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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



面白かったです。最初から最後まで興奮しっぱなしでした。

見る前は予備知識が少なくて、感動作なのかサスペンスかといぶかしく思ってたのですが、実はこれ、ある種のインド映画のオマージュなんですね。

昔(90年代後半)、インド映画が好きで、よく見た時期がありました。
インド映画というとサタジット・レイなんかを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、「大地のうた」のような詩的なアートのような作品は例外中の例外で、実際はそのほとんどがとてもさわがしく楽しい作品、ジャンルを言えばアクション物、恋愛物、コメディーのどれかなのです。そして同一カテゴリーにある作品の内容はどれもだいたい同じです。しかもアクション、恋愛、コメディーの要素はカテゴリー問わずどの映画にもあって、そういう意味ではこのジャンル分けも相対的なものです(主人公が二枚目か三枚目かぐらいの違いがあるくらい)。
どの作品でも例外なく無理矢理なストーリー展開、ミュージカルばりのダンスや歌の唐突な挿入があり、スピード感にあふれていて、とにかく面白ければ何でもありとばかりに勢いで突っ走ります。
その異常なテンションが3時間以上続くので、見終わる頃にはどっと疲れます。
でも映画の作り自体はしっかりしているのでヘンにチープな感じもなく、こんなのもアリなんだなあという気持ちがあればスッキリと楽しめます。
94年くらいだったでしょうか、『ラジュー出世する』とかがウケて、日本でもちょっとしたブームになりました。私は97年にインド旅行をしたとき、滞在した各地で映画館に寄ってました。町のはずれにある汚れた映画館に入って、満員のインド人観客と一緒に興奮したのが良い思い出です。

『スラムドッグ$ミリオネア』ですが、そんなインド映画のノリにかなり近いものを感じました。もちろんインド映画のドぎつさからとは一線を画していて、欧米的にスマートな作りにはなってましたけど。しかし最後にミュージカルのようなダンスを入れるあたり、製作者の強い思いを感じましたね。

ちなみに映画の中では15年くらいの歳月が流れるのですが、インドの発展が投影される作りにもなってます。出だしのムンバイ(当時はボンベイ)なんかもう子どもが生きていく余地のない酷い状態なんですが(悪い大人に盲目の物乞いにさせられる子どもの話とかかなりキツイ・・・でもこれに類する話を山のように聞くのがインドの現実でもあります)、最後の大都市になった頃にはそれなりの経済活動があるので、なんだかんだみんながんばれば生きていける様子なのです。やっぱグローバル化とか投資は大事なんだなと思ってみたりしましたね。まあこれは素朴にすぎる感想ですけど。とにかく私が行った97年頃と比べても今の発展ぶりは驚異的で、経験的にも感慨深いものがありました。

あとこれはどうでもいい話なんですけど、この作品の原作者はインドの外交官なんですよね。いま南アにいて、今度大阪の総領事館に来るという。よく分かりませんがインドの公務員というのは創作活動をやったりするものなんだろうか。先進国では少なくとも戦後ではあまり聞かない話ですがインドのような階級社会なら作家もやっちゃうような人がいるのかもしれませんね。戦前なら先進国でも官僚が貴族みたいなものだったからこういうこともありましたし。日本では三島由紀夫(大蔵省)、堺屋太一(経産省)、童門冬二(都庁)とか思い浮かびますね。でも三島はすぐ辞めちゃってるし、堺屋太一は文学というより疑似ノンフィクションですし、童門冬二は地方公務員で歴史小説ですから、ちょっと違うような感じです。

監督のダニー・ボイルはあの名作『トレインスポッティング』の監督。私は当時この映画にハマりまくり、以来この監督とユアン・マクレガーが気になって欠かさずウォッチするようになったものでした。映画自体だけじゃなく音楽も良かったんですよね。特に『普通じゃない』でアッシュの歌った主題歌「A Life less Ordinary」が大好きで、米国にいたときライブにまで行きました。これはもう感動ものでしたね(当時の日記)。

それにしてもこんなエンターテイメント映画がアカデミー作品賞をとるというのもすごいなあと思ったりしました。事情はよく知りませんが、全体的にハリウッド映画が飽きられている感があるんですかね。リメイクと漫画原作の映画化だらけというのもありますが、そうでなくともどこか既視感があるような作品が多いような印象ですし。いや、よく知らないで適当にしゃべってますけど。本当にいい加減だ。

そんなわけで、周りではイメージと違ったのか「?」という表情の人も多かった様子でしたが、久しぶりに映画らしい映画を見たような、なつかしい気持ちがして、自分的には大ヒットでした。深いことは考えずベタに映画で興奮したい人にはお勧めです。

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