For English, check ABOUT ME below the CATOGORY on the right.
やじゅんのページ/The World according to YAJUN



連休中、『レッド・クリフ Part2』を見ました。
三国志とジョン・ウーという男気あふれるコラボが実現した作品。
どっちかのファンだけでも日本では相当の数にのぼるでしょうから、ある程度の成功は約束されたようなものでしょう。あ、でも両方かぶっているファンも多いか。自分もそうですが。笑

感想は・・・『Part1』を見たときも思いましたが、まあこんなもんかなあ、可も不可もなく、という感じ。

そもそも三国志ものは、マニアにとってはどう作られても自分のイメージが上回ってしまうものなのです。なので最初から期待値を下げるようにしてました。でもジョン・ウーなら意外な面白さがあるんじゃないかと思ったのですが、やはり下げまくった期待値を上回ってくれることはありませんでした。 しかも『Part 2』の方が、がっかりさせられる部分が目についてしまいましたね。

豪華キャストの中でトニー・レオンや金城武が注目されてますが、曹操役のチャン・フォンイーも名優ですね。パルム・ドールをとった『覇王別姫』(チェン・カイコー1993)の主演です。なつかしい。でもなんだか薄っぺらい造形で、三国志の魅力の大きなポイントが曹操にあると思う者としてはもうちょっと何とかならなかったのかと一番残念に思うところです。

しかしエイベックスの努力もあってか三国志に縁のなかった人(主に女性)まで巻き込んだ大ヒットとなったこの映画。見た人から三国志についてよく聞かれます。
私の世代だと三国志には一度は必ずのめりこむというか、それなりにうるさ型の人が多かったように思うのですが(自分の周りだけ?)、今時の若い人たちにはあんまりなじみがないみたいですね。「金城武(孔明)はなんで最後まで戦場に出て戦わなかったのか?他の人たちはあんなにがんばっているのに。」と聞かれたりして、なるほどそんな発想もあるものかと、これはこれでなかなか新鮮な体験でした。

三国志に興味をもった人にこれを読んでみたらと勧めるとしたら、普通にいけば吉川英治でしょうけど、長い小説は敬遠されそうだし、今一番新しくて読みやすいのは『蒼天航路』になりますよね。でもこれは「ネオ三国志」と自分でうたっているとおり、三国志のベーシックなイメージからだいぶ離れてしまいます。実はこの作品は正史や歴史の考証をうまく活用していて、ある意味で演義からも離れたリアリズムを実現した興味深いものなのですが、やっぱりあれで曹操や劉備のイメージを作ってしまうと普通の人とは話が合わなくなるおそれがありますよね。だからまあ漫画でとなれば横山光輝の60巻が無難なんでしょうね。でもこれは長いし古いし、兜を脱いだら趙雲と太史慈と甘寧の顔の見分けもつかないのが難点ではありますよね。せめて夜寝るときくらい兜を脱げよ、とか。
(ちなみに中村獅堂の演じる武将がなんで「甘寧」ではなく「甘興」だったのか不思議でしたが、『Part2』を見て謎が解けました。ネタバレになるので伏せます。)

ただ何にせよ、三国志に縁がなかった人たちがこれを機会に興味をもってくれたのはいいことというか、個人的にはうれしく思いました。

私の場合、光栄のシミュレーションゲーム、横山光輝の『三国志』、人形劇三国志、本宮ひろ志の『天地を喰らう』(ゲームにもはまった)に始まり、中高生の頃に吉川英治『三国志』、原典の『三国志演義』、正史(後漢書等も含む)、歴史学の本と読み進み、大学生になったら成都や洛陽等のゆかりの地をまわるなどc深みにはまっていきました。最近では『蒼天航路』がよかったですね。

個人的には、小説とか二次的な創作に興味がいかず、もっぱら歴史的な考証の方に惹かれていったんですよね。社会とか法制度とか本当のところ当時の状況はどうだったのかという話です。
吉川幸次郎、内藤湖南など支那学の大家、最近では岡田英弘氏とか高島俊男氏の本(『世界史の誕生』『三国志 きらめく群像』など)が素人の私にも分かりやすく、勉強になりました。
たとえば中国では言葉自体に非常に重要な意味があります。これを知らないとまったく本質をとらえられないということが(今でも)あります。
例をあげれば中国人の名前は姓名と字(あざな)がありますが、「曹操孟徳」とか「劉備玄徳」とかいう言い方はしないのです(というか名前自体を普通呼びません)。これに限らず人の名前呼び方一つとっても色んな意味合いがあって、それを知ってはじめて全体の文脈が理解できるということもあります。
詩も同じことが言えて、その意味を理解するのは謎解きのようなところがあるのですが、とても興味深い世界です。ちなみに曹操は中国の歴史上屈指の詩人として評価されています。毛沢東もそうですよね。いくら強くても傑出した文人でないと中国では英雄にはなれないのですね。

余談ですがこういう知識は、三国志にとどまらない話で、現代の中国を知る上でも前提として非常に大切です。最後のリンクでも触れてますが毛沢東が田中角栄首相に贈った『楚辞集註』の解釈なんか有名ですね。
中国の教養人の中には言葉の裏の意味を読めない日本人を内心バカにしている人もいるそうです。共通に理解できるコードの不在というだけの話のような気もしますが、ちょっと怖い話ですよね。

もちろんこういう実証的な話を離れて、キャラというか、英雄的な活躍にもロマンを感じますよね。私も昔、三国志に出てくるすべての武将を勝手にデータ化するという今思うとちょっとアレなこともやってました。
ただ今はちょっと違う目というか、やっぱり一歩引いた目で見てしまいます。
たとえば劉備なんか、普通のイメージでは親分肌だけが取り柄の抜け作のような人ですが、実際は傭兵隊長みたいな人で、背が高く腕も長くてかなりの武闘派だったんですよね。そうでもなければ一農民からあそこまで成り上がるのは無理でしょう。
まあでもナンバー1の英雄が曹操というのは動きませんよね。圧倒的な力、精神、言葉、生き様、どれをとっても一級品です。歴代皇帝(本当は曹操は皇帝じゃないんですが)の中でも(始皇帝、漢の高祖、唐の太宗などとならんで)ダントツの評価を受けるのもむべなるかなです。

なんかもう話が脈絡なくなりました。このへんで切り上げます。
そういえば曹操について昔ちょっと触れた記事がありました。これは自分で言うのもなんですがなかなかよくできていて、あらためて読んだら自分自身なるほどと思いました(笑)。
もうちょっとお付き合い下さる方は適当にご覧下さい。

コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )