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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



ようやく秋らしく涼しくなってきました。今年の夏は本当に猛暑でしたね。

最近、人から聞かれたり、映画関係の仕事をしている人と話す機会があったので、何となく思いついて、これまで読んだ映画に関する本の中で印象深かったものや役に立ったものを挙げてみることにしました。

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まず比較的読みやすいもの。映画作品の評論集です。

■ 町山智浩 『映画の見方がわかる本』
■ 同 『ブレードランナーの未来世紀』
ゼロの状態から映画批評の面白さを知るにはうってつけの本。
内容は主として雑誌『映画秘宝』に連載していた評論を集めたもの。
なお、この本で取り上げられた作品の中では、『ブレードランナー』については、加藤幹郎『ブレードランナー論序説』もオススメ。『メトロポリス』はじめ膨大な作品を引用する映画史、映画理論、現代思想など様々な視点から作品の自己展開を解きほぐす。この著者ならではの刺激的な批評。カットごとに執拗なまでに精緻な解読を行っている(同氏の『映画とは何か』の『サイコ』の評論も同様に緻密で一見の価値あり)。
『ダーティ・ハリー』については、黒沢清『映画の授業』の中で万田邦敏氏がモチーフやメタファーについてきめ細かい分析をしており、参考になる。

■ 川本三郎 『フィールド・オブ・イノセンス』
喪失、ホーボー、プレーリー、ニュージャーナリズム、ジョン・アーヴィング、サム・シェパードといったキーとなる概念をつかって、米国の映画、文学作品から思想潮流を切り取っていく。定評のある名著。

■ 蓮見重彦 『映画に目が眩んで』
膨大な蓮見氏の著作の中の一冊に過ぎませんが、この本は、自分が同氏の映画論の授業に出たときに出版されたもので、その意味で個人的に思い出深い一冊です。

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以下は歴史を知るのに役立つもの。

■ 柳下毅一郎 『興行師たちの映画史』
『フリークス』に代表される見せ物小屋志向、いかがわしさ、グロテスクを前面に出す作品(エクスプロイテーション・フィルム)の系譜を知ることのできる本。
単なる映画の本という枠を超えて、歴史や時代の空気の変遷が分かる傑作と思います。

■ 北野圭介 『ハリウッド100年史講義』
比較的最近の話題までフォローした本。
コンパクトにまとまっていて読みやすい。参考文献リスト(認知論、構築論、社会論による仕事の紹介)も良い。

■ ジョルジュ・サドゥール 『世界映画史』(全2巻)
■ 佐藤忠男 『世界映画史』(全2巻)
■ 同 『日本映画史』(全3巻)
時系列に作品を取り上げながら映画の歩みを追った名著。
豊富な素材と分かりやすい構成。欧米以外の映画も紹介されているのが良い。
ジョルジュ・サドゥールには『世界映画全史』もあるが、全12冊という超大著。しかもサイレント時代(1920年代)まで。どんだけ(笑)。

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以下はアカデミックな理論を知るのに役立つもの。
こういった本で時代背景や理論的位置づけを考えながら見ると、面白く思うポイントも広がってくると思います。
特に古典映画は、文学や美術のような他の芸術と同様、素で見てもなかなかピンとこないものです。

■ 石原陽一郎編 『映画批評のリテラシー』
(映画ではなく)映画批評を主題にした本。
有名な批評家(ベンヤミン、クラカウアー、バザン、バルト、ドゥルーズ、ジジェク、ボードリヤール、キットラーといった思想家を含む)の言説が包括的に整理されている。批評史の参考にもなる。
このフィルムアート社の「CineLesson」シリーズは他では見られない発見があるものが多い(ライターによってばらつきがあるが)。
『シネマの宗教美学』『映画クルー主義の楽しみ方』が印象深かった。

■ ジル・ドゥルーズ 『シネマ1』 『シネマ2』
■ ジャック・オーモン他 『映画理論講義』
■ C. W. ツェーラム 『映画の考古学』
■ 岩本憲児編 『映画理論集成』
■ 佐藤忠男 『日本映画理論史』
■ ベラ・バラージュ 『映画の理論』
■ 岩崎昶 『映画の理論』 『現代映画芸術』
■ 杉山平一 『映画芸術への招待』
■ 中井正一 『中井正一全集3巻 現代芸術の空間』
■ 浅沼圭司 『映画学』
■ 今村太平 『漫画映画論』
学問としての映画論を知りたい人向け。いずれも本格的な映画の理論書。
古い本が多いですがその思考の厚みは今読んでも強い印象を受けます。また、昔の批評というものは、政治思想と切り離せないものだったんだな、ということも分かります。

■ デヴィッド・ボードウェル他 『フィルム・アート-映画芸術入門』
■ ダニエル・アリホン 『映画の文法』
撮影や編集の方法を含め実際に映画を撮る人向けに書かれた本格的な入門書。
カメラワークなど読んでも素人にはとっつきにくいですが、基本的な部分だけでも見ておくと役立つ、こともあるかもしれません。

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以下は手軽なリファレンス代わりに使えるもの。

■ 文藝春秋編 『洋画ベスト100』
■ 文藝春秋編 『大アンケートによる日本映画ベスト150』
■ 猪俣勝人 『世界映画名作全史(戦前編)』 『同(戦後編)』 『同(現代編)』
■ 田山力哉 『アメリカン・ニューシネマ名作全史』
■ 同 『ヨーロッパ・ニューシネマ名作全史』
インターネットなどなかった中学生の頃、古今東西どんな映画があるのかを知るために、これらの本やぴあの電話帳のような分厚い映画の事典(名前を失念。日本でソフトが発売されたものならほとんどあらゆる映画が掲載された便利な本でした。)を読んで、片っ端からチェックしたものでした。
説明が簡潔にして要を得ていて、今読んでも結構役立ちます。
ただ、今ではこれに類する情報はネットでほとんど手に入りますね。そういうこともあってか多くはアマゾンにもない模様。なんとも切ない。

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以下は少し趣向を異にする物。

■ 一瀬隆重 『ハリウッドで勝て!』
ハリウッドで活躍する著名日本人プロデューサーの自伝。
70年代からの映画業界の内幕を知る上でも興味深いですが、印象に残るのはそのバイタリティ。痛快な青春記のようです。映画でお金を稼ぐというのがどういうことか。そんな知られざる現実も分かります。

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雑誌では、私がダントツに推すのは洋泉社の『映画秘宝』
一見してなかなか手に取りにくい装丁のことも多いですが(笑)、ある意味そのとおりの中身の濃さ。本当にすごい雑誌です。
不定期(年1~2回)に発行される時代(90年代半ば)から読んでいるのですが、『キネマ旬報』しか読んでなかった当時の自分に大きな衝撃を与えました。こういうのが読みたかったんだ!と感銘を受けたあまり、編集者の方にメールを送ってしまったほどです(笑)。
最近は、かつてのように毎月欠かさず読むことはなくなっていまいましたが、夢中になって呼んだ頃のバックナンバーは今でも大量に実家に置いてあります。

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気がついたら結構久しぶりの更新でした。
あまり更新しないでいるとよく人から心配されるのですが、便りがないのもいい知らせといいうとおり、元気にやっているので大丈夫です。
ただ、来年はじめまで猛烈に余裕がないので、それまでは存在感が薄くなる一方かもしれません。しかし、いなくなることはありませんので、引き続き生温く見守っていただければ幸いです。

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