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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



週末に宮本亜門演出「三文オペラ」を見ました。

作品に思い入れがあったので楽しみにしていたのですが、感想は・・・正直今ひとつ。
やりたいことは何となく分かるのですが、ちょっとひねりすぎのような。あれでは予備知識がない人にはほとんど理解できないでしょう(オリジナルを知っている私さえ中盤の展開は省略が多すぎて「?」でした)。
俳優はよかったと思います。ダークナイトのジョーカー風の三上博史も従来のメッキーのイメージとは違った味がありました。ただ歌がちょっと。。。大体の出演者に言えますが、がなっているみたいで聞き取りにくかったです。歌詞が聞き取れないのはこの劇では致命的なんですよね。俳優というより演出の問題とは思うのですが。白塗りも、デーモン小暮閣下のメークに合わせたわけではない(はず)ですが、三上博史以外必要なのかな、せっかくの顔が見れなくてもったいないような・・・と思ったり。どうもこの演出家は苦手みたいです。

しかし「三文オペラ」自体はとても面白い作品です。この作品は、ヴァイルのクラシック音楽とブレヒトの演劇の脚本(加えてジョン・ゲイの原作「乞食のオペラ」)の融合であり、演劇、オペラ、ミュージカルにいずれにも当てはまるもので、映画化もされてますし、一種のメディアミックスというか、ジャンルを超えた欲張りな芸術作品なんですね。

ストーリーや原作、脚本が書かれた当時の背景についてちょっとだけいえば、一つのポイントは演出や物語のラディカルさでしょうね。たとえばストーリーについて言えば、悪党がやりたい放題やって、腐敗した警察と結託し、貧乏人を利用する詐欺師も含めてハッピーエンド!という、当時としては斬新だったと思われるモラルのないものです。
ハッピーエンドのもってき方も作品を演じている「俳優」(キャラクターではなくて)の抗議によるというデウス・エクス・マキナをおちょくったようなもので(個人的にはアレハンドロ・ホドロフスキーの『ホーリーマウンテン』を思い出します・・・あ、エヴァもそうだったか)、非常に実験的です(ちなみに今回の宮本亜門版のポイントはこのエンディングの再解釈にあると思われます)。
演出では台詞と歌の分離(ブレヒトのいう「異化効果」)がよく指摘されますね。

まあそういう教科書的な知識はおいておいて、ジャンルのクロスオーバー的な側面について個人的な経験をいえば、劇中の挿入歌である「モリタート」(別名「マック・ザ・ナイフ」-主人公メッキーの英語読みがマックで、ならず者メッキーの英語読みが「マック・ザ・ナイフ」なわけですね)はジャズが好きな人ならその名前に聞き覚えがあると思います。この歌はジャズのスタンダードでもあるんですよね。私なんかもそうだったのですが、「三文オペラ」を知らずとも、ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」での演奏やルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドの歌は知っているという人も多いと思います。

映画は、1931年版(GWパブスト監督)が非常に有名です。戦前世代の人が選ぶ名画ベストなんたらにはだいたい入ってくる作品です。私はずいぶん昔に大学の図書館にあるVHSで見ましたが、今はDVDになってるんですね。非常に完成度の高い作品でおすすめです。今回の公演を見て訳が分からなかった人もこれを見ればすんなり楽しめると思います。

ヴァイルの音楽ですが、アンサンブル・モデルンのCDを聴いてます。
アンサンブル・モデルンはジョン・ケージやシュトックハウゼンなどの現代音楽を演奏する団体です。個人的にはフランク・ザッパの演奏(『イエロー・シャーク』(1992年))が印象深い団体なんですよね。
ザッパは奇行の目立つロッカーとしてのイメージだけもっている人も多いかもしれませんが、ビートルズに先駆けてロックのコンセプト・アルバムを出し、ブーレーズにも認められた現代音楽家でもあります。ロック史に残る伝説の名盤Captain Beefheartの『Trout Mask Replica』(1961年)のプロデューサーでもあります。米国ではザッパの人気は今でも高く、留学中のルームメイトが沢山のアルバム(ザッパは多作で有名)をもってました。

