もぼちぼちがんばっていきたいと思います。

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最近読んだ本。

■ ウンベルト・エーコ 『バウドリーノ』 
昨年(2010年)に待望の翻訳が出たエーコ4作目の長編小説。
12世紀の中世を舞台とする奇想天外な冒険譚。架空の人物バウドリーノが、パリ仕込みの論理学、哲学、神学等の学識とハッタリを駆使しながら、皇帝(バルバロッサ)、教皇、イタリア都市、ビザンツ、イスラム、歴史家(オットー、ニケタス)等に自在に絡み、十字軍、イタリア戦争等の歴史的事件を動かしていく。
虚構と史実が織り混ざって物語が展開し、その合間に膨大な中世の事物、思想、精神構造が語られるのは、『薔薇の名前』から発揮されてきた著者の本領だが、この作品では、嘘つきの主人公によって、歴史の捏造がメタ的に捏造される(そして最後に葬られる)点がさらなるアクセントを加えている。これにより、権威を引きはがすことで真理に迫る精神の特質と、歴史とは人にとって意味を見出されるときに初めて存在するものであることが浮かび上がる。
豪快でロマンに満ちた冒険を描くエンターテイメントとしても楽しめるが(バルバロッサの死をめぐる終盤のどんでん返しは劇的)、歴史に親しみながら読むと汲めども尽きない面白さを味わえる。

■ サイモン・シン 『暗号解読』
暗号の開発と解読は、言語学、数学、情報理論・工学、量子力学等を総動員した知性のぶつかり合い。古代から現代に至るまで天才たちの頭脳戦は歴史をも左右してきた(その戦いの性質ゆえに悲劇的な生涯をおくった者も多かった)。その歴史を描いたノンフィクションの傑作。
暗号解読と同様の手法によってなされた古代文字(ヒエログリフ、線文字B等)の解読という偉業、高度情報社会を支える技術としての役割も最先端の情報(素因数分解、量子コンピュータ、量子暗号)とともに語られる。
その壮大なドラマは物語としても十分に感動的だが、通俗的なエピソードに終わらず、暗号の構造と解読手法を具体的に解説しており(「史上最強の暗号」と称する懸賞問題もある)、実質的・科学的な理解も深めることができる。他の作品もそうだが、著者のストーリーテリングとサイエンスの魅力を伝える力量は抜群。

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