なんか脱線が激しくなりましたが、とにかくこんな風に色んな広がりを見せるとい作品ということです。そんなわけで今回の上演も、満足度はともかく、見ておいてよかったとは思いました。

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昨日は上野公園に花見に行きました。
前の日に雨が降ったのでちょっと心配でしたがきれいに咲いてました。
上野公園にしたのは国立西洋美術館のルーヴル美術館展を見るためです。
思ったほどではなかったですが、平日のわりにずいぶん混んでましたね。
思わぬ知人にばったりということもありました。

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芸術といえば、そういや先週土曜の夜に六本木を歩いていたら風船をもった人たちがいっぱい歩いていて驚いたのですけど、これもアートだったんですね。週明けの日経新聞の夕刊を見て知りました。これです。

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日経新聞の夕刊といえば、先週、刑法学の権威である団藤重光元最高裁判事のインタビュー記事が連載されてました。

世間的には三島由紀夫の指導教官(刑事訴訟法ゼミ)としても有名な方ですね。今回の記事でも、すでに自伝(『この一筋につながる』)などにも書かれてよく知られた話ですが、三島を見いだしたのは彼の佐藤春夫との文通を検閲したのが縁であったとか、『仮面の告白』は刑訴法理論の体現であるとか、せっかくとっておいた三島の答案を犬が食べてしまったといったエピソードが出てました。その他すでに知られた話が多いようでしたが、95歳にしてお元気な最近のご様子が出てました。昨年11月の誕生日に洗礼を受けたとのこと。意気軒昂ですね。

連載の最初に「ひと筋の道」(元は芭蕉の言葉)を生きることの大切さに触れ、最後の言葉も「これからも『ひと筋の道』を生きていきたい」でした。
自分を貫いて生きてきたからこそ言える重いひと言。かっこいいですよね、本当に。

余談ですが団藤先生の著作にこういう本があります。

■ 団藤重光 『法学の基礎』

これは滅茶苦茶面白い本です。もともとは初学者向けの入門書として書かれたはずなのですが、どこがやねんという内容の濃さ(著者も入門書としての不適切さを認めてます)。「基礎」というのは決して初学者のためのものではないのですね。知性が凝縮したような重厚な記述の中にかいま見える人間性も魅力的で、「ひと筋の道」の尊さを感じます。末永く何度も読み込みたいと思う一冊です。

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何度も読みたい本といえば、前回の最近読んだ本の追加。

■ 井筒俊彦 『意識と本質』
■ 同 『意識の形而上学』

長いこと積ん読になっていた2冊です。読むのにエネルギーが必要なので手が出ませんでしたが、ようやく一読できました。
前者は「東洋哲学」全体、後者は特に大乗起信論について論じてます。
「東洋哲学」などというと西洋哲学に対するアンチテーゼとして主張されたり、逆に東洋たってひと言に言えないだろうと軽々しく言うものが多いですが、そういう浅薄な論はこの圧倒的な知性の前に吹き飛びます。おそらく世界でただ一人この人しか書けない、おそろしくスケールが大きく濃厚な思索が詰まっていて、一度読むだけではとても消化し切れません。まさしく古典の名に値する、末永く何度も読みたいと思う本です。
井筒俊彦や鈴木大拙のように世界に向けて発信し評価される思想家というのはすごいものだと思います。鈴木大拙の大乗起信論(『Outlines of Mahayana Buddhism』)は米国でも読まれていました。井筒俊彦なんかイランで教授までしてしまうわけですからね。日本語訳されていない著作もまだまだ膨大にあるという。巨人です。

・・・
かっこいいといえば、こないだの『絶対彼氏』スペシャル版のもこみち、かっこよかったですね。
泣かされました、今回も。
一人の人を愛するために作られたロボットが、本当の人間の心をもったとき、自分はその人を幸せにできるのかと悩みます。
その感情が芽生えたときの、今まで決して見ることのなかった、見るはずもなかった、苦悶の表情。
自分がいなくなる決意をした後の、その人との最後の会話。
「愛してるよ。ずっと。」
「プログラムされたからそう言うんでしょ?」
「・・・(一瞬目を伏せて)そうだよ。」
これはドラマ冒頭の会話、もっと言えば前に連続ドラマでやったときのと同じやりとりなんですね。
そして、すべてが終わったあとに流れる主題歌の「おかえり」。
切ないですね~。まあ話自体は昔からあるものですし、正直言って完成度が低いと思う部分も多々あります。でも私はダメなんですね、こういうのが。配役がピタリはまっていたのも良かったのでしょうね。今や大人気の水島ヒロ、もう一人のロボットを演じた内田朝陽(藤崎マーケットの背の高い方に似ていると思います)も良かったです。てかもっとこうすればいいのに~と色んなアイディアがわいてしまいましたね。病気か(笑)。

ついでにもう一つ付け加えると、UTADAの『This is the One』を聴きました。
もうちょっと聴かないと分かりませんが、今ひとつピンときませんでした。宇多田ヒカルらしさがあまり伝わってこなかった気がします。
なんとなく『EXODUS』を聴いたときの印象とダブります。うーん。

・・・
毎度のことですが、脈絡ない与太話になりました。
世間を騒がす北朝鮮のミサイルもG20もまったくスルーですね(笑)。
ミサイルは前回のとき色々縁があったので感慨深いのですが、それはそれとして、経済については、最近ブータンの「GNH」(国民総幸福度)という経済指標が取り上げられますよね。
これ、数年前に米国に留学していたとき、クラスメートのブータン人(なぜかこの学校には数人いて、王女も二人もいました)の友人が力説していました。そのときは正直まったくピンときませんでしたが、中谷巌氏や佐和隆光氏など著名な経済学者が最近言及するのを見て、へえーと思いました。
私にはこの指標の有効性などを確かめる能力はありません。ただこの話が出るたびブータン人の友人を思い出すのです。

と最後だけ強引にそれっぽくしてみました。ほんとに強引、しかも中身なしです(汗)。

もう4月ですし、そろそろビシっとしないといけません。ぼちぼちがんばります。

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最近比較的落ち着いていたので、積ん読になってた本をいくつか読みました。
バラバラでまとまりないですが、その中で面白かったものをいくつか挙げてみます。

『イエスという男』 田川建三
独自の視点から「逆説的反逆者」としての史的イエスを描いた本。
独特の情熱に満ちた文章、歯に衣着せぬ言い回しに驚く人もいるかもしれないが、著者はブルトマンに多大な影響を受けながら、フランスのブルトマン神学の雄トロクメに師事し、独自の聖書学を発展させた希有な日本人。素朴な実証主義・史料解釈の克服を目指しながら、原始キリスト教団の信仰と史実のイエスの断絶を唱え、カール・バルトに代表される「神の言葉の神学」を徹底的に批判する立場をとった。その議論は畢生の大著『書物としての新約聖書』を見てもわかるとおり、極めて厳密で説得的。荒井献『イエスとその時代』と併せて読むと、著者と他の新約聖書学の権威との間の激しい議論の応酬を見ることができます。
『書物としての新約聖書』は新約聖書の解体という知的冒険を味わえる一冊。マクグラス『キリスト教神学入門』とともにレファレンスとしても重宝する。こちらは文体も比較的穏健。

『ハイエク 知識社会の自由主義』 池田信夫
やはりcontroversialな経済批評家の本。
最近は「イケ・イケ本」(池田信夫・池尾和人『なぜ世界は不況に陥ったのか』)が話題を呼んでますよね。
経済学にとどまらず哲学、法学、社会学にわたるハイエクの思想がコンパクトに説明されてます。自生的秩序論や情報化社会への対応のような最近の視点を加えており、新書ながらなかなか読ませます。ブログよりは文体も穏健です(笑)。

『宗教学の名著30』 島薗進
宗教学は学問としての専門的基盤が確立していない分野です。そのためどういう本を「名著」とするか自体にその人なりのアプローチが投影されます。
著者はこの分野の第一人者であり、内容も確かですが、何となくふわーっとした宗教学の性質をそのまままとめた感じなので(それが著者のねらいでもありますが)、体系的理解のできる入門書を期待する人には不向きかもしれません。
個人的には思った以上に発見があり楽しめました。ただもうちょっと長く書いて欲しかったですね。新書だししょうがないですけど。

『思想史のなかの科学』 伊東俊太郎、広重徹、村上陽一郎
この本は非常に手際よくコンパクトに科学哲学のエッセンスを詰め込んでます。
叙述は平易で簡潔ですが、さすが碩学3人の著述(鼎談もあり)、一つ一つの言葉の選び方に重みがあります。
ただコンパクトにするため説明がはしょりすぎで、予備知識がないと苦労するかもしれません。また古い本ということもあり、ポパー、デュエム以降の新科学哲学の記述はないので他で補充する必要があります。
ちょっとマニアックな余談ですが、科学哲学の基本的な考え方の一つにアリストテレスの生気論・目的論的世界観とデカルトやベーコンから始まる近代の機械論的世界観の対比があります。この対比が20世紀の憲法学における制度的保障という概念の解釈をめぐる議論につながっていることを知ったとき(石川健治『自由と特権の距離―カール・シュミット「制度体保障」論・再考 』に詳細に書かれています)ちょっと興奮しました。

『法思想史講義』(上下) 笹倉秀夫
『法哲学講義』 笹倉秀夫
質量ともに盛りだくさんの三冊。
一気に読みたいですが、一つ一つの文章が味わい深く、なかなか進みません。
法思想や法哲学に尽きず、法を切り口にした西洋の知のアーケオロジー研究とでもいうべき壮大なテーマを扱った本です。法学などが独立した学問体系として分化したのは近代の啓蒙主義以降のことですし、特に政治思想と法思想はもともと一体として論じられるものだったんですよね。
この種の本はテーマが壮大過ぎるので色んな人が分担して書くことが多いですが、この本は一気通貫に一人で書上げてます。それだけに単なる知識の陳列に終わらず、時空を超えた思想相互の関係が著者なりの物語に沿って整理されています。
思想はそれ自体のみならず歴史的文脈含めて勉強しなくては理解できません。自分が個別に得た知識がこういう大きな地図に埋め込まれていくのを見るとワクワクするんですよね。
文章は平易でとても分かりやすく、初学者の人にもお勧めの本です。

『二十世紀の法思想』 中山竜一
こちらも『法思想史講義』ほどではないですが大きなテーマを一人の著者が書いてます。
それでも情報が多く拡散しがちな話を、「法の自立性」と「言語論的転回」を軸にしてうまくまとめてます。
法に縁がなくとも言語哲学やポストモダンに興味ある人であれば楽しめると思います。

『料理の常識』 渡辺香春子
『すぐできるおかず』 ベターホーム協会
落ち着きついでに色々やったことのない料理を試しています。
パン粉とか片栗粉とか使ったりケーキを焼いたり。かなり腕を上げました。

・・・
すいません、最後のはウソです(笑)。
不精者なので凝ったものには挑戦しません。あ、粉はつかってます。失敗してますけど(汗)。
しかし最後にあげた本はそんな私のような者にぴったりで、大変重宝しました。

それにしても高橋洋一さんの事件はびっくりでしたね。。。
私の方は、この記事で分かるとおり、相変わらず平和です。
気がつくともう4月。桜もきれいに咲いてますね。がんばっていきましょう~!

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